レポート倒産集計 2021年 5月報

2021/06/08

倒産件数は461件、最初の緊急事態宣言下の反動増
負債総額は1664億4700万円、大型倒産の発生が押し上げる

倒産件数

461件

前年同月比

+60.1%

前年同月

288件

負債総額

1664億4700万円

前年同月比

+134.0%

前年同月

711億3100万円

主要ポイント

  • ■倒産件数は461件(前年同月比60.1%増)と、依然として件数自体は低水準なものの、前年同月比は反動増
  • ■負債総額は1664億4700万円と、大型倒産が発生し前年同月比134.0%の増加
  • ■負債額最大の倒産は(株)東京商事(東京都、特別清算)の約1004億8300万円
  • ■業種別にみると、全業種で前年同月を上回った。全業種での増加は2019年9月以来20カ月ぶり。建設業(84件、前年同月比133.3%増)は9カ月ぶりに増加。小売業(100件、同51.5%増)では飲食店(49件)が6カ月ぶりに増加。不動産業(29件)は5カ月連続の増加
  • ■主因別にみると、「不況型倒産」の合計は347件(前年同月比52.9%増)と、10カ月ぶりに前年同月を上回った。構成比は75.3%(同3.5ポイント減)を占める
  • ■負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は281件(前年同月比88.6%増)、構成比は61.0%を占める
  • ■地域別にみると、9地域中6地域で前年同月を上回った。関東(176件、前年同月比95.6%増)は、1都5県で増加。近畿(111件、同113.5%増)も、前年同月から倍増となった。一方、東北、四国、九州の3地域は、前月に引き続き減少
  • ■人手不足倒産は5件(前年同月比150.0%増)発生、9カ月ぶりの前年同月比増加
  • ■後継者難倒産は38件(前年同月比100.0%増)発生、2カ月ぶりの前年同月比増加
  • ■返済猶予後倒産は32件(前年同月比23.1%増)発生、2カ月ぶりの前年同月比増加


  • ■件数・負債総額

    前年同月からの反動で大きく増加

    倒産件数は461件(前年同月比60.1%増)と、過去最大の増加幅を記録し、10カ月ぶりの前年同月比増加。依然として件数自体は低水準なものの、前年同月は緊急事態宣言の発出に伴う法的整理手続き滞留による影響で倒産が抑制、当月はその反動増となった。
    負債総額は1664億4700万円と、(株)東京商事(東京都、特別清算、負債約1004億8300万円)の大型倒産が発生し前年同月比134.0%の増加となったものの、これを除いた負債総額は659億6400万円と5月では過去最小となる。

    ■業種別

    全業種で前年同月比増加

    業種別にみると、全業種で前年同月を上回った。全業種での増加は2019年9月以来20カ月ぶり。建設業(84件、前年同月比133.3%増)は9カ月ぶりに増加。小売業(100件、同51.5%増)では飲食店(49件)が6カ月ぶりに増加。小売の中では最大の増加幅となった。サービス業(110件、同64.2%増)では、ソフトウェア開発など広告・情報サービス業(34件)などで増加。また、不動産業(29件)は不動産仲介業(14件)などを中心に5カ月連続の増加。過去最少だった前年同月の反動もあり、前年同月比480.0%の大幅増となった。

    ■主因別

    「不況型倒産」は347件、構成比75.3%

    主因別にみると、「不況型倒産」の合計は347件(前年同月比52.9%増)と、10カ月ぶりに前年同月を上回った。構成比は75.3%(同3.5ポイント減)を占めた。

    ※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

    ■規模別

    負債5000万円未満の構成比61.0%

    負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は281件(前年同月比88.6%増)、構成比は61.0%を占めた。負債5000万円未満の倒産では、サービス業(80件)が構成比28.5%(同3.0ポイント増)を占め前年から倍増、小売業(64件)が同22.8%(同4.0ポイント減)で続く。
    資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産が316件(前年同月比69.0%増)、構成比は68.5%を占めた。

    ■地域別

    関東、近畿など6地域で前年同月比増加

    地域別にみると、9地域中6地域で前年同月を上回った。関東(176件、前年同月比95.6%増)は、1都5県で増加。特にサービス業(57件)や建設業(29件)では前年同月から倍増した。近畿(111件、同113.5%増)も、建設業(21件)を筆頭に、小売業(22件)やサービス業(26件)が大幅に増加し、前年同月から倍増となった。
    一方、東北(12件、前年同月比14.3%減)、四国(6件、同45.5%減)、九州(36件、同5.3%減)の3地域は、前月に引き続き減少となった。

    ■態様別

    「破産」は421件、構成比91.3%

    態様別にみると、破産は421件(構成比91.3%)、特別清算は28件(同6.1%)となった。
    民事再生法は12件で、うち7件を個人事業主が占めた。


    ■特殊要因倒産

    人手不足倒産

    5件(前年同月比150.0%増)発生、9カ月ぶりの前年同月比増加

    後継者難倒産

    38件(前年同月比100.0%増)発生、2カ月ぶりの前年同月比増加

    返済猶予後倒産

    32件(前年同月比23.1%増)発生、2カ月ぶりの前年同月比増加

    ※特殊要因倒産では、主因・従因を問わず、特徴的な要因による倒産を集計


    ■景気動向指数(景気DI)

