レポート倒産集計 2022年 12月報

2023/01/13

企業倒産、緩やかな増加基調が継続
12月は倒産規模縮小、地方での倒産目立つ

倒産件数は592件、8カ月連続で前年同月比増加
負債総額は687億1400万円、12月としては50年ぶりの低水準

倒産件数

592件

前年同月比

+18.2%

前年同月

501件

負債総額

687億1400万円

前年同月比

▲29.6%

前年同月

975億5900万円

概況・主要ポイント

  • ■倒産件数は592件(前年同月501件、18.2%増)と、8カ月連続で前年同月比増加となった。この増加期間は2019年9月~2020年4月に並び、件数としては依然低水準が続くものの、コロナ禍以降最長の増加基調が続いている
  • ■負債総額は687億1400万円(前年同月975億5900万円、29.6%減)と、前年同月から大幅減。12月としては1972年以来、50年ぶりの低水準となった
  • ■業種別にみると、建設業を除く全業種で前年同月比増加。小売業(前年同月101件→121件、19.8%増)や卸売業(同58件→73件、25.9%増)で食料品関連業種の倒産増続く
  • ■態様別にみると、破産が前年同月から100件以上の増加幅を記録
  • ■規模別にみると、負債1億円未満の小規模零細企業が全体の4分の3を占める
  • ■業歴別にみると、業歴10年未満の新興企業で10カ月連続の前年同月比増加
  • ■地域別にみると、中国地方を除く全地域で前年同月比増加。北海道(前年同月7件→16件、128.6%増)、東北(同18件→28件、55.6%増)などの地方圏において大幅増加



■業種別

建設業を除く全業種で前年同月比増加、食料品関連業種の倒産増続く

業種別にみると、建設業を除く全業種で前年同月から増加した。小売業(前年同月101件→121件、19.8%増)では、飲食料品小売(同14件→24件)が5カ月連続で前年同月比70%以上の大幅増となり、全体として3カ月連続で2ケタ増加。メーカーと小売業者の板挟みで価格転嫁問題に直面する卸売業(同58件→73件、25.9%増)でも、生鮮魚介など飲食料品卸売(同8件→24件)が3倍に増加するなど、前月に引き続き食料品関連業種の倒産増加が目立った。また、運輸・通信業(同27件→41件、51.9%増)は、道路貨物運送(同20件→33件)で増加し、全体として2015年3月以来7年9カ月ぶりの40件台を記録した。サービス業(同110件→135件、22.7%増)では、10カ月連続で前年同月から増加するなど、増加基調が続く。

■倒産主因別

「不況型倒産」は462件 「放漫経営」では5カ月連続の前年同月比増

主因別にみると、「不況型倒産」の合計は462件(前年同月380件、21.6%増)発生し、8カ月連続で増加。構成比は78.0%(対前年同月2.2ポイント増)を占めた。
最多は「販売不振」の450件(前年同月376件、19.7%増)で、構成比は76.0%(対前年同月1.0ポイント増)を占めた。業界不振(前年同月0件→9件)は、大幅増となった。
このほか、景況感の回復期に増加傾向がみられる「放漫経営」(前年同月11件→12件、9.1%増)は、2020年10月以来の5カ月連続の前年同月比増となった一方、「その他の経営計画の失敗」(同21件→15件、28.6%減)は2カ月連続で20%以上の大幅減。「経営者の病気、死亡」(同30件→24件、20.0%減)では前年同月から2ケタ減となった。

※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

■倒産態様別

「清算型」倒産は580件、構成比は98.0%

倒産態様別にみると、破産と特別清算を合わせた「清算型」倒産は580件(前年同月486件、19.3%増)で、構成比は98.0%を占めた。民事再生法と会社更生法を合わせた「再生型」倒産は12件(同15件、20.0%減)で、8カ月ぶりの前年同月比減少となった。
破産は562件(前年同月458件、22.7%増)で、9カ月連続の前年同月比増加となった。前年同月から100件以上の増加幅は、反動増となった2021年5月を除くと2020年4月以来2年8カ月ぶり。また、特別清算は18件(同28件、35.7%減)と30%以上の大幅減を記録。
一方、民事再生法は12件(前年同月15件、20.0%減)で、8カ月ぶりの前年同月比減少。このうち10件を個人事業主が占め、法人は2件のみだった。

