レポート倒産集計 2013年 7月報

2013/08/08

倒産件数は952件、2カ月連続の前年同月比増加、今年最多を記録
負債総額は1796億1700万円、2カ月ぶりの前年同月比減少

倒産件数

952件

前年同月比

+1.0%

前年同月

943件

前月比

+5.1%

前月

906件

負債総額

1796億1700万円

前年同月比

▲74.9%

前年同月

7152億1200万円

前月比

▲54.0%

前月

3903億6500万円

調査結果

■件数

ポイント2カ月連続の前年同月比増加、今年最多を記録

倒産件数は952件(前月906件、前年同月943件)で、前月比は5.1%、前年同月比も1.0%の増加となり、2ヵ月連続で前年同月を上回った。5月(950件)を上回り、今年最多を記録した。

要因・背景
  • 1.負債5000万円未満の零細企業を中心に、製造、卸など5業種で前年同月を上回る

  • 2.全9地域中3地域で前年同月を上回り、とくに東北、中部の2地域は20%を超える大幅増

    ■負債総額

    ポイント2カ月ぶりの前年同月比減少

    負債総額は1796億1700万円(前月3903億6500万円、前年同月7152億1200万円)で、前月比は54.0%、前年同月比も74.9%の大幅減少となり、2カ月ぶりに前年同月を下回った。負債10億円以上の倒産は22件にとどまり、2011年10月、2012年7月、2013年2月の26件を下回り、2000年以降で最少となった。

    要因・背景
  • 1.負債トップは、商業施設開発の京都駅南開発特定目的会社(東京都)で204億円

  • 2.前年同月に発生した(株)クラヴィスなどの大型倒産の反動により大幅減少

    ■業種別

    ポイント7業種中5業種で前年同月比増加

    業種別に見ると、7業種中5業種で前年同月を上回った。なかでも、卸売業(148件、前年同月比21.3%増)は2ケタの大幅増加となった。一方、建設業(220件、同7.6%減)は10カ月連続の前年同月比減少となったほか、不動産業(19件、同48.6%減)も5カ月連続で前年同月を下回った。

    要因・背景
  • 1.卸売業…飲食料品(29件)や繊維・衣服・繊維製品(29件)で増加が目立つ

  • 2.建設業…消費税率引き上げ前の駆け込み需要により、内装工事(19件、前年同月比34.5%減)や木造建築工事(20件、同23.1%減)などが大幅減少

    ■主因別

    ポイント   「不況型倒産」の構成比83.1%

    主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は791件(前月722件、前年同月799件)となった。構成比は83.1%(前月79.7%、前年同月84.7%)で、前月を3.4ポイント上回ったものの、5カ月連続で前年同月を下回った。

    要因・背景
  • 1.「金融円滑化法利用後倒産」は52件判明、32ヵ月連続で前年同月を上回る

  • 2.「不況型倒産」は建設業(189件、前年同月比10.4%減)で大幅減少

    倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

    ■規模別

    ポイント負債5000万円未満の構成比54.3%、9カ月連続で過半数を占める

    負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産は517件で、前年同月比5.9%の増加となり、構成比は54.3%と9ヵ月連続で過半数を占めた。一方、負債100億円以上の倒産は2件発生、負債10億円以上の倒産は22件で2000年以降最少を記録。資本金別に見ると、個人経営と資本金1000万円未満の合計は542件、構成比は56.9%を占めた。

    要因・背景
  • 1.負債5000万円未満の業種別では、小売業(128件)が24.8%を占め全業種中トップ

  • 2.中小零細企業の経営改善は依然進まず、小規模倒産が高水準で推移

    ■地域別

    ポイント9地域中3地域で前年同月比増加

    地域別に見ると、東北(35件、前年同月比34.6%増)と中部(155件、同21.1%増)、関東(357件、同6.6%増)の3地域で前年同月を上回った。一方、6地域で前年同月を下回り、なかでも四国(16件、同27.3%減)、北陸(38件、同17.4%減)、近畿(211件、同10.6%減)の3地域は2ケタの大幅減少となった。

    要因・背景
  • 1.東北は、小売業(12件、前年同月比140.0%増)やサービス業(7件、同40.0%増)で増加が目立つ

  • 2.中部は、愛知では運輸や卸売、静岡では小売などを中心として大幅増加

    ■上場企業倒産

    上場企業の倒産は発生しなかった。2013年の累計は(株)東京カソード研究所(3月、民事再生法)、(株)インデックス(6月、民事再生法)の2件にとどまっており、前年を下回るペースで推移している。

    ■大型倒産

    7月の負債トップは、京都駅南開発特定目的会社(東京都、特別清算)の204億円。以下、(株)テクノ・シーウェイズ(東京都、破産)の154億円、(株)岐阜関スポーツランド(岐阜県、民事再生法)の86億5600万円と続く。負債100億円以上の大型倒産は2件にとどまっており、沈静化が続いている。

    ■景気動向指数(景気DI)

