レポート倒産集計 2024年7月報

2024/08/08

倒産件数は920件 27カ月連続で前年同月を上回る
7月としては11年ぶりに900件超

概況・主要ポイント

  1. 倒産件数は920件(前年同月701件、31.2%増)と、27カ月連続で前年同月を上回り、2000年以降で最長となった。7月としては、2013年(952件)以来、11年ぶりに900件を超えた
  2. 負債総額は7769億3100万円(前年同月1804億7000万円、330.5%増)と、5カ月ぶりに前年同月を上回った。負債トップは、航空機製造を手がけていたMSJ資産管理(旧:三菱航空機㈱)の6413億円。MSJ資産管理を除いた負債総額は、前年同月を下回った
  3. 業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月173件→240件、38.7%増)が最多。増加率でみると、『製造業』(同63件→121件、92.1%増)が最も高く、2015年6月(130件)以来約9年ぶりに120件超となった
  4. 主因別にみると、『不況型倒産』の合計は763件となり、27カ月連続で前年同月を上回った
  5. 態様別にみると、「破産」は847件で最も多く、28カ月連続で前年同月を上回った
  6. 規模別にみると、負債「5000万円未満」(542件)が最多。資本金『個人+1000万円未満』(668件)は全体の72.6%を占め、過去最高だった2021年11月(72.6%)に並んだ
  7. 業歴別にみると、『新興企業』が286件で、12年ぶりに10カ月連続で200件を上回った
  8. 地域別にみると、2カ月ぶりに全9地域で前年同月を上回った。『近畿』(前年同月170件→251件、47.6%増)は、「滋賀」(同3件→20件、566.7%増)が大幅に増加し、2009年6月(32件)以来、約15年ぶりの高水準となった。最も増加率が高かったのは『中国』(同24件→52件、116.7%増)で、19カ月連続で前年同月を上回った

業種別

7業種中6業種で前年同月を上回る 『製造業』が約9年ぶりに120件を超える

業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月173件→240件、38.7%増)が最多、『建設業』(同139件→191件、37.4%増)、『小売業』(同152件→182件、19.7%増)が続いた。『サービス業』は、2009年6月(242件)に次いで、2000年以降で3番目に多かった。増加率でみると、『製造業』(同63件→121件、92.1%増)が最も高く、2015年6月(130件)以来約9年ぶりに120件超となった。

業種を細かくみると、増加件数が多かった『サービス業』では「広告・調査・情報サービス」(前年同月42件→81件)が大きく増加した。『建設業』では、「機械器具設置工事」などの「設備工事」(同28件→50件)が増加。『製造業』では、「食料品・飼料・飲料製造」(同10件→19件)が増加した。

倒産主因別

『不況型倒産』は763件 27カ月連続で前年同月を上回る

主因別にみると、「販売不振」が750件(前年同月570件、31.6%増)で最も多く、全体の81.5%(対前年同月0.2ポイント増)を占めた。内訳を業種別にみると、「サービス業」(前年同月128件→183件)が最も多く、「建設業」(同109件→170件)が続いた。「売掛金回収難」(同2件→6件、200.0%増)や「業界不振」(同1件→5件、400.0%増)を含めた『不況型倒産』の合計は763件(同575件、32.7%増)となり、27カ月連続で前年同月を上回った。

「放漫経営」(前年同月10件→13件、30.0%増)は、3カ月ぶりに前年同月を上回った。「経営者の病気、死亡」(同14件→22件、57.1%増)は、6カ月連続で20件超えとなった。

※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を『不況型倒産』として集計

倒産態様別

「破産」が847件、28カ月連続で前年同月を上回る

倒産態様別にみると、『清算型』倒産は883件(前年同月684件、29.1%増)となり、全体の96.0%(対前年同月1.6ポイント減)を占めた。『再生型』倒産は37件(同17件、117.6%増)発生し、4年7カ月ぶりに20件以上の増加となった。

