倒産件数は552件、12月としては2000年以降最少
負債総額は1450億300万円、5カ月連続の前年同月比減少
倒産件数 | 552件 |
---|---|
前年同月比 | ▲22.0% |
前年同月 | 708件 |
負債総額 | 1450億300万円 |
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前年同月比 | ▲9.2% |
前年同月 | 1596億2200万円 |

主要ポイント
- ■倒産件数は552件(前年同月比22.0%減)、12月としては2000年以降最少
- ■負債総額は1450億300万円(前年同月比9.2%減)、5カ月連続の前年同月比減少
- ■負債額最大の倒産は、(株)ダイヤメット(新潟県、民事再生)の約577億9000万円
- ■業種別にみると、2カ月連続で全業種において前年同月を下回った。製造業(70件、前年同月比16.7%減)は5カ月連続、卸売業(59件、同41.0%減)は6カ月連続の前年同月比減少。一方、サービス業(136件、同20.9%減)では宿泊業(7件)が前年同月比75.0%増となるなど、依然として増加傾向が続く業態もみられる
- ■主因別にみると、「不況型倒産」の合計は418件(前年同月比25.8%減)、構成比は75.7%を占める
- ■負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は345件(前年同月比17.9%減)、構成比は62.5%を占める
- ■地域別にみると、9地域中8地域で前年同月を下回り、なかでも北海道(6件、前年同月比64.7%減)、四国(4件、同77.8%減)の2地域は過去最少となった。また、東北(24件、同25.0%減)は6カ月連続、関東(231件、同10.8%減)は5カ月連続の前年同月比減少
■件数・負債総額
倒産件数は552件、12月としては2000年以降最少
倒産件数は552件(前年同月比22.0%減)と、5カ月連続の前年同月比減少。12月としては2018年12月(627件)を下回り、2000年以降最少となった。
負債総額は1450億300万円(前年同月比9.2%減)と、5カ月連続で前年同月を下回った。■業種別
2カ月連続の全業種減少
業種別にみると、2カ月連続で全業種において前年同月を下回った。製造業(70件、前年同月比16.7%減)は、自動車関連を中心とした生産の回復などを受け、5カ月連続の前年同月比減少。卸売業(59件、同41.0%減)は、衣服・繊維製品卸(9件、同65.4%減)や飲食料品卸(13件、同53.6%減)などで減少が目立ち、6カ月連続で前年同月を下回った。
一方、サービス業(136件、前年同月比20.9%減)では宿泊業(7件)が前年同月比75.0%増となるなど、依然として増加傾向が続く業態もみられる。■主因別
「不況型倒産」は418件、構成比は75.7%
主因別にみると、「不況型倒産」の合計は418件(前年同月比25.8%減)となり、5カ月連続で前年同月を下回った。構成比は75.7%(同3.8ポイント減)を占めた。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
■規模別
負債5000万円未満の構成比62.5%
負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は345件(前年同月比17.9%減)、構成比は62.5%を占めた。負債5000万円未満の倒産では、サービス業(102件)が構成比29.6%(同2.5ポイント増)を占め最多、小売業(88件)が同25.5%(同1.9ポイント減)で続く。
資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産が370件(前年同月比17.6%減)、構成比は67.0%を占めた。■地域別
9地域中8地域で前年同月比減少
地域別にみると、9地域中8地域で前年同月を下回り、なかでも北海道(6件、前年同月比64.7%減)、四国(4件、同77.8%減)の2地域は過去最少となった。また、東北(24件、同25.0%減)は宮城県(4件)などで減少傾向が続き、6カ月連続の前年同月比減少。関東(231件、同10.8%減)は東京都(120件)をはじめ、千葉県(13件)、神奈川県(31件)などで減少が目立ち、5カ月連続の前年同月比減少となった。
一方、北陸(16件、前年同月比23.1%増)は唯一前年同月を上回った。■態様別
「会社更生法」による倒産が9カ月ぶりに発生
態様別にみると、破産は492件(構成比89.1%)、特別清算は31件(同5.6%)、民事再生法は28件(同5.1%)となった。また、会社更生法による倒産((株)ザ・クイーンズヒルゴルフ場、福岡県、負債約168億8400万円)が2020年3月以来9カ月ぶりに発生した。
■景気動向指数(景気DI)
景気DIは35.0、7カ月ぶりの悪化
2020年12月の景気DIは前月比0.4ポイント減の35.0となり、7カ月ぶりに悪化した。
