レポート倒産集計 2013年上半期(4月~9月)

2013/10/08

倒産件数は5320件、4年連続の前年同期比減少
負債総額は1兆7554億7300万円、3年ぶりの前年同期比増加

倒産件数

5320件

前年同期比

▲2.2%

前年同期

5439件

前期比

+0.9%

前期

5271件

負債総額

1兆7554億7300万円

前年同期比

+2.8%

前年同期

1兆7076億6500万円

前期比

+43.7%

前期

1兆2214億5200万円

調査結果

■件数

ポイント4年連続の前年同期比減少

2013年度上半期の倒産件数は5320件と、前年同期の5439件に比べ2.2%減少し、4年連続で前年同期を下回った。四半期ベースでは、2013年度第2四半期(2558件、前年同期比3.3%減)は6期連続の前年同期比減少となった。

要因・背景
  • 1.金融機関の支援が継続し、経営不振企業の資金繰り破綻が抑制された

  • 2.業種別では建設業(1204件)、不動産業(143件)がともに前年同期比2ケタの大幅減少

    ■負債総額

    ポイント3年ぶりの前年同期比増加も、過去10年で3番目の低水準

    2013年度上半期の負債総額は1兆7554億7300万円と前年同期を2.8%上回り、3年ぶりの前年同期比増加となったものの、過去10年で3番目の低水準となった。四半期ベースでは、2013年度第2四半期(5326億9500万円)は、前年同期比51.3%の大幅減少となった。

    要因・背景
  • 1.上場企業倒産は2件、負債100億円以上の大型倒産も15件と、ともに低水準で推移

  • 2.負債5000万円未満の構成比が過去10年で最高の54.9%と、小規模倒産の構成比が増加

    ■業種別

    ポイント7業種中3業種で前年同期比減少

    業種別に見ると、7業種中3業種で前年同期を下回った。なかでも建設業(1204件、前年同期比12.9%減)と不動産業(143件、同21.9%減)がともに前年同期比2ケタの大幅減少となった。一方、運輸・通信業(242件、同19.2%増)では前年同期比2ケタの大幅増加となった。

    要因・背景
  • 1.建設業…復興需要や公共事業の増加、消費税増税を見越した住宅の駆け込み需要を背景に、建設関連業者の資金繰りが改善

  • 2.運輸・通信業…燃料価格の高止まりを受け、道路貨物運送(159件)を中心に増加

    ■主因別

    ポイント   「不況型倒産」の構成比は82.3%

    主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は4376件(前年同期4595件)となり、4期連続で前年同期を下回った。構成比は82.3%と前年同期(84.5%)を2.2ポイント、前期(83.7%)を1.4ポイント下回った。

    要因・背景
  • 1.「金融円滑化法利用後倒産」は302件(前年同期184件)判明、前年同期比64.1%の増加

  • 2.「不況型倒産」が減少する一方、「放漫経営」(82件)が14期ぶりに増加に転じる

    ■規模別

    ポイント負債5000万円未満の小規模倒産が過半数を占める

    負債額別に見ると、負債5000万円未満の小規模倒産は2923件と、前年同期2791件を4.7%上回り、過半数を占めた。一方、負債100億円以上の大型倒産は15件(前年同期14件)と、前年同期を上回ったものの、低水準が続いた。

    要因・背景
  • 1.中小零細企業は、各業界の構造的問題の影響を受けやすく、負債5000万円未満の構成比は過去10年で最高の54.9%となった

  • 2.大型倒産は再生支援機関や返済猶予の支援効果などにより抑制が続く

    ■地域別

    ポイント9地域中7地域で前年同期比減少

    地域別に見ると、中部(815件、前年同期比7.9%増)と中国(238件、同3.0%増)を除く7地域で前年同期を下回った。なかでも、北海道(155件、同24.4%減)は2ケタの大幅減少となった。

    要因・背景
  • 1.中部は、運輸・通信業(40件、前年同期比90.5%増)で増加が目立つ

  • 2.北海道は、卸売業と不動産業を除く5業種で減少となり、特に建設業(39件)は前年同期比30.4%の大幅減少

    ■態様別

    ポイント破産の構成比が94.5%、過去10年で最高

    態様別に見ると、破産は5026件(前年同期5102件)と前年同期比1.5%の減少となったものの、構成比は94.5%を占め過去10年で最高となった。このほか、民事再生法(166件)、会社更生法(1件)も前年同期を下回った一方、特別清算(127件)は前年同期を上回った。

    要因・背景
  • 1.再建型手続きが困難な中小零細企業の構成比が高まり、破産が高水準で推移

  • 2.民事再生法は、2000年度4月の施行以来、年度半期ベースで最少を記録

    ■上場企業倒産

    上場企業倒産は、ジャスダック上場の(株)インデックス(民事再生法、6月)とワールド・ロジ(株)(破産、8月)の2件にとどまった。上場企業の倒産は前年同期(4件)を下回っており、低水準が続いている。

    ■大型倒産

    2013年度上半期の負債額トップは、カブトデコム(株)(特別清算、4月)の5061億円。負債1000億円以上の倒産は、同社とアイティーエム証券(株)(破産、6月)の2件にとどまる。負債100億円以上の大型倒産は15件(前年同期14件)と、前年同期を上回ったものの、低水準が続いている。

    ■注目の倒産動向

    金融円滑化法利用後倒産  法施行後の累計は1030件

    2013年度上半期の「金融円滑化法利用後倒産」は302件判明。前期(244件)を23.8%、前年同期(184件)を64.1%ともに大幅に上回るとともに、2009年12月の集計開始以降の累計件数は1030件となり、1000件を突破した。また、2013年9月の「金融円滑化法利用後倒産」は61件判明し、同年5月(60件)を超え、月ベースで過去最多を記録した。

