レポート倒産集計 2016年上半期(1月~6月)

2016/07/08

倒産件数は4114件、7年連続の前年同期比減少
負債総額は7677億9600万円、4年連続の前年同期比減少

倒産件数

4114件

負債総額

7677億9600万円

前年同期比

件数

▲6.5%

2015年上半期

4400件

負債

▲21.3%

2015年上半期

9752億600万円

前期比

件数

▲0.1%

2015年下半期

4117件

負債

▲25.9%

2015年下半期

1兆356億200万

主要ポイント

  • ■2016年上半期の倒産件数は4114件(前年同期4400件、前年同期比6.5%減)と、7年連続で前年同期を下回った。直近のピークだったリーマン・ショック直後の2009年上半期(7023件)と比較すると41.4%減少
  • ■負債総額は7677億9600万円と、半期ベースでは2000年以降最小となった
  • ■業種別に見ると、7業種中5業種で前年同期を下回ったが、建設業は2009年上半期以来7年ぶりに前年同期比増加
  • ■「チャイナリスク関連倒産」は59件(前年同期39件)判明、前年同期比51.3%の増加
  • ■「円安関連倒産」は79件(前年同期231件)判明、前年同期比65.8%の減少
  • ■「返済猶予後倒産」は194件(前年同期192件)判明、前年同期比1.0%の増加
  • ■地域別に見ると、9地域中8地域で前年同期を下回り、なかでも中国(159件)、四国(69件)、九州(301件)の3地域は前年同期比2ケタの大幅減少
  • ■態様別に見ると、破産は3835件と、構成比93.2%を占めたほか、民事再生法(140件)は、2000年の施行以来、2016年4月に累計1万件を突破した
  • ■上場企業倒産は発生しなかった
  • ■負債トップは、日本ロジテック協同組合(破産、4月)の162億8200万円

調査結果

■件数

ポイント7年連続の前年同期比減少

2016年上半期の倒産件数は4114件(前年同期4400件、前年同期比6.5%減)と、7年連続で前年同期を下回ったものの、前年同期に対する減少幅は2014年下半期を境にして、3期連続で縮小した。直近のピークだったリーマン・ショック直後の2009年上半期(7023件)と比較すると41.4%減少している。

要因・背景

業種別では運輸・通信業など7業種中5業種で、地域別でも9地域中8地域が前年同期を下回るなど、幅広い業種・地域で倒産件数が前年同期比減少

■負債総額

ポイント4年連続の前年同期比減少、半期ベースでは2000年以降最小

2016年上半期の負債総額は7677億9600万円(前年同期9752億600万円)と、前年同期を21.3%下回り、4年連続の前年同期比減少となった。また、年上半期では2年連続で負債総額1兆円を下回った。半期ベースでは、リーマン・ショックが発生した2008年下半期(8兆8918億3800万円)の約12分の1の規模となり、2000年以降最小を記録した。

要因・背景
  • 1. 負債トップは、日本ロジテック協同組合(4月、破産、東京都)の162億8200万円
  • 2. 大型倒産は、金融機関の支援や再生スキームの多様化などを背景に低位での推移が続く

■業種別

ポイント7業種中5業種で前年同期比減少、建設業など2業種は前年同期を上回る

業種別に見ると、7業種中5業種で前年同期を下回った。なかでも運輸・通信業(135件、前年同期比25.0%減)、製造業(518件、同19.3%減)の2業種は前年同期比2ケタの減少となった。一方、建設業(815件、同1.6%増)とサービス業(896件、同0.1%増)の2業種が前年同期を上回り、建設業は2009年上半期以来7年ぶりに前年同期比増加となった。

要因・背景
  • 1. 底堅い生鮮食料品需要やインバウンド効果などが食品分野に波及し、食料品・飼料・飲料製造業(66件、前年同期比33.3%減)など飲食料品関連の業種では前年同期比減
  • 2. 建設業は、新設住宅着工戸数の増加など民需が好調な一方、公共工事が減少傾向にあるなか、受注競争激化や人手不足などの要因もあり、9地域中6地域で前年同期比増加。特に北陸(33件、前年同期比43.5%増)や東北(33件、同22.2%増)、北海道(32件、同14.3%増)の3地域で増加率が2ケタとなった

■主因別

ポイント 「不況型倒産」の構成比は83.6%

主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は3440件(前年同期3663件)となった。構成比は83.6%(同83.3%)と、前年同期を0.3ポイント上回った。

