倒産件数は655件、3カ月ぶりの前年同月比減少
負債総額は694億1700万円、2000年以降で2番目の低水準
倒産件数 | 655件 |
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前年同月比 | ▲2.1% |
前年同月 | 669件 |
負債総額 | 694億1700万円 |
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前年同月比 | ▲17.1% |
前年同月 | 837億2100万円 |

主要ポイント
- ■倒産件数は655件(前年同月比2.1%減)と、3カ月ぶりの前年同月比減少
- ■負債総額は694億1700万円(前年同月比17.1%減)と、3カ月ぶりの前年同月比減少
- ■負債額最大の倒産はFEP(株)(大阪府、破産)の約40億円
- ■業種別にみると、7業種中4業種で前年同月を下回った。なかでも卸売業(88件)は、繊維・衣料品卸や機械器具卸が減少し、前年同月比12.9%減となった。製造業(68件)では家具製造業などが減少に寄与し、前年同月比19.0%減
- ■主因別にみると、「不況型倒産」の合計は519件(前年同月比2.1%減)、構成比は79.2%を占める
- ■負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は435件(前年同月比1.9%増)、構成比は66.4%を占める
- ■地域別にみると、9地域中5地域で前年同月を下回った。なかでも北海道(11件)は、小売業などが減少し前年同月比45.0%減。関東(237件、前年同月比4.4%減)は茨城県、埼玉県で2ケタ減となり、業種別でも建設と不動産を除く5業種で減少
- ■人手不足倒産は19件(前年同月比5.6%増)発生、5カ月ぶりの前年同月比増加
- ■後継者難倒産は23件(前年同月比28.1%減)発生、2カ月連続の前年同月比減少
- ■返済猶予後倒産は47件(前年同月比51.6%増)発生、2カ月ぶりの前年同月比増加
■件数・負債総額
倒産件数は655件、負債総額は694億1700万円
倒産件数は655件(前年同月比2.1%減)と、3カ月ぶりの前年同月比減少。
負債総額は694億1700万円(前年同月比17.1%減)と、3カ月ぶりの前年同月比減少。負債5億円未満の倒産が大半を占め、比較可能な2000年以降で2番目の低水準となった。■業種別
製造、卸売など4業種で前年同月比減少
業種別にみると、7業種中4業種で前年同月を下回った。なかでも卸売業(88件)は、繊維・衣料品卸や機械器具卸が減少し、前年同月比12.9%減となった。また、2019年頃から増加傾向にあった小売業(157件、前年同月比2.5%減)は2カ月連続の減少。製造業(68件)では家具製造業などが減少に寄与し、前年同月比19.0%減となった。 一方、3業種は前年同月を上回り、なかでもサービス業(151件、前年同月比10.2%増)は経営コンサルタントや美容業などが件数を押し上げ、3カ月連続の増加となった。
■主因別
「不況型倒産」は519件、構成比79.2%
主因別にみると、「不況型倒産」の合計は519件(前年同月比2.1%減)と、3カ月ぶりに前年同月を下回った。構成比は79.2%を占めた。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
■規模別
負債5000万円未満の構成比66.4%
負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は435件(前年同月比1.9%増)、構成比は66.4%を占めた。負債5000万円未満の倒産では、サービス業(119件)が構成比27.4%(同5.6ポイント増)を占め最多、小売業(117件)が同26.9%(同0.3ポイント減)で続く。
資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産が443件(前年同月比4.9%減)、構成比は67.6%を占めた。■地域別
北海道、関東など5地域で前年同月比減少
地域別にみると、9地域中5地域で前年同月を下回った。なかでも北海道(11件)は、小売業などが減少し前年同月比45.0%減。関東(237件、前年同月比4.4%減)は茨城県、埼玉県で2ケタ減となり、業種別でも建設と不動産を除く5業種で減少となった。
一方、中部(95件、前年同月比4.4%増)、近畿(183件、同2.2%増)、中国(30件、同50.0%増)、四国(8件、同33.3%増)の4地域は前年同月を上回った。■態様別
「破産」は610件、構成比93.1%
態様別にみると、破産は610件(構成比93.1%)、特別清算は28件(同4.3%)となった。
民事再生法は17件で、うち15件を個人事業主が占めた。■特殊要因倒産
人手不足倒産
19件(前年同月比5.6%増)発生、5カ月ぶりの前年同月比増加
後継者難倒産
23件(前年同月比28.1%減)発生、2カ月連続の前年同月比減少
返済猶予後倒産
47件(前年同月比51.6%増)発生、2カ月ぶりの前年同月比増加
※特殊要因倒産では、主因・従因を問わず、特徴的な要因による倒産を集計
■景気動向指数(景気DI)
景気DIは29.7、わずかな回復にとどまった
