倒産件数は648件、8カ月連続の前年同月比減少
負債総額は1400億5300万円、2カ月連続の前年同月比増加
倒産件数 | 648件 |
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前年同月比 | ▲12.9% |
前年同月 | 744件 |
負債総額 | 1400億5300万円 |
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前年同月比 | +57.3% |
前年同月 | 890億1900万円 |

主要ポイント
- ■倒産件数は648件(前年同月比12.9%減)と、8カ月連続で前年同月を下回った。8カ月以上の連続減少は2013年8月~2015年2月(19カ月連続)以来
- ■負債総額は1400億5300万円(前年同月比57.3%増)と、2カ月連続で前年同月を上回った。2020年度では、2020年12月の1450億300万円に次いで3番目の高水準
- ■業種別にみると、7業種中4業種で前年同月から減少率2ケタ以上と大幅に下回った。一方、小売業(164件、前年同月比1.9%増)、運輸・通信業(28件、同40.0%増)、不動産業(33件、同73.7%増)の3業種は前年同月を上回った
- ■主因別にみると、「不況型倒産」の合計は505件(前年同月比15.8%減)
- ■負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は411件(前年同月比12.6%減)
- ■地域別にみると、9地域中7地域で前年同月を下回った。最も減少率が大きいのは北陸(16件、前年同月比40.7%減)で、以下 東北(29件、同38.3%減)、九州(46件、同34.3%減)、四国(14件、同22.2%減)と続いた
- ■態様別にみると、破産は587件(構成比90.6%)、特別清算は35件(同5.4%)となった
- ■負債額最大の倒産は、(株)F-Power(東京都、会社更生)の約464億円
■件数・負債総額
倒産件数は8カ月連続の前年同月比減少
倒産件数は648件(前年同月比12.9%減)と、8カ月連続で前年同月を下回った。8カ月以上の連続減少は2013年8月~2015年2月(19カ月連続)以来。
負債総額は1400億5300万円(前年同月比57.3%増)と、2カ月連続で前年同月を上回った。2020年度では、2020年12月の1450億300万円に次いで3番目の高水準。■業種別
建設、卸売など4業種で前年同月から2ケタの減少
業種別にみると、7業種中4業種で前年同月から減少率2ケタ以上と大幅に下回った。なかでも卸売業(82件、前年同月比27.4%減)は、飲食料品卸売業(16件、同56.8%減)が前年同月から半減した。製造業は、今年4月からスタートした総額表示対応などで印刷需要が高まったことも背景に、出版・印刷・同関連産業(5件、同58.3%減)が大幅減少となった。
一方、小売業(164件、前年同月比1.9%増)、運輸・通信業(28件、同40.0%増)、不動産業(33件、同73.7%増)の3業種は前年同月を上回った。運輸・通信業は旅行代理店や観光バスなど観光産業での倒産も目立った。■主因別
「不況型倒産」は505件、構成比は77.9%
主因別にみると、「不況型倒産」の合計は505件(前年同月比15.8%減)。構成比は77.9%(同2.7ポイント減)と9カ月連続で80%を下回った。9カ月以上連続で80%を下回るのは、2008年8月以降としては初めて(過去最長は2001年9月~2008年7月の83カ月間)。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
■規模別
負債5000万円未満の構成比63.4%
負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は411件(前年同月比12.6%減)、構成比は63.4%を占めた。負債5000万円未満の倒産では、小売業(116件)が構成比28.2%(同2.7ポイント増)を占め最多、サービス業(100件)が同24.3%(同1.7ポイント減)で続く。
資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産が441件(前年同月比13.0%減)、構成比は68.1%を占めた。■地域別
9地域中7地域で前年同月比減少、北海道は前年から倍増
地域別にみると、9地域中7地域で前年同月を下回った。最も減少率が大きいのは北陸(16件、前年同月比40.7%減)で、以下 東北(29件、同38.3%減)、九州(46件、同34.3%減)、四国(14件、同22.2%減)と続いた。 一方、北海道(22件、前年同月比83.3%増)と中国(30件、同15.4%増)の2地域は前年同月を上回り、このうち北海道は前年同月からほぼ倍増となった。
■態様別
「破産」は587件、構成比は90.6%
態様別にみると、破産は587件(構成比90.6%)、特別清算は35件(同5.4%)となった。
会社更生法(1件)は2021年1月以来2カ月ぶりに発生した。■景気動向指数(景気DI)