12月の国内景気は、新型コロナウイルスの感染再拡大にともない、観光支援の各種施策が全国的に一時停止されたことなどが悪材料となり、持ち直し傾向がストップした。さらに冬季賞与の減額や新型コロナウイルスに関連した失業者の増加など所得環境が悪化したほか、一部地域での休業・営業時間短縮などで、小売や個人向けサービスなど個人消費の落ち込みがみられた。他方、自動車関連の生産が堅調に推移したほか、工作機械や産業機械を含む機械製造、半導体製造装置などは上向いた。
国内景気は、新型コロナウイルスの感染再拡大などで持ち直し傾向がストップした。一時的に後退すると見込まれるものの、その後は緩やかな上向き傾向で推移か
今後1年程度の国内景気は、新型コロナウイルスの感染再拡大にともなう社会経済活動の抑制策の実施などにより、一時的に後退すると見込まれる。また、感染状況の違いにより地域間や業種間で景気の動きが二分される可能性もある。さらに、雇用・所得環境の悪化による可処分所得の減少などは、個人消費を下押しする材料である。他方、ワクチン接種の広がりや5Gの本格的普及、東京五輪などはプラス要因となろう。また、自宅内消費など新しい生活様式に対応した需要の取り込みや海外経済の回復なども期待される。
今後の景気は、一時的に後退すると見込まれるものの、新型コロナウイルスの感染状況次第ながら春頃に底打ちしたのち、緩やかな上向き傾向で推移するとみられる。今後の見通し
■倒産件数は20年ぶりの低水準、負債は過去最小に
2020年(1~12月)の倒産件数(7809件、前年比6.5%減)は2年ぶりに前年比で減少し、20年ぶりに8000件を下回る低水準となった。業種別にみると、7業種全てが前年比で減少。さらに建設(1266件)、卸売(1041件)、製造(867件)、不動産(231件)の4業種は過去最少を記録した。態様別では、特別清算(320件)が3年ぶりに前年比で増加し過去10年で最多となった一方、民事再生(274件)は前年比で2割ほど減少している。
負債総額(1兆1810億5600万円、前年比16.4%減)は、2000年以降最小となった。負債50億円以上の倒産件数(19件、同29.6%減)が過去最少と、大型倒産も低水準で推移した。■新型コロナ対応の特別融資や各種給付金など資金繰り支援策が奏功
新型コロナウイルス感染拡大による企業経営へのダメージが危惧されるなか、金融機関は実質無利子・無担保の新型コロナ対応融資などを実施した。2020年12月時点の銀行・信金の貸出平残は前年同月比6.2%増の577兆6393億円と過去最高で、金額は34兆円近く増加している(貸出・預金動向 速報、日本銀行)。
貸出金、劣後ローンなどの資本性資金、2021年1月11日までに約402万件実行(給付額5.3兆円、経済産業省)された持続化給付金など、国をあげた支援策が、総じて多くの企業の資金繰りを支え倒産の歯止めとして奏功した。■飲食業の倒産が過去最多、宿泊業は過去3番目に多く
観光や飲食関連などの支援策「Go To キャンペーン」は、展開中に一定の需要を喚起したものの、新型コロナ感染再拡大を受けたキャンペーン中断などで関連業界の需要は大きく揺さぶられた。各種資金繰り支援策が追い付かない事例もあり、2020年の飲食業の倒産は780件と過去最多を記録。宴会需要の冷え込みを背景に居酒屋業態などが件数を押し上げた。ホテルなど宿泊業の倒産は前年比1.8倍の127件となり、2011年(131件)、2008年(130件)に次ぐ過去3番目の高水準。旅行業の倒産は前年比2割増の24件となった。 旅行業として過去最大の負債となった(株)ホワイト・ベアーファミリー(6月、負債278億円)は、国内・海外旅行の企画販売を手がけていたが、コロナ禍の渡航制限などで受注が激減し、関係会社のホテル経営、WBFホテル&リゾーツ(株)(4月、負債160億円)とともに経営破綻。この他、LCC事業のエアアジア・ジャパン(株)(11月、負債217億円)やアパレル大手の(株)レナウン(5月、負債138億円)など、人々の行動自粛が影響する新型コロナ関連倒産が2020年の負債上位に名を連ねた。
■新型コロナ第3波への対応状況に注目
政府は2020年12月8日、新型コロナ感染拡大防止策、ポストコロナにむけた経済構造の転換や国土強靭化を柱とする73兆円超の追加経済対策を閣議決定した。今後、地方創生臨時交付金、中小企業の業態転換や生産性向上にむけた補助金など、予算実行の動向が注目される。
一方、目の前では懸念材料が山積している。新型コロナの感染が再拡大するなか、政府は1月7日、首都圏1都3県に緊急事態宣言を発出。これを受け、首都圏の経済活動の停滞が予想されるほか、関西3府県などにも拡大する動きにある。また、2020年11月の就業者数は8カ月連続で前年同月比減少(労働力調査、総務省)、企業の32.5%が冬季賞与減少と回答(「2020年冬季賞与の動向調査」帝国データバンク、2021年1月発表)するなど個人消費の下振れの影響が危惧される。企業の資金繰りを支えてきた新型コロナ対応融資は最長5年の元本返済猶予に応じている。他方、返済開始時期までに、ビジネスモデルの再構築や収益性の向上に見込みが立たない企業は少なくないとみられる。急激な業績の落ち込みに各種支援策が追い付かないケースを含め、年度末にむけて企業倒産が増加局面に移る可能性は否定できない。