レポート倒産集計 2018年度

2019/04/08

倒産件数は8057件、2年ぶりの前年度比減少
負債総額は1兆5548億900万円、2000年度以降最小

倒産件数

8057件

前年度比

▲2.8%

前年度

8285件

負債総額

1兆5548億900万円

前年度比

▲40.0%

前年度

2兆5932億2600万円

主要ポイント

  • ■2018年度の倒産件数は8057件(前年度8285件、前年度比2.8%減)と、2年ぶりに減少し、リーマンショック以降の10年間で最少
  • ■負債総額は1兆5548億900万円(前年度2兆5932億2600万円、前年度比40.0%減)と、4年ぶりに前年度を下回り、2000年度以降最小
  • ■業種別に見ると、7業種中5業種で前年度を下回り、このうち建設業、製造業、卸売業、不動産業は、2000年度以降最少となった。一方、小売業、サービス業の2業種は前年度比増加
  • ■主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は6400件(前年度比5.7%減)となった。構成比は79.4%(同2.5ポイント減)を占める
  • ■負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産は4951件(前年度比2.2%減)となった。構成比は6年連続で上昇し、2000年度以降最高の61.4%(同0.3ポイント増)を占める
  • ■地域別に見ると、9地域中4地域で前年度を下回った。関東(2895件、前年度比3.7%減)は9年連続で前年度を下回り、特に東京都(1532件、同2.7%減)は2000年度以降最少
  • ■「人手不足倒産」は169件(前年度比48.2%増)、5年連続の前年度比増加
  • ■負債トップは、MT映像ディスプレイ(株)(大阪府、特別清算)の約1050億円

調査結果

■件数

2年ぶりの前年度比減少、リーマンショック以降の10年間で最少

2018年度の倒産件数は8057件(前年度8285件、前年度比2.8%減)と、9年ぶりの前年度比増加だった前年度から一転し、2年ぶりに減少。リーマンショック以降の10年間では最少となった。月別では12カ月中8カ月で前年同月を下回った。

■負債総額

4年ぶりの前年度比減少、2000年度以降最小

2018年度の負債総額は1兆5548億900万円(前年度2兆5932億2600万円、前年度比40.0%減)と、4年ぶりに前年度を下回り、2000年度以降最小となった。月別では、12カ月中7カ月で前年同月を下回った。 負債トップは、パナソニック(株)の連結子会社で、ブラウン管の映像ディスプレイ装置などを製造していたMT映像ディスプレイ(株)(大阪府、特別清算、2019年2月)の約1050億円。

■業種別

5業種で前年度比減少、うち4業種は2000年度以降最少

業種別に見ると、7業種中5業種で前年度を下回り、このうち建設業、製造業、卸売業、不動産業は、2000年度以降最少となった。
建設業(1375件)は、インフラ整備や再開発需要の拡大などを受け、前年度比11.8%減。また、製造業(903件)は、好調な設備投資需要を背景に機械器具製造(198件)などの減少が目立ち、全体では同11.5%減となった。 一方、サービス業(1950件、前年度比3.7%増)など2業種は前年度を上回った。

■主因別

「不況型倒産」の構成比79.4%

主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は6400件(前年度比5.7%減)となった。構成比は79.4%(同2.5ポイント減)を占めた。

※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

■規模別

負債5000万円未満の構成比61.4%、2000年度以降最高

負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産は4951件(前年度比2.2%減)となった。構成比は6年連続で上昇し、2000年度以降最高の61.4%(同0.3ポイント増)を占めた。負債5000万円未満の倒産を業種別に見ると、サービス業(1368件)が構成比27.6%(同1.3ポイント増)を占め最多、小売業(1306件)が同26.4%(同0.2ポイント減)で続く。
資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産は5298件(同0.5%増)、構成比は65.8%(同2.2ポイント増)を占めた。

■地域別

4地域で前年度比減少も、東北、九州など5地域は増加

地域別に見ると、9地域中4地域で前年度を下回った。
関東(2895件、前年度比3.7%減)は9年連続で前年度を下回り、特に東京都(1532件、同2.7%減)は2000年度以降最少となった。北海道(213件)は、飲食店(14件)などの倒産が大幅に減少し、地域全体では前年度比16.5%減となった。
一方、5地域は前年度を上回り、東北(362件、同4.6%増)は建設業(76件)が4年連続の増加。また、九州(615件、同16.9%増)は、震災復興の恩恵があった前年度からの反動もあり、建設業(110件)、小売業(141件)など6業種で前年度を上回った。

