レポート倒産集計 2017年度

2018/04/09

倒産件数は8285件、9年ぶりの前年度比増加
負債総額は1兆6934億7500万円、3年ぶりの前年度比減少
(タカタ(株)への求償債権判明額を含めると、3兆234億7500万円)

倒産件数

8285件

前年度比

+1.6%

2016年度

8153件

負債総額

1兆6934億7500万円

前年度比

▲13.0%

2016年度

1兆9465億1500万円


2017年度の倒産件数は8285件(前年度8153件、前年度比1.6%増)と、9年ぶりに増加に転じた。四半期別では、第1四半期以降増減を繰り返し、月別では12カ月中7カ月で前年同月を上回った。

要因・背景
  • 業種別では小売業やサービス業など7業種中4業種で、地域別では中部や近畿など9地域中5地域で前年度を上回った

■負債総額

      

ポイント3年ぶりの前年度比減少

2017年度の負債総額は1兆6934億7500万円(前年度1兆9465億1500万円、前年度比13.0%減)と、3年ぶりに前年度を下回った。四半期別では、第2・第3四半期で前年同期比減少、月別では、12カ月中9カ月で前年同月を下回った。

      

要因・背景
  • 1. 負債上位は、ジャパンライフ(株)(2018年3月、負債2405億円)、タカタ(株)(2017年6月、同*1826億3300万円)、ネットカード(株)(2017年11月、同594億8900万円)と続く
    *タカタ(株)の負債額は、2017年6月26日発表による。取材等で判明した国内主要自動車各社のリコール費用に係る求償債権の合計を含めると、負債額は1兆5126億3300万円
  • 2. 負債100億円以上の大型倒産は10件(前年度15件)、小規模倒産が約6割を占めた
  • ■業種別
    ポイント7業種中4業種で前年度比増加

    業種別に見ると、7業種中4業種で前年度を上回った。このうち、サービス業(1880件、前年度比6.0%増)は2年連続、小売業(1815件、同3.8%増)は6年ぶりの前年度比増加となった。一方、製造業(1020件、同1.5%減)など3業種は前年度を下回った。

    要因・背景
    • 1. サービス業は、小規模企業を中心に競争激化で受託開発ソフトウェア(141件、前年度比15.6%増)が前年度を上回ったほか、広告代理(67件、同28.8%増)、労働者派遣(73件、同28.1%増)などで増加
    • 2. 小売業は、個人消費の伸び悩みや原材料などのコスト負担の増加を背景に、飲食店(701件、前年度比22.8%増)が前年度比2ケタの大幅増加

    ■主因別

    ポイント「不況型倒産」の構成比81.9%

    主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は6784件(前年度6731件、前年度比0.8%増)となった。構成比は81.9%(前年度比0.7ポイント減)を占めた。

    要因・背景
    • 1. 不況型倒産のうち、小売業、サービス業、不動産業の3業種は前年度比増加
    • 2. 「人手不足倒産」は114件(前年度79件)、前年度比44.3%の増加
    • 3. 「返済猶予後倒産」は460件(前年度430件)、前年度比7.0%の増加

    ■規模別

    ポイント負債5000万円未満の構成比61.1%

    負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産は5062件(前年度4750件、前年度比6.6%増)となった。構成比は61.1%と、2013年度(55.0%)以降5年連続で増加し、2000年度以降で最高。負債100億円以上の倒産は10件(前年度15件、前年度比33.3%減)となった。

    要因・背景
    • 1. 負債5000万円未満の倒産は、小売業やサービス業など4業種で前年度を上回った
    • 2. 負債100億円以上の倒産は、3年ぶりに前年度比減少に転じ、2000年度以降で最少

    ■地域別

    ポイント9地域中5地域で前年度比増加

    地域別に見ると、9地域中5地域で前年度を上回った。このうち、中部(1268件、前年度比5.9%増)は2年連続、近畿(2159件、同6.9%増)は9年ぶりの前年度比増加となった。一方、関東(3007件、同4.1%減)は8年連続、九州(526件、同4.2%減)は6年連続の減少となるなど、4地域は前年度を下回った。

    要因・背景
    • 1. 近畿は、飲食店などの小売業(554件、前年度比10.6%増)、医療などのサービス業(462件、同14.4%増)が前年度比2ケタ増となり、地域全体を押し上げた
    • 2. 九州は、災害復興需要や好調な輸出などで、建設業(100件、前年度比17.4%減)、製造業(52件、同7.1%減)など4業種で前年度を下回った

    ■態様別

    ポイント特別清算は前年度比13.1%の2ケタ増

    態様別に見ると、破産は7714件(前年度7644件、前年度比0.9%増)と、2008年度(1万1897件)以来9年ぶりに前年度を上回った。特別清算は319件(前年度282件)と、前年度比13.1%の2ケタ増。会社更生法は9件(同1件)、民事再生法は243件(同226件)となった。