要因・背景
  • 1.「チャイナリスク関連倒産」は59件(前年同期39件)判明、前年同期比51.3%の増加
  • 2.「円安関連倒産」は79件(前年同期231件)判明、前年同期比65.8%の減少
  • 3.「返済猶予後倒産」は194件(前年同期192件)判明、前年同期比1.0%の増加

■規模別

ポイント負債5000万円未満の倒産が56.6%、上半期では2000年以降で最高

負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産は2327件(構成比56.6%)と、前年同期(2463件)の構成比56.0%を0.6ポイント上回り、上半期としては2000年以降最高。負債100億円以上の倒産は7件となり、上半期としては2000年以降2番目の低水準となった。

要因・背景
  • 1. 負債5000万円未満の倒産は、製造業(222件、前年同期285件)など5業種で前年同期比減少、建設業(452件、同432件)は2011年上半期以来5年ぶりに前年同期比増加
  • 2. 負債100億円以上の倒産は7件となり、リーマン・ショック直後の2009年上半期(71件)以降ほぼ減少基調で推移した

■地域別

ポイント9地域中8地域で前年同期比減少、北陸は唯一前年同期を上回る

地域別に見ると、9地域中8地域で前年同期を下回り、なかでも中国(159件)、四国(69件)、九州(301件)の3地域は前年同期比2ケタの大幅減少となった。そのうち、中国と四国は3年連続の前年同期比減少。一方、北陸は9地域中唯一前年同期を上回った。

要因・背景
  • 1. 中国では、自動車や造船など基幹産業の堅調さが地域にも波及し、四国では国土強靭化基本計画にともなう防災工事需要もあり、製造業や卸売業など幅広い業種で前年同期比減た
  • 2. 北陸は、サービス業(24件、前年同期比60.0%増)と建設業(33件、同45.3%増)の2業種が前年同期を大幅に上回った

■態様別

ポイント民事再生法は年上半期ベースで2000年以降最少

態様別に見ると、破産は3835件(前年同期4095件、前年同期比6.3%減)と、構成比93.2%を占めた。年上半期ベースでは2005年(3312件)以来11年ぶりに4000件を下回った。また民事再生法(140件)は、2000年の施行以来、2016年4月に累計1万件を突破した。

要因・背景
  • 1. 破産の構成比は、再建型手続きが困難な中小・零細企業の比率が高まったことにより、2007年上半期(90.3%)以降10期連続で9割超の高水準が続く
  • 2. 民事再生法は、再建スキームの多様化が進んだことで、2014年下半期以降4期連続で減少したほか、ピーク時(2001年下半期、555件)の約4分の1にとどまる

■上場企業倒産

2016年上半期は、上場企業倒産は発生しなかった。
上場企業の倒産は、2010年(9件)以降1ケタでの推移が続き、とくに2013年以降は企業業績の改善などを背景に、より低水準となっている。

■大型倒産

2016年上半期の負債トップは、日本ロジテック協同組合(破産、4月)の162億8200万円。以下、(株)エンタープライズ自由ケ丘(民事再生法、1月)の152億円、芝管財(株)(旧:サミオ食品(株)、特別清算、5月)の143億9400万円と続いた。

■注目の倒産動向

建設業 2016年上半期は815件発生、7年ぶりの前年同期比増

2016年上半期の建設業の倒産は815件(前年同期比1.6%増)となり、2009年上半期以来7年ぶりの前年同期比増となった。近年の建設業の倒産減少の背景には、国土強靭化基本計画に基づくインフラ整備や震災復興などの公共工事が中心となって下支えしてきたことが挙げられるが、2015年下半期以降の公共工事は前年同期割れが続いている。民間工事においても、2015年4月以降は増加傾向にあるものの弱含みで推移しており、公共工事への依存度が強い地方では、特に経営体力に乏しい中小・零細工事業者の淘汰につながる可能性がある。

チャイナリスク関連倒産 2016年上半期は59件判明、増加傾向続く

中国関連事業を手がけ、中国固有のリスクが要因となって倒産した「チャイナリスク関連倒産」は59件判明し、前年同期比51.3%の大幅増加となった。なかでも、繊維工業、繊維製品製造業などを含むアパレル関連産業※が26件(構成比44.1%)を占め、2014年の集計開始以降最高を記録した。中国での人件費高騰や為替変動、現地子会社や中国取引先企業の業績動向など、各種リスク要因が日本企業に与える影響が今後も懸念される。

