レポート倒産集計 2022年 9月報

2022/10/11

企業倒産、コロナ禍初の増加基調が続く
中小零細規模の倒産主体も、負債は大型化の兆し

倒産件数は583件、5カ月連続で前年同月比増加
負債総額は1350億3100万円、2年2カ月ぶりの2カ月連続1000億円超え

倒産件数

583件

前年同月比

+13.9%

前年同月

512件

負債総額

1350億3100万円

前年同月比

+47.7%

前年同月

914億2500万円

概況・主要ポイント

  • ■倒産件数は583件(前年同月512件、13.9%増)と、5カ月連続で前年同月比増加となった。特に、前年同月比は4カ月ぶりに 2ケタ増を記録するなど、2022年5月以降続くコロナ禍初の増加基調は加速化の様相を呈しつつある
  • ■負債総額は1350億3100万円(前年同月914億2500万円、47.7%増)と、4カ月連続で前年同月比増加。2020年7月以来2年2カ 月ぶりに2カ月連続で1000億円超えとなった
  • ■業種別にみると、7業種中4業種で前年同月比増加。特に建設業(前年同月94件→125件)で急増。このほか、サービス業(同134件→157件)は約13年ぶりの7カ月連続増加
  • ■主因別にみると、「不況型倒産」は421件、コロナ禍初の5カ月連続の前年同月比増加
  • ■業歴別にみると、業歴「30年以上」が最多、業歴10年未満の新興企業の増加も続く
  • ■地域別にみると、9地域中6地域で前年同月比増加。東北(前年同月12件→28件、133.3%増)は約16年ぶりの9カ月連続増加



■業種別

7業種中4業種で前年同月比増加、建設業で倒産急増

業種別にみると、7業種中4業種で前年同月から増加した。資材高騰や人手不足などの影響が残る建設業(前年同月94件→125件、33.0%増)は、一般管工事といった設備工事(同20件→35件)などが増加し、全体でも2002年7月以来約20年ぶりの5カ月連続2ケタ増。サービス業(同134件→157件、17.2%増)は、2009年8月以来約13年ぶりの7カ月連続増となった。小売業(同99件→108件、9.1%増)では、飲食店(同48件→34件)で大幅減が続くが、スーパーなど飲食料品小売(同10件→17件)が増加し、全体として7カ月ぶりに増加。
一方、運輸・通信業(同23件→22件、4.3%減)は、5カ月ぶりの20件台を記録し、2021年10月以来11カ月ぶりに前年同月比減少となった。

■倒産主因別

「不況型倒産」は421件、コロナ禍では初の5カ月連続の前年同月比増加

主因別にみると、「不況型倒産」の合計は421件(前年同月389件、8.2%増)で、2020年1月以来2年8カ月ぶりの5カ月連続増加となった。
最多は「販売不振」の416件(前年同月387件、7.5%増)で、構成比は71.4%(対前年同月4.2ポイント減)を占めた。また、「業界不振」(同2件→4件、100.0%増)も倍増した。
このほか、「放漫経営」(前年同月15件→25件、66.7%増)は2カ月連続の前年同月比2ケタ増となったほか、「その他の経営計画の失敗」(同27件→30件、11.1%増)は2カ月ぶりに増加。「経営者の病気、死亡」(同18件→30件、66.7%増)は、前年同月から60%以上の大幅増となり、6カ月ぶりに30件台を記録した。

※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

■倒産態様別

「清算型」倒産は562件、構成比は96.4%

倒産態様別にみると、破産と特別清算を合わせた「清算型」倒産は562件(前年同月498件、12.9%増)で、構成比は96.4%を占めた。民事再生法と会社更生法を合わせた「再生型」倒産は21件(同14件、50.0%増)で、5カ月連続の前年同月比増加となった。
破産は542件(前年同月468件、15.8%増)で、6カ月連続の前年同月比増加となった。破産を業種別にみると、サービス業が144件で最多で、建設業が122件で続く。負債額別でみると、負債5000万円未満の倒産が336件と、破産全体の62.0%を占める
一方、特別清算は20件(前年同月30件、33.3%減)と、2カ月連続の前年同月比2ケタ減。民事再生法は21件(同14件、50.0%増)で、このうち15件を個人事業主が占めた。

