倒産件数は747件、4カ月連続の前年同月比減少
負債総額は1023億3000万円、6カ月連続の前年同月比減少
倒産件数 | 747件 |
---|---|
前年同月比 | ▲4.1% |
前年同月 | 779件 |
前月比 | +14.6% |
前月 | 652件 |
負債総額 | 1023億3000万円 |
---|---|
前年同月比 | ▲10.8% |
前年同月 | 1146億9400万円 |
前月比 | ▲3.5% |
前月 | 1060億9000万円 |

主要ポイント
- ■倒産件数は747件で、前月比で14.6%の増加、前年同月比では4.1%の減少となり、4カ月連続で前年同月を下回った。負債総額は1023億3000万円で、前月比3.5%の減少、前年同月比でも10.8%の減少となり、6カ月連続の前年同月比減少となったほか、6月としては2000年以降最小を記録した
- ■業種別に見ると、7業種中4業種で前年同月を下回った。なかでも製造業(94件、前年同月比27.7%減)は前年同月比2ケタの大幅減少となり、6カ月連続で前年同月比減少。一方、運輸・通信業(26件、同13.0%増)と小売業(168件、同 6.3%増)は4カ月ぶりに前年同月を上回ったほか、不動産業(22件、同22.2%増)は2カ月ぶりの前年同月比増加
- ■主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は633件(前年同月比1.7%減)
- ■規模別に見ると、負債5000万円未満の倒産は429件(前年同月比6.9%減)で、4カ月連続の前年同月比減少となった。資本金別では個人経営と資本金1000万円未満の倒産合計が472件(同3.1%増)で構成比63.2%を占めた
- ■地域別に見ると、四国(10件、前年同月比33.3%減)や東北(27件、同6.9%減)など9地域中7地域で前年同月を下回り、そのうち中部(113件、同5.8%減)と近畿(197件、同3.0%減)は4カ月連続で前年同月を下回った。一方、北陸(25件、同66.7%増)は前年同月比増
- ■負債トップは、(株)ヤマイ(熊本県、民事再生法)の71億円
調査結果
■件数・負債総額
ポイント倒産件数は747件、4カ月連続の前年同月比減少
倒産件数は747件で、前月比で14.6%の増加、前年同月比では4.1%の減少となり、4カ月連続で前年同月を下回った。負債総額は1023億3000万円で、前月比3.5%の減少、前年同月比でも10.8%の減少となり、6カ月連続の前年同月比減少となったほか、6月としては2000年以降最小を記録した。
要因・背景
件数…業種別では7業種中4業種で、地域別では東北や四国など7地域で前年同月比減少
負債総額…負債5000万円未満の倒産が構成比57.4%と、小規模倒産が多数を占めた
■業種別
ポイント製造業など7業種中4業種で前年同月比減少
業種別に見ると、7業種中4業種で前年同月を下回った。なかでも製造業(94件、前年同月比27.7%減)は前年同月比2ケタの大幅減少となり、6カ月連続で前年同月比減少。一方、運輸・通信業(26件、同13.0%増)と小売業(168件、同 6.3%増)は4カ月ぶりに前年同月を上回ったほか、不動産業(22件、同22.2%増)は2カ月ぶりに前年同月比増加となった。
要因・背景
- 1.製造業は、9地域中6地域で前年同月比2ケタの大幅減少となった。そのうち、近畿では3カ月連続で、中部では2カ月連続で前年同月を下回った
- 2.国内での衣料品の売り上げ低迷や、繊維業全体に過剰供給・低価格販売などの問題が指摘されるなか、織物・衣服・身のまわり品小売業は5カ月ぶりに前年同月を上回った
■主因別
ポイント 「不況型倒産」は633件、4カ月連続で前年同月を下回る
主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は633件(前年同月比1.7%減)となり、4カ月連続で前年同月を下回った。なかでも、販売不振(610件、同2.6%減)は3カ月連続で前年同月を下回った。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
要因・背景