『清算型』では、「破産」が847件(前年同月665件、27.4%増)で最も多く、28カ月連続で前年同月を上回った。「特別清算」は36件(同19件、89.5%増)と大幅に増加した。

『再生型』では、「会社更生法」が9件(前年同月0件)だった。寛一商店㈱などグループ企業9社の倒産により7カ月ぶりに発生した。「民事再生法」は28件(同17件、64.7%増)となった。このうち、個人が21件、法人で7件発生した。

規模別

負債「5000万円未満」が最多 「100億円以上」は4カ月ぶりに発生

負債額規模別にみると、「5000万円未満」が542件(前年同月411件、31.9%増)で最も多く、「1億円以上5億円未満」が189件(同150件、26.0%増)で続いた。「100億円以上」の倒産は4カ月ぶりに発生した。

資本金規模別にみると、『個人+1000万円未満』の倒産が668件(前年同月490件、36.3%増)となり、全体の72.6%を占め、過去最高だった2021年11月(72.6%)に並んだ。

業歴別

『新興企業』は286件、12年ぶりに10カ月連続で200件を上回る

業歴別にみると、「30年以上」が292件(前年同月221件、32.1%増)で最も多く、全体の31.7%(対前年同月0.2ポイント増)を占めた。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は15件(同5件、200.0%増)発生した。

業歴10年未満の『新興企業』(「3年未満」〈前年同月28件→39件、39.3%増〉、「5年未満」〈同55件→58件、5.5%増〉、「10年未満」〈同139件→189件、36.0%増〉)は286件(前年同月222件、28.8%増)となり、12年ぶりに10カ月連続で200件を上回った。内訳を業種別にみると、「サービス業」(同65件→90件、38.5%増)が最多、「小売業」(同54件→70件、29.6%増)、「建設業」(同50件→58件、16.0%増)が続いた。

地域別

2カ月ぶりに全9地域で前年同月を上回る 『近畿』では「滋賀」が過去15年で最多

地域別にみると、2カ月ぶりに全9地域で前年同月を上回った。最も件数が多かったのは、『関東』(前年同月252件→278件、10.3%増)で、特に「千葉」(同16件→32件、100.0%増)が倍増した。『近畿』(同170件→251件、47.6%増)は、「滋賀」(同3件→20件、566.7%増)が大幅に増加した。「滋賀」では小規模企業の倒産増加が目立ち、2009年6月(32件)以来、約15年ぶりの高水準となった。

最も増加率が高かったのは『中国』(前年同月24件→52件、116.7%増)で、19カ月連続で前年同月を上回った。次いで、『北海道』(同21件→35件、66.7%増)は、7カ月ぶりに30件台となった。このほか、『中部』(同91件→124件、36.3%増)は、「愛知」(同37件→63件、70.3%増)が1年5カ月ぶりに前年同月比70%を超えた。

  

注目の倒産動向-1

「自動車整備事業者」の倒産、休廃業・解散動向

自動車整備事業者の市場からの退場が過去最多ペース
深刻な整備士不足、若年層をどう取り込むかが課題

市場から姿を消す自動車整備事業者の数が過去最多ペースで推移している。2024年は7月までに倒産が27件、休廃業・解散が271件の計298件発生し、年間最多となった2020年(418件=倒産58件、休廃業・解散360件)を大きく上回る勢いで、休廃業・解散は通年で初の400件超えとなる可能性が高い。

休廃業・解散の増加の背景には、深刻な人手不足や後継者難、経営者の高齢化問題に加え、自動車の電動化・電子化の流れがある。2022年度の自動車整備士の有効求人倍率は5.02倍となるほか、帝国データバンクが全国の自動車整備事業者約1万7400社の経営者の年齢を調べたところ、経営者が60歳以上の事業者は全体の57.0%を占め、後継者不在率(2023年調査)は59.7%となっている。

