倒産件数は489件、4月としては過去最少
負債総額は799億9000万円、3カ月ぶりの前年同月比減少
倒産件数 | 489件 |
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前年同月比 | ▲35.5% |
前年同月 | 758件 |
負債総額 | 799億9000万円 |
---|---|
前年同月比 | ▲50.5% |
前年同月 | 1614億6700万円 |

主要ポイント
- ■倒産件数は489件(前年同月比35.5%減)と、4月としては過去最少
- ■負債総額は799億9000万円と、2020年では負債総額最大だった前年同月からの反動もあり前年同月比50.5%の減少
- ■負債額最大の倒産は(株)グリーンインフラレンディング(東京都、破産)の約128億円
- ■業種別にみると、7業種中6業種で2ケタ減と大幅に前年同月を下回った。卸売業(58件、前年同月比41.4%減)は10カ月連続で減少。2000年以降2番目の低水準となった。製造業(62件、同20.5%減)は、9カ月連続で減少。一方、不動産業(18件、前年同月比12.5%増)は全業種中で唯一増加
- ■主因別にみると、「不況型倒産」の合計は377件(前年同月比38.6%減)と、9カ月連続で前年同月を下回った。構成比は77.1%(同3.9ポイント減)を占める
- ■負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は297件(前年同月比32.7%減)、構成比は60.7%を占める
- ■地域別にみると、全地域で前年同月比2ケタ減となった。関東(185件、前年同月比21.3%減)は、9カ月連続の減少。近畿(126件、同35.1%減)は、全府県で2ケタ減。九州(34件、同40.4%減)は過去最長の連続減少期間が続く
- ■人手不足倒産は8件(前年同月比46.7%減)発生、8カ月連続の前年同月比減少
- ■後継者難倒産は36件(前年同月比33.3%減)発生、2カ月ぶりの前年同月比減少
- ■返済猶予後倒産は33件(前年同月比40.0%減)発生、3カ月ぶりの前年同月比減少
■件数・負債総額
4月としては2000年以降で最少
倒産件数は489件(前年同月比35.5%減)と、2000年以降5番目の低水準。また、4月としては過去最少となった。負債総額は799億9000万円と、2020年では負債総額最大だった前年同月からの反動もあり前年同月比50.5%の減少となった。
負債額最大の倒産は(株)グリーンインフラレンディング(東京都、破産)の約128億円。■業種別
6業種で前年同月比2ケタ減
業種別にみると、7業種中6業種で2ケタ減と大幅に前年同月を下回った。卸売業(58件、前年同月比41.4%減)は10カ月連続で減少。2000年以降2番目の低水準となった。製造業(62件、同20.5%減)は、中国市場の回復など輸出関連の好材料に後押しされたこともあり、9カ月連続で減少。その一方で、食料品製造業(17件)は新型コロナウイルス感染拡大の影響で飲食店向け業者の倒産が発生し、前年同月比54.5%増となっている。
一方、不動産業(18件、前年同月比12.5%増)は全業種中で唯一増加。他業種で減少傾向が続くなか、不動産業は4カ月連続の増加となった。■主因別
「不況型倒産」は377件、構成比77.1%
主因別にみると、「不況型倒産」の合計は377件(前年同月比38.6%減)と、9カ月連続で前年同月を下回った。構成比は77.1%(同3.9ポイント減)を占めた。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
■規模別
負債5000万円未満の構成比60.7%
負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は297件(前年同月比32.7%減)、構成比は60.7%を占めた。負債5000万円未満の倒産では、小売業(85件)が構成比28.6%(同1.8ポイント減)を占め最多、サービス業(80件)が同26.9%(同0.8ポイント増)で続く。
資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産が329件(前年同月比34.2%減)、構成比は67.3%を占めた。■地域別
全地域で前年同月比減少
地域別にみると、全地域で前年同月比2ケタ減となった。関東(185件、前年同月比21.3%減)は、9カ月連続の減少。群馬、埼玉、神奈川など5都県で減少し、なかでも東京都は9カ月連続の減少となった。近畿(126件、同35.1%減)は、全府県で2ケタ減。特に卸売業・小売業の2業種は8カ月連続で減少が続くなど、減少傾向が続く。九州(34件、同40.4%減)は2020年7月以降10カ月連続で減少、過去最長の連続減少期間が続く。
■態様別
「破産」は450件、構成比92.0%
態様別にみると、破産は450件(構成比92.0%)、特別清算は22件(同4.5%)となった。
民事再生法は17件で、うち10件を個人事業主が占めた。■特殊要因倒産
人手不足倒産
8件(前年同月比46.7%減)発生、8カ月連続の前年同月比減少
後継者難倒産