    景気DIは37.5、上向き傾向が一服

    2021年5月の景気DIは前月比0.8ポイント減の37.5となり、4カ月ぶりに悪化した。
    5月の国内景気は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の期間延長や対象地域の追加・拡大などによる人流抑制を通じて、経済活動に大きく制限がかけられたなかでの推移となった。休業や営業時間の短縮などが個人消費の下押し要因となり、関連する川上産業を含む幅広い業種に悪影響を及ぼした。さらに、燃料価格の上昇がコスト負担を高めたほか、半導体不足にともなう一部企業の工場の稼働停止などもマイナス要因となった。他方、米国や中国など海外経済の回復で輸出が大きく増加したことに加え、自宅内消費の拡大がプラス材料となるなど、企業の景況感は「K字型回復」の傾向が一段と強まった。 国内景気は、感染拡大防止対策で人流抑制が図られたことで、4カ月ぶりに悪化した。

    今後は一時的に悪化するものの、徐々に上向く見込み

    今後の国内景気は、一部地域で6月20日まで延長された緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の継続・解除のタイミングなどが、経済活動に大きく影響するとみられる。特に、夏季賞与の減少や原材料価格の上昇などは下振れ要因となろう。また、半導体不足やコンテナ不足による生産の停滞などの供給リスクは悪材料となり得る。他方、ワクチン接種の拡大による経済活動の正常化や海外経済の回復、自宅内消費の増加、5Gの本格的普及などはプラス材料となろう。ただし、各社の業績に対する「K字型回復」の動向や東京五輪の行方などは注視する必要がある。
    今後は、下振れリスクも多く一時的に悪化するものの、徐々に上向いていくとみられる。

    今後の見通し

    ■5月の企業倒産 件数は10カ月ぶりに増加するも過去2番目の低水準

    2021年5月の倒産件数(461件、前年同月比60.1%増)は、10カ月ぶりに前年同月を上回った。新型コロナ対策の緊急事態宣言下で全国的に法的整理手続きが滞留し、過去最少を記録した2020年5月(288件)の反動から、過去最大の増加幅となった。他方、官民による中小企業支援策の効果は持続し、5月の件数としては過去2番目の低水準で推移した。
    負債総額(1664億4700万円、前年同月比134.0%増)は、2カ月ぶりに前年同月から増加した。元ホテル・レジャー施設運営の(株)東京商事(東京都、特別清算、負債約1004億8300万円)が令和最大の負債で、特殊要因として全体を押し上げた。

    ■脱炭素社会 注目の一方、再生可能エネルギー関連企業の倒産相次ぐ

    2050年までの脱炭素社会実現の目標などを盛り込んだ「改正地球温暖化対策推進法」が5月に成立した。国、自治体など行政をはじめ民間でも太陽光や風力発電所など再生可能エネルギー事業を促進する動きが一段と強まるとみられる。
    他方、新電力・再エネ業界では経営破たんが頻発している。5月には電力需給管理システムを手がける(株)パネイル(東京都、民事再生、負債約61億円)が経営破たんした。同社はAIやビッグデータで完全自動化した電力小売プラットホーム「パネイルクラウド」の開発・運用を手がけていたが、電力卸市場の価格変動リスクが大きく脆弱な財務状況となっていた。また、(株)F-Power(3月、会社更生、負債約464億円)、再エネ関連の(株)JCサービス(3月、民事再生、負債約153億円)グループなどの大型倒産が3月以降に頻発。今後、再エネ需要の増加が見込まれる一方、価格変動リスクなどを負う企業の経営体力が注目される。

    ■アパート建築市場、回復に向かうも建築コスト負担や物件差別化が課題

    投資用不動産向け不正融資の社会問題化後、厳格化された金融機関の融資審査を背景にアパートを含む貸家の新設着工戸数(国土交通省)は、2018年9月から2021年2月まで30カ月連続で前年同月を下回り長期低迷していた。今年3月には31カ月ぶりに前年同月を上回ったほか4月も回復傾向が続き、専門業者はこの好機を捉えることが重要になる。他方、海外の住宅需要拡大で輸入木材が高騰するなか、国産を含めた木材製品の価格上昇は避けられない状況にある。今後、在庫状況にもよるが、建築コスト負担が企業収益に与える悪影響が懸念される。アパート建築の(株)則武地所(神奈川県、破産)は建築コストを極端に抑え受注競争に終始したが、施工不良による事故が問題化し5月に経営破たんした。今後、空き家率の高止まりに加えて、品質・立地など賃貸物件の差別化が課題となるなか、受注回復と建築コスト増加の両面の影響を見守りたい。

    ■対面型業態の苦戦続く、借入金返済に向けた事業展望に注目

    新型コロナワクチンの国内大規模会場での接種が5月にスタートした。今後、接種拡大により経済の正常化が期待されるものの、足もとでは感染防止措置が大都市圏などで延長され、飲食店など対面型業態を中心に厳しい経営状況が続いている。
    企業の資金繰りを支えた実質無利子・無担保の特別融資について、融資ピークの昨年6月に返済猶予期間1年で導入した借入金の返済がスタートする。こうしたなか、企業の業績回復状況や取引金融機関の対応が注目される。官民をあげた支援策で企業倒産が抑制される水面下で、過剰債務を抱え、業態転換を含め事業の長期展望を描けない企業群が増加するなど、ひずみの強まりが懸念される。実際、各種支援策で対応しきれない新型コロナ関連倒産は、2020年2月に確認されて以降、今年5月には累計で1500件を超えており、発生ペースの加速なども考慮すると年末にかけて倒産件数の増加トレンドが鮮明になる可能性がある。

詳細はPDFをご確認ください