景気DIは38.0、2カ月連続で上向き
2021年3月の景気DIは2カ月連続で前月比プラス(2.2ポイント)の38.0となった。
3月の国内景気は、21日に緊急事態宣言がすべての地域で解除されたなか、人の動きが徐々に活発化したことなどにより上向いた。在宅時間の増加にともなう自宅内消費の拡大傾向が続いたほか、半導体関連や自動車関連などの需要増加はプラス材料となった。他方、燃料価格や原材料価格の上昇は幅広い業種でマイナス要因となったほか、一部地域では営業時間の短縮による影響が表れていた。 国内景気は、緊急事態宣言の解除で経済が徐々に活発化し、2カ月連続で上向いた。緩やかな上向き傾向が続くものの、下振れリスクも
今後1年程度の国内景気は、ワクチン接種の開始による経済活動の正常化に向けた動きなどもあり、緩やかな上向き傾向が続くとみられる。また、テレワークの拡大による住宅ニーズの高まりや自宅内消費など新しい生活様式に対応した需要の拡大はプラス要因となる。また、規模を縮小し開催される東京五輪のほか、レジャー関連や訪日外国人旅行者数の増加、5Gの本格的普及、世界経済の回復などが期待される。
他方、半導体不足が続くなかで製造工場の火災などによる供給不安の長期化や、燃料価格の上昇などの影響が懸念される。また、新型コロナウイルスの感染拡大にともなうまん延防止等重点措置の適用による活動自粛の再要請など、下振れリスクも依然として大きい。今後の見通し
■倒産件数は20年ぶりの低水準、負債総額は過去最小ながら大型倒産は前年度から増加
2020年度(20年4月~21年3月)の倒産件数(7314件、前年度比13.8%減)は、2年ぶりに前年度から減少し、20年ぶりに8000件を下回る低水準となった。業種別の件数は、7業種全てが前年度比減少。さらに建設(1167件)、卸売(934件)、製造(796件)の3業種では過去最少となった。業種別の構成比は、小売業(24.1%)が11年連続で上昇し過去最高を記録した。
負債総額(1兆2174億6900万円、前年度比0.1%減)は3年連続で前年度を下回り、2000年度以降最小となった。特に、負債1億円以上5億円未満の倒産が1265件(同21.4%減)と過去最低を記録。各種倒産抑制策が中堅規模を中心に効力を発揮した可能性が高い。一方、負債10億円以上の倒産(198件)は前年度(180件)から約1割増加するなど、中堅規模以上での倒産増加が目立った。■返済猶予後倒産、特に小売で増加が目立つ
取引金融機関から借入金の返済条件変更(リスケジュール)を受けた企業の返済猶予後倒産について、2020年度の件数は475件と前年度(498件)を下回る一方、負債総額は3491億9600万円で前年度比23.5%増と大幅に増加した。業種別件数に目を向けると、小売業(92件、前年度比19.5%増)の増加が目立った。
アパレル販売のリデア(株)(11月、民事再生、負債46億円)をはじめ、コロナ禍で取引金融機関から資金繰り支援を受けたものの、売り上げが想定を超えて急激に落ち込んだことで、支えきれずに破たんするケースが中堅規模以上でも散見され、返済猶予後倒産の負債総額を押し上げた。■企業業績の回復、原材料価格の高騰も懸念材料に
企業業績のコロナ禍以前への回復は、企業規模や業種によって、まだら模様で不確実な状況となっている。上場企業に注目すると、2021年3月期決算の業績修正を2月末までに発表した上場企業のうち、75.3%が年売上高を「上方修正」した。業種別にみると、上方修正の比率が最も高かったのは海外需要などの持ち直しがみられる「製造業」となった(「上場企業の業績修正動向調査 2021年3月期決算」、帝国データバンク、2021年3月発表)。
他方、各種製品や建設向け原材料などの価格が上昇し、採算確保への懸念材料となっている。TDB景気動向調査(2021年3月調査)によると、仕入れ単価DIは56.9となり、10カ月連続で上昇している。為替相場は1年ぶりの円安・ドル高で、原材料・燃料価格の上昇圧力も予想され、販売価格への転嫁状況が注目される。この他、半導体の供給が需要に追い付かないなど部品供給網の課題も表面化しており、売り上げや採算性の下振れが懸念される。■資金繰り支援は継続、経営改革や収益性の改善状況に注目
コロナ禍の資金繰り支援を目的とした実質無利子・無担保融資について、政府系金融機関が2020年3月に開始(民間金融機関は5月)してから1年が経過した。各種資金繰り支援策が奏功し、倒産件数は8カ月連続で前年同月を下回っている。また今年3月、金融庁がコロナ関連融資の返済猶予対応を金融機関に要請。中小企業の業態転換を促す事業再構築補助金(経済産業省)の申請が4月中に開始される予定など、中小企業への資金繰り支援は継続している。
他方、コロナ禍の影響を大きく受けている企業について、返済猶予期間における業態転換を含めた経営改革が急務になっている。企業業績の回復は業種や企業規模でまだら模様となっているうえ、原材料価格の高騰など収益性の変動リスクも高い。また、新型コロナの新規感染者数が上昇に転じ「第4波」の様相を呈する地域もある。資金繰り支援を受けたものの、経済活動の停滞で業績回復が追い付かない事例が散発し、倒産件数が増加に転じる可能性は否定できない。