車検・定期点検により安定的な需要はある業界だが、町の整備工場以外に自動車ディーラーや中古車販売チェーン、ガソリンスタンド、カー用品店、格安チェーンなど競争相手は数多い。さらに、自動車のコンピュータ制御の進歩に伴い、2021年10月からはチェックランプが点灯する機能のある全車両を対象に「OBD診断」が義務化されるなど、電子化への対応が必要となっている。ノウハウ、新たな設備の導入、人材育成が求められるため、代表が高齢で後継者がいなかったり、小規模事業者であったりする場合は対応が難しいケースが多く、事業継続を断念し、既存顧客を自動車ディーラーに引き継ぐ動きが出ているという。今後も、町の整備工場を中心とした自動車整備事業者の休廃業・解散は増加し続ける可能性が高く、若年層の整備士の確保、育成が急がれる。

ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産

2024年7月は69件発生 喪失総額は推計約982億円

「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は、69件(前年同月52件、32.7%増)発生し、前年同月を大幅に上回った。また、実際に融資額が判明した約500社のゼロゼロ融資借入額の平均は約5800万円となった。「不良債権(焦げ付き)」に相当するコロナ融資喪失総額は推計で約982億2100万円にのぼり、国民一人あたり800円超の負担が発生している計算になる。

人手不足倒産

2024年7月は31件発生 1-7月累計は過去最多ペース

「人手不足倒産」は、31件(前年同月14件、121.4%増)発生し、前年同月から倍増した。2024年1-7月累計は213件と、過去最多となった前年同期(124件)を大幅に上回るペースで推移している。業種別では、『建設業』(12件)と『サービス業』(10件)で全体の7割を占め、突出している。

注目の倒産動向-2

「ラーメン店」の倒産動向

「ラーメン店」倒産、前年から倍増ペース 過去最多を更新へ
原材料高騰が直撃 「ラーメン原価」は2年前から1割増の試算

ラーメン店の倒産ペースが加速している。2024年に発生した「ラーメン店」経営事業者の倒産は、7月までに49件発生した。前年(53件)からはほぼ倍増、過去最多の2020年(54件)を上回るペースで、初の年間100件台に到達する可能性が出てきた。

背景には、人件費や電気代など店舗運営コストの上昇に加え、3年間で1割上昇したラーメン原価の負担増が大きいとみられる。帝国データバンクが各種統計情報を基にラーメンで使用する原材料のトータルコストを初めて試算した「ラーメン原価(豚骨ベース、東京都区部)」をみると、2024年6月時点の指数は2022年平均比で113.5と、2年前から1割超の上昇となった。最も上昇した2023年10月(124.4)に比べると上げ幅は小さいものの、依然として高止まりが続く。特に、チャーシューや豚骨ガラで欠かせない豚肉や背脂は、枝肉ベースで前年比2割近く上昇した。麺や海苔、メンマなどの具材も不作や円安で価格が高騰するほか、スープにこだわる店では24時間加熱するケースも多く、光熱費の値上げによる負担も大きい。ただ、「味」を守るためにコストを下げることは難しく、原材料の値上げペースに耐えきれなくなった店や、値上げを実現しても客足が減少した店で、閉店や経営破綻を余儀なくされたケースは多いとみられる。

東京都心などではラーメン1杯=1000円の価格も多いものの、コロナ前から600~800円台で提供を続けているラーメン店では「物価高の影響が深刻」という声が聞かれる。「1000円の壁」が課題とされるラーメン業界は、他業界に比べて値上げが難しい特有の事情も抱えており、ラーメン文化を維持するための「適正価格」に向けた模索が続きそうだ。

後継者難倒産

2024年7月は53件発生 小規模企業が6割を占める

「後継者難倒産」は、53件(前年同月40件、32.5%増)発生し、2カ月ぶりに前年同月を上回った。業種別にみると、『サービス業』(13件)が最も多く、『建設業』(11件)、『製造業』(11件)、『小売業』(9件)が続いた。また、負債5000万円未満の小規模零細企業が32件で6割を占めた。