今後の見通し

■倒産件数は4114件、7年連続で前年同期比減少

2016年上半期の企業倒産は4114件。前年同期(2015年1~6月:4400件)を6.5%下回り、7年連続の前年同期比減少となった。業種別では、2015年下半期から公共工事の減少が続いたことで建設業が7年ぶりの増加に転じたものの、生鮮食料品やインバウンド効果など市場環境が改善した食品関連の倒産が大きく減少し、全体の倒産件数を押し下げる一因となった。 一方、負債総額は7677億9600万円で、前年同期(9752億600万円)を21.3%下回った。負債1000億円以上の倒産が2期ぶりに発生しなかったうえ、負債100億円以上の倒産は日本ロジテック協同組合(電力共同購買事業、負債162億8200万円、4月)や、エンタープライズ自由ケ丘(宅地造成・分譲、同152億円、1月)など7件にとどまったことで負債総額が抑えられ、2000年以降で最小となった。

■イギリスのEU離脱決定、円高と欧州戦略再構築のコストが企業業績の圧迫要因に

6月24日(日本時間)、イギリスは国民投票によって欧州連合(EU)からの離脱(Brexit)を決定した。1973年の欧州共同体(EC)加盟以来、40年余りにわたる欧州単一市場からの決別である。その結果、円ドル相場はリーマン・ショック以降でみても1日の変動が最も大きく円高に振れ、2013年11月以来となる99円台まで急騰した。日本銀行が2013年4月に異次元の“量的・質的金融緩和”を発表した当時の水準に逆戻りした格好だ。主要企業が為替レートを111円台で想定しているなか、企業業績に悪影響を与えることが懸念される。こうしたなか、同日には麻生財務大臣と黒田日銀総裁は「財務大臣・日本銀行総裁共同談話」において、為替市場を含む金融市場の安定性を確保するほか、主要国の中央銀行が結んでいる通貨スワップ網の枠組みを活用し、必要に応じて対応を行うと発表した。また、25日には国際決済銀行(BIS)が「英国のEUにかかる国民投票の影響に関する声明」において、金融市場の適切な機能をサポートするために各国中央銀行の準備が整っていることを強調するなど、イギリスのEU離脱に伴う市場の動揺を抑えるための行動を矢継ぎ早に打ち出した。

現在、イギリスに進出している日本企業は1380社判明している(帝国データバンク「イギリス進出企業実態調査」)。そのなかには大陸欧州への足掛かりとしてイギリスに拠点を置いている企業も多く、EUの一員としてのイギリスを失うことは大企業を中心に欧州戦略の見直しを迫られよう。日本経済は再度の円高局面が長引けばデフレ脱却が遠のき、欧州地域でのビジネス再構築のコストを払うことになる。これまで高水準を維持してきた企業業績がアベノミクスの成果の1つであったが、今後、EU離脱問題は企業業績に下振れ要因として働くとみられる。

■国内外に下振れリスク抱え、倒産の減少幅は緩やかに縮小する可能性も

他方、国内に目を向けると、2016年上半期におけるアパレル関連業界の倒産は、製造・小売が減少する半面、卸売は増加に転じるなど、流通過程で明暗が分かれることとなった。さらに、経済産業省は、2016年6月に公表した報告書で、アパレル産業に関して、サプライチェーンの再構築など、業界特有の商取引慣行の見直しを含めて、今後、アパレル関連企業と政府が取り組む方向性に言及しており、一部の企業に偏っていたしわ寄せは緩和されることが期待されている。 上半期の「返済猶予後倒産」は194件判明した。しかしながら、報道によると、地方銀行が融資返済を長期間猶予している企業の約4割で経営改善計画を策定していないことが金融庁の調査で分かったという。2015年10月~2016年3月までに合計で約48万件の貸し付け条件変更等が実行されているが、経営改善計画の策定および実施は前提条件となる。

マクロ経済では熊本地震からの復旧・復興や、マイナス金利政策の効果が住宅投資や設備投資に波及するとみられる。また、消費税率の引き上げ延期により駆け込み需要が期待できなくなっており、個人消費の基盤となる所得の上昇が一段とカギを握る。また、米国の利上げ先延ばしや中国など新興国や資源国の低迷も円高要因となり、日本円が期せずして最強通貨となるなど、企業を取り巻く経営環境は厳しさを増している。倒産動向は減少傾向にあり低水準で推移しているが、国内外で負のショックが相次いでおり減少幅は縮小する可能性がある。

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