レポート倒産集計 2020年 4月報

2020/05/13

倒産件数は758件、8カ月連続の前年同月比増加
負債総額は1614億6700万円、2カ月連続の前年同月比増加

倒産件数

758件

前年同月比

+16.4%

前年同月

651件

負債総額

1614億6700万円

前年同月比

+54.3%

前年同月

1046億6400万円

主要ポイント

  • ■倒産件数は758件、8カ月連続の前年同月比増加
  • ■負債総額は1614億6700万円、2カ月連続の前年同月比増加
  • ■業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を上回った。なかでも小売業(190件、前年同月比27.5%増)は、5カ月連続増。建設業(124件、同10.7%増)は8カ月連続増。サービス業(183件、同10.2%増)では、宿泊業(25件)が過去最多となり、件数全体を押し上げた
  • ■主因別にみると、「不況型倒産」の合計は614件、構成比は81.0%を占める
  • ■負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は441件(前年同月比15.4%増)、構成比は58.2%を占める
  • ■地域別にみると、9地域中8地域で前年同月を上回った。北陸(35件)は、3カ月連続の増加となった。近畿(194件、前年同月比17.6%増)は、小売業が8カ月連続の増加
  • ■人手不足倒産は15件(前年同月比25.0%減)発生。6カ月ぶりの前年同月比減少
  • ■後継者難倒産は54件(前年同月比58.8%増)発生。過去最多を更新
  • ■返済猶予後倒産は55件(前年同月比48.6%増)発生。6カ月ぶりの前年同月比増加
  • ■負債トップは、WBFホテル&リゾーツ(株)(大阪府、民事再生)の約160億円
  • ■件数・負債総額
    倒産件数は8カ月連続増

    倒産件数は758件(前年同月比16.4%増)と、8カ月連続で前年同月を上回った。8カ月以上の連続増加は2008年6月から09年8月(15カ月連続)以来。
    負債総額は1614億6700万円で2カ月連続の増加となった。新型コロナウイルス感染拡大の影響などで負債数億~数十億円規模の倒産が相次いだことで前年同月比54.3%増となった。

    ■業種別

    建設業、小売業などで前年同月比増加

    業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を上回った。なかでも小売業(190件、前年同月比27.5%増)は、消費税率引き上げや新型コロナウイルス感染拡大などにともなう売り上げ減少の影響で5カ月連続増、比較可能な2000年以降で4月としては最多を更新した。建設業(124件、同10.7%増)は8カ月連続増と、2008年1月から09年2月(14カ月連続)以来の連続増。また、サービス業(183件、同10.2%増)では、新型コロナの影響で予約キャンセルが相次いだ宿泊業(25件)が過去最多となり、件数全体を押し上げた。
    一方、不動産業(16件、前年同月比23.8%減)は唯一前年同月を下回った。

    ■主因別

    「不況型倒産」は614件、構成比81.0%

    主因別にみると、「不況型倒産」の合計は614件(前年同月比21.6%増)と、2カ月連続で前年同月を上回った。構成比は81.0%(同3.4ポイント増)を占めた。

    ※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

    ■規模別

    負債5000万円未満の構成比58.2%

    負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は441件(前年同月比15.4%増)、構成比は58.2%を占めた。負債5000万円未満の倒産では、小売業(134件)が構成比30.4%(同0.3ポイント増)を占め最多、サービス業(115件)が同26.1%(同3.7ポイント減)で続く。
    資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産が500件(前年同月比16.0%増)、構成比は66.0%を占めた。

    ■地域別

    北陸、近畿など8地域で前年同月比増加

    地域別にみると、9地域中8地域で前年同月を上回った。
    北陸(35件)は、建設業や卸売業などで増加し前年同月比75.0%増、3カ月連続の増加となった。近畿(194件、前年同月比17.6%増)は、大阪は微減も、滋賀や兵庫など5府県で増加。業種別も4業種で増加し、なかでも小売業は消費税率引き上げなどの影響を受け8カ月連続の増加となった。
    一方、関東(235件、前年同月比2.5%減)は、唯一前年同月を下回り、11カ月ぶりの減少。新型コロナウイルス感染拡大を受け、裁判所からの要請により不急の申し立てを控える動きなどが、倒産減少の要因にもなった。

    ■態様別

    「破産」は707件、構成比93.3%

    態様別にみると、破産は707件(構成比93.3%)、特別清算は24件(同3.2%)となった。 民事再生法は27件で、うち17件を個人事業主が占めた。

    ■特殊要因倒産

    人手不足倒産

    15件(前年同月比25.0%減)発生、6カ月ぶりの前年同月比減少

    後継者難倒産

    54件(前年同月比58.8%増)発生、5カ月連続の前年同月比増加で過去最多を更新

    返済猶予後倒産

    55件(前年同月比48.6%増)発生、6カ月ぶりの前年同月比増加

    ※特殊要因倒産では、主因・従因を問わず、特徴的な要因による倒産を集計

    ■景気動向指数(景気DI)

