レポート倒産集計 2019年度

2020/04/08

倒産件数は8480件、2年ぶりの前年度比増加
負債総額は1兆2187億8900万円、2000年度以降最小

倒産件数

8480件

前年度比

+5.3%

前年度

8057件

負債総額

1兆2187億8900万円

前年度比

▲21.6%

前年度

1兆5548億900万円

主要ポイント

  • ■2019年度の倒産件数は8480件(前年度8057件、前年度比5.3%増)と、リーマン・ショック以降の過去10年間で最少だった前年度から、2年ぶりの前年度比増加に転じた
  • ■負債総額は1兆2187億8900万円(前年度1兆5548億900万円、前年度比21.6%減)と、2年連続で前年度を下回り、比較可能な2000年度以降で最小を更新
  • ■業種別に見ると、7業種中5業種で前年度を上回った。このうち小売業(1990件)は、前年度比8.9%の増加。飲食店(784件)は過去最多を更新
  • ■主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は6723件(前年度比5.0%増)となった。構成比は79.3%(同0.1ポイント減)を占める/li>
  • ■負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産は5283件(前年度比6.7%増)となった。構成比は7年連続で上昇し、過去最高の62.3%(同0.9ポイント増)を占める
  • ■地域別に見ると、9地域中7地域で前年度を上回った。なかでも関東(3044件、前年度比5.1%増)は2009年度以来10年ぶりに前年度を上回った
  • ■「人手不足倒産」は194件(前年度比14.8%増)、6年連続の前年度比増加
  • ■「後継者難倒産」は479件(前年度比14.0%増)、2年連続の前年度比増加
  • ■「返済猶予後倒産」は498件(前年度比3.8%増)、4年連続の前年度比増加
  • ■負債トップは、(株)AWH(旧:(株)淡島ホテル、静岡県、破産)の約400億円

調査結果

■件数

倒産件数は8480件、2年ぶりの前年度比増加

2019年度の倒産件数は8480件(前年度8057件、前年度比5.3%増)と、リーマン・ショック以降の過去10年間で最少だった前年度から、2年ぶりの前年度比増加に転じた。月別では12カ月中10カ月で前年同月を上回った。
また、上場企業倒産は2016年度以来3年ぶりに発生しなかった。

■負債総額

過去最小を更新

2019年度の負債総額は1兆2187億8900万円(前年度1兆5548億900万円、前年度比21.6%減)と、2年連続で前年度を下回り、比較可能な2000年度以降で最小を更新した。月別では、12カ月中7カ月で前年同月を下回った。
負債トップは、沼津市内浦地区の淡島でホテルを経営していた(株)AWH(旧:(株)淡島ホテル、静岡県、破産、2019年12月)の約400億円。

■業種別

小売業が前年度比8.9%の増加、飲食店が過去最多を更新

業種別に見ると、7業種中5業種で前年度を上回った。このうち小売業(1990件)は、2019年10月の消費税率引き上げによる販売減少などを受け前年度比8.9%の増加。飲食店(784件)は過去最多を更新した。
また、製造業(976件、前年度比8.1%増)は、米中貿易摩擦による受注減で機械器具製造(213件)の増加や、原材料費や人件費の高騰による繊維製品製造(115件)などの増加で、2009年度以来10年ぶりの前年度比増加となった。

■主因別

「不況型倒産」の構成比79.3%

主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は6723件(前年度比5.0%増)となった。構成比は79.3%(同0.1ポイント減)を占めた。

※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

■規模別

負債5000万円未満の構成比62.3%、過去最高

負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産は5283件(前年度比6.7%増)となった。構成比は7年連続で上昇し、過去最高の62.3%(同0.9ポイント増)を占めた。負債5000万円未満の倒産を業種別に見ると、小売業(1489件)が構成比28.2%(同1.8ポイント増)を占め最多、サービス業(1370件)が同25.9%(同1.7ポイント減)で続く。
資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産は5727件(前年度比8.1%増)、構成比は67.5%(同1.7ポイント増)を占めた。

■地域別

東北、関東など7地域で前年度比増加

地域別に見ると、9地域中7地域で前年度を上回った。なかでも関東(3044件、前年度比5.1%増)は、神奈川県(534件、同20.5%増)の小売業(122件)が過去最多となるなど、小規模企業の倒産が増加し、2009年度以来10年ぶりに前年度を上回った。また、東北(426件、同17.7%増)は消費低迷や人手不足が深刻化するなか、復興需要の収束などで抑制されていた倒産が増加傾向にあり、6県すべてで増加。宮城県(138件)は震災以降で過去最多を更新した。
一方、北海道(201件、前年度比5.6%減)は3年連続の減少で過去最少の件数、中部(1174件、同1.3%減)は2年連続の減少となった。

