レポート倒産集計 2013年 11月報

2013/12/09

倒産件数は820件、4カ月連続の前年同月比減少
負債総額は1335億1700万円、今年最小を記録

倒産件数

820件

前年同月比

▲12.6%

前年同月

938件

前月比

▲10.7%

前月

918件

負債総額

1335億1700万円

前年同月比

▲46.5%

前年同月

2495億400万円

前月比

▲12.4%

前月

1524億900万円

調査結果

■件数

ポイント4カ月連続の前年同月比減少

倒産件数は820件(前月918件、前年同月938件)と、前月比は10.7%、前年同月比も12.6%の減少となり、4カ月連続の前年同月比減少となった。前年同月比2ケタの減少は、2013年3月以来8カ月ぶり。

要因・背景
  • 1.建設業(174件、前年同月比60件減)、小売業(147件、同40件減)で減少が目立つ

  • 2.政府の経済対策や駆け込み需要などにより、中小企業の資金繰りが持ち直しを見せた

    ■負債総額

    ポイント2カ月連続の前年同月比減少、今年最小を記録

    負債総額は1335億1700万円(前月1524億900万円、前年同月2495億400万円)で、前月比は12.4%、前年同月比も46.5%の減少となり、2カ月連続で前年同月を下回った。大型倒産の沈静化が続き、負債総額は今年最小を記録した。

    要因・背景
  • 1.負債100億円以上の大型倒産が2ヵ月連続で発生せず

  • 2.私的整理など企業再生スキームの活用や依然として続くリスケ対応で大型倒産が抑制

    ■業種別

    ポイント7業種中5業種で前年同月比減少

    業種別に見ると、7業種中5業種で前年同月を下回った。なかでも、建設業(174件、前年同月比25.6%減)は14カ月連続の前年同月比減少となったほか、運輸・通信業(34件、同32.0%減)、小売業(147件、同21.4%減)で大幅な減少となった。一方、卸売業(146件、同9.0%増)は前年同月を上回った。

    要因・背景
  • 1.建設業…復興関連需要や公共事業に加え、住宅建築の増加にともない土木工事(24件、前年同月41件)、内装工事(19件、同26件)で減少が目立つ

  • 2.小売業…繊維・衣服等(16件、前年同月22件)、飲食料品(30件、同39件)などで減少

    ■主因別

    ポイント   「不況型倒産」の構成比84.8%

    主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は695件(前月761件、前年同月806件)となった。構成比は84.8%(前月82.9%、前年同月85.9%)で、前月を1.9ポイント上回ったものの、前年同月を1.1ポイント下回った。

    要因・背景
  • 1.「金融円滑化法利用後倒産」は49件(前年同月比14.0%増)判明、依然高水準で推移

  • 2.「不況型倒産」の件数、建設業(157件、前年同月比24.9%減)で大幅減少

    倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

    ■規模別

    ポイント負債5000万円未満の構成比55.6%

    負債額別に見ると、負債5000万円未満の倒産は456件で、前年同月比9.7%の減少となったものの、構成比は55.6%と高水準が続いた。一方、負債100億円以上の大型倒産は2カ月連続で発生していない。資本金別に見ると、個人経営と資本金1000万円未満の合計は482件、構成比は58.8%を占めた。

    要因・背景
  • 1.負債5000万円未満の業種別では、小売業(101件、構成比22.2%)が最多

  • 2.個人経営と資本金1000万円未満の倒産の構成比(58.8%)は今年最高

    ■地域別

    ポイント東北を除く8地域で前年同月比減少

    地域別に見ると、9地域中、東北を除く8地域で前年同月を下回った。なかでも北陸(27件、前年同月比37.2%減)と四国(11件、同35.3%減)、九州(46件、同33.3%減)はともに前年同月比30%以上の大幅減少となったほか、北海道(24件)、関東(312件)、近畿(218件)でも同2ケタの減少となった。一方、東北(31件、同40.9%増)は3カ月連続の増加。

    要因・背景
  • 1.関東は、大企業を中心に企業業績が好転し、東京(148件、前年同月193件)で大幅減

  • 2.東北は、前年同月の倒産が復興需要などで抑制されたことによる反動を受けて増加

    ■上場企業倒産

    3カ月連続で、上場企業の倒産は発生しなかった。2013年の上場企業倒産の累計は3件にとどまっており、前年を下回るペースでの推移となっている。

    ■大型倒産

    負債トップは、(株)オー・エム・プランニング(東京都、破産)の80億円、(株)ジャパンゼネラル(三重、破産)の61億1400万円、(株)ビジョン・ホールディングス(兵庫、民事再生法)の49億円と続く。 負債100億円以上の大型倒産は2ヵ月連続で発生せず、沈静化が続いている。

    ■景気動向指数(景気DI)