    景気DIは25.8、過去最大の下落幅を更新

    2020年4月の景気DIは前月比6.7ポイント減の25.8となり7カ月連続で悪化、前月に続いて過去最大の下落幅を更新した。景気DIは過去3カ月で16.1ポイント減少した。
    4月の国内景気は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止に向けて、政府が緊急事態宣言を発令、経済活動が大きく制約された。外出自粛や休業の広がりなどを通じて市場機能の多くが制限されるなか、国内・海外需要が急速に冷え込んだ。消費税率引き上げの影響が継続しているほか、新型コロナウイルスの影響でヒト・モノ・カネの流れが地域・業種・企業規模を問わず停滞し、国内経済を下押しした。他方、宅配事業などで新しいサービスが誕生したほか、スーパーや医薬品小売などは改善した。
    国内景気は、経済が収縮するなかで企業活動が制約され、急速な悪化が続いた。

    新型コロナの収束など不確実性強く、景気後退が続く

    今後の国内景気は、新型コロナウイルスの収束状況が先行きを左右する。国際経済において世界大恐慌以来の落ち込みが予測されるなか、企業や個人、金融市場などは不確実性の高まりに直面するとみられる。企業の67%で4月の売り上げ減少が見込まれるなど、企業業績の悪化にともなう雇用・所得環境の不安定化などは景気の重しとなろう。また、消費者の行動変化や供給側の対応も注視される。他方、政府の緊急経済対策や日本銀行による金融緩和政策の強化が実施されるほか、生産の国内回帰や新商品・サービスの投入などは好材料になる見込み。
    今後は、新型コロナウイルスの収束など不確実性が強く、景気後退が続くと想定される。

    今後の見通し

    ■倒産件数は8カ月連続増、宿泊業は過去最多

    2020年4月の倒産件数(758件、前年同月比16.4%増)は8カ月連続の前年同月比増加で、4月としては5年ぶりに700件を上回った。業種別では、消費税率引き上げや新型コロナウイルス感染拡大にともなう売り上げ減少などから、小売業(190件、前年同月比27.5%増)が5カ月連続の増加と、比較可能な2000年以降で4月としての最多を更新し、件数全体を押し上げた。
    負債総額は1614億6700万円と、負債100億円超の倒産が3カ月ぶりに発生したほか、負債数十億円規模の倒産も相次いだことから、前年同月を54.3%上回った。負債額上位には、計27のホテルを展開していたWBFホテル&リゾーツ(株)(民事再生、大阪府、負債約160億円)や、リゾートホテル経営の(株)ロイヤルオークリゾート(破産、滋賀県、負債約50億円)、高級カプセルホテル経営の(株)ファーストキャビンなどグループ5社(破産、東京都、負債合計約37億円)といった新型コロナ関連で稼働率が急激に悪化したホテルの倒産が目立ち、4月の宿泊業の倒産件数(25件)も過去最多を更新。多額の設備投資により借入金が嵩むホテル、旅館などでは、今後も稼働率低下による倒産は散発する可能性が高い。

    ■飲食店の倒産相次ぐ

    4月の飲食店の倒産(75件、前年同月比15.4%増)は、5カ月連続の前年同月比2ケタ増と増加傾向が続き、年ベースで過去最多だった前年(732件)をさらに上回るペースで推移している。消費税率引き上げ後も価格転嫁せずに対応してきた企業や、人件費、原材料費、物流費などの負担増に苦しむ企業の倒産が相次いだうえ、3月以降は新型コロナウイルス感染拡大の影響から、繁忙期の宴会等の売り上げを逸したことによる倒産もみられた。
    現金商売が多い飲食店では、4月後半より緊急事態宣言の対象が全国に拡大されたことを受け、資金繰りに困窮する企業が一段と増加している。デリバリーやテイクアウトへの対応で乗り切ろうとする企業は多いものの、時短営業や休業を余儀なくされ、とくに固定費負担の大きい繁華街や駅周辺にある店舗などはダメージが深刻化している。また、在宅勤務やオンライン学習の広がりを背景に、オフィス街や学生街にある店舗では業績回復の見通しを立てにくくなるケースなども想定され、飲食店の倒産は今後さらなる増加が懸念される。

    ■中小への支援進むも、倒産は緩やかに増加へ

    新型コロナウイルス感染拡大の影響で資金繰りに窮する中小企業への支援策として、金融機関は返済猶予等の条件変更対応をすでに進めているほか、手形・小切手等の支払い不能にともなう不渡り報告や銀行取引停止処分も当面猶予している。さらに、今月からは売り上げが減少した中小企業と個人事業主を対象にした持続化給付金の申請がスタート。また、これまで政府系金融機関に限られていた実質無利子・無担保での融資受付が民間金融機関でも始まり、官民挙げた資金繰り支援策が相次いで打ち出されている。
    とはいえ、倒産件数は4月時点で8カ月連続の前年同月比増加と、リーマン・ショック以降では最長の増加トレンドが続いており、収束の見えない未曾有の危機に直面し、感染拡大の影響に起因する倒産も、5月12日時点で計139件にのぼっている。4月は後継者難倒産(54件)が調査開始(2013年1月)以降で最多を更新。高齢の経営者も多いことなどから、事業承継問題の深刻化も顕著となっている。緊急事態宣言の延長で経済社会活動の停滞が長期化し、今後は業績回復や事業継続の展望も描きづらくなる企業が増えることから、社会構造や産業構造の変容などとも相俟って、倒産件数は緩やかな増加基調を辿るものと見込まれる。

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