レポート倒産集計 2017年上半期(4月~9月)

2017/10/10

倒産件数は4197件、8年ぶりの前年同期比増加
負債総額は7618億1800万円、4年ぶりの前年同期比増加
(タカタ(株)への求償債権判明額を含めると、2兆918億1800万円)

倒産件数

4197件

負債総額

7618億1800万円

前期比

件数

+2.5%

前期

4094件

負債

▲40.1%

前期

1兆2709億1300万円

前年同期比

件数

+3.4%

前年同期

4059件

負債

+12.8%

前年同期

6756億200万円

〈参考〉上記負債総額は、タカタ(株)の負債額を2017年6月26日発表の1826億3300万円として集計。取材等で判明した国内主要自動車各社のリコール費用に係る求償債権の合計を含めると、負債総額は2兆918億1800万円(前年同期比209.6%増、前期比64.6%増)

主要ポイント

  • ■2017年度上半期の倒産件数は4197件(前年同期4059件、前年同期比3.4%増)と、2009年度上半期以来、8年ぶりに前年同期を上回った。月別では、2017年5月(784件、前年同月比20.2%増)に2ケタ増となるなど、上半期6カ月中4カ月で前年同月を上回り、倒産動向に変化の兆しが見られる
  • ■負債総額は7618億1800万円となり、4年ぶりの前年同期比増加
  • ■業種別に見ると、小売業やサービス業など7業種中4業種で前年同期を上回った
  • ■「人手不足倒産」は54件(前年同期32件)、前年同期比68.8%の大幅増加
  • ■「返済猶予後倒産」は234件(前年同期204件)、前年同期比14.7%の増加
  • ■「チャイナリスク関連倒産」は47件(前年同期56件)、前年同期比16.1%の減少
  • ■地域別に見ると、9地域中6地域で前年同期を上回った。なかでも、近畿、四国の2地域は前年同期比2ケタの増加となったほか、東北は2年連続で前年同期を上回った
  • ■態様別に見ると、特別清算(147件)は前年同期比27.8%の大幅増加
  • ■上場企業倒産は、東証1部上場のタカタ(株)(民事再生法、6月)の1件
  • ■負債トップは、タカタ(株)(民事再生法、6月)の1826億3300万円

調査結果

■件数

ポイント8年ぶりの前年同期比増加

2017年度上半期の倒産件数は4197件(前年同期4059件、前年同期比3.4%増)と、2009年度上半期以来、8年ぶりに前年同期を上回った。月別では、2017年5月(784件、前年同月比20.2%増)に2ケタ増となるなど、上半期6カ月中4カ月で前年同月を上回り、倒産動向に変化の兆しが見られる。

要因・背景

業種別では小売業やサービス業など7業種中4業種で、地域別では近畿や四国など9地域中6地域が前年同期を上回り、幅広い業種・地域で倒産件数が前年同期比増加

■負債総額

ポイント4年ぶりの前年同期比増加

2017年度上半期の負債総額は7618億1800万円(前年同期6756億200万円)と、前年同期を12.8%上回り、4年ぶりの前年同期比増加となった。2半期連続で前年同期を上回ったのは、2008年度下半期以来8年半ぶり。


〈参考〉上記負債総額は、タカタ(株)の負債額を2017年6月26日発表の1826億3300万円として集計。取材等で判明した国内主要自動車各社のリコール費用に係る求償債権の合計を含めると、負債総額は2兆918億1800万円(前年同期比209.6%増、前期比64.6%増)

要因・背景
  • 1. 負債トップは、タカタ(株)(民事再生法、6月)の1826億3300万円
  • 2. 負債100億円以上の倒産は3件と、大型倒産は低位が続く

■業種別

ポイント7業種中4業種で前年同期比増加

業種別に見ると、7業種中4業種で前年同期を上回った。なかでも、運輸・通信業(154件、前年同期比11.6%増)は前年同期比2ケタの増加。また、サービス業(959件、同9.1%増)は2年連続、小売業(918件、同7.9%増)は4年ぶりに前年同期を上回った。一方、卸売業(604件、同4.3%減)など3業種は前年同期を下回った。

要因・背景
  • 1. サービス業は、ソフトウェア業(92件、前年同期比31.4%増)、広告代理業(34件、同41.7%増)などで前年同期を大きく上回った
  • 2. 小売業は、飲食店(360件、前年同期比37.9%増)、飲食料品小売(151件、同30.2%増)が前年同期比30%超の大幅増となり、全体を押し上げた

■主因別

ポイント「不況型倒産」の構成比は81.8%

主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は3434件(前年同期3391件)となった。構成比は81.8%(同83.5%)と、前年同期を1.7ポイント下回った。

要因・背景
  • 1.「人手不足倒産」は54件(前年同期32件)、前年同期比68.8%の大幅増加
  • 2.「返済猶予後倒産」は234件(前年同期204件)、前年同期比14.7%の増加
  • 3.「チャイナリスク関連倒産」は47件(前年同期56件)、前年同期比16.1%の減少

■規模別

ポイント負債5000万円未満の倒産が60.6%、2000年度以降で最高

負債額別に見ると、負債5000万円未満の小規模倒産は2543件となった。構成比は60.6%を占め、前年同期(2370件)の58.4%を2.2ポイント上回り、2000年度以降で最高。負債100億円以上の倒産は3件発生した。

要因・背景
  • 1. 負債5000万円未満の倒産は、小売業(687件、前年同期592件)、サービス業(671件、同593件)など4業種で前年同期比増加
  • 2. 負債100億円以上の倒産は、リーマン・ショック直後の2008年度下半期(75件)以降減少基調で推移し、2013年度下半期以降は1ケタ台の推移が続く

