レポート倒産集計 2024年度上半期報(4月~9月)

2024/10/08

倒産件数 6半期連続で増加
2年連続で全業種・全地域が前年同期を上回る

概況・主要ポイント

  1. 2024年度上半期の倒産件数は4990件(前年同期4208件、18.6%増)で、上半期としては2013年度以来の5000件に迫る件数を記録した。半期ベースでみると、2021年度下半期(2978件)以降、6半期連続の増加となった
  2. 負債総額は1兆3294億9200万円(前年同期1兆5868億3600万円、16.2%減)と、上半期としては3年連続で1兆円を超えたものの、負債が100億円超の大型倒産が10件から3件に減少したことも影響し、上半期としては2年連続で前年同期を下回った
  3. 業種別にみると、2年連続で全業種が前年同期を上回った。『サービス業』(前年同期1022件→1312件、28.4%増)が2000年度以降で最多となった。『小売業』(同885件→1048件、18.4%増)では、「飲食店」(同381件→439件)が最も多く、2000年度以降で最多となった。仕入れ価格の高騰や物価高が要因となり、食品関連分野の倒産が目立った
  4. 地域別にみると、2年連続で全地域が前年同期を上回り、上半期としては全地域が過去10年で最多となった。最も件数が多かったのは、『関東』(前年同期1552件→1759件、13.3%増)。次いで、『近畿』(同1033件→1259件、21.9%増)で、11年ぶりに1200件を上回った
  5. 「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は360件発生し、上半期で過去最多を更新した
  6. 「人手不足倒産」は163件発生し、上半期としては初の150件超えとなった
  7. 「後継者難倒産」は239件発生し、前年同期から減少したものの高水準で推移している
  8. 「物価高倒産」は472件発生し、過去最多を大幅に更新した

業種別

2年連続で全業種が前年同期を上回る 『サービス業』は2000年度以降最多

業種別にみると、2年連続で全業種が前年同期を上回った。『サービス業』(前年同期1022件→1312件、28.4%増)が最も多く、『小売業』(同885件→1048件、18.4%増)、『建設業』(同841件→921件、9.5%増)と続いた。『サービス業』は2000年度以降で最多となった。『小売業』は上半期としては2013年度(1021件)以来、11年ぶりに1000件を上回った。『運輸・通信業』(同217件→249件、14.7%増)は、上半期としては2年連続で200件を超えた。
業種を細かくみると、『小売業』では、「飲食店」(前年同期381件→439件)が最も多く、2000年度以降で最多となった。また、「飲食料品小売」(同142件→166件)と『卸売業』の「飲食料品卸売」(同124件→145件)も1割以上増加し、仕入れ価格の高騰や物価高が要因となり、食品関連分野の倒産が目立った。『建設業』では、職人の高齢化や人手不足によって「職別工事」(同384件→421件)が増加し、上半期としては11年ぶりに400件を上回った。

倒産主因別

『不況型倒産』の件数は4171件、11年ぶりに4000件を上回る


主因別にみると、「販売不振」が4100件(前年同期3312件、23.8%増)で最も多く、全体の82.2%(対前年同期3.5ポイント増)を占めた。2015年度上半期(82.5%)に次ぐ、過去2番目の高水準だった。「不良債権の累積」(前年同期8件→10件、25.0%増)や「売掛金回収難」(同17件→32件、88.2%増)などを含めた『不況型倒産』の合計は4171件(同3377件、23.5%増)で、11年ぶりに4000件を上回った。
「経営者の病気、死亡」(前年同期138件→159件、15.2%増)は2年ぶりに前年同期を上回った。「放漫経営」(同81件→64件、21.0%減)は3年ぶりに前年同期を下回った。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を『不況型倒産』として集計

