レポート倒産集計 2024年 3月報

2024/04/08

倒産件数は870件、過去10年で最多
23カ月連続で前年同月を上回る

倒産件数

870件

前年同月比

+8.7%

前年同月

800件

負債総額

1320億500万円

前年同月比

▲8.0%

前年同月

1435億1400万円

概況・主要ポイント

  • ■倒産件数は870件(前年同月800件、8.7%増)と、23カ月連続で前年同月を上回った。過去10年間で最多だった2014年4月(858件)を超えた
  • ■負債総額は1320億500万円(前年同月1435億1400万円、8.0%減)と、2カ月連続で1000億円を超えたものの4カ月ぶりに前年同月を下回った。負債トップは、衛生管理システム製品の企画をしていた?テックコーポレーションの191億9400万円だった
  • ■業種別にみると、7業種中5業種で前年同月を上回った。『建設業』(前年同月155件→175件、12.9%増)は2014年7月(184件)以来の高水準。『サービス業』(同197件→202件、2.5%増)も、3月としては2010年(206件)以来13年ぶりに200件を超えた
  • ■主因別にみると、『不況型倒産』の合計は699件となり、23カ月連続で前年同月を上回った
  • ■態様別にみると、「特別清算」は23件発生し、4カ月連続で前年同月を上回った
  • ■規模別にみると、負債「5000万円未満」(520件)が最多。資本金「個人+1000万円未満」(624件)は全体の7割を占めた
  • ■業歴別にみると、「30年以上」が最多。『新興企業』は25カ月連続で前年同月を上回った
  • ■地域別にみると、9地域中6地域で前年同月を上回った。『四国』(前年同月12件→23件、91.7%増)は、3年9カ月ぶりに20件を超えた。『東北』(同40件→53件、32.5%増)は2カ月連続で50件を超えた


■業種別

7業種中5業種で前年同月を上回る 『建設業』は9年8カ月ぶりの高水準

業種別にみると、7業種中5業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月197件→202件、2.5%増)が最も多く、『小売業』(同164件→193件、17.7%増)、『建設業』(同155件→175件、12.9%増)が続いた。『建設業』は、2014年7月(184件)以来9年8カ月ぶりの高水準となった。『サービス業』は3月としては2010年(206件)以来13年ぶりに200件を超えた。増加率でみると、『運輸・通信業』(同37件→48件、29.7%増)が最も高く、3カ月ぶりに40件台で推移した。
業種を細かくみると、『運輸・通信業』では、ドライバー不足や燃料高に直面している「道路貨物運送」(前年同月25件→32件)が増加した。『卸売業』では、「機械器具卸売業」(同10件→27件)が倍増した。

■倒産主因別

『不況型倒産』は699件、23カ月連続で前年同月を上回る

主因別にみると、「販売不振」が688件(前年同月617件、11.5%増)で最も多く、全体の79.1%(対前年同月2.0ポイント増)を占めた。内訳を業種別にみると、「小売業」(前年同月140件→169件)が最も多く、「サービス業」(同144件→154件)、「建設業」(同115件→138件)が続いた。「売掛金回収難」(同2件→5件、150.0%増)などを含めた『不況型倒産』の合計は699件(同625件、11.8%増)となり、23カ月連続で前年同月を上回った。
「経営者の病気、死亡」(前年同月25件→30件、20.0%増)と「放漫経営」(同9件→14件、55.6%増)は2カ月連続で前年同月を上回った。「その他の経営計画の失敗」(同38件→34件、10.5%減)は5カ月ぶりに前年同月を下回った

※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

■倒産態様別

『清算型』は839件、「破産」は9年8カ月ぶりに800件超え

倒産態様別にみると、『清算型』倒産の合計は839件(前年同月779件、7.7%増)となり、全体の96.4%(対前年同月1.0ポイント減)を占めた。『再生型』倒産は31件(同21件、47.6%増)発生し、10カ月ぶりに30件台で推移した。
『清算型』では、「破産」が816件(前年同月760件、7.4%増)で最も多く、2014年7月以来9年8カ月ぶりに800件を超えた。「特別清算」は23件(同19件、21.1%増)発生し、4カ月連続で前年同月を上回った。
『再生型』では、「民事再生法」が31件(前年同月20件、55.0%増)発生した。個人が17件、法人で14件発生した。