■地域別

ポイント9地域中6地域で前年同期比増加

地域別に見ると、9地域中6地域で前年同期を上回った。なかでも、近畿(1114件)、四国(73件)の2地域は前年同期比2ケタの増加となったほか、東北(177件)は2年連続で前年同期を上回った。一方、北陸(103件)など3地域は前年同期を下回った。

要因・背景
  • 1. 近畿は、製造業(127件)、サービス業(241件)の2業種が前年同期比30%超の大幅増加となり、2009年度上半期以来8年ぶりに増加に転じた
  • 2. 北陸は、新幹線開通にともなう経済効果などを受け、小売業(30件)やサービス業(16件)など4業種が前年同期を下回った

■態様別

ポイント特別清算が前年同期比27.8%の大幅増加

態様別に見ると、破産は3928件(前年同期3826件、前年同期比2.7%増)となった。会社更生法による倒産は3件発生。特別清算(147件)は前年同期比27.8%の大幅増加となった。

要因・背景
  • 1. 破産の構成比は、再建型手続きが困難な中小・零細企業の倒産が増加したことにより、2009年度上半期(92.1%)以降9年連続で9割超の高水準が続く
  • 2. 特別清算は、不採算子会社を整理する親企業や、第二会社方式と呼ばれる事業再生スキームを活用する企業が増えたことなどで、2半期連続の前年同期比増加

■上場企業倒産

2017年度上半期の上場企業倒産は、東証1部上場のタカタ㈱(民事再生法、6月)の1件となり、2015年度上半期以来2年ぶりの発生となった

■注目の倒産動向

人手不足倒産

2017年度上半期は54件(前年同期比68.8%増)、3年ぶりの前年同期比増加

後継者難倒産

2017年度上半期は164件(前年同期比15.9%減)、3年ぶりの前年同期比減少

返済猶予後倒産

2017年度上半期は234件(前年同期比14.7%増)、2年連続の前年同期比増加

今後の見通し

■2017年度上半期の倒産件数は8年ぶりに増加、負債総額は2ケタ増

2017年度上半期(2017年4~9月)の企業倒産は4197件(前年同期比3.4%増)となり、リーマン・ショックの影響が残る2009年度上半期(2009年4~9月)以来8年ぶりに増加した。業種別では、サービス業(959件、同9.1%増)が前年同期より80件、小売業(918件、同7.9%増)が67件それぞれ増加し、全体の倒産件数を押し上げる要因となった。また、倒産件数の約4割(41.3%)を占める「東京都」「大阪府」「愛知県」の3都府県の合計では1734件(同10.4%増)と2ケタ増となり、全国水準を上回るペースで推移している。

負債総額は7618億1800万円(同12.8%増)で、上半期では4年ぶりに前年同期を上回った。

■深刻化する人手不足、企業収益への厳しさ増す

人手不足が深刻化している。2017年度上半期の人手不足倒産は54件(前年同期比68.8%増)発生しており急増した。正社員の不足を感じている企業は48.2%で、なかでも情報サービスは70%に達する(帝国データバンク「TDB景気動向調査2017年9月度」)。さらに、非正社員においては飲食店で7割を超えるなど、小売業やサービス業といった業種を中心に人手不足が危機的な水準に上昇している業種もみられる。とりわけ、大企業では人手不足感の高まりを背景に採用を積極化しており、中小企業の採用活動にも影響が及ぶ要因となっている。こうしたなか、人材確保・定着を目的とした人件費上昇などにより企業収益に対する厳しさが増し、商品・サービスの新規開発にも影響を与えるケースが出てきた。人手不足を要因とする倒産は、今後も増加する可能性が高いと見込まれる。

■飲食店の倒産が増加、コスト負担増加で価格への転嫁も課題に

飲食店の倒産が増加している。2017年度上半期には360件(前年同期比37.9%増)発生しており、上半期としては2000年度以降で最多となった。低価格を訴求していたピザチェーン店の運営会社(遠藤商事・Holdings.、負債12億7821万円、東京都)が破産したほか、10月には新規出店に伴う借り入れ負担の増大や競争の激化を背景とした破産(ステークスなど2社、負債合計14億3700万円、東京都)などが発生している。10月以降、最低賃金が過去最大の引き上げ幅となり、今後は人手不足も相まって人件費の上昇に拍車がかかることが見込まれる。また、野菜など天候不順に伴う生育の遅れなどが価格を押し上げていることや、海外産の原料価格上昇によるコスト負担が増大するなか、価格への転嫁が課題となるケースも表れている。

■倒産件数は低水準での推移が続くものの、減少傾向に底打ちの可能性も

今後の経済動向では、東京五輪や震災復興関連など建設需要は継続すると予測される。こうしたなか、雇用・所得環境の改善を通じた個人消費の緩やかな改善が期待されるほか、輸出も堅調に推移することで設備投資も上向くとみられ、回復傾向が続く国内景気は倒産を抑制する要因になると見込まれる。しかし、人手不足に伴う企業活動の抑制に加えて、総選挙後の経済政策には不透明さが漂う。さらに、新規設備投資など積極的な事業展開の末、資金や人材の確保が追いつかなくなるなど、景気回復期に特徴的に表れるいわゆる“好況型倒産”も顕在化してきた。また、米国の金融政策変更や東アジア情勢など海外の政治経済動向は企業経営における不確定要素となろう。そのため、倒産件数は低水準での推移が見込まれるものの、減少傾向は底打ちする可能性がある。

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