倒産件数は288件、2000年以降最少
負債総額は711億3100万円、3カ月ぶりの前年同月比減少
倒産件数 | 288件 |
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前年同月比 | ▲55.6% |
前年同月 | 648件 |
負債総額 | 711億3100万円 |
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前年同月比 | ▲27.6% |
前年同月 | 982億8600万円 |

主要ポイント
- ■倒産件数は288件、比較可能な2000年以降最少。9カ月ぶりの前年同月比マイナスに転じた
- ■負債総額は711億3100万円、3カ月ぶりの前年同月比減少
- ■負債トップは、(株)レナウン(東京都、民事再生)の負債約138億7900万円
- ■業種別にみると、7業種すべてで前年同月を下回った。うち4業種は2000年以降で最少となった。件数全体が大幅減少のなか、織物・衣服・身のまわり品小売業や、宿泊業など、一部増加傾向が続いた業種も散見された
- ■主因別にみると、「不況型倒産」の合計は227件、構成比は78.8%を占める
- ■負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は149件(前年同月比61.5%減)、構成比は51.7%を占める
- ■地域別にみると、9地域中8地域で前年同月を下回り、うち4地域は最少となった。近畿(52件、前年同月比69.6%減)は、大阪府や兵庫県で大幅減少。関東(90件、同58.3%減)は、1都6県すべてで減少
- ■人手不足倒産は2件(前年同月比80.0%減)発生、2カ月連続の前年同月比減少
- ■後継者難倒産は19件(前年同月比40.6%減)発生、6カ月ぶりの前年同月比減少
- ■返済猶予後倒産は26件(前年同月比16.1%減)発生、2カ月ぶりの前年同月比減少
■件数・負債総額
倒産件数は最少、1年4カ月ぶりに上場企業倒産が発生
倒産件数は288件(前年同月比55.6%減)と、9カ月ぶりに前年同月を下回り、比較可能な2000年以降最少となった。緊急事態宣言の発令に伴い、弁護士事務所や裁判所の業務縮小で、法的整理手続きが滞留したことなどから大幅減少につながったとみられる。
また、東証1部上場のアパレルメーカー、(株)レナウン(東京都、民事再生)が倒産し、2019年1月以来、1年4カ月ぶりに上場企業倒産が発生した。■業種別
全業種で前年同月比減少
業種別にみると、7業種すべてで前年同月を下回った。全業種の減少は2019年5月以来、1年ぶり。なかでも建設業(36件)、製造業(32件)、卸売業(53件)、不動産業(5件)の4業種は2000年以降で最少となった。
件数全体が大幅減少のなか、販売不振が続く織物・衣服・身のまわり品小売(14件、前年同月比16.7%増)や、新型コロナウイルスの影響で予約キャンセルが相次いだ宿泊業(12件、同140.0%増)など、一部増加傾向が続いた業種も散見された。■主因別
「不況型倒産」は227件、構成比78.8%
主因別にみると、「不況型倒産」の合計は227件(前年同月比55.2%減)と、3カ月ぶりに前年同月を下回った。構成比は78.8%(同0.6ポイント増)を占めた。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
■規模別
負債5000万円未満の構成比51.7%
負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は149件(前年同月比61.5%減)、構成比は51.7%を占めた。負債5000万円未満の倒産では、小売業(40件)が構成比26.8%(同2.4ポイント減)を占め最多、サービス業(38件)が同25.5%(同2.1ポイント減)で続く。
資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産が187件(前年同月比56.5%減)、構成比は64.9%を占めた。■地域別
関東、近畿など8地域で前年同月比減少
地域別にみると、9地域中8地域で前年同月を下回り、なかでも北海道(9件)、東北(14件)、中部(41件)、近畿(52件)の4地域は2000年以降で最少となった。近畿(前年同月比69.6%減)は、大阪府(28件、同73.6%減)や兵庫県(8件、同77.1%減)で大幅減少となり、全業種で減少。
関東(90件、同58.3%減)は、1都6県すべてで減少し、東京都(46件、同60.7%減)は2000年以降で最少となった。■態様別
「破産」は267件、構成比92.7%
態様別にみると、破産は267件(構成比92.7%)、特別清算は11件(同3.8%)となった。
民事再生法は10件で、うち4件を個人事業主が占めた。■特殊要因倒産
人手不足倒産
2件(前年同月比80.0%減)発生。2カ月連続の前年同月比減少
後継者難倒産
19件(前年同月比40.6%減)発生。6カ月ぶりの前年同月比減少
返済猶予後倒産
26件(前年同月比16.1%減)発生。2カ月ぶりの前年同月比減少
※特殊要因倒産では、主因・従因を問わず、特徴的な要因による倒産を集計
■景気動向指数(景気DI)
景気DIは25.2、8カ月連続で悪化