■規模別

負債1億円未満の小規模零細企業が多数を占める

負債規模別にみると、負債「5000万円未満」の倒産は356件(前年同月294件、21.1%増)、構成比は60.1%を占めた。負債「1億円未満」は98件(同66件、48.5%増)と、4カ月連続で30%以上の大幅増となるなど、小規模零細企業が全体の4分の3を占めた。
資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産が422件(前年同月334件、26.3%増)発生し、構成比は71.3%を占めた。

■業歴別

業歴「30年以上」が最多、業歴10年未満の新興企業の増加続く

業歴別にみると、業歴「30年以上」が199件(前年同月171件、16.4%増)で最多。3カ月連続の前年同月比2ケタ増加となり、これは2019年9月以来3年3カ月ぶり。老舗企業(業歴100年以上)の倒産は3件発生した。
また、「10年未満」(前年同月56件→120件、114.3%増)は前年同月から大幅増となり、過去20年で初めて構成比が20%台を記録した。この「10年未満」に、「3年未満」(同18件→24件、33.3%増)、「5年未満」(同35件→37件、5.7%増)を加えた業歴10年未満の新興企業(同109件→181件、66.1%増)は、10カ月連続の前年同月比増加となった。
一方、「15年未満」(前年同月82件→69件、15.9%減)は6カ月ぶりの前年同月比減少。

■地域別

中国地方を除く全地域で前年同月比増加

地域別にみると、中国地方を除く全地域で前年同月を上回った。近畿(前年同月117件→155件、32.5%増)は、京都(同9件→20件)や滋賀(同2件→10件)などの大幅増加が全体の件数を押し上げた。関東(同206件→219件、6.3%増)では、神奈川(同25件→46件)が80%以上の大幅増を記録したこともあり、全体として2009年8月以来の8カ月連続の増加となった。
このほか、北海道(前年同月7件→16件、128.6%増)、東北(同18件→28件、55.6%増)、北陸(同10件→18件、80.0%増)、四国(同8件→15件、87.5%増)などといった主に地方圏において、それぞれ前年同月からの大幅増加が目立った。

景気動向指数(景気DI)

2022年12月の景気DIは43.0、改善傾向がストップ

2022年12月の景気DIは前月比0.1ポイント減の43.0となり、5カ月ぶりに悪化した。
12月の国内景気は、電力・ガスなどのライフラインや食品を含む生活必需品の価格上昇、原材料価格の高止まりなどがマイナス要因となった。また、一部の業種で影響がみられる半導体不足は自動車や電気機械、電気工事などで悪材料となったほか、新型コロナウイルスの新規感染者数の急増も下押し要因だった。一方、全国旅行支援の継続やインバウンド消費などが好材料となり観光産業の景況感は上向いたほか、DX(デジタルトランスフォーメーション)などIT投資需要も引き続き好調だった。国内景気は、新規感染者数が急増したなか、生産コストの上昇や生活費の高まりなどによって、5カ月ぶりに悪化した。

今後の見通しは横ばい傾向で推移

今後1年間程度の国内景気は、社会全体の平時に向かう動きにともなう経済活動の正常化が景気を支える原動力になるとみられるものの、米中欧などの海外経済やウクライナ情勢、実質利上げにともなう金利上昇などの影響を受けつつ推移する。全国旅行支援の継続やインバウンド消費の拡大など、観光産業への政策的後押しは好材料となろう。外国為替相場の円高傾向への調整は物価上昇を抑制する要因になるとみられる。また賃上げの動きやDX需要の拡大などもプラス材料。一方で、新型コロナの感染動向や金利上昇による借入金返済の負担、生活費の増加、人手不足感の高まりなどが悪材料。今後は、実質利上げの影響や海外経済情勢などに左右されながら、おおむね横ばい傾向で推移するとみられる。

