レポート倒産集計 2023年 12月報

2024/01/09

倒産件数、2023年で最も多く
20カ月連続で前年同月を上回る

倒産件数

806件

前年同月比

+36.1%

前年同月

592件

負債総額

1015億400万円

前年同月比

+47.7%

前年同月

687億1400万円

概況・主要ポイント

  • ■倒産件数は806件(前年同月592件、36.1%増)と、20カ月連続で前年同月を上回った。2023年3月(800件)を上回り、2023年で最多となった。コロナ支援策の縮小に加え、物価高等によるコスト増もあり、年末にかけて倒産が急増した
  • ■負債総額は1015億400万円(前年同月687億1400万円、47.7%増)と、2カ月ぶりに前年同月を上回った。負債トップは、美容脱毛サロン「銀座カラー」を展開していた(株)エム・シーネットワークスジャパンの約58億5700万円だった
  • ■業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月135件→220件、63.0%増)は過去3番目の高水準。『運輸・通信業』(同41件→49件、19.5%増)も、12月としては2008年12月(52件)に次ぐ2番目の高水準となった
  • ■主因別にみると、『不況型倒産』の合計は641件となり、20カ月連続で前年同月を上回った
  • ■態様別にみると、「破産」が752件で最も多く、3カ月連続で700件を上回った
  • ■規模別にみると、負債・資本金ともに小規模な企業の倒産が多数を占めた
  • ■業歴別にみると、「30年以上」が最多。『新興企業』は22カ月連続で前年同月を上回った
  • ■地域別にみると、全9地域で前年同月を上回った。『北海道』(前年同月16件→32件、100.0%増)、『東北』(同28件→51件、82.1%増)が2023年で最多件数となった
  • ■(株)プロルート丸光(大阪府、会社更生法)が倒産し、1年4カ月ぶりに上場企業倒産が発生


■業種別

7業種中6業種で前年同月を上回る 『サービス業』は過去3番目の高水準

業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月135件→220件、63.0%増)が最も多く、『小売業』(同121件→163件、34.7%増)、『建設業』(同102件→161件、57.8%増)が続いた。『サービス業』は、リーマン・ショック後の2009年6月(242件)、同年7月(227件)に次ぐ過去3番目の高水準。『運輸・通信業』(同41件→49件、19.5%増)も、12月としては2008年12月(52件)に次ぐ2番目の高水準となった。
業種を細かくみると、『サービス業』では、「広告・調査・情報サービス業」(前年同月49件→69件)、「医療業」(同4件→16件)が増加した。『小売業』では、「飲食店」(同48件→65件)と「飲食料品小売業」(同24件→34件)、『建設業』では、「設備工事業」(同20件→44件)の増加がそれぞれ目立った。

■倒産主因別

『不況型倒産』は641件、20カ月連続で前年同月を上回る

主因別にみると、「販売不振」が634件(前年同月450件、40.9%増)で最も多く、全体の78.7%(対前年同月2.7ポイント増)を占めた。内訳を業種別にみると、「サービス業」(前年同月97件→158件)が最も多く、「小売業」(同101件→146件)、「建設業」(同84件→132件)が続く。「業界不振」(同9件→3件、66.7%減)などを含めた『不況型倒産』の合計は641件(同462件、38.7%増)となり、20カ月連続で前年同月を上回った。
「経営者の病気、死亡」(前年同月24件→26件、8.3%増)、「その他の経営計画の失敗」(同15件→27件、80.0%増)は、それぞれ2カ月連続で前年同月を上回った。「放漫経営」(同12件→11件、8.3%減)は5カ月連続で前年同月を下回った。

※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

■倒産態様別

「破産」が3カ月連続で700件超え、「特別清算」は前年同月から倍増

倒産態様別にみると、『清算型』倒産の合計は787件(前年同月580件、35.7%増)となり、全体の97.6%(対前年同月0.4ポイント減)を占めた。『再生型』倒産は19件(同12件、58.3%増)発生し、2カ月ぶりに前年同月を上回った。
『清算型』では、「破産」が752件(前年同月562件、33.8%増)で最も多く、3カ月連続で700件を上回った。「特別清算」は35件(同18件、94.4%増)発生し、前年同月から倍増となった。
『再生型』では、「民事再生法」が18件(前年同月12件、50.0%増)発生した。個人事業主で12件、法人で6件発生した。「会社更生法」は9カ月ぶりに発生した。