- 1.「チャイナリスク関連倒産」は11件(前年同月比37.5%増)判明、2カ月連続の前年同月「チャイナリスク関連倒産」は11件(前年同月比37.5%増)判明、2カ月連続の前年同月 比増加。集計開始の2014年以降、2016年1月(17件)に次ぐ件数を記録 比増加。集計開始の2014年以降、2016年1月(17件)に次ぐ件数を記録
- 2.「円安関連倒産」は5件(前年同月比85.7%減)判明、10カ月連続の前年同月比減少
- 3.「返済猶予後倒産」は32件(前年同月比17.9%減)判明、5カ月ぶりの前年同月比減少
■規模別
ポイント負債5000万円未満の倒産は429件
規模別に見ると、負債5000万円未満の倒産は429件(前年同月比6.9%減)で、4カ月連続の前年同月比減少となった。資本金別では個人経営と資本金1000万円未満の倒産合計が472件(同3.1%増)で構成比63.2%を占めた。
要因・背景
- 1. 負債5000万円未満の倒産では、製造業(35件、前年同月比47.8%減)、サービス業(103件、同13.4%減)、不動産業(11件、同8.3%減)など7業種中4業種で前年同月比減少
- 2. 負債10億円以上の倒産は15件で、4カ月連続の前年同月比減、大型倒産は低水準が続く
■地域別
ポイント9地域中7地域で前年同月比減少
地域別に見ると、四国(10件、前年同月比33.3%減)や東北(27件、同6.9%減)など9地域中7地域で前年同月を下回り、そのうち中部(113件、同5.8%減)と近畿(197件、同3.0%減)は4カ月連続で前年同月を下回った。一方、北陸(25件、同66.7%増)は前年同月比増。
要因・背景
- 1. 東北は、全体では前年同月比減少となったものの、6県中3県は前年同月を上回った。なかでも福島県は2カ月連続、岩手県は6カ月ぶりに前年同月を上回った
- 2. 九州は、初の熊本地震関連倒産が発生したが((株)ヤマイ、熊本県、民事再生法)、金融機関の柔軟な対応もあり、前年同月と同水準となった
■主な倒産企業
負債トップは、(株)ヤマイ(熊本県、民事再生法)の71億円。以下、(株)エストゥ(旧:東昭建設(株)、栃木県、破産)の55億3400万円、(株)タスコシステム(東京都、破産)の48億5000万円、玉野レクリエーション総合開発(株)(岡山県、民事再生法)の43億円と続く。
■景気動向指数(景気DI)
景気DIは41.3、国内景気は悪化傾向が続く
2016年6月の景気DIは前月比0.5ポイント減の41.3となり3カ月連続で悪化した。
6月は、熊本地震や大手自動車メーカーの燃費データ不正問題の影響が続いた。そのようななか、24日には英国のEU離脱が決定され、企業の景況感を大きく悪化させる要因となった。また、住宅着工戸数は増加傾向にある一方、企業の設備投資意欲は先行き不透明感の高まりで慎重姿勢を強めているうえ、事務所や工場などの建築需要の停滞も建設関連の景況感を悪化させる要因となった。さらに、日本銀行によるマイナス金利導入の効果は一部業界にとどまっている。他方、熊本地震の影響で悪化した『九州』は3カ月ぶりに改善し、地震を契機に大きく落ち込んだ景況感は底を脱しつつある。国内景気は、国内外からの悪材料が相次いでおり、悪化傾向が続いている。
今後の国内景気は下振れ傾向を強めながら推移、「英国ショック」は当面継続
海外動向では、イギリスのEU離脱問題が大きな焦点となる。イギリスに進出している日本企業は1380社判明(帝国データバンク「イギリス進出企業実態調査」)しており、大企業を中心に欧州戦略の見直しを迫られよう。EU離脱問題に関して、米国の利上げ先延ばしや、安全資産として日本円への需要が高まることは円高要因となる。国内では、熊本地震からの早期の復旧・復興や、マイナス金利政策の効果により左右されるとみられる。個人消費は、消費税率引き上げの延期により駆け込み需要が期待できなくなったなかで、家計の所得上昇がカギを握る。また、マイナス金利は徐々に住宅投資や設備投資に波及すると期待されよう。今後の景気は、英国ショックが当面継続するとみられ、企業業績への影響も懸念されるなか、下振れ傾向を強めながら推移すると見込まれる。
今後の見通し
■倒産件数は4114件、7年連続で前年同期比減少