■態様別

民事再生法は2年連続の前年度比増加

態様別に見ると、会社更生法は2件、破産は7499件(構成比93.1%)、特別清算は286件(同3.5%)となった。民事再生法は270件(同3.4%)と、2年連続の前年度比増加。

■特殊要因倒産

人手不足倒産

2018年度は169件(前年度比48.2%増)、5年連続の前年度比増加

後継者難倒産

2018年度は420件(前年度比22.8%増)、3年ぶりの前年度比増加

返済猶予後倒産

2018年度は480件(前年度比4.3%増)、3年連続の前年度比増加

今後の見通し

■倒産件数全体は減少も、業種間にばらつき

2018年度の倒産件数(8057件、前年度比2.8%減)は、9年ぶりの前年度比増加だった前年度から一転し、2年ぶりの減少となった。小規模倒産が大半を占める傾向が続き、負債5000万円未満の倒産の割合は6年連続で上昇し、過去最高の61.4%を占めた。業種別では、建設業、製造業、卸売業、不動産業での4業種が過去最少を更新し減少が目立った一方、小売業は2年連続、サービス業は3年連続で増加するなど、まだら模様な状態が浮き彫りとなった。
2018年度は負債1000億円以上の倒産が2件発生したものの、前年度に発生したタカタ(株)(負債1兆823億8400万円)の大型倒産などの反動から、負債総額は40.0%の減少となった。

■10年連続減の東京都で反転増の兆し

都道府県別で最多を占める東京都の2018年度の件数(1532件、前年度比2.7%減)は、建設業や製造業、卸売業を中心に減少が目立つなど、3年連続で過去最少を更新し、都道府県で唯一10年連続のマイナスとなった。緩やかな景気回復基調のなかで資金調達環境の改善が続いたほか、東京五輪開催を控えた都心部の再開発やインフラ整備などの恩恵が大きいとみられる。
ただ、このうち負債1億円以上の倒産(377件)が10年ぶりの増加に転じたほか、直近の2018年度第4四半期(357件)では、6四半期ぶりに前年同期を上回った。2019年に入っては衣料品卸や同小売、飲食店などで中規模クラスの倒産が散発しており、その動向が注目される。

■人手不足倒産の増勢続く

求人数が求職数を上回る有効求人倍率1倍超の状態が続くなか、従業員の離職や採用難等で収益が悪化したことなどを要因とする人手不足倒産は、2018年度で169件発生し、前年度比48.2%の増加となった。建設現場での慢性的な作業員や施工管理者の不足により、工期遅延や労務費の上昇が影響した建設業(55件)が3割超を占め最多となり、老人福祉事業や労働者派遣、受託開発ソフトウェアなどのサービス業(49件)がこれに続いた。人手不足倒産は集計開始以降、右肩上がりで増加を続け、6年間累計(540件)で500件を超えた。
この4月から外国人材の受け入れ拡大を促す改正出入国管理法が施行された。政府は人手不足が深刻化している14業種を対象に、5年間で介護6万人、外食5.3万人、建設4万人など、合計で最大34.5万人余りの受け入れを見込む。しかし、小規模企業を中心に人手確保が難しい状況は当面続くと想定され、人手不足倒産の増勢は当面続く可能性が高い。

■各種リスク要因を引き続き注視

中小企業信用保険法の改正を受け、2018年4月に開始した信用補完制度の見直しから1年が経過した。信用保証協会と金融機関が連携しリスク分担を進めるという政府方針のもと、2018年12月には中小企業庁から金融機関別の保証承諾件数に占めるプロパー融資の併用割合が初公表されるなど、金融機関はより積極的なプロパー融資対応が求められるようになった。
こうしたなか、金融機関から返済条件の変更等(リスケジュール)を受けた企業による返済猶予後倒産は2018年度に480件(前年度比4.3%増)と3年連続で前年度を上回った。リスケ解消の見込みが低くプロパー融資での支援が困難な企業では、さらなる倒産増加も懸念される。
米中貿易摩擦の展望やイギリスのEU離脱問題などで世界経済全体に不透明感が高まるなか、日本企業の業績に一部で悪影響が出始めている。現時点では倒産件数が急増するまでの状況にないものの、為替や株価など各種リスク要因には引き続き十分な注視を要する。

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