レポート倒産集計 2013年 10月報

2013/11/11

倒産件数は918件、3カ月連続の前年同月比減少
負債総額は1524億900万円、2カ月ぶりの前年同月比減少

倒産件数

918件

前年同月比

▲4.5%

前年同月

961件

前月比

+12.4%

前月

817件

負債総額

1524億900万円

前年同月比

▲34.2%

前年同月

2316億7400万円

前月比

▲19.6%

前月

1895億800万円

調査結果

■件数

ポイント3カ月連続の前年同月比減少

倒産件数は918件(前月817件、前年同月961件)で、前月比は12.4%の増加となった一方、前年同月比は4.5%の減少となった。3カ月ぶりに900件を上回ったものの、3カ月連続の前年同月比減少となった。

要因・背景
  • 1.運輸・通信業(前年同月比26.1%減)、卸売業(同20.4%減)など7業種中4業種で減少

  • 2.全9地域中5地域で前年同月を下回り、うち4地域は前年同月比2ケタの大幅減少

    ■負債総額

    ポイント2カ月ぶりの前年同月比減少

    負債総額は1524億900万円(前月1895億800万円、前年同月2316億7400万円)で、前月比は19.6%、前年同月比も34.2%の減少となり、2カ月ぶりに前年同月を下回った。大型倒産の沈静化が続き、負債総額が抑えられた。

    要因・背景
  • 1.負債10億円以上の倒産(34件、前年同月比27.7%減)が大幅に減少

  • 2.全体の倒産件数が減少したなか、負債5000万円未満の倒産(500件)は増加

    ■業種別

    ポイント7業種中4業種で前年同月比減少

    業種別に見ると、7業種中4業種で前年同月を下回った。なかでも、建設業(209件、前年同月比1.9%減)は13カ月連続の前年同月比減少となったほか、運輸・通信業(34件、同26.1%減)、卸売業(133件、同20.4%減)で大幅な減少となった。一方、不動産業(29件、同20.8%増)、小売業(183件、同10.9%増)など3業種は前年同月を上回った。

    要因・背景
  • 1.卸売業…建設関連の需要増に伴い、木材・建築材料卸(11件、前年同月16件)が減少したほか、機械器具卸(24件、同34件)などで減少が目立つ

  • 2.小売業…飲食料品小売(37件、前年同月28件)、服飾小売(32件、同20件)で増加

    ■主因別

    ポイント   「不況型倒産」の構成比82.9%

    主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は761件(前月686件、前年同月825件)となった。構成比は82.9%(前月84.0%、前年同月85.8%)で、前月を1.1ポイント、前年同月を2.9ポイント下回った。

    要因・背景
  • 1.「金融円滑化法利用後倒産」は69件判明、前月(61件)を上回り過去最多を更新

  • 2.「不況型倒産」の構成比、サービス業(72.2%、前年同月比11.0ポイント減)で大幅減少

    倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

    ■規模別

    ポイント負債5000万円未満の構成比54.5%

    負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産は500件で、前年同月比5.0%の増加となり、構成比は54.5%と高水準となった。一方、負債10億円以上の倒産は4カ月ぶりに30件を上回ったものの、前年同月比27.7%の大幅減少となった。資本金別に見ると、個人経営と資本金1000万円未満の合計は537件、構成比は58.5%を占めた。

    要因・背景
  • 1.負債5000万円未満の業種別では、建設業(110件、前年同月比8.9%増)が最多

  • 2.負債100億円以上の大型倒産は、年間累計18件と前年(27件)を下回るペースで推移

    ■地域別

    ポイント9地域中5地域で前年同月比減少

    地域別に見ると、9地域中5地域で前年同月を下回った。なかでも四国(11件)は前年同月比56.0%の大幅減少となったほか、北陸(35件、前年同月比28.6%減)、九州(68件、同26.1%減)、北海道(25件、同19.4%減)でも前年同月比2ケタの減少となった。一方、中部(141件、同10.2%増)など3地域は前年同月比2ケタの大幅増加となった。

    要因・背景
  • 1.北海道は、公共工事増加などで好調な地域経済を背景に5ヵ月連続の前年同月比減少

  • 2.中部は、消費マインド停滞が続き、小売業(37件)やサービス業(23件)で増加

    ■上場企業倒産

    前月に続き上場企業の倒産は発生しなかった。2013年の上場企業倒産の累計は3件にとどまっており、前年を下回るペースでの推移となっている。

    ■大型倒産

    負債上位は、TH販売(株)(東京都、特別清算)の48億7700万円、旭川リゾート開発(株)(北海道、民事再生法)の46億5300万円、(株)アドバンス(静岡、破産)の46億4600万円と続く。負債100億円以上の大型倒産は発生せず、沈静化が続いている。

    ■景気動向指数(景気DI)

    景気DIは46.8、小規模企業が2ヵ月連続で過去最高を更新

    2013年10月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比0.7ポイント増の46.8となり、4ヵ月連続で改善した。2006年5月(47.0)以来、7年5ヵ月ぶりの水準で、過去7番目の高さとなった。 10月1日に政府が2014年4月からの消費税率引き上げを決定したなかで、住宅関連の需要拡大は続き、建材・家具や建築サービスをはじめ、太陽光発電設備・設置工事を含む「太陽光発電」が過去最高を更新するなど関連業種の改善を促している。また、規模別でも「大企業」と「小規模企業」が2ヵ月連続で過去最高を更新しており、大企業だけでなく中小零細企業にもアベノミクス効果の波及がみられた。