■規模別

負債「5億円未満」など中小零細規模で増加

負債規模別にみると、負債「5000万円未満」の倒産は356件(前年同月326件、9.2%増)、構成比は61.1%を占めた。また、負債「5億円未満」は122件(同101件、20.8%増)と、3カ月連続で前年同月比2ケタの増加となるなど、中小零細規模の倒産が目立った。
資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産が408件(前年同月332件、22.9%増)発生し、2021年3月以来1年6カ月ぶりに400件台を記録した。

■業歴別

業歴「30年以上」が最多、業歴10年未満の新興企業の増加も続く

業歴別にみると、業歴「30年以上」が168件(前年同月170件、1.2%減)で最多、構成比は28.8%(対前年同月4.4ポイント減)を占めた。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は3件発生した。
一方、「3年未満」(前年同月24件→36件、50.0%増)、「5年未満」(同35件→39件、11.4%増)、「10年未満」(同72件→99件、37.5%増)といった業歴10年未満の新興企業(同131件→174件、32.8%増)は、7カ月連続の前年同月比増加となった。
このほか、「15年未満」(前年同月75件→89件、18.7%増)では3カ月連続で前年同月比2ケタ増、「30年未満」(同73件→92件、26.0%増)も4カ月連続で増加した。

■地域別

東北は約16年ぶりの9カ月連続増加、近畿は6カ月ぶりに減少に転じる

地域別にみると、9地域中6地域で前年同月を上回った。東北(前年同月12件→28件、133.3%増)は、建設業や小売業などの増加もあり、2005年11月~2006年7月以来、9カ月連続の前年同月比増加を記録した。関東(同183件→228件、24.6%増)では、千葉(同16件→27件)が3年6カ月ぶりとなる5カ月連続の増加。北陸(同8件→27件、237.5%増)は、新潟(同4件→11件)や富山(同1件→8件)などの増加が全体の件数を押し上げた。
一方、近畿(前年同月142件→126件、11.3%減)は、兵庫(同38件→27件)が大幅に減少したこともあり、6カ月ぶりに前年同月から減少した。

■景気動向指数(景気DI)

2022年9月の景気DIは41.9、国内景気は小幅ながら2カ月連続で改善

2022年9月の景気DIは前月比0.5ポイント増の41.9となり、2カ月連続で改善した。
9月の国内景気は、原材料の価格高騰や円安傾向が続いた一方、新型コロナウイルスの新規感染者数が小康状態の影響を受ける形で推移した。例えば、10月以降の値上げを前に一部で駆け込み需要の発生がみられた。DX(デジタルトランスフォーメーション)需要が旺盛なほか、徐々に人流が戻りつつある個人向けサービス業の景況感が上向いた。他方で、原材料や電力価格の上昇や人手不足の再燃、食品を含む生活必需品の相次ぐ値上げ、自動車メーカーの減産・生産停止などはマイナス要因だった。国内景気は、一部で駆け込み需要も発生するなど、小幅ながら2カ月連続で上向いた。

今後は、おおむね横ばい傾向で推移

今後1年間程度の国内景気は、新型コロナの感染拡大にともなう社会状況から、経済活動の制限が徐々に解除され、社会全体が平時へと向かう力が景気を支える原動力になると見込まれる。DXなどデジタル需要の拡大や観光需要喚起策の実施、各種経済対策、対面型サービスを中心としたリベンジ消費などはプラス材料となろう。一方で、資源価格の上昇や円安の進行にともなう食品を含む生活必需品の値上げや人手不足の高まり、各国の金融引き締め政策による経済減速やロシア・ウクライナ情勢など、景気を下押しさせる国内外の要因も多い。今後は、地政学的リスクなど下押し要因も多いが、経済正常化に向けたプラス材料も表れ、おおむね横ばい傾向で推移すると見込まれる。