■規模別

負債「5000万円未満」が最多 「100億円以上」が2カ月連続で発生

負債規模別にみると、「5000万円未満」が520件(前年同月449件、15.8%増)で最も多く、「5億円未満」が180件(同156件、15.4%増)で続いた。中小・零細企業の倒産が目立つ一方、「100億円以上」が2カ月連続で1件(同1件)発生した。
資本金規模別では、『個人+1000万円未満』の倒産が624件(前年同月538件、16.0%増)となり、全体の71.7%を占めた。

■業歴別

業歴「30年以上」が最多 『新興企業』は25カ月連続で前年同月を上回る

業歴別にみると、「30年以上」が274件(前年同月276件、0.7%減)で最も多く、全体の31.5%(対前年同月3.0ポイント減)を占めた。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は6件(同10件)と8カ月ぶりに前年同月を下回った。
業歴10年未満の『新興企業』[「3年未満」(前年同月33件→32件、3.0%減)、「5年未満」(同46件→62件、34.8%増)、「10年未満」(同136件→190件、39.7%増)]は284件(前年同月215件、32.1%増)と、25カ月連続で前年同月を上回った。内訳を業種別にみると、「サービス業」(同61件→82件、34.4%増)が最多、「小売業」(同50件→68件、36.0%増)、「建設業」(同52件→61件、17.3%増)と続いた。

■地域別

9地域中6地域で前年同月を上回る 『四国』は3年9カ月ぶりに20件超え

地域別にみると、9地域中6地域で前年同月を上回った。最も増加率が高かったのは『四国』(前年同月12件→23件、91.7%増)で、3年9カ月ぶりに20件を超えた。次いで、『東北』(同40件→53件、32.5%増)は2カ月連続で50件を超えた。
件数別では、『関東』(前年同月292件→304件、4.1%増)がトップ。「埼玉」(同26件→39件)で増加が目立った。このほか、『近畿』(同178件→227件、27.5%増)は「大阪」(同99件→115件)、「兵庫」(同41件→59件)で大幅に増加、全体の件数を押し上げた。一方、「三重」(同18件→9件)の減少が目立った『中部』(同119件→106件、10.9%減)は前年同月を下回ったものの、4カ月ぶりに100件を超えた。

景気動向指数(景気DI)

■2024年3月の景気DIは44.4、3カ月ぶりに改善

2023年度の印刷業の倒産は2月までに91件となり、すでに2022年度(59件)を54.2%上回り、3月末までに100件に達する可能性が高くなった。100件に達すれば、2013年度(112件)以来10年ぶりとなる。一方、2月までの負債総額は197億8200万円で、こちらも2022年度(179億2000万円)をすでに上回っている。
2024年3月の景気DIは前月比0.5ポイント増の44.4となり、3カ月ぶりに改善した。国内景気は、金融政策の正常化がスタートしたなか、好調な観光産業やインバウンド消費の拡大などが好材料となり、3カ月ぶりに上向いた。
3月は、日本銀行によるマイナス金利の解除および長短金利操作(YCC)の撤廃など、金融政策の正常化が始まった。国内景気は、インバウンド消費が活発なことに加え、国内の観光産業も好調だった。個人向けサービス業を中心に個人消費関連が上向いたほか、一部自動車メーカーの工場再開や北陸新幹線の延伸などは地域経済を押し上げた。
一方で、天候不順による春物需要の先送りは景気を下押しした。また、物価高にともなう仕入単価上昇の再加速や、不十分な価格転嫁などによる企業収益への影響はマイナス材料だった。

    

■今後の見通しは緩やかに持ち直し

今後は、金融政策における金利引き上げの時期や規模などが注目される。また、賃上げやボーナスの増加、減税などによる個人消費の行方が景気回復のカギとなろう。プラス材料として、消費者の実質賃金の上昇やインバウンド需要の拡大、生成AIの発展・普及にともなう生産性を向上させる設備投資の実行があげられる。他方、人手不足や2024年問題への対応、為替レートや海外経済の動向などは注視が必要である。今後の景気は、金利の動きが注目されるなか、個人消費を中心として緩やかに持ち直していくと見込まれる。

