倒産件数は3943件、3年連続の前年同期比減少
負債総額は6316億7900万円、半期ベースで2000年以降最小
倒産件数 | 3943件 |
---|---|
前年同期比 | ▲1.4% |
前年同期 | 3998件 |
負債総額 | 6316億7900万円 |
---|---|
前年同期比 | ▲15.9% |
前年同期 | 7507億6000万円 |


主要ポイント
- ■2020年上半期の倒産件数は3943件(前年同期3998件)と、3年連続で前年同期を下回った。上場企業倒産は、(株)レナウン(東京都、民事再生、東証1部)の1件
- ■2020年上半期の負債総額は6316億7900万円(前年同期7507億6000万円、前年同期比15.9%減)と、3年連続の前年同期比減少で、比較可能な2000年以降で半期ベースの最小を更新。負債トップは、(株)ホワイト・ベアーファミリー(大阪府、民事再生、6月)の約278億円
- ■業種別にみると、7業種中6業種で前年同期を下回った。サービス業(933件、前年同期比3.9%減)は、5年ぶりの減少。一方、小売業(935件、同3.3%増)は唯一前年同期比増加、特に飲食店(398件)は13.7%増と、半期ベースで2000年以降最多
- ■負債額別にみると、負債100億円以上の倒産は5件(前年同期比28.6%減)となった。上半期としては2014年、17年と並び過去最少となるなど、大型倒産の発生は低水準だった
- ■地域別にみると、9地域中4地域で前年同期を下回った。5月の件数減少の影響などから、関東(1307件、前年同期比7.1%減)は、群馬県、東京都、神奈川県で2ケタ減。なかでも東京都(638件、同12.1%減)は2000年以降で過去2番目の低水準となった
- ■「人手不足倒産」は85件(前年同期比4.5%減)、5年ぶりの前年同期比減少
- ■「後継者難倒産」は238件(前年同期比15.5%増)、3年連続の前年同期比増加
- ■「返済猶予後倒産」は261件(前年同期比2.0%増)、2年連続の前年同期比増加
調査結果
■件数
3年連続の前年同期比減少
2020年上半期の倒産件数は3943件(前年同期3998件)と、3年連続で前年同期を下回った。
四半期別では、第1四半期は前年同期を上回ったものの、第2四半期は新型コロナウイルス感染拡大により緊急事態宣言が発令され、5月の法的整理手続きが滞留した影響などから8.9%の減少となった。上場企業倒産は、(株)レナウン(東京都、民事再生、東証1部)の1件。
■負債総額
半期ベースで過去最小
2020年上半期の負債総額は6316億7900万円(前年同期7507億6000万円、前年同期比15.9%減)と、3年連続の前年同期比減少で、比較可能な2000年以降で半期ベースの最小を更新。四半期別では、第1四半期は前年同期比41.7%減少も、第2四半期は同26.7%の増加となった。負債トップは、旅行業者としては過去最大の倒産となった(株)ホワイト・ベアーファミリー(大阪府、民事再生、6月)の約278億円。
■業種別
6業種で前年同期比減少、小売は唯一増加
業種別にみると、7業種中6業種で前年同期を下回った。サービス業(933件、前年同期比3.9%減)は、ソフトウェア業(59件)などが大きく減少し5年ぶりの減少。一方、宿泊業(80件)は、半期ベースで過去最多となる2011年上半期(82件)に次ぐ高水準となった。
また、小売業(935件、前年同期比3.3%増)は唯一前年同期を上回った。特に飲食店(398件)は13.7%の増加と、半期ベースでも2000年以降最多となった。
■主因別
「不況型倒産」の構成比80.4%
主因別の内訳をみると、「不況型倒産」の合計は3170件(前年同期比1.4%増)となった。構成比は80.4%(同2.2ポイント増)を占めた。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
■規模別
負債100億円以上の倒産、上半期では過去最少
負債額別にみると、負債5000万円未満の倒産は2403件(前年同期比1.4%減)で、構成比は60.9%を占めた。また、負債100億円以上の倒産は5件(同28.6%減)と、上半期としては2014年、17年と並び過去最少となるなど、大型倒産の発生は低水準だった。
資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産は2661件(前年同期比0.3%減)、構成比は67.5%(同0.7ポイント増)を占めた。
■地域別
関東など4地域で前年同期比減少
