倒産件数は537件、昨年6月の反動増の影響で大幅減少
負債総額は725億8300万円、6月としては過去最小
倒産件数 | 537件 |
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前年同月比 | ▲33.4% |
前年同月 | 806件 |
負債総額 | 725億8300万円 |
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前年同月比 | ▲42.6% |
前年同月 | 1264億3800万円 |

主要ポイント
- ■倒産件数は537件(前年同月比33.4%減)となり、昨年6月が反動増だったこともあり2カ月ぶりに前年同月比減少。6月としては件数で過去最少、3割超の減少率も初めて
- ■負債総額は725億8300万円(前年同月比42.6%増)と、2カ月ぶりに前年同月を下回った。6月としては過去最小で、2021年では2月(777億4500万円)を下回り最小
- ■業種別にみると、7業種中6業種で前年同月から減少率2ケタ以上と大幅に下回った。なかでも不動産業(20件、前年同月比42.9%減)は、不動産代理・仲介業(3件、同72.7%減)が前年同月から7割超の減少
- ■主因別にみると、「不況型倒産」の合計は396件(前年同月比39.5%減)
- ■負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は309件(前年同月比38.1%減)。構成比は57.5%を占め、60%を下回ったのは2020年5月以来1年1カ月ぶり
- ■地域別にみると、全9地域で前年同月を下回った。最も減少率が大きいのは北海道(11件、前年同月比57.7%減)で前年から半減した
- ■態様別にみると、破産は493件(構成比91.8%)、特別清算は29件(同5.4%)となった
- ■負債額最大の倒産は、(株)レッグ(愛媛県、破産)の約69億円
■件数・負債総額
倒産件数、6月としては最大の減少率 前年同月が反動増だった影響
倒産件数は537件(前年同月比33.4%減)となり、昨年6月が反動増だったこともあり2カ月ぶりに前年同月を下回った。6月としては件数で過去最少、3割超の減少率も初めて。
負債総額は725億8300万円(前年同月比42.6%減)と、2カ月ぶりに前年同月を下回った。6月としては過去最小で、2021年では2月(777億4500万円)を下回り最小。■業種別
運輸・通信業を除く6業種で前年同月比2ケタの大幅減
業種別にみると、7業種中6業種で前年同月から減少率2ケタ以上と大幅に下回った。なかでも不動産業(20件、前年同月比42.9%減)は、不動産代理・仲介業(3件、同72.7%減)が前年同月から7割超の減少。サービス業(118件、同42.4%減)では、旅館・ホテル(4件、同76.5%減)や老人福祉事業(8件、同38.5%減)で大幅に減少。製造業(54件、同37.9%減)、小売業(128件、同33.7%減)も3割超の大幅減だった。また、建設業、製造業、卸売業の3業種は、6月としてはいずれも件数で過去最少だった。
一方、運輸・通信業(29件、前年同月比31.8%増)は全7業種の中で唯一増加した。■主因別
「不況型倒産」は396件、構成比は73.7%
主因別にみると、「不況型倒産」の合計は396件(前年同月比39.5%減)。構成比は73.7%(同7.6ポイント減)と12カ月連続で80%を下回った。12カ月以上連続で80%を下回るのは、2008年8月以降で最長となる(過去最長は2001年9月~2008年7月の83カ月間)。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
■規模別
負債5000万円未満の構成比57.5%、1年1カ月ぶりの60%割れ
負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は309件(前年同月比38.1%減)。構成比は57.5%を占め、60%を下回ったのは2020年5月以来1年1カ月ぶりとなった。負債5000万円未満の倒産では、小売業(84件)が構成比27.2%(同0.9ポイント減)を占め最多。
資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産が351件(前年同月比36.9%減)、構成比は65.4%を占めた。■地域別
全9地域で前年同月比減少、北海道は前年から半減
地域別にみると、全9地域で前年同月を下回った。最も減少率が大きいのは北海道(11件、前年同月比57.7%減)で前年から半減した。中部(67件、同40.2%減)、近畿(134件、同47.2%減)はともに4割超の減少、東北(25件、同37.5%減)、中国(22件、同31.3%減)、九州(40件、同37.5%減)はともに3割超の減少だった。関東(200件、同12.7%減)は、1都5県で減少した一方、群馬県(13件、同62.5%増)が2021年中で最多となった。
■態様別
「破産」は493件、構成比は91.8%
態様別にみると、破産は493件(構成比91.8%)、特別清算は29件(同5.4%)となった。個人事業主が中心の民事再生法(15件)は前年同月から半減した。
■景気動向指数(景気DI)
景気DIは39.1、再び上向く
