倒産件数は602件、2カ月連続の前年同月比減少
負債総額は679億9600万円、2カ月連続の前年同月比減少
倒産件数 | 602件 |
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前年同月比 | ▲12.4% |
前年同月 | 687件 |
負債総額 | 679億9600万円 |
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前年同月比 | ▲35.8% |
前年同月 | 1059億1600万円 |

主要ポイント
- ■倒産件数は602件(前年同月比12.4%減)と、2カ月連続の前年同月比減少
- ■負債総額は679億9600万円(前年同月比35.8%減)と、2カ月連続の減少。比較可能な2000年以降では、2020年2月に次ぐ過去2番目の低水準
- ■負債額最大は、昌和自動車(株)(大阪府、破産)の約39億300万円
- ■業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を下回った。なかでも製造業(69件、前年同月比15.9%減)は、繊維製品製造や鉄鋼・金属製品製造などの減少が目立った。卸売業(62件)は、飲食料品卸や機械器具卸などで2ケタ減となり、前年同月比36.7%減
- ■主因別にみると、「不況型倒産」の合計は470件(前年同月比17.4%減)となり、2カ月連続の前年同月比減少
- ■負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は418件(前年同月比2.6%減)、構成比は69.4%を占める
- ■地域別にみると、9地域中6地域で前年同月を下回った。なかでも東北(21件、前年同月比50.0%減)は6県すべてで減少。近畿(162件、同11.0%減)は、サービス業を除く6業種で前年同月比減少
■件数・負債総額
倒産件数は2カ月連続の前年同月比減少
倒産件数は602件(前年同月比12.4%減)と、2カ月連続で前年同月を下回った。負債総額は679億9600万円(同35.8%減)と、2カ月連続の減少。比較可能な2000年以降では、2020年2月(663億7400万円)に次ぐ過去2番目の低水準となった。
また、ジャスダック上場の(株)Nuts(東京都、破産)が倒産し、2020年としては2社目の上場企業倒産が発生した。■業種別
不動産を除く6業種で前年同月比減少
業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を下回った。なかでも製造業(69件、前年同月比15.9%減)は、繊維製品製造(5件)や鉄鋼・金属製品製造(5件)などの減少が目立った。卸売業(62件)は、飲食料品卸(12件、同53.8%減)や機械器具卸(10件、同52.4%減)などで2ケタ減となり、前年同月比36.7%減。運輸・通信業(11件、同63.3%減)は、道路貨物運送(9件)が同47.1%減となった。 一方、不動産業(18件、前年同月比20.0%増)は唯一前年同月を上回った。
■主因別
「不況型倒産」は470件、構成比は78.1%
主因別にみると、「不況型倒産」の合計は470件(前年同月比17.4%減)となり、2カ月連続で前年同月を下回った。構成比は78.1%(同4.7ポイント減)を占めた。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
■規模別
負債5000万円未満の構成比69.4%
負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は418件(前年同月比2.6%減)、構成比は69.4%を占めた。負債5000万円未満の倒産では、サービス業(115件)が構成比27.5%(同1.6ポイント増)を占め最多、小売業(114件)が同27.3%(同1.1ポイント減)で続く。
資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産が417件(前年同月比10.7%減)、構成比は69.3%を占めた。■地域別
東北、九州など6地域で前年同月比減少
地域別にみると、9地域中6地域で前年同月を下回った。なかでも東北(21件、前年同月比50.0%減)は6県すべてで減少。近畿(162件、同11.0%減)は、サービス業を除く6業種で前年同月を下回った。九州(39件)は、福岡県(23件)や熊本県(3件)などで減少が目立ち、前年同月比32.8%減となった。
一方、北海道(13件)、四国(15件)の2地域は前年同月と同数、北陸(15件、前年同月比25.0%増)は唯一前年同月を上回った。■態様別
「破産」は561件、構成比93.2%
態様別にみると、破産は561件(構成比93.2%)、特別清算は19件(同3.2%)となった。
民事再生法は22件で、このうち21件を個人事業主が占めた。■景気動向指数(景気DI)
景気DIは31.6、景気の急落は下げ止まり