今後の見通し

■企業倒産は3年ぶり増加 物価高や過剰債務、人手不足の影響鮮明に

2022年の倒産件数は6376件発生し、2021年(6015件)を361件(6.0%増)上回り、3年ぶりの増加となった。月ベースでみると、5月を転換点に12月まで8カ月連続で前年同月を上回るなど、増加基調が顕在化した。年間8000件台、月平均で600~700件台だったコロナ禍前(2015~19年)に比べると大幅に倒産発生が抑制された低水準であることには変わりないものの、企業倒産は「2022年に底を打った」といえる。  
約3年に及ぶコロナ禍に加え、物価高に過剰債務、人手不足といった企業経営を取り巻く「負の影響」に耐えきれなくなり、事業継続そのものを“あきらめる”中小企業の増加が背景にある。なかでも、原材料等の仕入れ価格上昇や価格転嫁難などにより、収益が維持できずに破綻した「物価高倒産」は前年から2.3倍に急増。資材や燃料などのコスト増が直接的な打撃となった「建設」「運輸・通信」といった業種の倒産件数を大きく押し上げた。
負債総額は2兆3723億8000万円で、2021年(1兆1633億900万円)から約2倍に膨らみ、エアバッグ大手のタカタ(東証1部=当時)が破綻した2017年(2兆4548億8400万円)以来、5年ぶりに2兆円を超えた。ただ、これは同じく自動車部品大手のマレリホールディングス(6月民事再生法、埼玉、負債1兆1856億2600万円)によるものが大きく、この影響を除けば2021年とほぼ同水準となる。負債5000万円に満たない零細規模の倒産が約6割を占める一方で、負債数億円~10数億円クラスの中堅規模の倒産も足元でじわりと増加傾向にある。

■「ゼロゼロ融資」倒産抑止効果に逆回転の兆し 「ゾンビ化」拍車、淘汰の動きも

コロナ禍初期の倒産抑止に大きく貢献した「実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)」。ただ、経済活動の正常化につれてその効果は逆回転の兆しもみられる。ゼロゼロ融資等を受けたものの業況が改善せず倒産した「コロナ融資後倒産」は2022年に384件判明し、2021年(167件)の2.3倍に急増した。業績回復や「筋肉質」な収益体制への再編が遅れた中小企業で、緊急避難的な借入金が過剰債務となってのしかかり、事業継続をあきらめたケースが目立つ。  
通常の経済活動下では存続できない企業の延命をはじめとした「後遺症」の顕在化も見逃せない。稼いだ利益で借入金の利子を払えない「ゾンビ企業」は全企業の約1割を占める18.8万社(2022年3月期推定)に上り、前年同期の16.6万社から2.2万社増加した。ゾンビ企業の増加は、金融機関や政府による手厚い支援で「どれだけの企業が救われたか」を示すバロメーターになる一方で、健全な市場形成を阻害する「歪み」の蓄積にも直結する。
足元ではゾンビ企業に淘汰の動きもみられ、2022年の企業倒産のうち少なくとも332件判明し、3年ぶりに前年を上回った。実質的に免除されてきた利払いのスタートに加え、低金利を支えてきた日本銀行の金融緩和も今後縮小に向かうことが見込まれ、金利上昇によって「債務ショック」も可能性として残る。企業支援の内容が本業支援や新事業への業態転換へ切り替わるなか、助成金やリスケなど金融支援に頼り切りで抜本的な再生が困難なこれらゾンビ企業では、周囲からよりシビアな判断を下される局面が今後増える可能性がある。

■2023年の企業倒産、緩やかな増加局面想定 キーワードは中小企業の「過剰債務」

今後は、人手不足が顕著なIT関連や対個人サービスを中心に、予想される賃上げの動きに取り残されかねない中小企業の動向に注視が必要だろう。また、経済活動正常化のなかで中小企業の「過剰債務問題」が従来以上に注目される1年となるとみられる。既に「借り換え保証制度」をはじめとする中小企業の返済負担軽減策に加え、「私的整理の多数決制導入」の議論も本格化するなど「出口」が整備されつつある点は、法的整理による企業倒産の発生を抑制できる可能性を持つ。ただ、万単位に上る根本的なリスクを抱えた企業数に対し、金融機関などで支援可能な企業数は限りがある。今後、事業再建に向けた経営計画を策定するなかで、実現可能性が低いと判断され支援を受けられなくなるケースの増加を織り込む必要があるだろう。  
こうした流れのなかで始まった2023年の企業倒産は、コロナ禍前の水準(年間 8000 件台)まで一気に増える事態は想定しづらいものの、緩やかな増加局面が当面続きそうだ。

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