地域別にみると、9地域中4地域で前年同期を下回った。5月の件数減少の影響などから、関東(1307件、前年同期比7.1%減)は、群馬県、東京都、神奈川県で2ケタ減。なかでも東京都(638件、同12.1%減)は2000年以降で過去2番目の低水準となった。
一方、東北(206件)は消費低迷と人手不足の深刻化などから、前年同期比14.4%増。九州(336件、前年同期比6.3%増)は卸売業のほか、新型コロナウイルス感染拡大の影響で小売業やサービス業が増加した。
■態様別
「破産」は3665件、構成比は92.9%
態様別にみると、会社更生法は2件、破産は3665件(構成比92.9%)、特別清算は131件(同3.3%)、民事再生法は145件(同3.7%)となった。
■特殊要因倒産
人手不足倒産
2020年上半期は238件(前年同期比15.5%増)、3年連続の前年同期比増加
後継者難倒産
2020年上半期は238件(前年同期比15.5%増)、3年連続の前年同期比増加
返済猶予後倒産
2020年上半期は261件(前年同期比2.0%増)、2年連続の前年同期比増加
今後の見通し
■上半期の倒産は前年同期比マイナスも、小売業は唯一増加
2020年上半期(1~6月)の倒産件数は3943件と、3年連続の前年同期比減少(1.4%減)となった。業種別では7業種中6業種が前年同期を下回るなか、小売業(935件、前年同月比3.3%増)は、消費税率引き上げや新型コロナウイルス感染拡大にともなう消費不振などから唯一の増加。月別では5月に比較可能な2000年以降の過去最少(288件)を記録したことが、上半期の件数全体を大きく押し下げた。緊急事態宣言解除後の6月は、弁護士事務所や裁判所で法的整理手続きが滞留していた前月からの反動もあり、6月の件数としては6年ぶりに800件を超え、今年最多(806件)となったものの、業種・地域間では傾向のバラつきも目立った。
上半期の負債総額は6316億7900万円(前年同期比15.9%減)と、前年同期(7507億6000万円)、前期(6628億2500万円)をいずれも下回り、半期ベースでの過去最小を更新。5月には、1年4カ月ぶりの上場企業倒産となる(株)レナウン(東京都、民事再生、負債138億7900万円)の倒産などが発生したものの、負債100億円以上の倒産は2014年、17年と並んで上半期として過去最少の5件にとどまり、大型倒産の発生は低水準だった
■宿泊業の倒産急増、地域産業全体への影響懸念
上半期は、新型コロナ感染拡大により訪日外国人が激減したほか、日本人による旅行や出張のキャンセルも相次いだことなどから、宿泊業の倒産は80件と前年同期(36件)の2.2倍に急増し、半期ベースの過去最多(82件、2011年上半期)に迫る高水準となった。また、6月には旅行業として過去最大の負債となる(株)ホワイト・ベアーファミリー(大阪府、民事再生、負債約278億円)が倒産するなど、コロナ禍は観光業全体に甚大なダメージを与えている。
今後は、早ければ8月にもスタートするGo Toキャンペーン事業などの官民挙げた需要喚起策効果が期待されるものの、今年はすでに夏祭りや花火大会、海水浴場や大規模な野外音楽ライブなど、地元経済における重要な観光イベントが相次いで中止に追い込まれており、喪失感も大きい。業績不振が一段と深刻化すれば、倒産件数はさらに増勢を強める可能性があり、地域産業全体への影響拡大も懸念される。
■年後半にかけても予断許さない状況続く
新型コロナ感染拡大の影響で資金繰りに窮する中小企業への支援策として、金融機関は引き続き返済猶予等の条件変更対応に注力しているほか、手形・小切手等の支払い不能にともなう不渡り報告や銀行取引停止処分も猶予対応中にある。5月からは持続化給付金の支給や、民間金融機関による実質無利子・無担保での融資がスタートし、6月の日銀の金融政策決定会合では、75兆円だった企業の資金繰り支援の総枠が110兆円規模にまで拡大された。今月からは中小企業の地代・家賃負担を軽減するため、家賃支援給付金の申請受付も開始される予定であり、こうした支援策が倒産抑制にも効果を発揮するとみられる。
6月19日には都道府県境をまたいだ移動制限が解除され、社会経済活動を再開する動きが広がってきたものの、コロナ以前には程遠い状況にあり、今月に入り再び感染者数は増加傾向を示すなど、先行きの不透明感は依然強い。新しい生活様式の推奨とともにビジネスの在り方も変容を迫られるなか、地域人口や企業数の減少、産業構造の変化などとも相俟って、事業継続を断念せざるを得ない企業は増加していく可能性が高い。今後の倒産動向は、業績回復や事業継続に向けた先行きの展望を描けるかどうかが左右するとみられ、変化への対応力に乏しい小規模企業を中心に、予断を許さない状況は年後半にかけても続いていくと見込まれる。