2020年9月の景気DIは4カ月連続で前月比プラス(1.9ポイント)の31.6となった。
9月の国内景気は、堅調な公共工事や連休中の外出増、緩やかに上向いた設備投資意欲などがプラス要因となった。自宅内消費の拡大やリモートワークの広がりによる住宅ニーズの高まりなどもみられた。また、5G(第5世代移動通信システム)やインターネット接続にともなう電気通信工事も活発だった。他方、新型コロナウイルスの影響が続くなか、景況感の持ち直しは業種により温度差が表れる傾向もみられた。
国内景気は、業種によって回復に差がみられたものの、持ち直しの動きが表れた。今後は横ばい傾向が続くと見込まれる
今後1年程度の国内景気は、新型コロナウイルスの感染拡大防止と経済活動再開のバランスが一段と重要性を増していくとみられる。新しい生活様式に対応した需要創出のほか、外食や旅行、レジャー関連などへの支出の持ち直しが期待される。また挽回生産や自国生産の拡大による設備投資などもプラス要因となろう。他方、新型コロナウイルスなどの感染状況次第では、消費者マインドの後退や雇用・所得環境の悪化、政府による活動自粛の再要請などが懸念される。また新政権の政策や海外経済の回復状況も注視する必要がある。
今後の景気は、良化・悪化要因を抱えながら、横ばい傾向が続くと見込まれる。今後の見通し
■件数・負債ともに減少、件数は2000年度以来の低水準に
2020年度上半期(2020年4~9月)の倒産件数(3956件、前年同期比5.2%減)は、比較可能な2000年度以降、上半期としては2000年度上半期(3349件)に次ぎ2番目に少なかった。負債総額は6012億5000万円と、2019年度上半期(5646億4800万円)に次いで過去2番目の低水準。業種別では、建設業(606件、前年同期比15.6%減)が2000年度以降の半期ベースで過去最少となるなど7業種中5業種が前年同期を下回った。他方、サービス業(961件、前年同期比0.1%増)と不動産業(123件、同0.8%増)はわずかに増加した。
■資金繰り支援が全体として奏功するも、リスケ後倒産は7年ぶりの高水準
新型コロナウイルス感染拡大の影響で業績不振に陥った中小企業などへの資金繰り支援策「持続化給付金」は10月5日までに約346万件(約4.5兆円)実行された。また、2020年度上半期における銀行の貸出金残高は前年同期比で大幅な伸びをみせた。各種給付金や実質無利子・無担保の制度融資などが奏功し、期中の企業倒産の抑制につながったとみられる。
他方、金融機関から借入金の返済条件変更(リスケジュール)を受けた企業のリスケ後倒産に目をむけると、2020年度上半期は265件と前年同期を3.9%上回り、上半期としては2013年度上半期(302件)に次ぐ高水準となった。従前より「リスケ」を利用していた企業が、コロナ禍で想定を超えて業績が落ち込むなか、資金繰りが追いつかずに倒産する事例が目立った。■上半期、飲食店の倒産は過去最多、ホテル・旅館は過去2番目の高水準
飲食店や宿泊業は、コロナ禍における人々の自粛行動で業績が大きく下振れした。飲食店の上半期の倒産件数は392件で上半期としては過去最多。半期ベースでは過去最多の2019年度下半期(409件)に次ぎ2番目となった。またホテル・旅館など宿泊業の上半期の倒産件数は前年同期比約2.4倍の73件で2011年度上半期(74件)に次いで過去2番目の高水準となった。今後は10月1日から東京発着の旅行が追加された「Go Toトラベル」や、飲食店などを支援する「Go To イート」の効果が倒産の抑制につながるか、新型コロナ感染状況の推移とともに注目される。
■資金繰り支援効果にも限界が、コロナ禍の潮流にあわせた経営改革が課題に
10月1日、事業承継時の経営者保証の解除策などを盛り込んだ「中小企業成長促進法」がスタートした。事業承継の円滑化による廃業リスク回避を含めて、コロナ禍における中小企業の事業継続や雇用維持の後押し効果が期待されている。労働力調査(総務省)によると、8月の完全失業者数は206万人(前年同月比49万人増)と7カ月連続で増加するなど雇用情勢は悪化傾向にあり、その他政策も含めて総合的な効果を見守りたい。中小企業の資金繰りを支える金融機関に目をむけると、地域内での金融機関のシェア拡大につながる「合併特例法」が今年11月に施行される。再編や経営統合を視野に入れ融資先企業の査定が進む過程では、延命措置を受けていた企業が法的整理等に移行し「リスケ後倒産」件数の上積みにつながる可能性もある。
新型コロナウイルスは現状、収束の見通しがたっていない。人々の消費行動や働き方、情報伝達手法などが抜本的に変化し、大きな揺り戻しが期待できない場合、企業活動を持続するうえでは従来のビジネスモデルの転換も含めた経営改革が急務になりつつある。返済猶予を含めた各種資金繰り支援策の効果には限界があり、借入金の返済能力を含めた収益力の回復に難航する企業が増加した場合、倒産件数が上昇トレンドに移行する可能性は否定できない。