レポート倒産集計 2024年 10月報

2024/11/11

倒産件数は925件 2024年で2番目の高水準
30カ月連続で前年同月を上回る

概況・主要ポイント

  1. 倒産件数は925件(前年同月790件、17.1%増)となり、30カ月連続で前年同月を上回った。2024年では5月(1016件)に次いで2番目に多く、10月としては2013年(918件)以来の900件超えとなった
  2. 負債総額は1755億6800万円(前年同月3055億8400万円、42.5%減)となり、3カ月連続で前年同月を下回ったものの、2024年で2番目に多い負債額となった。負債額トップは、映像機器を製造していた船井電機㈱の469億6400万円
  3. 業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月187件→237件、26.7%増)が最多。『建設業』(同162件→201件、24.1%増)は、資材価格の高止まりや人手不足を背景に2013年10月(209件)以来の200件超えを記録した
  4. 地域別にみると、9地域中8地域で前年同月を上回った。『関東』(前年同月302件→317件、5.0%増)は、「千葉」(同25件→38件)の増加が全体を引き上げた。最も増加率が高かった『東北』(同39件→66件、69.2%増)は、5カ月ぶりに増加率が60%を超えた。2024年1-10月の累計では、24府県が2023年通年の件数を上回った
  5. 「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は75件発生し、前年同月を上回った
  6. 「人手不足倒産」は年間件数(287件)が、2023年(260件)を上回り過去最多となった
  7. 「後継者難倒産」は63件発生し、過去最多を更新した
  8. 「物価高倒産」は91件発生し、年間件数(795件)は過去最多を更新した

業種別

7業種中6業種で前年同月を上回る 『建設業』が11年ぶりに200件超え

業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月187件→237件、26.7%増)が最多、『建設業』(同162件→201件、24.1%増)、『小売業』(同165件→188件、13.9%増)が続いた。『建設業』は、資材価格の高止まりや人手不足を背景に2013年10月(209件)以来の200件超えを記録した。『運輸・通信業』(同35件→40件、14.3%増)は、5カ月ぶりに前年同月を上回った。
業種を細かくみると、『小売業』では「飲食店」(前年同月67件→91件)が、『サービス業』ではソフトウェア開発など「広告・調査・情報サービス」(同70件→94件)が、前年同月を大幅に上回った。

倒産主因別

『不況型倒産』は763件 「放漫経営」は約2年ぶり20件超え

主因別にみると、「販売不振」が752件(前年同月622件、20.9%増)で最も多く、全体の81.3%(対前年同月2.6ポイント増)を占めた。内訳を業種別にみると、「サービス業」(前年同月137件→188件)が最も多く、「小売業」(同139件→166件)が続いた。「業界不振」(同5件→6件、20.0%増)などを含めた『不況型倒産』の合計は763件(同635件、20.2%増)となり、30カ月連続で前年同月を上回った。
粉飾決算発覚やコンプライアンス違反などの「放漫経営」(前年同月13件→26件、100.0%増)は前年同月を上回り、約2年ぶりに20件を超えた。また、「経営者の病気、死亡」(同18件→39件、116.7%増)は、3カ月ぶりに前年同月を上回った。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を『不況型倒産』として集計

倒産態様別

「破産」が864件、3カ月ぶりに800件台を記録

倒産態様別にみると、『清算型』倒産は902件(前年同月765件、17.9%増)となり、全体の97.5%(対前年同月0.7ポイント増)を占めた。『再生型』倒産は23件(同25件、8.0%減)発生し、4カ月ぶりに前年同月を下回った。
『清算型』では、「破産」が864件(前年同月735件、17.6%増)で最も多く、3カ月ぶりに800件台となった。「特別清算」は38件(同30件、26.7%増)と、4カ月連続で前年同月を上回った。
『再生型』では、「民事再生法」が23件(同25件、8.0%減)発生し、4カ月ぶりに前年同月を下回った。このうち、個人が19件、法人が4件だった。

規模別

負債「5000万円未満」が最多 中小零細規模の倒産増加が目立つ

負債額規模別にみると、「5000万円未満」が554件(前年同月481件、15.2%増)で最も多く、「1億円以上5億円未満」が178件(同163件、9.2%増)で続いた。「50億円以上100億円未満」「100億円以上」はともに減少し、中小零細規模の倒産増加が目立った。
資本金規模別にみると、『個人+1000万円未満』の倒産が643件(前年同月551件、16.7%増)となり、全体の69.5%を占めた。

業歴別

業歴「30年以上」が296件で最多 老舗企業は16件発生

業歴別にみると、「30年以上」が296件(前年同月248件、19.4%増)で最も多く、全体の32.0%を占めた。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は16件(同11件、45.5%増)発生した。
業歴10年未満の『新興企業』〈「3年未満」(前年同月25件→29件、16.0%増)、「5年未満」(同59件→65件、10.2%増)、「10年未満」(同157件→193件、22.9%増)〉は287件(前年同月241件、19.1%増)だった。内訳を業種別にみると、「サービス業」(同74件→85件、14.9%増)が最多、「小売業」(同67件→71件、6.0%増) が続いた。