今後の見通し

■「実抜計画」の策定猶予が終了、リスケ実行率低下の可能性

政府は3月8日、「再生支援の総合的対策」を発表した。4月に到来する民間ゼロゼロ融資の返済開始の最後のピークに万全を期すべく、コロナ対策の各種資金繰り支援制度を6月末まで延長するとともに、官民金融機関等による再生支援を強化する。7月以降は“コロナ前の支援水準”に戻していき、事業者の経営改善・再生支援に支援の軸足を移す方針を明らかにした。
数ある施策の中で注目されるのが、金融機関に対して求めた取引先企業における「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画(実抜計画)」の策定促進だ。本来、金融機関は返済条件を変更(リスケジュール、以下リスケ)した企業への貸出金を不良債権に分類しないためには実抜計画の策定が必須だが、コロナ禍で事実上猶予されていた。
ポストコロナ局面の2024年度からは原則、計画策定が必要となる。これにより、金融機関による「企業選別」の動きが進む可能性がある。現状、実行率99%のリスケのハードルが一段上がることで、今後は金融機関がリスケに応じる比率が低下し、事業継続が難しくなる企業がさらに増えるおそれがある。

■当面は「短期プライムレート」引き上げの動きを注視

日本銀行は3月19日、マイナス金利政策を含めた大規模な金融緩和の解除を決めた。賃金と物価の好循環の強まりが確認されたとして、17年ぶりの利上げに踏み切った。植田総裁は記者会見で「2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至ったと判断した」と説明した。今のところ、今回の政策転換が倒産件数に影響を及ぼすのはもう少し先になりそうだ。住宅ローンの変動型金利や企業向け貸出金利に影響を与える「短期プライムレート」が据え置かれているためである。当面は、各金融機関がこの短プラの引き上げにいつ動くのか注視していきたい。
コロナ禍に実施されたゼロゼロ融資では、都道府県の利子補給により当初3年間は実質無利子だったものの、多くの借り入れ企業で3年が経過し、すでに利払いはスタートしている。今回のマイナス金利解除を受けて借入金利が上昇すれば、企業にとっては借り換えのタイミングなどで支払い利息がさらに上乗せされる。ゼロゼロ融資で膨らんだ過剰債務を抱える中小企業には死活問題となりかねない。

■「ゾンビ企業」淘汰進み、2024年度は1万件突破も視野

こうした影響を最も受けるのは、低金利下におけるリスケ等の支援策を受けながらも収益改善が進まず、本業の利益で借入金の利払いができない状態に陥っている「ゾンビ企業」だろう。帝国データバンクの推計では2022年度決算時点で25万1000社にのぼるが、物価高や人手不足、賃上げ等にともなうコスト増もあり、この1年でさらに増えた可能性が高い。金融政策が正常化に向かう中で、金融機関によるリスケも、金融円滑化法の施行(2009年)以前とはいかないまでも、当たり前に受けられるものではなくなり“正常化”へ少しずつ向かう過程で、ゾンビ企業の淘汰が進むはずだ。
「淘汰」というとネガティブな響きはあるが、産業の「新陳代謝」を進めるうえで必要なプロセスともいえる。むしろ、生産性の低いビジネスモデルや企業を温存させることによる弊害の方が問題だろう。幸い、過去の倒産増加局面とは異なり、雇用関連の指標はそこまで悪化していない。2024年度の倒産件数は1万件突破も視野に、引き続き増加が見込まれるが、今すぐ経済危機につながる状況にはない。多くの企業が人手不足の解消に頭を悩ませる中で、事業や雇用を別会社に承継するスキームも目立つ。今こそ「倒産=すべて悪」という固定観念から脱し、新陳代謝を促すツールやバロメーターの側面もあると、認識を改めるべき時かもしれない。

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2024年3月報(倒産動向データ編)