レポート倒産集計 2020年 10月報

2020/11/10

倒産件数は647件、3カ月連続の前年同月比減少
負債総額は669億4800万円、10月としては2000年以降最小

倒産件数

647件

前年同月比

▲17.6%

前年同月

785件

負債総額

669億4800万円

前年同月比

▲26.5%

前年同月

910億7900万円

主要ポイント

  • ■倒産件数は647件(前年同月比17.6%減)と、3カ月連続の前年同月比減少
  • ■負債総額は669億4800万円(前年同月比26.5%減)と、3カ月連続の前年同月比減少。10月としては比較可能な2000年以降最小
  • ■負債額最大は、新栄運輸(株)(神奈川県、民事再生)の約28億2700万円
  • ■業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を下回った。製造業(63件)は前年同月比43.2%減。小売業(164件、前年同月比15.9%減)は4カ月連続の減少。特に飲食料品小売(20件)は内食・中食需要の高まりを受け、4カ月連続の2ケタ減
  • ■主因別にみると、「不況型倒産」の合計は499件(前年同月比22.5%減)、構成比は77.1%を占める
  • ■負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は430件(前年同月比16.0%減)、構成比は66.5%を占める
  • ■地域別にみると、9地域中8地域で前年同月を下回った。東北(31件)は、卸売業が6カ月連続で減少、地域全体では前年同月比31.1%減。近畿(173件、前年同月比17.6%減)は6業種で減少。大阪は3カ月連続の減少
  • ■人手不足倒産は9件(前年同月比40.0%減)発生、2カ月連続の前年同月比減少
  • ■後継者難倒産は28件(前年同月比24.3%減)発生、2カ月ぶりの前年同月比減少
  • ■返済猶予後倒産は41件(前年同月比6.8%減)発生、2カ月連続の前年同月比減少


  • ■件数・負債総額

    倒産件数は647件、負債総額は669億4800万円

    倒産件数は647件(前年同月比17.6%減)と、3カ月連続の前年同月比減少。
    負債総額は669億4800万円(前年同月比26.5%減)と、3カ月連続の前年同月比減少。10月としては比較可能な2000年以降最小となった。

    ■業種別

    製造業、小売業など6業種で前年同月比減少

    業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を下回った。なかでも製造業(63件)は、飲食料品製造(10件)や機械器具製造(11件)が減少し、前年同月比43.2%減。また、小売業(164件、前年同月比15.9%減)は4カ月連続の減少。特に飲食料品小売(20件)は内食・中食需要の高まりを受け、4カ月連続の2ケタ減となった。
    一方、運輸・通信業(27件)は唯一前年同月を上回り、前年同月比80.0%増。なかでも道路貨物運送(18件)が大幅に増加した。

    ■主因別

    「不況型倒産」は499件、構成比77.1%

    主因別にみると、「不況型倒産」の合計は499件(前年同月比22.5%減)と、3カ月連続で前年同月を下回った。構成比は77.1%(同4.9ポイント減)を占めた。

    ※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

    ■規模別

    負債5000万円未満の構成比66.5%

    負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は430件(前年同月比16.0%減)、構成比は66.5%を占めた。負債5000万円未満の倒産では、小売業(124件)が構成比28.8%(同2.3ポイント減)を占め最多、サービス業(109件)が同25.3%(同0.3ポイント減)で続く。
    資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産が457件(前年同月比15.7%減)、構成比は70.6%を占めた。

    ■地域別

    東北、近畿など8地域で前年同月比減少

    地域別にみると、9地域中8地域で前年同月を下回った。東北(31件)は、卸売業が6カ月連続で減少。また、製造業なども減少し、地域全体では前年同月比31.1%減。近畿(173件、前年同月比17.6%減)は運輸・通信業を除く6業種で減少。府県別では滋賀、大阪、兵庫、和歌山で2ケタ減となっており、なかでも大阪は3カ月連続の減少となった 。
    一方、北海道(14件、前年同月比7.7%増)は唯一前年同月を上回った。

    ■態様別

    「破産」は595件、構成比92.0%

    態様別にみると、破産は595件(構成比92.0%)、特別清算は34件(同5.3%)となった。
    民事再生法は18件で、うち16件を個人事業主が占めた。


    ■特殊要因倒産

    人手不足倒産

    9件(前年同月比40.0%減)発生、2カ月連続の前年同月比減少

    後継者難倒産

    28件(前年同月比24.3%減)発生、2カ月ぶりの前年同月比減少

    返済猶予後倒産

    41件(前年同月比6.8%減)発生、2カ月連続の前年同月比減少

    ※特殊要因倒産では、主因・従因を問わず、特徴的な要因による倒産を集計


    ■景気動向指数(景気DI)