2020年5月の景気DIは前月比0.6ポイント減の25.2となり8カ月連続で悪化した。
5月の国内景気は、政府が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止に向けて発した緊急事態宣言が25日まで継続され、大幅に制約された経済活動が続いた。生産調整や一時帰休などが実施され、生産・出荷量DIが過去最低の水準まで落ち込んだほか、企業の人手不足感は急激に減退した。他方、緊急事態宣言の解除を前にした5月中旬頃から企業の景況感は徐々に上向き始めた。外出自粛による自宅内消費の高まりやテレワーク、ビデオ通話の拡大のほか、衛生商品やハンドメイド商品などは好材料だった。
国内景気は、急激な収縮には歯止めがかかったものの、生産活動の減退が続いた。後退傾向は一時的に下げ止まる見込み
今後の国内景気は、緊急事態宣言が解除されたことで、経済活動が徐々に始動していくとみられる。生産調整や一時帰休などによる落ち込みからの挽回生産が期待されるほか、外出自粛や休業にともない創出された新規需要に向けた商品・サービスも好材料となろう。さらに緊急経済対策や金融緩和政策の強化に加え、訪日観光消費の再開なども下支え要因となる。他方、新型コロナウイルスの第2波・第3波の可能性は非常に大きなリスクといえる。企業の売り上げが激減したなか、企業業績の悪化にともなう雇用・所得環境の悪化が懸念材料である。また世界経済は大幅な落ち込みが予測され、景気回復には時間がかかるとみられる。国内景気は新型コロナなど外部環境の変化に左右される状態が続く。
今後は、国内外で懸念材料がみられるも、後退傾向は一時的に下げ止まる見込み。今後の見通し
■新型コロナ影響でレナウンが上場企業初の倒産
2020年5月の倒産件数は288件と、比較可能な2000年以降で最少を記録した。9カ月ぶりの前年同月比マイナスに転じ、減少率(55.6%減)も最大となった。新型コロナウイルス感染拡大にともなう緊急事態宣言の発令を受け、弁護士事務所や裁判所の業務縮小で、法的整理手続きが滞留したことなどが大幅減少につながったとみられる。
負債総額は711億3100万円と前年同月を27.6%下回った。負債額トップは、東証1部上場の(株)レナウン(民事再生、東京都、負債138億7900万円)で、上場企業の倒産が1年4カ月ぶりに発生した。(株)レナウンは不振が長期化し、直近2019年12月期決算も営業・経常・最終利益すべてで赤字を計上。緊急事態宣言以降は、百貨店やショッピングモールの一斉休業の影響で手元現預金が大幅に不足し、上場企業初の新型コロナ関連倒産となった。ネット通販の拡大やフリマアプリの登場に加え、昨年10月の消費税率引き上げや暖冬の影響で、アパレル業界の不振は危機的状況にある。2020年1~5月累計の卸・小売の倒産は、衣料品(98件、前年同期比4.3%増)、靴(18件、同63.6%増)、バッグ(9件、同125.0%増)でいずれも増加基調のなか、外出自粛などで消費低迷が長期化すれば、今後さらなる大型倒産の発生なども危惧される。■自動車販売の落ち込み、影響拡大懸念
消費税率引き上げ以降、新車・中古車、国産車・輸入車を問わず販売台数がマイナス基調のなか、自動車販売業の倒産件数は、5月単月では前年同月を下回ったものの、1~5月累計は41件と、前年同期(31件)比32.3%の増加。少子高齢化による商圏人口の減少を背景に、他店との競合などで厳しい経営環境が続いていた小規模企業の倒産が目立つ。
足元では新型コロナ感染拡大により、外出自粛や消費マインド悪化から、多くの企業は急激な来店数の落ち込みに見舞われ、従来の積極的な営業活動も行えていない。メーカーが生産拠点の稼働を一部停止したことで納車遅れが生じている現状や、車検証有効期間の延長措置にともなう車検切れ前の代替え需要などへの影響も注目され、販売店の苦戦は当面続くとみられる。サブスクリプションサービスやオートリースなど、所有以外の自動車利用も多様化するなか、販売不振が一段と深刻化すれば、倒産件数は今後さらに増勢を強める可能性があり、さらに用品販売や整備サービス、部品メーカー・卸各社への影響拡大も懸念される。■資金繰り支援だけでは限界も
新型コロナ感染拡大の影響で資金繰りに窮する中小企業への支援策として、金融機関は返済猶予等の条件変更対応に注力しているほか、手形・小切手等の支払い不能にともなう不渡り報告や銀行取引停止処分も猶予対応中にある。5月からは、売り上げが減少した中小企業と個人事業主を対象にした持続化給付金の支給や、民間金融機関による実質無利子・無担保での融資もスタートしており、こうした官民挙げた支援策が倒産抑制にもつながるとみられる。
とはいえ、直近5月のTDB景気動向調査においては、6カ月後の先行き見通しDIは24.9と、景気判断の分かれ目(50.0)を大きく下回る状況で、現在の景況感(25.2)をも下回り、多くの企業で先行きをより悲観的に捉えている現状が浮き彫りとなっている。5月倒産件数の影響で、1~5月累計(3137件)は前年同期を3.9%下回るものの、先行きが見通せないことによる倒産も相次いでおり、6月以降再び増加する可能性もある。経営者の高齢化を課題とする中小企業も多いなか、事業継続意欲に直結する中長期的な業績見込みや展望は、資金繰り同様に今後の倒産動向を左右する重要な要素といえ、予断を許さない状況は当面続くと見込まれる。