2016年上半期の企業倒産は4114件。前年同期(2015年1~6月:4400件)を6.5%下回り、7年連続の前年同期比減少となった。業種別では、2015年下半期から公共工事の減少が続いたことで建設業が7年ぶりの増加に転じたものの、生鮮食料品やインバウンド効果など市場環境が改善した食品関連の倒産が大きく減少し、全体の倒産件数を押し下げる一因となった。 一方、負債総額は7677億9600万円で、前年同期(9752億600万円)を21.3%下回った。負債1000億円以上の倒産が2期ぶりに発生しなかったうえ、負債100億円以上の倒産は日本ロジテック協同組合(電力共同購買事業、負債162億8200万円、4月)や、エンタープライズ自由ケ丘(宅地造成・分譲、同152億円、1月)など7件にとどまったことで負債総額が抑えられ、2000年以降で最小となった。
■イギリスのEU離脱決定、円高と欧州戦略再構築のコストが企業業績の圧迫要因に
6月24日(日本時間)、イギリスは国民投票によって欧州連合(EU)からの離脱(Brexit)を決定した。1973年の欧州共同体(EC)加盟以来、40年余りにわたる欧州単一市場からの決別である。その結果、円ドル相場はリーマン・ショック以降でみても1日の変動が最も大きく円高に振れ、2013年11月以来となる99円台まで急騰した。日本銀行が2013年4月に異次元の“量的・質的金融緩和”を発表した当時の水準に逆戻りした格好だ。主要企業が為替レートを111円台で想定しているなか、企業業績に悪影響を与えることが懸念される。こうしたなか、同日には麻生財務大臣と黒田日銀総裁は「財務大臣・日本銀行総裁共同談話」において、為替市場を含む金融市場の安定性を確保するほか、主要国の中央銀行が結んでいる通貨スワップ網の枠組みを活用し、必要に応じて対応を行うと発表した。また、25日には国際決済銀行(BIS)が「英国のEUにかかる国民投票の影響に関する声明」において、金融市場の適切な機能をサポートするために各国中央銀行の準備が整っていることを強調するなど、イギリスのEU離脱に伴う市場の動揺を抑えるための行動を矢継ぎ早に打ち出した。
現在、イギリスに進出している日本企業は1380社判明している(帝国データバンク「イギリス進出企業実態調査」)。そのなかには大陸欧州への足掛かりとしてイギリスに拠点を置いている企業も多く、EUの一員としてのイギリスを失うことは大企業を中心に欧州戦略の見直しを迫られよう。日本経済は再度の円高局面が長引けばデフレ脱却が遠のき、欧州地域でのビジネス再構築のコストを払うことになる。これまで高水準を維持してきた企業業績がアベノミクスの成果の1つであったが、今後、EU離脱問題は企業業績に下振れ要因として働くとみられる。
■国内外に下振れリスク抱え、倒産の減少幅は緩やかに縮小する可能性も
他方、国内に目を向けると、2016年上半期におけるアパレル関連業界の倒産は、製造・小売が減少する半面、卸売は増加に転じるなど、流通過程で明暗が分かれることとなった。さらに、経済産業省は、2016年6月に公表した報告書で、アパレル産業に関して、サプライチェーンの再構築など、業界特有の商取引慣行の見直しを含めて、今後、アパレル関連企業と政府が取り組む方向性に言及しており、一部の企業に偏っていたしわ寄せは緩和されることが期待されている。 上半期の「返済猶予後倒産」は194件判明した。しかしながら、報道によると、地方銀行が融資返済を長期間猶予している企業の約4割で経営改善計画を策定していないことが金融庁の調査で分かったという。2015年10月~2016年3月までに合計で約48万件の貸し付け条件変更等が実行されているが、経営改善計画の策定および実施は前提条件となる。
マクロ経済では熊本地震からの復旧・復興や、マイナス金利政策の効果が住宅投資や設備投資に波及するとみられる。また、消費税率の引き上げ延期により駆け込み需要が期待できなくなっており、個人消費の基盤となる所得の上昇が一段とカギを握る。また、米国の利上げ先延ばしや中国など新興国や資源国の低迷も円高要因となり、日本円が期せずして最強通貨となるなど、企業を取り巻く経営環境は厳しさを増している。倒産動向は減少傾向にあり低水準で推移しているが、国内外で負のショックが相次いでおり減少幅は縮小する可能性がある。