    要因・背景
    • 1. 破産の構成比(93.1%)は、再建手続きが困難な小規模企業の比率が高まっていることを背景に、2009年度(92.2%)以降9年連続で9割超の高水準が続く
    • 2. 特別清算は、第二会社方式による会社再建において、事業移管後の整理手法として活用されるケースが多く、その構成比(3.9%)は2013年度(2.6%)以降、増加基調で推移

    ■上場企業倒産

    2017年度の上場企業倒産は、東証1部上場のタカタ(株)(民事再生法、2017年6月)の1件となり、2015年度以来2年ぶりの発生となった。

    ■注目の倒産動向

    人手不足倒産

    2017年度は114件(前年度比44.3%増)、4年連続の前年度比増加

    後継者難倒産

    2017年度は342件(前年度比2.0%減)、2年連続の前年度比減少

    返済猶予後倒産

    2017年度は460件(前年度比7.0%増)、2年連続の前年度比増加

    今後の見通し

    ■倒産件数は9年ぶりに増加、サービス業の増加が全体の倒産件数を押し上げ

    2017年度の企業倒産件数は8285件(前年度比1.6%増)となり、1万3千件を超えていた2008年度以来9年ぶりに増加した。2017年度の倒産動向は前半と後半で地域的な違いがみられた。年度前半は東京都・大阪府・愛知県の3都府県が前年同期比10.4%増と増加傾向を示していたが、年度後半は減少に転じた。反対に、年度後半は公共工事の減少などで建設業が増加に転じた他の地域が同5.4%増となるなど、2017年度は都市部から他の地域へと倒産の増加地域が移っていったことが特徴的だった。また、業種別では、3都府県を中心にサービス業の増加が目立ち、なかでもソフトウェア業や広告代理業、労働者派遣業、理美容業などが倒産件数全体を押し上げる結果となった。

    ■必須となるAoTへの取り組み、新たな収益源を求め企業の生き残りに欠かせず

    IoT(モノのインターネット)を活用したビジネスが急速な広がりを見せている。こうした経済のデジタル化が加速するなか、IoTなどを通じて得られたビッグデータなどを事業化につなげる形で統合・管理・分析するAoT(Analytics of Things)への取り組みが必須となってきた。
    AoTにより得られた結果が将来の収益源を創出する根拠ともなりうる。すでに、水環境分野におけるIoTサービスでAoTを導入した企業や、コインランドリー機器の決済・管理技術がAoTの結果を基に開発されるなど、各社の取り組みはスピードを増している。世界のAoT市場は2017年から5年間で4倍近くに拡大するとみられるなか、新たな収益源を求める企業でAoTの活用は欠かせなくなっている。

    ■人手不足倒産は114件発生、今後も増加する可能性が高い

    2017年度の人手不足倒産は114件(前年度比44.3%増)発生した。業種別では、建設業(31件)とサービス業(27件)の2業種で半数を占めた。また、負債10億円以上の倒産では、地域の有力な医療機関の誠広会(負債87億円、岐阜県、民事再生)やサービス付き高齢者向け住宅を運営していたエヌ・ビー・ラボ(負債13億9700万円、神奈川県、破産)など、医療・福祉関連の倒産が目立った。
    正社員が不足していると感じる企業の割合は52.2%まで上昇し過去最高となっている(帝国データバンク「TDB景気動向調査2018年3月」)。帝国データバンクの分析によると、こうした現在のような人手不足の状況では、社会全体として、人手不足がなければ本来得られたはずの付加価値の多くが失われてしまうという結果が導かれており(同「TDB景気白書2018年版」)、企業業績に与える影響も無視できなくなっている。
    人手不足の高まりは、日本の人口減少が継続するなかで、倒産の増加につながる可能性が高い。

    ■倒産動向は抑制された状態で推移する見込み

    国内経済は、企業部門の好調を背景に緩やかな拡大が続くと見込まれる。しかしながら、世界的な保護貿易主義の高まりによる影響が懸念されるほか、為替相場の変動や経済政策の停滞など、景気を下押しするリスク要因が増している。他方、企業においては、人手不足の高まりを踏まえた経営計画やビジネスモデルの再構築が必要となってくるほか、新たな収益を生み出す事業開拓に向けた取り組みが重要となっている。また、金融庁が「平成29事務年度金融行政方針」で金融機関にフィナンシャル・ジェロントロジー(金融老年学)の活用を促すなど、企業には人生100年時代を踏まえた働き方改革や商品・サービスの開発に対応することも求められよう。
    こうした経済状況の下、当面の倒産動向は抑制された状態で推移すると見込まれ、2018年度の倒産件数はほぼ横ばい(8200~8400件程度)になると予測される。

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