物価高(インフレ)倒産

2024年7月は98件発生 「値上げ難型」は17件

「物価高(インフレ)倒産」は、98件(前年同月67件、46.3%増)発生し、2024年5月(99件)に次ぐ高水準となった。業種別にみると、『建設業』(25件)が最も多く、『製造業』(19件)、『小売業』(19件)、『運輸・通信業』(13件)が続いた。また、十分な価格転嫁ができず経営破綻に至った「値上げ難型」の倒産は17件発生した。

今後の見通し

利上げによる家計および企業部門への影響を注視

日本銀行による金融政策の正常化に向けての動きをきっかけに、株式、外国為替の金融市場が荒れている。日銀が7月30~31日に開催した金融政策決定会合で、政策金利の0.25%への引き上げを決定し、リーマン・ショック直後の2008年12月以来、15年7カ月ぶりの水準に戻った。国債買い入れ額を現在の月6兆円程度から減額する方針も決め、保有国債を圧縮する量的引き締めに転換した。

今後は、金利引き上げによる家計および企業部門への影響に注視が必要だ。今回の追加利上げを受けて多くの金融機関は、住宅ローンの変動型金利や企業向け貸出金利に影響を与える「短期プライムレート」の引き上げを決めた。これから「金利のある世界」が本格的に始まることで、住宅ローン金利の上昇を通じて消費マインドを下押しするとともに、過剰債務とコスト増に苦しむ「ゾンビ企業」の事業意欲を低下させかねない。企業との利上げ交渉が広がるなかで、金融機関の企業選別もさらに進むだろう。追加利上げの影響が徐々に広がるにつれて、業績好調な大企業に比べ、手元資金に乏しい中小企業の倒産がさらに増加する恐れもある。

事業や雇用を存続させる法的整理スキーム活発化へ

帝国データバンクが7月30日に発表した『「事業存続型倒産」の実態調査(負債5億円以上)』によると、事業譲渡や自主再建等によって、倒産後も“事業”が存続した「事業存続型倒産」は2014年度以降の10年間で1549件判明。2023 年度は157件を数え、2年連続で増加した。過去10年の事業存続率は33.6%となり、倒産企業の3社に1社を数えた。会社消滅を前提とする破産でも、全体の11.9%が何らかの形で事業は存続している。「倒産」という言葉には「(会社や雇用が)すべてなくなる」とのネガティブなニュアンスが強いものの、「会社という従来の器はなくなるものの、(事業譲渡を前提とした第二会社方式等により)事業や雇用は生き残るケース」が一定数あることが、今回の調査であらためて浮き彫りとなった。政府が推し進める事業者の再生支援等のニーズの高まりを受け、法的整理を用いて“事業”や“雇用”を存続させるスキームが今後さらに活発化していきそうだ。

2024年の企業倒産、現状の前年比2割増ペースで1万500件前後へ

2024年の企業倒産の中心は負債1億円未満の中小・零細企業である状況に変化はないものの、10カ月ぶりに負債1000億円以上の超大型倒産が発生した。国産リージョナルジェット機「スペースジェット」の開発で知られたMSJ資産管理(旧:三菱航空機)は7月4日、負債6413億円を抱えて特別清算を申請。実体経済への影響は少ないが、戦後の大型倒産の中でみると、上場食品商社の東食(負債6397億円、97年12月会社更生法)を上回り17番目の負債規模となった。

このほか7月は、「なぎさ薬局」などの名称で全国に50店舗以上の調剤薬局を展開する寛一商店など9社(負債合計111億5000万円、会社更生法)、東証プライム上場のアサヒグループホールディングスの子会社として外食事業を展開していたアサヒフードクリエイト(負債89億9700万円、特別清算)など、負債数十億円クラスの大型倒産も多数発生した。

2024年1-7月の倒産件数は5807件となり、前年同期(4707件)を23.4%上回った。コロナ支援策が終了するなか、物価高や人手不足も加わり、年初からの企業倒産は前年を2割超上回るペースで推移している。今後も中小企業を取り巻く経営環境は厳しく、現在の発生状況が続けば、2024年の年間合計は1万500件前後(2023年:8497件)となる見通しである。

 

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2024年7月報(倒産動向データ編)