■規模別

負債・資本金ともに小規模な倒産が多数を占める

負債規模別にみると、「5000万円未満」が505件(前年同月356件、41.9%増)で最も多く、「5億円未満」が155件(同116件、33.6%増)で続いた。中小・零細企業の倒産が目立つ一方、「50億円未満」が18件(同8件、125.0%増)と、前年同月から倍増した。
資本金規模別では、『個人+1000万円未満』の倒産が574件(前年同月422件、36.0%増)となり、全体の71.2%を占めた。

■業歴別

業歴「30年以上」が最多 老舗企業は前年同月を大幅に上回る

業歴別にみると、「30年以上」が256件(前年同月199件、28.6%増)で最も多く、全体の31.8%(対前年同月1.8ポイント減)を占めた。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は14件(同3件、366.7%増)と前年同月を大幅に上回った。
業歴10年未満の『新興企業』[「3年未満」(前年同月24件→32件、33.3%増)、「5年未満」(同37件→64件、73.0%増)、「10年未満」(同120件→159件、32.5%増)]は255件(同181件、40.9%増)と、22カ月連続で前年同月を上回った。内訳を業種別にみると、「サービス業」(同60件→89件、48.3%増)が最多、「小売業」(同41件→51件、24.4%増)、「建設業」(同25件→48件、92.0%増)と続いた。

■地域別

全9地域で前年同月を上回る 『北海道』『東北』が2023年で最多

地域別にみると、全9地域で前年同月を上回った。最も増加率が高かったのは『北海道』(前年同月16件→32件、100.0%増)で、3カ月連続で前年同月を上回ったほか、3月(31件)を上回り2023年で最多。次いで、6月(51件)と並んで2023年で最も多くなった『東北』(同28件→51件、82.1%増)、『中国』(同22件→37件、68.2%増)の順となった。
件数別では、『関東』(前年同月219件→270件、23.3%増)がトップ。「東京」(同106件→134件)、「千葉」(同16件→26件)、「群馬」(同6件→12件)が件数を押し上げた。このほか、『近畿』(同155件→204件、31.6%増)は、3年5カ月ぶりに2カ月連続で200件を超えた。

■景気動向指数(景気DI)

2023年12月の景気DIは44.9、小幅な改善続く

2023年12月の景気DIは前月比0.1ポイント増の44.9となり、3カ月連続で小幅の改善にとどまった。国内景気は、年末需要が堅調だったなかで、暖冬による季節商品の不振や自動車メーカーの不正問題などがマイナス要因となった。
12月は、インバウンド需要の継続やボーナス支給による堅調な年末需要がプラス材料だった。飲食業やスポーツ・娯楽施設などの観光産業が上向いたほか、外出機会の増加にともなう化粧品需要の拡大、一部業界で進む価格転嫁なども押し上げ要因となった。またインフルエンザの流行で医薬品関連は上向いた。他方、暖冬による雪不足や季節商品の販売不振は下押し材料となったほか、人手不足による機会損失の長期化なども悪材料だった。

■今後の見通しは横ばい傾向で推移

今後は、インバウンド需要の拡大が見込まれるなかで、賃上げの継続が焦点となろう。特に実質賃金の下落が続いている個人消費の行方がカギとなる。GXの推進や企業の業績改善、経済対策の実施などは押し上げ要因と言える。他方、2024年1月1日に発災した令和6年能登半島地震の影響が懸念される。人手不足の長期化や2024年問題に加えて、米欧中など海外経済の動きにも注視すべきあろう。金融政策の変更が予想されるなかで、インフレ率の動向のほか、金利など金融市場や金融システムへの影響が注目される。今後の国内景気は、持続的な賃上げや金利動向などを受け、横ばい傾向で推移するとみられる。