    景気DIは33.8、低水準ながら緩やかに持ち直し

    2020年10月の景気DIは5カ月連続で前月比プラス(2.2ポイント)の33.8となった。
    10月の国内景気は、安定した天候が続いたなか、人の移動も徐々に戻ってきたこともプラス要因となり、低水準ながら企業の生産・出荷や個人消費が緩やかに上向いた。また、堅調な公共工事に加え、自宅内消費が引き続き活発だった。観光関連では、各種施策による影響もあり、地方圏を中心に旅館・ホテルの設備稼働率や販売単価に回復傾向がみられた。他方、感染予防対策による売り上げ減少やコスト負担増のほか、民間設備投資に対する慎重姿勢が継続する動きもみられた。
    国内景気は、生産・出荷や個人消費が上向き、低水準ながらも緩やかに持ち直してきた。

    今後は緩やかに上向く見通し

    今後1年程度の国内景気は、新型コロナウイルスへの対策を進めながら、新しい生活様式に対応した需要の創出が期待される。またレジャー関連や海外からの訪日客の受け入れ再開など、個人消費の持ち直しが見込まれる。さらに挽回生産や自国生産の拡大による設備投資や輸出増加などもプラス要因となろう。他方、今後の感染状況により消費者マインドの後退や雇用・所得環境の悪化、政府による活動自粛の再要請など、下振れリスクも大きい。また海外の感染拡大による回復の遅れなども注視される。
    今後の景気は、新型コロナウイルスの感染拡大防止と経済活動再開のバランスに慎重に対応しながら、緩やかに上向いていくとみられる。

    今後の見通し

    ■10月の倒産件数は2000年以来の低水準、負債額は過去最小

    2020年10月の倒産件数(647件、前年同月比17.6%減)は、3カ月連続で前年同月を下回り、10月としては2000年10月(641件)以来の低水準となった。業種別では、製造業(63件、同43.2%減)、卸売業(80件、同27.9%減)など7業種中6業種が前年同月比で減少。他方、道路貨物運送業を中心に一般旅行業や旅行業代理店業も含む運輸・通信業(27件、同80.0%増)が前年同月を上回った。負債総額(669億4800万円、同26.5%減)は、3カ月連続で前年同月を下回った。負債30億円以上の倒産は発生せず、10月としては2019年10月(910億7900万円)を大きく下回り比較可能な2000年以降、最小となった。

    ■建設業の倒産は過去最低水準、ただし懸念材料も

    建設業の10月までの倒産件数(2020年1~10月)は1075件で、前年同期から7.9%(92件)減少した。建設業の年間倒産件数は2008年に3446件と2000年以降で最多を記録し、業種全体の27.2%を占めた。2009年(3441件)以降は減少基調をたどり2019年は1414件(構成比16.9%)に低下。2020年も減少傾向で推移しており、なかでも土木工事業の10月までの累計倒産件数は93件と、ピーク時の2008年同期(675件)から9割近く減少した。
    建設業許可業者数に目をむけると、2020年3月末時点で47万2473件(国土交通省)と、ピーク時の2000年3月末から2割ほど減少。建設市場は災害復旧やインフラ整備など土木関連の公共工事が高水準にあるほか、近時では物流や通信関連の設備投資意欲が高いことなどもあり、建設業の景況感はコロナ禍においても他業種よりも相対的に高い水準で推移している(TDB景気動向調査)。他方、不動産価格やオフィス賃料が低下している地域などもあり、同部門を兼業する業者の収益力や資金繰りへの影響が危惧される。新設住宅着工数(国土交通省)が9月まで15カ月連続で前年同月を下回っている状況や、ホテルや商業施設をはじめとした民間設備投資の低迷など業績下振れ要素も多い。先送りされている設備投資の回復状況や住宅ローン減税の特例措置延長動向などを見守る必要がある。

    ■資金繰り支援で倒産は抑制傾向、持続可能なビジネスモデルへの転換が課題に

    新型コロナ対策の入国制限措置について、11月1日から再入国時の待機が一定条件のもとで免除され、今後も状況に応じた緩和が検討されている。また、Go Toキャンペーン事業の旅行部門拡大に加え飲食部門も始まるなか、消費者態度指数(消費動向調査10月、内閣府)が2カ月連続で上昇するなど経済活動の持ち直しにむけた動きもみられる。
    他方、新型コロナは世界的な再拡大の懸念も含めて不確定要素が多い。感染防止にむけた行動自粛が企業業績に影響を与えるなか、2020年度業績を減収減益と見込む企業は56.0%と半数を超えた(「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(2020年9月)」帝国データバンク、2020年10月発表)。難局の長期化に対峙するため、劣後ローンや融資枠契約、コロナ対応融資の導入などで、財務や資金繰りを強化する動きが企業に広がるほか、従業員の削減、配置転換や給与水準の見直しに着手する事例も数多く表面化した。雇用情勢が厳しくなるなか、9月の完全失業者数は210万人(労働力調査、総務省)と、8カ月連続で前年同月を上回った。  
    インバウンド需要や個人消費がコロナ禍以前へ回復することは短期的には現実味に欠け、急場の資金繰り支援を受けた企業をはじめ、多くの企業は「新しい生活様式」対応を含めて持続可能なビジネスモデルへの転換を迫られている。現状、国をあげた各種資金繰り支援策などが奏功し、2020年1~10月の累計倒産件数は6694件と前年同期(6922件)と比較して減少傾向で推移しているものの、増加に転じるリスクをはらんだ展開が続くと見込まれる。

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