    倒産要因をみると、返済条件の緩和措置を受けていても売上が回復せず、赤字体質から抜け出せないまま倒産に至った企業がその大半を占める。つまり、“実現可能性の高い抜本的な経営再建計画”を策定し、それを実行していくことの重要性が叫ばれていたが、再建計画を実行することの難しさが倒産件数の増加という形で徐々に表面化してきたと言える。

    金融庁は平成25事務年度の監督方針のなかで、「金融機関が、融資先に対し真に実効性のある経営再建計画の策定を支援しているか、そして進捗状況をフォローしているか」を重点的に確認するとしている。それでも、赤字体質の企業が経営改善を遂げるのは容易ではない。

    金融円滑化法が適用期限をむかえてから半年が経過。「(期限到来後も)金融機関は引き続き円滑な資金供給や貸付条件の変更等に努めるべき」という金融庁の方針通り、金融機関における貸付条件の変更等は期限到来後も実行されている。しかし、金融機関の継続支援の有無に関わらず計画が実行できずに破綻する企業も多いとみられ、「金融円滑化法利用後倒産」は、今後も増加傾向を辿るであろう。
    ※金融円滑化法利用後倒産:金融円滑化法に基づく貸付条件の変更等を受けていたことが取材で判明した企業倒産


    今後の見通し

    ■倒産件数は4年連続で前年同期比減少、負債総額は3年ぶりの前年同期比増加

    2013年度上半期の倒産は5320件で、前期を0.9%上回ったものの、前年同期を2.2%下回り、4年連続の前年同期比減少となった。業種別で、建設業と不動産業がともに前年同期比2ケタ減少となったことが大きい。一方、負債総額は1兆7554億7300万円で、前期を43.7%、前年同期を2.8%ともに上回り、3年ぶりの前年同期比増加となった。カブトデコム(負債5061億円)など2社が負債1000億円以上を抱え倒産したため、負債総額が膨れあがった。

    ■原燃料・材料価格値上げは、2013年度下半期も続く見込み

    シリアの混乱が一服し原油先物相場が落ち着いたとはいえ、9月末時点の軽油価格は138.0円/L(資源エネルギー庁)と、1年前と比べ10円程度高い水準で推移していることから、運輸業者の収益が燃料費によって圧迫される状況が続いている。これは、倒産件数からも裏付けられており、2013年度上半期の運輸業の倒産は235件発生し、前期を2.6%、前年同期も19.3%ともに上回った。景気回復とともに物流量の増加が見込めるが、中東諸国の情勢次第では原油価格が再上昇する可能性があるなど、軽油価格値上がりという燃料費リスクはいまだ大きい。

    もっとも、費用負担増加により収益性が乏しい企業の淘汰が懸念されるのは、運輸業だけではない。2013年度上半期の倒産件数が前期比、前年同期比ともに増加した飲食料品関連業者も厳しい。「食料品」の販売額が2012年3月から15ヵ月連続で前年同月割れを記録(日本チェーンストア協会)するなど、飲食料品小売業者では値引き競争が激しさを増している。そのなかでも、仕入れ価格は値上がりする一方だ。輸入麦の政府売渡価格が5銘柄平均で4.1%引き上げられるのに伴い、業務用小麦粉が値上げされるほか、清酒や牛乳なども数%の値上げが実施される。値上げによる買い控えなど消費者に対し値上げが難しいケースでは、小売業者の収益率は低下するであろう。また、小売業者に対し、卸売業者やメーカーがどこまで価格転嫁できるかも不透明。9月の飲食料品卸売業者の倒産(43件)が前年同月比79.2%の大幅増加となったように、飲食料品関連業者の倒産増加が目立ち始めており、警戒感が高まっている。

    ■「金融円滑化法利用後倒産」が過去最多を記録するなか、消費税率引き上げ

    「社会保障を安定させ、厳しい財政を再建するため」、安倍首相は来年4月1日に消費税率を現行の5%から8%へ引き上げると発表した。未来の日本のための財政再建の一方で、目先の中小零細企業の経営への影響が懸念される。1997年に消費税率を3%から5%に引き上げた際には、金融不安やアジア通貨危機が重なったとはいえ、駆け込み需要の反動減による売上不振や、増税分の価格転嫁が難しく収益性低下に悩まされた小売業の倒産件数が、1997年度から2000年度まで4年連続で前年度比増加となった。今回は「消費税の円滑・適正な転嫁も大変重要な課題」と安倍首相が述べ、「消費税転嫁対策特別措置法」も同日施行された。過去の経験からして、価格転嫁が進まなければ、経営状況が悪化する小売業者が続出するであろう。

    また、9月の「金融円滑化法利用後倒産」が61件判明し、過去最多を記録したことには注目しなければならない。同倒産は、返済猶予を受けているにも関わらず経営改善が進まなかった企業の象徴であり、その増加は景気の先行きの期待感ほど中小企業を取り巻く環境は改善していないことの裏付けである。金融庁は「平成25事務年度監督方針」に「金融機関として、中小企業の経営改善・体質強化の支援を本格化させる重要な1年」と明記した。しかし、金融機関から継続的な支援を受けたとしても、再建計画が実行できずに破綻する企業や、計画が立てられずに返済を止めていたあげく破綻する企業などが散見される。原燃料・材料価格高騰や消費税増税に際し価格転嫁問題を抱えるなか、どれだけの企業が再建を果たすことができるだろうか。2013年度下半期も倒産増加懸念が払拭できない状況は続く。

詳細はPDF(581KB)をご確認ください