地域別

9地域中8地域で前年同月を上回る 24府県が2023年通年の件数を超える

地域別にみると、9地域中8地域で前年同月を上回った。最も件数が多かったのは、『関東』(前年同月302件→317件、5.0%増)で、「千葉」(同25件→38件)の増加が全体を引き上げた。『近畿』(同186件→225件、21.0%増)は、25カ月連続で前年同月を上回った。
最も増加率が高かったのは、『東北』(前年同月39件→66件、69.2%増)で、5カ月ぶりに増加率が60%を超えた。『四国』(同14件→21件、50.0%増)は、「高知」(同1件→6件)が前年同月から大幅に増加した。『九州』(同57件→84件、47.4%増)は、「福岡」(同34件→43件)や「長崎」(同1件→7件)の増加が目立った。
2024年1-10月の累計では、24府県が2023年通年の件数を上回った。

注目の倒産動向-1

「学習塾」倒産動向

学習塾の倒産、過去最多水準で推移
生徒数減少、大手との競争で再び増加傾向に

学習塾の倒産がコロナ禍をはさんで増加トレンドで推移している。2024年1-10月の倒産件数は32件で、前年同期(25件)比で28.0%増加。このままのペースで推移すると、通年の倒産件数は過去最多の2019年(39件)とほぼ同水準になる見通しだ。
倒産した32件を負債規模別にみると、1億円未満の小規模倒産が28件と大半を占めた。今年の負債額トップは、個別指導塾をピーク時に全国で約500校展開していた㈱個別指導塾スタンダード(福岡、6月民事再生法)の約60億3830万円で、2000年以降で2番目の負債規模となり、㈱教育春秋社(東京、9月破産、負債約10億円)が続いた。都道府県別でみると、東京(7件)が最も多く、大阪(6件)、神奈川(4件)が続き、16都府県で発生した。
学習塾の倒産は、少子化による生徒数の減少や大手との競争から2019年までは増加傾向だったが、コロナ禍では支援策もあって減少に転じた。ただ、主な学習塾利用層である6歳から18歳の人口は2013年(1488万人)から2023年(1351万人)の10年間で約9%減少(総務省「人口推計」)するなど、アフターコロナでも生徒数が回復せず授業料収入が減少し、倒産するケースが増加している。また、中堅クラスの学習塾では教室など設備投資のために借入金が膨らんでいるケースもあり、今後も少子化の深刻化やコロナ融資の返済負担による倒産リスクは拡大する公算が大きい。
なお、負債1億円以上の学習塾では、法的整理前に事業を他社に譲渡するケースも見受けられ、今後は倒産とともに事業譲渡などによって、業界再編が加速する可能性がある。

ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産

ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産は75件発生 1-10月累計は627件

「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は、75件(前年同月58件、29.3%増)発生し、前年同月を上回った。2024年1-10月累計は627件となり、前年同期(527件)を100件上回っている。また、「不良債権(焦げ付き)」に相当するコロナ融資喪失総額は推計で約1082億9300万円にのぼり、国民一人あたり約900円の負担が発生している計算になる。

人手不足倒産

人手不足倒産は29件発生 年間件数は過去最多を更新

「人手不足倒産」は、29件(前年同月29件)発生し、前年同月から横ばいとなった。2024年1-10月累計は287件と、2023年通年(260件)をすでに上回り、過去最多を更新している。従業員や経営幹部などの退職・離職が直接・間接的に起因した「従業員退職型」の倒産が8件発生し、2カ月連続で前年同月を上回った。

注目の倒産動向-2

「建設業」倒産動向

「建設業」の倒産急増、過去10年で最多ペース
深刻な「職人不足」で苦境 人件費の高騰も経営を圧迫

中小建設業の苦境が続いている。2024年に発生した「建設業」の倒産は、10月までに1566件となった。8年ぶりの高水準を記録した前年をさらに上回る急増ペースで推移し、通年では過去10年で最多を更新する見込みとなっている。
木材をはじめとした建築資材価格の高止まりに加え、建設現場での「職人不足」と求人難に伴う人件費の高騰が、中小建設業者の経営を圧迫している。帝国データバンクの調査では、人手不足感を抱える建設業の割合は2024年9月時点で69.8%にのぼり、高水準での推移が続いている。
都市部を中心に再開発事業が活発なほか、災害復旧工事などで工事需要が旺盛な一方、今年4月から残業時間の上限規制が導入され、建築作業を担う職人や現場監督の求人難が鮮明となっている。深刻な人手不足は建設現場における人件費の高騰にも影響し、2024年7月の現金給与総額は前年同月比で約10%上昇、全産業を大幅に上回る高い伸びが続いている。業務遂行に不可欠な資格を持つ従業員が転退職するなどして事業運営が困難になった「人手不足倒産」も前年を上回るペースで推移しており、「人がいない」ことで工期の延長や後ろ倒しといった悪循環が発生しやすい環境が、中小建設業の倒産件数を押し上げる大きな要因の一つとなっている。
足元では、戸建て住宅などの価格高騰や金利上昇を背景に「住宅着工が振るわない」といった企業の声もあり、業界環境は混沌としている。内外からの賃上げ圧力に晒されるなかで、賃金引き上げ余力に乏しい中小零細規模の建設業で倒産増が続く可能性が高まっている。

