レポート倒産集計 2020年 6月報

2020/07/08

倒産件数は806件、2カ月ぶりの前年同月比増加で今年最多
負債総額は1264億3800万円、2カ月ぶりの前年同月比増加

倒産件数

806件

前年同月比

+9.8%

前年同月

734件

負債総額

1264億3800万円

前年同月比

+57.3%

前年同月

803億7100万円

主要ポイント

  • ■倒産件数は806件(前年同月比9.8%増)と、2カ月ぶりに前年同月を上回り、今年最多
  • ■負債総額は1264億3800万円(前年同月比57.3%増)と、2カ月ぶりの前年同月比増加
  • ■負債トップは(株)ホワイト・ベアーファミリー(大阪府、民事再生)の負債約278億円で、今年最大
  • ■業種別にみると、7業種中5業種で前年同月を上回った。なかでも卸売業(105件、前年同月比25.0%増)は衣服・繊維製品卸や木材・建築材料卸で増加。小売業(193件、同19.9%増)では飲食店(90件)が前年同月比60.7%増となった。サービス業(205件、同22.8%増)は、6月としては2010年6月以来10年ぶりの200件超
  • ■主因別にみると、「不況型倒産」の合計は655件(前年同月比19.3%増)、構成比は81.3%を占める
  • ■負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は499件(前年同月比5.5%増)、構成比は61.9%を占める
  • ■地域別にみると、9地域中6地域で前年同月を上回った。なかでも近畿(254件、前年同月比50.3%増)は2013年9月以来6年9カ月ぶりに全業種で前年同月を上回った。九州(64件、同18.5%増)は、福岡県や熊本県などで増加
  • ■人手不足倒産は2件(前年同月比80.0%減)発生、2カ月連続の前年同月比減少

  • ■件数・負債総額

    倒産件数は今年最多

    倒産件数は806件(前年同月比9.8%増)と、2カ月ぶりに前年同月を上回り、法的整理手続きが滞留していた前月からの反動もあり今年最多となった。
     負債総額は1264億3800万円と、2カ月ぶりの増加。今年最大の負債となる(株)ホワイト・ベアーファミリー(大阪府、民事再生、負債約278億円)の倒産が発生したことなどから、前年同月比57.3%増となった。

    ■業種別

    全業種で前年同月比減少

     業種別にみると、7業種中5業種で前年同月を上回った。なかでも卸売業(105件、前年同月比25.0%増)は衣服・繊維製品卸(18件)や木材・建築材料卸(15件)で増加。また、新型コロナウイルス感染拡大にともなう外出自粛の影響もあり、小売業(193件、同19.9%増)では飲食店(90件)が前年同月比60.7%増となった。サービス業(205件、同22.8%増)は、6月としては2010年6月以来10年ぶりの200件超となり、なかでも宿泊業(18件)、自動車整備・機械修理業(12件)の倒産が目立った。

    ■主因別

    「不況型倒産」は655件、構成比は81.3%

    主因別にみると、「不況型倒産」の合計は655件(前年同月比19.3%増)となり、2カ月ぶりに前年同月を上回った。構成比は81.3%(同6.5ポイント増)を占めた。

    ※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

    ■規模別

    負債1億円以上の倒産は前年同月比18.5%増

    負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は499件(前年同月比5.5%増)、構成比は61.9%(同2.5ポイント減)を占めた。また、負債1億円以上の倒産は192件と、前年同月を18.5%上回り、負債数億から十数億円規模の倒産が目立った。
    資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産が556件(前年同月比6.9%増)、構成比は69.0%(同1.8ポイント減)を占めた。

    ■地域別

    近畿、九州など6地域で前年同月比増加

    地域別にみると、9地域中6地域で前年同月を上回った。なかでも近畿(254件、前年同月比50.3%増)は、2013年9月以来6年9カ月ぶりに全業種で前年同月を上回り、大阪府(163件)は98.8%増と、地域全体を押し上げた。九州(64件、同18.5%増)は、福岡県(32件)や熊本県(13件)などで増加した。  
    一方、関東(229件、前年同月比11.9%減)、中国(32件、同23.8%減)など3地域は前年同月を下回った。

    ■態様別

    「破産」は755件、構成比は93.7%

    態様別にみると、破産は755件(構成比93.7%)、特別清算は20件(同2.5%)となった。民事再生法は31件で、このうち18件を個人事業主が占めた。


    ■景気動向指数(景気DI)

    景気DIは27.6、景気の急落は下げ止まり

    6月の国内景気は、経済活動が再び動き始めたことで、下降に歯止めがかかった。特別定額給付金の支給が家計支出の押し上げ要因となったほか、飲食店などの営業再開や企業向け資金供給の拡大で資金繰りへの懸念がやや和らいだ。また県境を跨ぐ移動制限が全国的に解除されたこともプラス要因だった。さらにテレワークの拡大など在宅者の増加にともなう新規需要の創出もみられた。他方、海外経済の回復遅れによる輸出の停滞や感染対策への費用負担などもあり、景況感は依然として厳しい水準での推移となった。
    国内景気は、経済活動が再開し徐々に動き始めたことで、急落傾向が下げ止まった。