    景気DIは43.6、前月比1.1ポイント増と2カ月ぶりに改善

    2013年7月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比1.1ポイント増の43.6となり、2ヵ月ぶりに改善した。 7月の金融市場は安定した状況が続いたほか、平年より早い梅雨明けは夏の観光シーズンに好影響をもたらした。さらに、住宅に対する駆け込み需要が鉄鋼や建材・家具、家電など関連産業へと広がりをみせており、『建設』『不動産』『製造』『運輸・倉庫』など10業界中9業界、51業種中36業種が改善した。地域別では5ヵ月ぶりに全10地域が改善し、特に『北海道』は調査開始以来で初めて第1位となった。

    中小企業にもアベノミクス効果が現れる

    『建設』は復興需要に加えて、省エネや自然エネルギーに関わる設備投資などもあり、2カ月ぶりに改善した。しかし、人手不足による賃金上昇だけでなく、価格転嫁が進まないなかで、企業収益は引き続き厳しい状況にある。『不動産』は地価が上昇を示し個人の購買意欲が高まり、2カ月ぶりに改善した。株高の影響を受けてREIT関連や個人資産家向け収益物件の売買が好調だったほか、駆け込み需要などでマンション販売が堅調だった。また、これまで大企業を中心としていたアベノミクス効果が中小企業に現れてきた。 景気改善傾向のなか一時的な減少があったものの、国内景気は、円安による輸出増加に加え、内需関連では住宅販売も改善し、引き続き上昇傾向を示している。

    今後の見通し

    ■件数は2カ月連続の前年同月比増加で、今年最多を記録

    2013年7月の企業倒産は952件で、前年同月(943件)を1.0%上回り2ヵ月連続で前年同月比増加を記録するとともに、今年最多となった。なかでも東北は、小売業やサービス業の倒産が増加したことで、3ヵ月連続で前年同月比20%以上の大幅増加となっている。

    一方、負債総額は1796億1700万円で、前月(3903億6500万円)、前年同月(7152億1200万円)をともに大幅に下回った。負債100億円以上の大型倒産が京都駅南開発特定目的会社(負債204億円、特別清算、東京都)など2件のみの発生となったことに加え、負債10億円以上の倒産が2000年以降最少の22件となったことで、負債総額が抑えられた。

    ■「金融円滑化法利用後倒産」は52件判明し、32カ月連続の前年同月比増加

    7月の「金融円滑化法利用後倒産」は52件判明。前月比15.6%の増加となるとともに、前年同月比では26.8%の大幅増加を記録し、32ヵ月連続で前年同月比増加となった。金融庁が6月に公表した「中小企業金融円滑化法に基づく貸付条件の変更等の状況について(速報値)」によると、中小企業金融円滑化法施行以降、同法期限の今年3月末までに実行した貸付条件の変更等の件数は401万9733件。申込み件数に対する条件変更実行率は93.2%にも及んでいる。7月30日の全国財務局長会議で「中小企業金融円滑化法の期限到来後、中小企業等に混乱は生じていない」という見解が示された通り、今のところ、倒産急増などといった事態は発生していない。しかし、社数ベースで、約40万社が返済条件を変更したとみられ、その一部が毎月「金融円滑化法利用後倒産」として表面化してきている。しかも、その件数は明らかに増加傾向を示していることは見過ごせない。7月も、“リスケジュールの際、更新する度に条件が厳しくなり資金繰りに行き詰まった”企業が破産するなど、“消極的企業選別”の動きは続いている。

    ■金融支援が行き届かない中小零細企業を中心として、倒産は増加傾向を示す

    日本銀行は、4月、マネタリーベース(資金供給量)を2014年末までに2012年末の約2倍である270兆円にするなどの目標を掲げた「量的・質的金融緩和」を導入した。金融政策決定会合において、同施策の導入が決定されてから4ヵ月が経過、統計数字にその成果が現れ始めた。日本銀行の公表によると、2013年5月から7月まで3ヵ月連続でマネタリーベース(平残)は、前年同月比30%以上の大幅増加を記録している。また、全国銀行の貸出金(末残)の伸び率は、2012年中は前年同月比2%未満の推移であったのに対し、5月が前年同月比2.8%、6月が同2.9%、7月には同3.3%と3%台に達している(全国銀行協会調べ)。公表されている統計数字からは、政府の狙い通り、金融が好転し始めたと言えるであろう。しかし、2ヵ月連続の前年同月比増加を記録した倒産件数の推移や、倒産企業の多くが資金繰り難により倒産していることからして、現時点では、中小零細企業にまで資金が行き届いているとは考えにくい。 安倍首相が掲げる日本再興戦略において、地域金融機関はリスクマネーの供給に積極的に取り組むよう促されているが、この供給先は、地域経済を担う企業や成長性のある企業が想定されている。中小企業金融円滑化法に基づく返済条件変更等を受けていた企業や、構造的な問題を抱えた業界、消耗戦に陥っている産業分野などの中で業績不振状態から抜け出せない企業に対する金融支援は、今後も限定的であろう。つまり、金融が好転し銀行貸出が増えたとしても、「新陳代謝」の名のもとに、これらの中小零細企業は、淘汰される可能性が高い。また、円安に伴う輸入価格上昇や原燃料高、労務費高騰などといった倒産増加要因は依然として存在しており、こうした背景から、2013年下半期の企業倒産件数は、緩やかに増加していくと見込まれる。

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