2020年8月の景気DIは3カ月連続で前月比プラス(0.6ポイント)の29.7となった。
8月の国内景気は、再開した経済活動の持ち直しがプラス要因となった一方、地域独自の緊急事態宣言などが景況感を下押しした。自宅内消費の拡大や新たな住宅ニーズの高まりなどのほか、国内での自動車部品の生産持ち直しや猛暑対策商品の製造・販売、米国・中国向け輸出増加などはプラス材料だった。他方、新型コロナウイルスの影響に加えて、野菜などの生育不足にともなう価格高騰は農林水産や飲食料品関連に対してマイナス材料となった。また、宿泊業を含め設備稼働率は引き続き低位な水準で推移した。
国内景気は、緩やかに持ち直しの動きがみられたが、わずかな回復にとどまった。今後は横ばい傾向で推移か
今後1年程度の国内景気は、新しい生活様式への対応による新規需要の創出が見込まれる。さらに観光振興などの各種消費支援策もあり、個人消費の持ち直しが期待される。また挽回生産や工場の国内回帰など自国生産の拡大は設備投資を促すほか、抑制されていた需要の顕在化などもプラス要因になるとみられる。他方、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染状況は最大のリスクとなろう。また企業業績の悪化にともなう雇用・所得環境の悪化が懸念されるほか、新政権による政策や米国大統領選の行方も注視される。
今後の景気は、個人消費の持ち直しが期待されるが、横ばい傾向で推移するとみられる。今後の見通し
■倒産件数は3カ月ぶりに減少、負債総額は過去2番目の低水準
2020年8月の倒産件数(655件、前年同月比2.1%減)は、3カ月ぶりに前年同月比で減少した。業種別では、製造業(68件、同19.0%減)、卸売業(88件、同12.9%減)、小売業(157件、同2.5%減)など7業種中4業種が前年同月比で減少。他方、美容業をはじめとしたサービス業(151件、同10.2%増)が3カ月連続で前年同月を上回ったほか、建設業(107件、同7.0%増)が4カ月ぶりに前年同月比で増加した。
負債総額は、694億1700万円と前年同月を17.1%下回り、3カ月ぶりに前年同月比で減少した。負債50億円以上の倒産は2カ月連続で発生せず、負債総額は比較可能な2000年以降で2番目の低水準となった。■コロナ禍の資金繰り対策が加速、借入金は増加傾向に
新型コロナウイルス感染症の収束に見通しが立たないなか、資金繰り対策としてコミットメントライン(融資枠)を取引金融機関と契約する動きが加速している。2020年1~7月に同契約を発表した上場企業は前年同期の5倍を超えた(「上場企業のコミットメントライン契約動向調査(2020年1~7月)」帝国データバンク、2020年8月発表)。中小企業などは、各種給付金の利用に加えて、新型コロナの影響による業績悪化へ対応する実質無利子・無担保の制度融資を取引金融機関から受けることで資金繰りの円滑化を模索。銀行の貸出金残高(2020年8月末、全国銀行協会)は前年同月末比6.7%増と大幅な伸びを示した。8月の「新型コロナ関連倒産」(法的整理準備含む)は前月から3割程度減少するなど各種支援策の効果もうかがえる。
金融庁は2020事務年度の金融行政方針(8月31日発表)で、コロナ禍の企業支援において、金融機関が金融仲介機能を発揮できるよう行政としても万全を期すとしており、引き続き新規融資や返済条件変更などの場面で金融機関の柔軟な対応が予想される。■個人消費の持ち直しに期待、「新しい生活様式」の浸透で企業業績はまだら模様も
個人消費の持ち直しに期待、「新しい生活様式」の浸透で企業業績はまだら模様も 9月1日、マイナンバーカード所有者へキャッシュレス決済などで最大5000円相当のポイントを還元する政府の「マイナポイント」事業が始まった。今年7月、観光振興などを目的としてスタートした「Go To キャンペーン」とともに、個人消費の促進効果が期待されている。
他方、個人消費の持ち直しには懸念材料がある。同日、厚生労働省が発表した今年7月の有効求人倍率(季節調整値)は1.08倍で7カ月連続の減少。7月の完全失業率(総務省)については2.9%と2カ月ぶりに悪化し、前年比でも厳しい水準にある。新型コロナが企業業績に与えた影響などが背景にあるとみられ、新政権の対応が注目される。
コロナ禍において、消費行動、就業、コミュニケーションや余暇の過ごし方など幅広い分野で「新しい生活様式」への変化が起こりつつある。巣ごもり消費や在宅勤務が追い風となってスーパーマーケットやインターネット接続関連などは好業績を見込む一方、ホテルやイベント関連など大幅なブレーキがかかる業種も多い(「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(2020年7月)」帝国データバンク、2020年8月発表)。「新しい生活様式」がもたらす産業構造の変化で、企業業績はまだら模様となり、明暗がさらに色濃くなると経営の持続可能性に影響が出る企業の増加が見込まれる。当面の資金繰りに備え新型コロナ対応の制度融資などを利用するも、売り上げ回復や膨らんだ借入金の返済見込みが立たない場合、自力での事業継続を断念するケースも出てくるであろう。実際、「新型コロナ融資利用後倒産」が6月以降、小規模企業を中心に散見されることも考慮すると、企業倒産は予断を許さない状況が続くと見込まれる。