    力強さに欠ける動きが続く見込み

    今後の国内景気は、感染拡大防止にともなう経済活動への制約が徐々に薄らいでいくとみられる。特別定額給付金などが個人消費を下支えするほか、事業継続に対する各種助成・補助金などの政策効果が好材料となる。また生産・出荷量の落ち込みからの挽回生産や工場の国内回帰などは設備投資を上向かせる要因となろう。さらに入国規制の緩和による訪日観光の再開もプラス材料である。他方、新型コロナウイルスの第2波・第3波の到来によって経済活動が再び停滞する可能性は最大の下振れリスクといえる。企業業績の悪化にともなう雇用調整や賃下げ、設備投資計画の下方修正、海外経済の動向なども懸念される。
    今後は、後退傾向が一時的に下げ止まるものの、力強さに欠ける動きが続くとみられる。

    今後の見通し

    ■上半期の倒産は前年同期比マイナスも、小売業は唯一増加

    2020年上半期(1~6月)の倒産件数は3943件と、3年連続の前年同期比減少(1.4%減)となった。業種別では7業種中6業種が前年同期を下回るなか、小売業(935件、前年同月比3.3%増)は、消費税率引き上げや新型コロナウイルス感染拡大にともなう消費不振などから唯一の増加。月別では5月に比較可能な2000年以降の過去最少(288件)を記録したことが、上半期の件数全体を大きく押し下げた。緊急事態宣言解除後の6月は、弁護士事務所や裁判所で法的整理手続きが滞留していた前月からの反動もあり、6月の件数としては6年ぶりに800件を超え、今年最多(806件)となったものの、業種・地域間では傾向のバラつきも目立った。
    上半期の負債総額は6316億7900万円(前年同期比15.9%減)と、前年同期(7507億6000万円)、前期(6628億2500万円)をいずれも下回り、半期ベースでの過去最小を更新。5月には、1年4カ月ぶりの上場企業倒産となる(株)レナウン(東京都、民事再生、負債138億7900万円)の倒産などが発生したものの、負債100億円以上の倒産は2014年、17年と並んで上半期として過去最少の5件にとどまり、大型倒産の発生は低水準だった

    ■宿泊業の倒産急増、地域産業全体への影響懸念

    上半期は、新型コロナ感染拡大により訪日外国人が激減したほか、日本人による旅行や出張のキャンセルも相次いだことなどから、宿泊業の倒産は80件と前年同期(36件)の2.2倍に急増し、半期ベースの過去最多(82件、2011年上半期)に迫る高水準となった。また、6月には旅行業として過去最大の負債となる(株)ホワイト・ベアーファミリー(大阪府、民事再生、負債約278億円)が倒産するなど、コロナ禍は観光業全体に甚大なダメージを与えている。
    今後は、早ければ8月にもスタートするGo Toキャンペーン事業などの官民挙げた需要喚起策効果が期待されるものの、今年はすでに夏祭りや花火大会、海水浴場や大規模な野外音楽ライブなど、地元経済における重要な観光イベントが相次いで中止に追い込まれており、喪失感も大きい。業績不振が一段と深刻化すれば、倒産件数はさらに増勢を強める可能性があり、地域産業全体への影響拡大も懸念される。

    ■年後半にかけても予断許さない状況続く

    新型コロナ感染拡大の影響で資金繰りに窮する中小企業への支援策として、金融機関は引き続き返済猶予等の条件変更対応に注力しているほか、手形・小切手等の支払い不能にともなう不渡り報告や銀行取引停止処分も猶予対応中にある。5月からは持続化給付金の支給や、民間金融機関による実質無利子・無担保での融資がスタートし、6月の日銀の金融政策決定会合では、75兆円だった企業の資金繰り支援の総枠が110兆円規模にまで拡大された。今月からは中小企業の地代・家賃負担を軽減するため、家賃支援給付金の申請受付も開始される予定であり、こうした支援策が倒産抑制にも効果を発揮するとみられる。
    6月19日には都道府県境をまたいだ移動制限が解除され、社会経済活動を再開する動きが広がってきたものの、コロナ以前には程遠い状況にあり、今月に入り再び感染者数は増加傾向を示すなど、先行きの不透明感は依然強い。新しい生活様式の推奨とともにビジネスの在り方も変容を迫られるなか、地域人口や企業数の減少、産業構造の変化などとも相俟って、事業継続を断念せざるを得ない企業は増加していく可能性が高い。今後の倒産動向は、業績回復や事業継続に向けた先行きの展望を描けるかどうかが左右するとみられ、変化への対応力に乏しい小規模企業を中心に、予断を許さない状況は年後半にかけても続いていくと見込まれる。

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