■態様別

民事再生法は3年連続の前年度比増加

態様別に見ると、会社更生法は2件、破産は7848件(構成比92.5%)、特別清算は292件(同3.4%)となった。民事再生法は338件(同4.0%)と、3年連続の前年度比増加。

■特殊要因倒産

人手不足倒産

2019年度は194件(前年度比14.8%増)、6年連続の前年度比増加

後継者難倒産

2019年度は479件(前年度比14.0%増)、2年連続の前年度比増加

返済猶予後倒産

2019年度は498件(前年度比3.8%増)、4年連続の前年度比増加

今後の見通し

■倒産件数は2年ぶりの増加、負債総額は過去最小

2019年度(19年4月~20年3月)の倒産件数(8480件、前年度比5.3%増)は、2年ぶりに前年度を上回った。単月ベースでは、2019年5月、8月を除く10カ月で前年同月を上回り、半期ベースでは、2008年度以来11年ぶりに下半期がプラス(前年同期比6.5%増)に転じた。小規模倒産の増加が目立ち、負債5000万円未満の件数は62.3%を占め、比較可能な2000年度以降で最高だった前年度の比率(61.4%)をさらに上回った。業種別では、食料品や衣料品など、製造業(976件、前年度比8.1%増)が10年ぶりに増加に転じたほか、慢性的な職人不足で労務費負担が増している建設業(1452件、同5.6%増)や、消費税率引き上げの影響が懸念される小売業(1990件、同8.9%増)で増加が目立ち、倒産件数全体を押し上げた。
負債総額は1兆2187億8900万円と、負債1000億円超の倒産が2014年度以来5年ぶりに発生しなかったことなどから、最小だった前年度(1兆5548億900万円)をさらに下回った。

■後継者難倒産が2年連続増、最多を更新

経営者の突然の体調不良や死亡などを契機に事業を断念せざるを得なくなったなどの「後継者難倒産」は479件と、調査開始以降の最多だった前年度(420件)を14.0%上回り、負債総額は485億4800万円にのぼった。経営ノウハウや取引先との関係を経営者個人に大きく依存する小規模企業を中心に倒産が目立っている。後継者がいないことで当初廃業を見込んでいた企業が、債務を清算できずに倒産するケースなどもみられた。
政府は今年3月、中小企業の事業承継の円滑化などを支援する中小企業成長促進法案を閣議決定。今通常国会での成立を目指している。経営者の高齢化が進むなか、政府・自治体等による事業承継支援策は年々厚みを増してきているものの、小規模企業を中心に事業承継する意思がない経営者も多いことなどから、今後も後継者難倒産は増加基調で推移すると見込まれる。

■新型コロナの影響、引き続き企業の資金繰りを注視

新型コロナウイルスの感染拡大にともなうインバウンド消費の落ち込みや政府による不要不急の外出自粛要請などを受け、飲食店や小売店、宿泊業など、幅広い業種で関連倒産が相次いでいる。3月には、女性向けアパレルブランド「マジェスティックレゴン」などを展開していた(株)シティーヒル(民事再生、負債約50億円)が倒産。100店舗超の出店にともなう投資負担の増加で資金繰りが悪化していたなか、今シーズンの記録的暖冬でセール前倒しを迫られ、さらには感染拡大の余波による来店客数の急減に見舞われたことから、自主再建を断念した。感染拡大の影響に起因する倒産は、4月7日までに計42件判明しており、さらなる発生も危惧される。
倒産件数は、3月時点で7カ月連続の前年同月比増加と、リーマン・ショック以降では最長の連続増加が続いている。2019年度の飲食店の倒産(784件、前年度比19.3%増)は過去最多を記録するなど、上昇基調の物流費や人件費、また、消費税率引き上げ分を転嫁できていない企業などではすでに倒産が続発しているうえ、今後は感染拡大の影響が追い打ちをかける。
政府は新型コロナウイルスの影響を受ける企業に対し、徹底的な資金繰り支援を打ち出している。金融機関に対しても融資先への返済猶予等の条件変更対応を強く求めているほか、リーマン・ショック時の経済対策をも上回る規模での追加対策も表明されている。とはいえ、小規模零細企業へのダメージはより深刻な状況にあり、感染拡大が長期化するようであれば、廃業による取引先減少や消費のさらなる落ち込みも想定されるため、とくに近年の低金利環境下で借入過多にある企業などの資金繰りには注視を要する。

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