36件(前年同月比33.3%減)発生、2カ月ぶりの前年同月比減少
返済猶予後倒産
33件(前年同月比40.0%減)発生、3カ月ぶりの前年同月比減少
※特殊要因倒産では、主因・従因を問わず、特徴的な要因による倒産を集計
■景気動向指数(景気DI)
景気DIは38.3、製造業を中心に3カ月連続で改善
2021年4月の景気DIは前月比0.3ポイント増の38.3となり、3カ月連続で改善した。
4月の国内景気は、まん延防止等重点措置の適用地域拡大や3回目の緊急事態宣言の発出など、経済活動が抑制されたなかでの推移となった。プラス要因では、米国や中国など海外経済の回復傾向により輸出が大きく増加したほか、世界的な半導体不足にともない半導体素子製造を含む関連業界が高水準で推移した。さらに自宅内消費は引き続き拡大傾向が続いた。マイナス要因では、新型コロナウイルスの感染拡大にともない一部地域や業種で休業や営業時間の短縮など人流抑制が行われ、飲食店や旅館・ホテルなど個人向けサービスが大きく落ち込んだ。また自動車の減産や工場の稼働停止なども悪材料となった。 国内景気は、経済活動が抑制されたなかで、製造業を中心に3カ月連続で改善した。一時落ち込むも、緩やかな上向き傾向か
今後の国内景気は、まん延防止等重点措置の適用や緊急事態宣言の発出にともなう下振れリスクを抱えるなか、ワクチン接種の拡大による経済活動の正常化や海外経済の回復などもあり、緩やかに上向いていくと見込まれる。自宅内消費の拡大など新規需要の創出や5Gの本格的普及などはプラス材料となろう。他方、新型コロナウイルスの感染動向による下振れリスクも依然として大きい。さらに、半導体不足による自動車の減産や夏季賞与の減少、原材料価格の上昇、企業業績の業種間格差の拡大などは注視する必要がある。
今後の景気は、一時的な落ち込みもみられるが、緩やかに上向いて推移するとみられる。今後の見通し
■4月の企業倒産 件数・負債とも過去最低、件数は過去2番目の減少率
2021年4月の倒産件数(489件、前年同月比35.5%減)は、9カ月連続で前年同月を下回り、4月としては、2000年以降最少となった。前年同月からの減少率は、新型コロナ対策の緊急事態宣言(1回目)のなかで倒産の法的整理手続きが滞留した2020年5月(同55.6%減)に次いで過去2番目に大きい減少幅を記録した。また、連続減少期間も2013年8月~15年2月(19カ月連続)以来の長さとなっている。業種別の件数では7業種中6業種が前年同月比で減少。なかでも建設・製造・卸売の3業種の件数は4月としては過去最少を記録した。他方、不動産業(18件、同12.5%増)は前年同月を上回った。
負債総額(799億9000万円、前年同月比50.5%減)は、3カ月ぶりの前年同月比減少。4月としては初めて800億円を下回り2000年以降最小となった。4月の負債額最大の倒産は、再生可能エネルギー事業への投資仲介を手がけていた(株)グリーンインフラレンディング(東京都、破産、負債約128億円)。■無利子・無担保融資が企業倒産の抑制に寄与
2020年3月から展開されてきた実質無利子・無担保の特別融資について、民間金融機関の受付が今年3月末に終了した。コロナ禍の長期化を見据え、特別融資を導入して手元資金を確保する動きなどもあり、2021年3月時点の銀行・信金の貸出平残は前年同月比6.3%増の579兆9945億円と過去最高を記録、前年同月から34兆円以上増加した(貸出・預金動向 速報、日本銀行)。特別融資をはじめ国をあげた各種資金繰り支援策は、企業倒産発生の抑制に大きく寄与している。
アパレル販売のリデア(株)(11月、民事再生、負債46億円)をはじめ、コロナ禍で取引金融機関から資金繰り支援を受けたものの、売り上げが想定を超えて急激に落ち込んだことで、支えきれずに破たんするケースが中堅規模以上でも散見され、返済猶予後倒産の負債総額を押し上げた。■新型コロナ第4波到来 借入金の返済負担や業態転換対応に注目
新型コロナ対応の融資導入などを背景に、企業の月商に対する借入金の割合が平均5.0倍と前年(4.2倍)から拡大し、返済負担は高まりつつある(「新型コロナウイルスによる企業業績への影響調査(2020年度4-12月期決算速報)」帝国データバンク、2021年4月発表)。
このような状況下、4月に新型コロナ感染拡大「第4波」の到来が鮮明になった。長期化するコロナ禍において、企業業績は業態により明暗が分かれ、巣ごもり需要を捉え、最高益を更新する企業がある一方、飲食や航空などでは過去最大の赤字決算を強いられる企業も散見される。3回目の緊急事態宣言の発出など感染拡大防止策が講じられるなかで対面型業態を中心に苦戦を強いられ、飲食やレジャー、娯楽・イベント関連などは、ゴールデンウイーク期間の需要が2年連続で低迷。コロナ禍前のビジネスモデルへの揺り戻しが期待できない業態は多い。
これまでの緊急支援から、消費行動やライフスタイルの変化に対応した業態転換や新分野展開を促す事業再構築補助金(経済産業省)などへ、政府の追加支援策の軸足は移りつつある。原材料価格の高騰など収益性の足かせとなる要素も加わるなか、対応に難航する企業群が事業継続を断念していく可能性は否定できず、倒産件数が増加に転じる懸念は高まっている。