今後の見通し

■倒産は「増加局面」へ 4-9月期では3年ぶり増加、1社当たり負債額も8年ぶり高水準

2022年度上半期(4~9月)の企業倒産は3123件となり、歴史的な低水準となった前年同期(2938件)を上回り、年度上半期としては3年ぶりの増加に転じた。2022年9月の倒産も583件発生し、前月(493件)、前年同月(512件)をそれぞれ上回り、5カ月連続の前年同月比増加。企業倒産は長らく続いた減少基調から増加基調へと転じている。  
負債総額は1兆7657億9500万円(前年同期5784億7000万円)に急増し、5年ぶりの1兆円台となった。6月に民事再生法を申請した自動車部品大手のマレリホールディングス(埼玉、負債約1兆1856億2600万円)による影響が大きい一方で、この事例を除いた負債総額でも、前年同期を上回った点を注視する必要がある。倒産1社あたりの負債額平均(トリム幅上下1%)は約8000万円で、前年同期(7300万円/社)から増加。2014年度上半期以来8年ぶりに8000万円台へ到達した。大型倒産の発生は抑制されているものの、コロナ関連融資などを背景に膨らんだ借入金が押し上げる形で、倒産企業の負債額が足元でじりじりと増加している。

■「ゼロゼロ融資」終了、迫る返済 中小企業の1割超が今後の返済「厳しい・できない」

コロナ禍で中小企業の資金繰りを支えた「実質無利子・無担保融資(いわゆるゼロゼロ融資)」の新規受付が終了した。民間金融機関の受付は既に終了していたが、政府系金融機関の受付も9月末をもって終了。コロナ禍という非常時の企業支援として、ゼロゼロ融資をはじめ応急止血的な資本注入を用いた危機対応は、売上高が急減した中小企業の資金繰り緩和に貢献し、企業倒産の発生を大きく抑制した点でかつての「中小企業金融円滑化法」と重なる部分がある。  
こうしたなか、今後は「ゼロゼロ融資」の返済、なかでもゼロゼロ融資によって生じた中小企業の過剰債務問題について、その出口戦略策定が喫緊の課題となる。コロナ関連融資を借りたものの返済できずに倒産した「コロナ融資後倒産」は、22年4-9月で前年同期の約3倍となる202件が発生。また、コロナ関連融資を借り入れている企業約6000社のうち、約8割が返済に支障がない一方、1割超の企業では返済が難しい・返済できないなど『返済に不安』と回答したことが帝国データバンクのアンケート調査で判明している。長期化したコロナ禍に加え、円安やウクライナ危機など経営の足かせになる新たな事態が中小企業を襲うなか、円滑化法が実質終了となった翌年の19年度同様、返済原資が残っていない、今後の支払い負担に耐えきれないといった企業の「息切れ倒産」が続出しかねない懸念が残る。

■私的整理の要件緩和へ、「法的整理回避」の動きに注視 中短期的には倒産増続く

こうしたなか、岸田首相は9月30日の閣議で、「物価高・円安対応」「構造的な賃上げ」「成長のための投資と改革」を3本柱とする30兆円規模の総合経済対策を策定するよう関係閣僚に指示した。なかでも、新たに検討される「私的整理円滑化法案」は、全債権者の同意を必要としない迅速な手続きを優先した債務整理方針とされており、過剰債務を抱えた企業の財務正常化や、経営内容が極度に悪化する前に予防的な対応を促す効果が期待される。課題はあるものの、実現すれば最終手段たる法的整理が回避される動きが一時的に強まる可能性はある。  
現状の倒産件数はリーマン・ショック時ほどの絶対数はなく、金融機関の支援スタンスもリスケ対応を含め柔軟に行われている。ただ、「円安」「物価高」「人手不足」の三重苦で、企業を取り巻く収益環境は一段と厳しさを増している。中短期的な企業倒産は、コロナ禍でギリギリの経営を強いられてきた中小・零細企業を中心に、悪化する一方の経営環境に見切りやあきらめをつけた「息切れ倒産」が押し上げる形で、増加傾向が続くものとみられる。なかでも、既に大幅な倒産増加が目立つ建設・運輸・サービスの3業界の動向には注意が必要だ。

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