レポート倒産集計 2017年(1月~12月)

2018/01/18

倒産件数は8376件、8年ぶりの前年比増加
負債総額は1兆5551億3300万円、2年連続の前年比減少
(タカタ(株)への求償債権判明額を含めると、2兆8851億3300万円)

倒産件数

8376件

前年比

+2.6%

2016年

8164件

負債総額

1兆5551億3300万円

前年比

▲21.9%

2016年

1兆9916億8300万円

〈参考〉上記負債総額は、タカタ(株)の負債額を2017年6月26日発表の1826億3300万円として集計。取材等で判明した国内主要自動車各社のリコール費用に係る求償債権の合計を含めると、負債総額は2兆8851億3300万円(前年比44.9%増)

主要ポイント

  • ■2017年の倒産件数は8376件(前年8164件、前年比2.6%増)と、2009年(1万3306件)以来、8年ぶりの前年比増加に転じた
  • ■負債総額は1兆5551億3300万円(前年1兆9916億8300万円)、前年比21.9%減と、2年連続で前年を下回った
  • ■業種別に見ると、小売業やサービス業など7業種中4業種で前年を上回った
  • ■「人手不足倒産」は106件(前年72件)、前年比47.2%の大幅増加
  • ■「返済猶予後倒産」は480件(前年413件)、前年比16.2%の増加
  • ■「チャイナリスク関連倒産」は98件(前年120件)、前年比18.3%の減少
  • ■地域別に見ると、9地域中7地域で前年を上回った。このうち関東、近畿は8年ぶり、中部は2年連続の前年比増加
  • ■態様別に見ると、破産は7830件(前年7638件)、前年比2.5%の増加となり、2009年以来8年ぶりに前年を上回った。特別清算は308件(同279件)と、前年比10.4%の2ケタ増。会社更生法は8件(同1件)、民事再生法は230件(同246件)となった
  • ■上場企業倒産は、東証1部上場のタカタ(株)(民事再生法、6月)の1件
  • ■負債トップは、タカタ(株)(民事再生法、6月)の1826億3300万円

■件数

ポイント2009年以来8年ぶりの前年比増加

2017年の倒産件数は8376件(前年8164件、前年比2.6%増)と、2009年(1万3306件)以来、8年ぶりの前年比増加に転じた。四半期別では、第2・第4四半期で前年同期比増、月別では、12カ月中8カ月で前年同月を上回った。

要因・背景
  • 業種別では小売業やサービス業など7業種中4業種、地域別では関東や中部、近畿など9地域中7地域で前年を上回った

■負債総額

ポイント2年連続の前年比減少

2017年の負債総額は1兆5551億3300万円(前年1兆9916億8300万円)、前年比21.9%減と、2年連続で前年を下回った。四半期別では、第2四半期を除く3四半期で前年同期比2ケタの減少となった。

要因・背景
  • 1.負債トップは、タカタ(株)(民事再生法、6月)の1826億3300万円
  • 2.負債100億円以上の倒産は10件(前年16件)と、3年ぶりに前年を下回った
    〈参考〉2017年の負債総額は、タカタ㈱の負債額を2017年6月26日発表の1826億3300万円として集計。取材等で判明した国内主要自動車各社のリコール費用に係る求償債権の合計を含めると、2017年の負債総額は2兆8851億3300万円(前年比44.9%増)、2017年第2四半期の負債総額は1兆7959億8000万円(前期比349.2%増、前年同期比456.4%増)、2017年第3四半期は前期比83.5%減、2017年6月の負債総額は1兆6082億9400万円(前年同月比1471.7%増)

■業種別

ポイント7業種中4業種で前年比増加

業種別に見ると、7業種中4業種で前年を上回った。このうちサービス業(1877件、前年比6.3%増)は2年連続、小売業(1859件、同8.3%増)、運輸・通信業(286件、同1.4%増)の2業種は5年ぶりに前年を上回った。一方、建設業(1571件、同1.4%減)、製造業(1027件、同2.5%減)など3業種は前年を下回った。

要因・背景
  • 1.小売業では飲食店(707件、前年比26.9%増)、食料品小売(314件、同20.3%増)、サービス業では広告代理(67件、同24.1%増)、ソフトウェア開発(164件、同5.1%増)などが前年を上回った
  • 2.建設業は、職別工事(638件、前年比3.6%増)が6年ぶりの増加に転じたものの、底堅い公共工事や民間設備投資を背景に、建設業全体としては9年連続の前年比減

■主因別

ポイント「不況型倒産」の構成比は81.7%

主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は6844件(前年6783件)となった。構成比は81.7%(同83.1%)と、前年を1.4ポイント下回り、2年連続の前年比減少となった。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

要因・背景
  • 1.「人手不足倒産」は106件(前年72件)、前年比47.2%の大幅増加
  • 2.「返済猶予後倒産」は480件(前年413件)、前年比16.2%の増加
  • 3.「チャイナリスク関連倒産」は98件(前年120件)、前年比18.3%の減少

■規模別

ポイント負債5000万円未満の小規模倒産、構成比は60.4%

負債額別に見ると、負債5000万円未満の小規模倒産は5059件(前年4673件)と、前年を8.3%上回った。構成比は60.4%と、2009年(42.5%)以降9年連続で増加し、2000年以降で最高。負債100億円以上の倒産は10件(前年16件)で、3年ぶりに前年を下回った。

要因・背景
  • 1. 負債5000万円未満の倒産は、卸売業を除く6業種で前年を上回り、なかでも小売業(1342件、前年比12.5%増)、サービス業(1319件、同15.2%増)は前年比2ケタ増
  • 2. 負債100億円以上の倒産は、2008年(107件)以降減少が顕著となり、2014年(8件)に次ぐ過去2番目の低水準となった