    全国10地域中6地域が過去最高となり、景気上昇が地方経済にも浸透

    公共投資や民間投資を中心に『建設』『製造』『卸売』『サービス』など10業界中7業界が改善した。人材派遣や建機レンタル、工業用ガス販売、土木建築サービス、修理・メンテナンスなどが好調だった『サービス』は6年6カ月ぶりに判断の分かれ目となる50を上回った。地域別では、4カ月連続で全10地域が改善したうえ、『北海道』『東北』『北陸』『中国』『四国』『九州』の地方圏を中心に過去最高を更新するなど、国内景気の上昇は地方経済にも浸透している。ただし、これまで景気をけん引してきた『南関東』が全国水準を下回るなど、都市圏での回復の勢いは弱まっている。

    今後の見通し

    ■件数は3カ月連続で前年同月比減少

    2013年10月の企業倒産は918件で、前月(817件)を12.4%上回ったものの、前年同月(961件)を4.5%下回り、3ヵ月連続の前年同月比減少を記録した。他方、負債総額(1524億900万円)も、前月(1895億800万円)を19.6%、前年同月(2316億7400万円)を34.2%ともに大幅に下回った。また、負債10億円以上の大型倒産は前年同月比27.7%の大幅減少となっている。

    ■被災地の「震災関連倒産」が増加傾向を示す

    東日本大震災から2年半が経過した。「東日本大震災関連倒産」は減少傾向を示しており、2013年の件数は2012年(553件)を大きく下回る見込みである。しかし、これは全国で見た場合だ。同震災は、サプライチェーン寸断や消費マインド低下などといった大きなネガティブインパクトを広範囲に与えたことから、「震災関連倒産」は四国・九州まで広がりをみせた。その広範囲に及ぶ倒産は減少しているということである。被害が大きかった岩手県、宮城県、福島県における2013年1月から10月までの「震災関連倒産」は48件。2012年の55件を上回るペースで推移している。また、震災発生年の2011年3月から12月までの倒産件数は50件であり、同年を上回るのは確実と見られる。金融庁の公表によれば、岩手県、宮城県、福島県に所在する金融機関において約定弁済を一時停止している債務者数は232先(住宅ローンを除く、7月末時点)にまで減少した。この2年半で1万7985先(同)が返済条件の変更契約を締結し再スタートを切っているのである。ただし、「震災関連倒産」が増加している現状に鑑みると、被災企業に対する支援が行き届いていない可能性もある。被災地の倒産動向は、「月日が流れても震災の影響を拭い去れず、きめ細かい支援を必要としている企業」が再建を果たすか否かにかかっている。

    ■「金融円滑化法利用後倒産」、2カ月連続で過去最多を更新

    10月28日、約5ヵ月ぶりとなる「中小企業金融等のモニタリングに係る副大臣等会議」が開催された。各業界からのヒアリングにおいて、総じて「金融機関の融資や条件変更の姿勢の変化はない」との回答を得ているように、中小企業金融円滑化法の期限到来後、懸念されていた金融機関による目立った企業選別は起こっていない。結果として、企業の淘汰は進まず、10月の企業倒産件数が3ヵ月連続で前年同月比減少を記録している。しかし、こうした状況下でも、「金融円滑化法利用後倒産」の増加傾向には歯止めがかかっていない。10月の「金融円滑化法利用後倒産」は69件判明し、前月(61件)を8件上回り2ヵ月連続で月間過去最多を更新した。また、2013年は10月までは483件判明しており、前年同期比51.9%の増加となっている。483件の内訳をみると、負債1億円未満の区分で前年同期比110.2%増と全体の増加率を大幅に上回っており、この区分の増加が顕著である。アベノミクスの高揚感、大手企業の好決算とは縁遠い中小零細企業の実情が表れているとも言えよう。慢性的な業績不振の中小零細企業が抜本的に経営を改善できなければ、「金融円滑化法利用後倒産」は倒産件数全体を押し上げる規模にまで増加する可能性がある。なお、2013年の同倒産は前年比50%増となる600件程度となる見込みだ。

    2013年1月から10月までの企業倒産は8786件。年間の倒産件数は1万500件前後にとどまることが予想され、リーマン・ショック前の水準になると見られるが、2014年以降もこの水準が続くとは限らない。今年、倒産件数減少に大きく寄与したのは、公共工事や住宅着工戸数増加等を背景とした建設業の倒産減少(10月までの時点で前年同期比12.2%減少)である。しかし、公共工事は政策に左右されることに加え、住宅工事は消費税率引き上げ前の駆け込み需要の様相を呈している。また、消費税率引き上げ後は消費マインドの冷え込みが懸念されるほか、駆け込み需要の反動減から小売業が大きな影響を受けると見られる。これらを加味すると、引き続き、倒産件数増加懸念は払拭できない状況が続いていると言えるであろう。

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