倒産態様別

「破産」は4595件、2015年以来9年ぶりの4000件超

倒産態様別にみると、『清算型』倒産の合計は4854件(前年同期4093件、18.6%増)となり、全体の97.3%を占めた。『再生型』倒産は136件(同115件、18.3%増)発生し、上半期としては2年連続で前年同期を上回った。
『清算型』では、「破産」が4679件(前年同期3959件、18.2%増)で最も多く、上半期としては10年ぶりに4000件を上回った。「特別清算」は175件(同134件、30.6%増)と、上半期としては16年ぶりの水準だった。
『再生型』では、「会社更生法」が11件だった。寛一商店㈱などグループ9社の倒産により、上半期としては16年ぶりに10件以上発生した。「民事再生法」は125件(前年同期115件、8.7%増)発生した。個人が97件、法人が28件で、法人は2000年度以降で最少となった。

規模別

負債「5000万円未満」の倒産は3017件、中小零細企業の倒産が増加傾向

負債額規模別にみると、「5000万円未満」の倒産が3017件(前年同期2424件、24.5%増)で最多。総じて、『50億円以上』が前年同期を下回っている一方、『50億円未満』は792件増と大幅に上回り、中小零細企業の倒産が増加傾向を示した。
資本金規模別では、『個人+1000万円未満』の倒産が3556件(前年同期2868件、24.0%増)発生し、全体の71.3%を占めた。

業歴別

『新興企業』は1534件、上半期としては過去2番目の件数

業歴別にみると、「30年以上」が1589件(前年同期1355件、17.3%増)で最も多く、全体の31.8%を占めた。上半期としては、2013年度(1662件)以来11年ぶりに1500件を上回った。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は83件(同46件、80.4%増)に急増した。
業歴10年未満の『新興企業』[「3年未満」(前年同期174件→200件、14.9%増)、「5年未満」(同293件→354件、20.8%増)、「10年未満」(同763件→980件、28.4%増)]は1534件(前年同期1230件、24.7%増)と、上半期としては2009年度(1633件)に次ぐ過去2番目の件数となった。内訳を業種別にみると、「サービス業」(同377件→516件、36.9%増)が最も多く、「小売業」(同298件→391件、31.2%増)、「建設業」(同246件→272件、10.6%増)が続いた。

地域別

2年連続で全地域が前年同期を上回る 上半期としては全地域が過去10年で最多

地域別にみると、2年連続で全地域が前年同期を上回った。また、上半期としては全地域が過去10年で最多となった。最も件数が多かったのは、『関東』(前年同期1552件→1759件、13.3%増)で、「東京」(同795件→905件)が前年同期を大幅に上回った。次いで、『近畿』(同1033件→1259件、21.9%増)で、11年ぶりに1200件を上回った。『近畿』は全府県で前年同期を上回っており、「大阪」(同511件→668件)や「奈良」(同28件→59件)の増加が目立った。
最も増加率が高かったのは『中国』(前年同期174件→243件、39.7%増)で、リーマン・ショックが起きた2008年度上半期以来の増加率となった。次いで、『北陸』(同117件→150件、28.2%増)は、「新潟」(同41件→73件)が大幅に増加した。『東北』(同225件→276件、22.7%増)は、「福島」(同37件→59件)が東日本大震災直後の2011年度上半期(55件)を上回った。

注目の倒産動向 -1

「飲食店」倒産動向

飲食店の倒産、過去最多ペース
居酒屋、ラーメン店の競争がさらに激化

飲食店の倒産が過去最多ペースで発生している。2024年1-9月の倒産件数は650件となり、前年同期比で16.5%増加。このままのペースで推移すると通年の件数は、過去最多の2020年(780件)を上回って870件前後となる見通しだ。
650件を業態別にみると、居酒屋を主体とする「酒場、ビヤホール」が160件で最も多く、ラーメン店などの「中華料理店、その他の東洋料理店」(117件)、「西洋料理店」(90件)、「バー、キャバレー、ナイトクラブ」(70件)、「日本料理店」(53件)が続いた。深夜時間帯での営業店舗が多い「酒場、ビヤホール」と「バー、キャバレー、ナイトクラブ」を合わせると230件となり、全体の35.4%を占めた。また、都道府県別では、東京や大阪、兵庫、愛知など大都市圏で増加が目立っており、特に東京と大阪で全体の29.8%を占めた。
負債額最大は、ビヤレストラン、ビヤホールを展開していたアサヒフードクリエイト㈱(東京、7月、特別清算)で約89億9726万円。650件のうち、10億円以上の倒産は5件にとどまった一方、1億円未満の小規模倒産は562件を占めた。
「夫婦で1店舗を経営」といった小規模事業者が多い飲食店業界は、引き続き食材・光熱費の高騰や人材確保・維持のための賃上げなどで収益が圧迫されている。さらに、価格転嫁率(2024年7月調査)は36.0%と、全業種(44.9%)を大きく下回っている。アフターコロナで競争も激化するなか、値上げに踏み切るか否か、中小クラスを中心に倒産や廃業の増加は避けられないとみられる。

ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産

ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産は360件発生 上半期で過去最多

 「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は、360件(前年同期325件、10.8%増)発生し、上半期としては過去最多を更新した。実際の融資額が判明した約540社のゼロゼロ融資借入額の平均は約5800万円となり、「不良債権(焦げ付き)」に相当するゼロゼロ融資喪失総額は推計で約1028億300万円にのぼった。

人手不足倒産

人手不足倒産は163件発生 上半期としては初の150件超え

「人手不足倒産」は、163件(前年同期135件、20.7%増)発生した。上半期としては初めて150件を超え、通年で過去最多を更新するペースで推移している。業種別では、『建設業』(55件)が最も多く、2024年問題で人手不足が深刻な『運輸・通信業』(23件)と合わせて5割近くを占めた。

注目の倒産動向 -2

「米菓製造業」の倒産・休廃業解散動向

「コメ不足の余波」せんべいに波及 倒産・廃業が増加
過去最多ペースで推移、消費低迷にコメ価格高騰が影響

全国的なコメ不足と価格高騰の影響が、せんべいなどコメを原料とする菓子にも及んできた。コメを原料にせんべいやあられ、おかきなどを製造する米菓製造業の倒産や休廃業解散は9月までに計11件発生した。2022年通年の件数(5件)を上回る増加ペースで、過去最多となる可能性がある。
米菓メーカーでは、米菓需要の低迷と原料となる国産米の価格高騰によるコストアップの狭間で厳しい経営環境が続いている。総務省の調査によれば、せんべい(100g)の小売価格は2024年平均で149円・2020年比で2割超上昇し、過去10年で最高値を記録した。大手米菓メーカーを中心に、製造コストの上昇による値上げの実施が影響した。一方、せんべいへの家計支出は2020年比17%増にとどまり、購入枚数も推計で支出額当たり月2枚分(同7%)減少した。近年はお中元・お歳暮などの需要減が続いたことに加え、家計の節約志向による買い控えや他ジャンルの菓子へ需要が流出した影響も大きかったとみられる。足元では原料となる国産米の価格高騰に加え、安価な米国産など輸入米も円安で価格が上昇、生産現場における人手不足も重なって製造コストの上昇が続いており、「値上げしなければ経営が成り立たない」状況が続いている。
今後も、原料米の価格高騰などコスト高の局面が続くとみられるものの、中小米菓メーカーでは消費量拡大の糸口がみえないなかでの単純な値上げは難しい。これまでの「硬い」食感のせんべいから、「ふんわり」とした米菓の開発でファミリー層の支持を取り込むなど、消費者の生活スタイルに合わせた商品の提供などが、今後の米菓メーカーの成否を左右する可能性がある。

後継者難倒産

後継者難倒産は239件発生 前年同期から減少も高水準で推移 

「後継者難倒産」は、239件(前年同期287件、16.7%減)発生した。上半期としては3年ぶりに前年同期を下回ったものの、230件を超えており、依然高水準で推移している。業種別では、『建設業』(55件)が最多で、『小売業』(44件)、『サービス業』(43件)、『製造業』(41件)が続いた。