■地域別

ポイント9地域中7地域で前年比増加

地域別に見ると、9地域中7地域で前年を上回った。このうち関東(3129件、前年比0.6%増)、近畿(2174件、同8.0%増)は8年ぶり、中部(1253件、同5.6%増)は2年連続の前年比増加。一方、九州(520件、同11.3%減)など2地域は前年を下回った。

要因・背景
  • 1. 東京都は1693件(前年比5.9%増)、愛知県は562件(同7.0%増)、大阪府は1238件(同8.9%増)と、2009年以来8年ぶりに3都府県が揃って前年比増加
  • 2. 九州は、5年連続の前年比減少。2017年は、熊本地震の復興工事本格化などを背景に、建設業(102件、前年比25.5%減)をはじめ、製造業や小売業など5業種で前年を下回った

■態様別

ポイント特別清算は前年比10.4%の2ケタ増

態様別に見ると、破産は7830件(前年7638件)、前年比2.5%の増加となり、2009年(1万2156件)以来8年ぶりに前年を上回った。特別清算は308件(同279件)と、前年比10.4%の2ケタ増。会社更生法は8件(同1件)、民事再生法は230件(同246件)となった。

要因・背景
  • 1. 会社更生法と民事再生法を合わせた「再建型」の構成比は2.8%(238件)となり、2000年以降最低
  • 2. 特別清算の構成比(3.7%)は、不採算子会社を整理する親企業や、第二会社方式と呼ばれる事業再生スキームを活用する企業が増えたことを背景に、5年連続の増加

■上場企業倒産

2017年の上場企業倒産は、東証1部上場のタカタ(株)(民事再生法、6月)の1件となり、2015年以来2年ぶりの発生となった。

■注目の倒産動向

人手不足倒産

2017年は106件(前年比47.2%増)、2年連続の前年比増加となり、調査を開始した2013年(34件)の3.1倍に増加

後継者難倒産

2017年は341件(前年比3.7%減)、2年連続の前年比減少

返済猶予後倒産

2017年は480件(前年比16.2%増)、2年連続の前年比増加

今後の見通し

■倒産件数は8376件で8年ぶりに増加、都市部が顕著に

2017年の企業倒産件数は8376件(前年比2.6%増)となり、リーマン・ショック後で1万3千件を超えていた2009年以来8年ぶりに増加した。年間倒産件数の約4割(41.7%)を占める「東京都」「大阪府」「愛知県」の3都府県合計では3493件(同7.1%増)で8年ぶりに増加した一方、他の地域は4883件(同0.4%減)と8年連続減少となり、都市部での倒産増加が目立つ1年となった。業種別では、飲食店などの小売業(同8.3%増)や人材派遣などを含むサービス業(同6.3%増)、不動産業(同3.8%増)などの倒産増加が顕著となった。

■人口減少が続くなか、人材確保の厳しさが続く

人手不足が国内経済に及ぼす影響が深刻化してきた。人手不足倒産は2017年に106件発生、前年比47.2%と大幅に増加した。2017年までの過去20年間で生産年齢人口(15~64歳人口)が1100万人以上減少したなかで(総務省「人口推計」)、2018年景気への懸念材料として「人手不足」をあげる企業は半数近くに及ぶ(帝国データバンク「2018年の景気見通しに対する企業の意識調査」)。また、人口減少を経営課題と捉えている企業も7割を超える(同「人口減少に対する企業の意識調査」)。
有効求人倍率が1974年以来43年ぶりの高水準となるなど、今後も労働市場のひっ迫が見込まれるなか、人件費の上昇によるコスト負担の増大や営業機会の喪失など、経営への影響が懸念される。

■B to C企業の倒産、多数かつ広域に消費者を巻き込む

2017年は、格安海外旅行を手がけていたてるみくらぶ(負債159億8300万円、東京都)や結婚式場業者として過去2番目の大型倒産となったBrilliaなど4社(負債合計98億円、東京都)、脱毛サロン経営のグロワール・ブリエ東京(負債97億7225万円、東京都)など、個人向けビジネスを展開する企業の大型倒産も目立ち、一般消費者に大きなインパクトを与えた。また、クラウドファンディング型販売・完全受注生産事業を行っていたそらゆめ(負債2億4100万円、東京都)は、インターネット経由で完結するため取引相手が見えにくいという特徴もみられた。2018年に入ってからも、振袖の販売・レンタル業を行うはれのひ(神奈川県)が成人の日に突然営業を停止し、晴れ着を着られなくなった新成人が続出した問題を含め、被害を受ける消費者が多数かつ広域に及ぶケースが特徴的となった。

■倒産動向は低水準の状況に変わりはなく、増減を繰り返しながら推移する見通し

国内景気は、個人消費が雇用・所得環境の改善もあり緩やかな回復が期待されるほか、好調な輸出や自動化・省力化を目的とした設備投資などがけん引役となり、拡大基調で推移すると予測される。また、米国の法人向け大型減税のほか、国内での中小企業の設備投資等を促す2018年度税制改正は好材料といえよう。
しかしながら、人手不足の深刻化による悪影響や、中東や東アジアにおける地政学的リスクの高まりには注視すべきであろう。さらに、2017年に顕在化した新規設備投資など積極的な事業拡大に資金や人材確保が追いつかずに経営破たんする場合など、景気回復期に特徴的に表れるいわゆる“好況型倒産”のほか、金融機関から貸付条件の変更等を受ける一方で経営改善が進まず倒産に至る返済猶予後倒産の増加も懸念されており、企業は環境変化への対応が一層求められる。
景気の拡大が予測される一方、国内外においてさまざまなリスクを抱えるなかで、当面の倒産動向は低水準の状況に変わりはないとみられるものの、増減を繰り返しながら推移していくと見込まれる。

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