2021年6月の景気DIは前月比1.6ポイント増の39.1となり、2カ月ぶりに改善した。
6月の国内景気は、海外経済が回復傾向を示すなか、9都道府県での緊急事態宣言の解除やワクチン接種の普及などで人流が増加傾向で推移するなど、経済活動は徐々に正常化に向け動き出した。輸出の急増とともに製造業の景況感が上向いたほか、人出が徐々に戻りつつあるなかで小売業や個人向けサービス業など個人消費関連の改善も表れた。企業のデジタル化やSDGsに関連した需要増加など、新しい社会に対するニーズの創出もみられた。他方、燃料価格の上昇にともなうコスト負担の高まりや、木材や鉄鋼などの材料不足などはマイナス要因となった。また、企業の景況感における「K字型」経済の傾向は続いた。 国内景気は、海外経済の回復に加え個人消費関連も上向き、2カ月ぶりに改善した。今後は緩やかな上向き傾向か
今後の国内景気は、ワクチン接種の普及とともに感染拡大による経済活動への制約も徐々に和らいでいくとみられる。また、中国や米国など海外経済の回復や5Gの本格的普及、自宅内消費の拡大傾向などはプラス材料になる。さらに、テレワークなど業務のリモート化による通信インフラの整備やAIなどの普及にともなう働き方改革に対する需要の本格化が期待される。他方、原材料価格の上昇のほか、半導体不足やコンテナ不足による供給リスクの長期化は懸念材料である。さらに、業種や地域に対する二極化の動向や東京五輪の行方などは注視する必要があろう。
今後は、感染者数の動向は懸念材料であるものの、緩やかに上向いていくとみられる。今後の見通し
■2021年上半期の倒産 件数は過去最少、負債は低水準ながら大型倒産は増加に転じる
2021年上半期(1~6月)の倒産件数(3083件、前年同期比21.8%減)は4年連続で前年同期から減少し、半期ベースで過去最少となった。業種別では、7業種中5業種が前年同期を大きく下回った。民間金融機関の受付は今年3月末に終了したものの、実質無利子・無担保の特別融資、いわゆる「ゼロゼロ融資」をはじめ、コロナ対応の補助金など各種資金繰り支援の効果は持続している。実際、飲食店(301件、前年同期比24.4%減)や宿泊業(36件、同55.0%減)の倒産件数は、コロナ禍の人流減少でマイナス影響が続いた2021年上半期で減少傾向となった。一方、不動産業(137件、同26.9%増)は、コロナ禍の人流減少がテナント撤退を招き、影響を受けた不動産賃貸・管理業態を中心に大幅に上回り、運輸・通信業(143件、同8.3%増)も観光バス業態や軽貨物運送などで増加傾向となった。
負債総額(6280億7600万円、前年同期比0.6%減)は4年連続で前年同期を下回り、上半期としては過去最小。また半期ベースでは2020年下半期に次いで過去2番目の低水準となった。負債規模別では、負債5億円以上10億円未満の倒産(93件、同32.1%減)の減少幅が特に大きく、この中堅規模レンジを中心に官民をあげたコロナ対応の各種資金繰り支援策が奏功した。一方、負債100億円以上(6件)は前年同期(5件)を上回り、大型倒産は増加に転じた。■事業再構築の手段として活用増える特別清算、構成比は過去最高に
法的整理の態様に目を向けると、「特別清算」の活用が顕著になっている。2021年上半期の特別清算(168件)は前年同期から28.2%増加、全体に占める構成比(5.4%)は半期としては過去最高を記録した。グループ企業の再編に加え、過去の設備投資の失敗など過剰債務を抱えた企業が収益性の高い事業を第二会社に移管して事業再構築を図る場面で、特別清算は活用される。実際、2021年上半期においても外部企業とスポンサー契約を締結し、こうした再建スキームに基づき会社分割で設立された新会社に事業移管し再構築する事例が、製造業や卸売業を中心に散見された。今後も収益力のある製造部門や販路を生かした事業再構築の手段として、特別清算が存在感を増す可能性が高い。
他方、民事再生法(107件、前年同期比26.2%減)に基づく事業再生は大きく減少し、上半期としては過去最少となった。事業再生ADRなど私的整理による事業再生の利便性拡大のほか、法的整理でも再生の簡易化に向けた法整備が検討されており、動向が注目される。■課題となる「過剰債務」解消、原材料価格高騰の影響にも注目
コロナ禍のなかで生じた企業の過剰債務などの課題解決やコロナ後を見据えた施策展開が急務となるなか、成長分野の拡大や生産性向上を目指す「成長戦略実行計画」が6月に閣議決定された。今後、スピード感をともなう施策展開の可否が注目される。
他方、足もとでは6月下旬から新型コロナ感染再拡大の様相を呈し、人流抑制など感染防止策の発出状況によっては、夏季に繁忙期を迎える対面型業態を中心にマイナス影響が懸念される。さらに、木材・燃料をはじめとする原材料価格の高騰、半導体不足の深刻化などを背景に、企業の6月の仕入れ単価DIは61.1(TDB景気動向調査)と13カ月連続で上昇。2018年10月(61.3)以来2年8カ月ぶりの高水準となった。
一方で、多くの企業は販売単価への転嫁が難航している状況にあり、今後の収益性や資金繰りへ与える影響に注目したい。 長期化するコロナ禍にこうしたマイナス要素も流入するなか、過剰債務を抱えたまま売り上げが回復しない企業の息切れ型の経営破たん、あるいは私的整理による事業再生が難航した末の法的整理の増加で、年末に向けて倒産件数が上昇局面に転じる可能性は否定できない。