物価高(インフレ)倒産

物価高倒産は472件発生 過去最多を大幅に更新

物価高倒産は、472件(前年同期383件、23.2%増)発生した。年度半期で初めて470件を超え、過去最多を大幅に更新した。このペースで推移した場合、2024年度通年の件数は900件を超える可能性がある。業種別では、『建設業』(127件)が最も多く、『製造業』(93件)、『小売業』(87件)が続いた。

今後の見通し

『粉飾倒産』が急増、年間最多を更新へ

不適切な会計処理の末、経営破綻に追い込まれる『粉飾倒産』が急増している。2024年の粉飾倒産は9月までで74件判明し、集計を開始した2016年以降で同期間(1-9月)における最多を更新。このままのペースで推移すれば、年間最多件数(2019年・84件)を更新するのは確実視される。9月は、プラスチック代替の素材メーカー「環境経営総合研究所」(負債246億円、会社更生法、東京)や、太陽光発電事業の「旭機工」(負債52億8300万円、民事再生法、東京)などが、粉飾発覚による対外信用の失墜から倒産に追い込まれた。
足元では、金融機関の間で融資先の“バンクミーティング入り”に関する話題が飛び交っている。なかには、“世紀の大粉飾”として昨年話題を集めた「堀正工業」(2023年7月破産、東京)のように、多くの金融機関が粉飾決算を見抜けなかったケースも少なくない。ここ数年の粉飾決算の特徴のひとつとして、金融機関に借入金の返済猶予や追加支援を申し入れた際に発覚する事例が相次いでおり、アフターコロナの局面ではこうした動きが相次ぎそうだ。

“目利き力”厳しく問われる時代に

金融庁は8月30日、2024事務年度の金融行政方針を公表した。数ある方針の中で注目されるのが「事業者の持続的な成長を促す融資慣行の確立」の項目。事業の実態や事業から生み出される将来キャッシュ・フローといった事業性に着目した融資のあり方についてより一層の検討を行い、事業者の持続的な成長を促すという。まさに「言うは易く行うは難し」だが、金融機関だけでなく一般の事業会社でも、いわゆる“目利き力”が厳しく問われる時代になる。
主要行等向けモニタリング方針の中で記載された「必要に応じて個別債務者の自己査定や償却・引当等の状況を確認する」との一文にも注目したい。50前後の金融機関が欺かれた堀正工業の巨額粉飾事件のような、金融機関の信用リスク管理態勢に懸念を抱かせる案件が続くなかで、金融庁は個別債権(融資先)の資産査定も辞さない姿勢を示した。これにより、各金融機関がこれまで以上に企業を見る目が厳しくなるのは明らかだろう。「金利のある世界」が戻ってきたなかで、金融機関の選別からふるい落とされる企業が一定数出てくるに違いない。

2024年度・2024年ともに、年間倒産件数は11年ぶり1万件台へ

自民党の総裁選が9月27日に行われ、新総裁に石破茂・元幹事長が選ばれた。「追加利上げをするような環境にあるとは考えていない」との発言を機に一時的に円安が進むなど、金融市場にも少なからず影響を与えている。帝国データバンクが9月17日に発表した「企業が新政権に求める経済関連政策に関するアンケート」によれば、「中小企業向け支援策の拡充」「物価高対策」「個人消費の拡大策」が上位を占めた。岸田前政権の基本路線は踏襲されることになりそうだが、今後は、新総裁が打ち出す物価高対策を中心とする経済対策に注目したい。
2024年度上半期の企業倒産は4990件となり、前年同期(4208件)を18.6%上回った。物価高、人手不足、追加利上げなどで企業の経営環境が二極化するなかで、年度下半期も企業倒産が減少に転じる要素に乏しく、2024年度は11年ぶりの1万件台となる見通し。また、直近9月の倒産件数は741件を数え、29カ月連続で前年同月を上回った。年ベースでみても、2024年1-9月は7294件と前年同期(6128件)を19.0%上回っており、2024年の年間件数も11年ぶりの1万件台を視野に、このまま緩やかな増加が続く見通しである。

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2024年度上半期報・9月報(倒産動向データ編)