後継者難倒産

後継者難倒産は63件発生 過去最多を更新

「後継者難倒産」は、63件(前年同月45件、40.0%増)発生し、過去最多を更新した。2024年1-10月累計は455件と、過去最多だった前年同期(463件)に迫る件数となった。業種別にみると、『建設業』(23件)が最も多く、『製造業』(11件)、『サービス業』(11件)が続いた。負債1億円未満の小規模倒産が47件で7割を占めた。

物価高倒産

物価高倒産は91件発生 年間件数は過去最多を更新

「物価高倒産」は、91件(前年同月86件、5.8%増)発生し、2022年3月以降32カ月連続で前年同月を上回った。2024年1-10月累計は795件と、2023年通年(775件)をすでに上回り、過去最多を更新した。また、十分な価格転嫁ができず経営破綻に至った「値上げ難型」の倒産は15件発生した。

今後の見通し

「船井電機」 破産の影響を注視

国内外でその名を知られる“有名企業”の大型倒産が発生した。FUNAIブランドで知られるAV機器メーカー「船井電機」(大阪)は10月24日、破産に追い込まれた。ここ数年は新たな経営体制の下で、買収による多角化を進めていたが奏功せず、近時は取引先の警戒感も高まっていた。最後は、破産申請時に通常行われる取締役会の決議を経ず、創業家の取締役が単独で破産を申し立てる「準自己破産」という、この規模では異例の結末となった。
船井電機の負債は約469億6482万円にのぼり、今年2番目の大型倒産となった。トップは7月に特別清算処理された「MSJ資産管理」(旧:三菱航空機、負債約6413億円)だが、債権者は親会社のほぼ1社のみ。これに対して、今回の倒産は約500名にのぼる多数の一般債権者を巻き込んでおり、実体経済に与えるインパクトも大きい。現時点で連鎖倒産は発生していないが、当面はこれら国内外の取引先や関係企業への影響を注視したい。

資金繰り難に直面する企業増加

中小企業金融について、定期的に幅広い議論が行われる「中小企業政策審議会金融小委員会」(中小企業庁)が10月8日、半年ぶりに開催された。同日公表された配付資料によれば、2024年7月末までの実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の実績は、民間・政府系あわせて約45兆円にのぼる。リーマン・ショック時の資金繰り支援策「セーフティネット貸付」や「緊急保証制度」を上回る規模で支援がなされ、この結果、2022年度までは「倒産抑制」や「雇用維持」に一定の効果があった。
民間ゼロゼロ融資約136万件の返済状況(7月末時点)をみると、「完済」は全体の18%、残りの多くが「元金返済中」であり、今後の金利上昇局面で借り換え時に倒産がさらに増えるおそれもある。また、2024年度の信用保証協会の代位弁済率は、7月時点の推計で1.64%に上昇した。1%未満の2020~2022年度を経てコロナ前の水準に達しつつあり、コロナ前から業況が厳しかった先を中心に、資金繰り難に直面する企業が足元で増加している表れといえる。

2013年以来11年ぶり1万件台へ

2024年10月の企業倒産は925件発生し、前年同月(790件)を17.1%上回り、30カ月連続で前年同月を上回った。物価高、人手不足、ゼロゼロ融資の返済本格化も重なり、5月(1016件)に次いで今年2番目の高水準となった。今後の倒産動向に影響を与える懸念材料としては、①物価高・価格転嫁の動向、②人手不足・経営者の高齢化、③団塊世代が75歳以上となることで働き手不足が深刻化する「2025年問題」、④与党過半数割れに伴う不安定な政権運営・政策議論の停滞、⑤米国トランプ大統領再就任による政策スタンス変更の影響などが挙げられる。再び1ドル150円を突破した円安の影響も無視できない。
帝国データバンクが10月23日に発表した『最低賃金と採用時の最低時給に関する企業の実態調査』によれば、採用時の最低時給は平均1167円で、2024年改定の最低賃金を112円上回った。賃金増加による消費の活性化が期待される一方、企業にとっては人件費増に他ならない。賃上げによる収益悪化に耐えかねて、破綻に追い込まれる企業もさらに増えるだろう。
2024年1-10月の倒産件数の合計は8219件に達しており、現在のペースで推移すれば、2024年の年間合計は2013年以来11年ぶりの1万件台も視野に入る。

 

次回発表日は12月9日(月)13時30分を予定しております。

詳細はPDFをご確認ください
2024年10月報(倒産動向データ編)