今後の見通し

■2023年の企業倒産は8年ぶりの水準、増加率もバブル崩壊後で最も高く

2023年の企業倒産は8497件に達し、前年(6376件)を2121件上回った。2年連続で前年を上回り、2015年(8517件)以来8年ぶりの水準となった。コロナ支援策の縮小に加え、物価高や人手不足等によるコスト増に耐え切れなくなった中小企業の倒産が急増した。前年からの増加率(33.3%)は、バブル崩壊後で最も高くなった。月別推移をみても、2022年5月から20カ月連続で前年同月を上回った。とくに12月(806件)は2023年で最多となり、中小・零細企業を中心に年後半にかけて増加基調を強めた。
負債総額は2兆3769億300万円で、前年(2兆3723億8000万円)からほぼ横ばい(0.2%増)となった。負債トップはパナソニック液晶ディスプレイ(9月特別清算、負債5836億円)で、全体の4分の1を占めた。上場企業など大企業では原則として私的整理スキームを活用する経営再建が定着しており、年間を通じて大型倒産は沈静化が続いた。

■「令和6年能登半島地震」による企業活動への影響注視

2024年元旦、石川県・能登半島を震源とする大地震が発生した。今回の「令和6年能登半島地震」による死者は1月9日に200人を超えた。被害の全容は明らかになっていないが、最大震度7を記録した能登地方を中心に、今後は企業活動への影響も無視できない。帝国データバンクが1月5日に発表した調査で、能登地方に本社を置く企業数は、2023年11月時点で4075 社を数えた。建設業のほか、伝統工芸や観光産業、エレクトロニクス産業でとくに影響が懸念される。
地元企業だけでなく、大手企業の工場進出もある。東日本大震災や平成28年熊本地震など過去の震災を振り返っても、直接的な被害を受けた企業だけでなく、取引先の被災や原材料の調達難など間接的な影響を受けた関連倒産も多発した。被災住民の安全確保や生活再建が最優先であることは言うまでもないが、復旧・復興が長期化すれば、これらのサプライチェーンを通じて全国の企業にも影響が広がりかねない。

■2024年はさらなる増加局面へ、「4月」以降に倒産リスク高まる可能性

2024年の企業倒産も増加局面が続くとみられる。とくに年度初めとなる「4月」以降にさらに加速する可能性がありそうだ。すでに深刻な人手不足と人件費高騰に直面する建設業や運輸業を中心に「時間外労働の上限規制」が4月から適用され、「2024年問題」の影響が本格化する。また、実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済開始を迫られる企業が昨年7月に続き、4月に最後のピークを迎える。返済負担に耐えかねて、年度末前後の節目に事業継続をあきらめる経営者がさらに増える可能性がある。
金融庁による金融機関向けの監督指針も今春に改定される。金融機関は資金繰り支援からの転換が求められるなかで、従来のような安易な返済条件の変更(リスケ)や借り換えに応じることは難しくなりそうだ。とくにリスケはコロナ禍以降、企業からの要請に対して金融機関は原則応じてきたが、融資先の「選別」が進むことで4月以降、金融機関が返済条件の変更に応じる比率が下がる可能性も十分ある。
「金利のある世界」に向けて、日銀が4月にもマイナス金利解除に動くとの見方も根強い。今後、ゼロ金利・利上げに進めば、新たな借り入れに苦慮する企業が増えることも考えられる。ゼロゼロ融資で膨らんだ過剰債務の返済もままならず、物価高や賃上げ等によるコスト増に苦しむ中小・零細企業にとっては死活問題となりかねない。帝国データバンクが2022年12月に発表した調査では、借入金の利払い負担を事業利益で賄えない『ゾンビ企業』は、2021年度で推定18万8000社を数える。倒産予備軍ともいえるゾンビ企業の数は、足元でさらに増加している可能性が高く、その動向は潜在的なリスク要因のひとつとして注視していく必要がある。

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2023年12月報・2023年報(倒産動向データ編)