    景気DIは48.3、過去最高を更新

    2013年11月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は、前月比1.5ポイント増の48.3となり、5カ月連続で改善した。これまでの最高だった2006年3月(47.9)を上回り、2002年5月の調査開始以来最高を更新した。 2013年1月に策定された緊急経済対策による補正予算の執行がピークを迎えたことで公共事業を中心に建設需要が増加した。同時に、米国のイエレン次期FRB議長の声明案により金融緩和縮小の早期開始懸念が大きく後退したことなどもあり、金融市場は円安・株高の傾向を示した。こうしたなか、『北海道』『東北』など地方圏を中心に7地域が過去最高となったほか、小規模企業にもアベノミクス効果が波及している。

    国内景気は全面的な上昇の様相

    業界別では『建設』『製造』『卸売』『運輸・倉庫』『小売』など10業界中8業界が改善した。駆け込み購入に加えて、円相場の安定や秋口以降の新車投入の効果が現れた輸送用機械・器具製造のほか、好調な太陽光発電などの電気機械製造、住宅建設などの増加で生コンクリートの出荷量が増えている建材・家具・土石・窯業製造などが好調だった『製造』は、10業界中で最大の改善幅となった。地域別では、5カ月連続で全10地域が改善し、『四国』では南海地震対策や新築住宅着工の増加で木材利用ポイント制度の利用が活発になるなど、大幅に改善した。国内景気は、中小企業や地方圏まで全面的な上昇の様相を呈している。

    今後の見通し

    ■建設、小売の減少が全体の件数を押し下げ

    2013年11月の企業倒産は820件と、前月、前年同月をそれぞれ2ケタ下回り、4カ月連続の前年同月比減少となった。負債総額も1335億1700万円と今年最小を記録。負債100億円以上の大型倒産は2ヵ月連続で発生しなかった。倒産件数が引き続き低水準となっているのは、公共工事増加に支えられた建設業と、駆け込み需要に沸く小売業の減少によるところが大きい。ただし、経営課題解決の先送り感が否めないようなリスケ対応を金融機関から受けている中小企業は依然として多く、全国的に倒産は抑制された状態が続いているとも言えよう。

    ■景気回復下で相次ぐ企業不祥事、倒産に至るケースも

    トヨタ自動車は11月6日、2014年3月期の通期連結業績予想を上方修正した。営業利益は2兆2000億円を見込み、リーマン・ショック前の水準を回復、過去最高に迫る見通しだ。円安効果などにより業績の急回復が鮮明な自動車メーカーだけでなく、鉄道、住宅関連、電機メーカーなど幅広い業種で好決算が目立った。 国内景気が上向きつつあるなかで、このところ相次いで表面化しているのが食品偽装等の企業不祥事。コンプライアンス違反企業に対する世間の風当たりは日増しに強くなっており、経営面への影響は大きい。11月22日には、コメの産地偽装が発覚した三瀧商事関連のジャパンゼネラル(三重県、負債61億1400万円)が破産手続き開始決定を受けた。こうした“コンプラ違反”が一因で法的整理に至った企業は、2012年度に200件判明、最多を更新している。経営体力に乏しい中小企業における不祥事発覚は、会社の屋台骨を揺るがす事態につながりかねない。

    ■「資金調達難」による倒産増加を懸念

    「金融庁は11月26日、全銀協など各金融機関関係団体に対し、『年末における中小企業・小規模事業者に対する金融の円滑化について』要請を行った。年末、さらには年明け以降の資金繰りに万全を期すため、各金融機関に周知徹底を図った格好だ。金融円滑化法終了後も、各金融機関は従来通りのリスケ対応を続けてはいる。しかし、多くのリスケ企業に対して、金融庁が求める「新規融資を含む資金供給」にまで踏み込んだ支援の実施は未だ限定的と見られ、さらなる“金融の円滑化”が求められる。11月の「金融円滑化法利用後倒産」は49件判明し、高水準が続いている。同法利用後に倒産した企業からは「つなぎ融資を突然止められ、資金繰りに行き詰まった」「金融機関から要求された元本返済の増額が重荷となった」などの声が聞かれる。「経営が傾いたままの企業に、簡単に資金は出せない」(地銀関係者)のが各金融機関の本音だとすれば、経営改善が進まぬまま、資金調達難から倒産する企業が相次ぐリスクは早晩顕在化しかねない。

    ■“倒産予備軍”噴出リスク抱え、2014年へ

    2013年1~11月の倒産は9606件と前年同期(1万305件)を下回っており、このままいけば、年間件数は1万500件前後と4年連続の前年比減少となる見通し。足元の状況を見る限り、これから年末年始にかけて倒産が急増する事態は考えにくい。しかし、いつまでも現在の減少局面が続く保証は何もない。帝国データバンクがまとめた最新の『全国財務諸表分析統計(2012年度)』によれば、中小企業の収益性は徐々に改善に向かっているものの、借入金依存度は依然高水準にあるうえ、財務面は債務超過のままだ。今後の主な懸念材料をあげても、1.消費税率引き上げ後の消費マインド低下、2.駆け込み需要後の反動減による建設不況、3.食材、資材等の原材料高、4.為替の急変動、5.景気の腰折れ懸念など、企業収益の悪化につながる不安材料は山積し、倒産増加リスクは燻ったままの状態が続いている。

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