レポート倒産集計 2024年 4月報

2024/05/10

倒産件数、24カ月連続で前年同月を上回る
4月としては4年ぶりに700件超

倒産件数

760件

前年同月比

+24.6%

前年同月

610件

負債総額

946億円

前年同月比

▲54.7%

前年同月

2088億700万円

概況・主要ポイント

  • ■倒産件数は760件(前年同月610件、24.6%増)と、24カ月連続で前年同月を上回った。3カ月ぶりに前月を下回ったが、前年同月より150件多く、4月としては4年ぶりに700件超えとなった
  • ■負債総額は946億円(前年同月2088億700万円、54.7%減)と、2カ月連続で前年同月を下回った。負債トップは、土木工事などを行っていた(有)川越建材興業の36億円だった
  • ■業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を上回った。増加率でみると、『運輸・通信業』(同25件→39件、56.0%増)が最も高く、5カ月ぶりに前年同月から50%を超える大幅増となった。『小売業』では「飲食料品小売」(前年同月14件→26件)が大幅に増加した
  • ■主因別にみると、『不況型倒産』の合計は655件となり、24カ月連続で前年同月を上回った
  • ■態様別にみると、「破産」は713件発生し、25カ月連続で前年同月を上回った
  • ■規模別にみると、負債「5000万円未満」(437件)が最多。資本金「個人+1000万円未満」(521件)は全体の約7割を占めた
  • ■業歴別にみると、『新興企業』が208件で、26カ月連続で前年同月を上回った
  • ■地域別にみると、9地域中7地域で前年同月を上回った。最も増加率が高かったのは『中国』(前年同月25件→38件、52.0%増)で、16カ月連続で前年同月を上回った


■業種別

『サービス業』が208件で最多 『運輸・通信業』は5カ月ぶりに50%超に

業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月145件→208件、43.4%増)が最も多く、『小売業』(同121件→143件、18.2%増)、『建設業』(同133件→135件、1.5%増)が続いた。増加率でみると、『運輸・通信業』(同25件→39件、56.0%増)が最も高く、5カ月ぶりに前年同月から50%を超える大幅増となった。
業種を細かくみると、『小売業』では「飲食料品小売」(前年同月14件→26件)、『製造業』では「食料品・飼料・飲料製造」(同14件→22件)など、食品関連業で大幅に増加した。『運輸・通信業』では、ドライバー不足などに直面している「道路貨物運送」(同13件→31件)が倍増した。『建設業』では、「職別工事」(同58件→68件)の増加が目立った。『サービス業』では、コンサルタントなどの「専門サービス」(同21件→41件)が大幅に増加した。

■倒産主因別

『不況型倒産』は655件、24カ月連続で前年同月を上回る

主因別にみると、「販売不振」が642件(前年同月481件、33.5%増)で最も多く、全体の84.5%(対前年同月5.6ポイント増)を占めた。内訳を業種別にみると、「サービス業」(前年同月108件→181件)が最も多く、「小売業」(同95件→123件)が続いた。「売掛金回収難」(同3件→7件、133.3%増)などを含めた『不況型倒産』の合計は655件(同490件、33.7%増)となり、24カ月連続で前年同月を上回った。
「経営者の病気、死亡」(前年同月18件→23件、27.8%増)と「放漫経営」(同11件→12件、9.1%増)は3カ月連続で前年同月を上回った。「その他の経営計画の失敗」(同20件→14件、30.0%減)は2カ月連続で前年同月を下回った。

※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を『不況型倒産』として集計

■倒産態様別

「破産」は713件、25カ月連続で前年同月を上回る

倒産態様別にみると、『清算型』倒産は739件(前年同月594件、24.4%増)となり、全体の97.2%(対前年同月0.2ポイント減)を占めた。『再生型』倒産は21件(同16件、31.3%増)発生し、4カ月連続で20件超えの水準となった。
『清算型』では、「破産」が713件(前年同月576件、23.8%増)で最も多く、25カ月連続で前年同月を上回った。「特別清算」は26件(同18件、44.4%増)発生し、5カ月連続で前年同月を上回った。
『再生型』では、「民事再生法」が21件(前年同月16件、31.3%増)発生。このうち法人が4件、個人が17件となった。

■規模別

負債「5000万円未満」が最多 50億円以上が発生しなかったのは3カ月ぶり

負債額規模別にみると、「5000万円未満」が437件(前年同月334件、30.8%増)で最も多く、「5億円未満」が166件(同131件、26.7%増)で続いた。一方、50億円以上の倒産は3カ月ぶりに発生しなかった。
資本金規模別にみると、『個人+1000万円未満』の倒産が521件(前年同月397件、31.2%増)となり、全体の68.6%を占めた。

■業歴別

業歴10年未満の『新興企業』は26カ月連続で前年同月を上回る

業歴別にみると、「30年以上」が263件(前年同月206件、27.7%増)で最も多く、全体の34.6%(対前年同月0.8ポイント増)を占めた。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は16件(同5件、220.0%増)発生し、2カ月ぶりに前年同月を上回った。
業歴10年未満の『新興企業』(「3年未満」〈前年同月27件→24件、11.1%減〉、「5年未満」〈同52件→53件、1.9%増〉、「10年未満」〈同93件→131件、40.9%増〉)は208件(前年同月172件、20.9%増)と、26カ月連続で前年同月を上回った。内訳を業種別にみると、「サービス業」(同62件→70件、12.9%増)が最多、「小売業」(同50件→48件、4.0%減)、「建設業」(同33件→38件、15.2%増)が続いた。

■地域別

9地域中7地域で前年同月を上回る 『中部』では「三重」が大幅に増加

地域別にみると、9地域中7地域で前年同月を上回った。最も増加率が高かったのは『中国』(前年同月25件→38件、52.0%増)で、16カ月連続で前年同月を上回った。『東北』(同27件→40件、48.1%増)が続き、「宮城」(同8件→15件)の増加が目立った。
件数別では、『関東』(前年同月245件→290件、18.4%増)がトップ。「埼玉」(19件→44件)は2カ月連続で前年同月を上回った。このほか、『中部』(同77件→102件、32.5%増)は、全体でも2カ月連続で100件を超え、特に「三重」(同1件→16件)が大幅に増加した。一方、『四国』(同13件→11件、15.4%減)は、「香川」(同5件→2件)や「徳島」(同3件→1件)の減少もあり、3カ月ぶりに前年同月を下回った。

注目の倒産動向-1

■連鎖倒産

連鎖倒産、2023年度は287件
テックコーポレーション関連で大規模な連鎖倒産が発生

グループ企業や取引先企業の倒産が引き金となった連鎖倒産が増加している。2023年度の連鎖倒産は287件となり、2022年度(252件)から13.9%増加、2021年度(178件)と比べると61.2%増加した。増加の背景には、コロナ禍での市場の硬直化により、新規取引や新市場の開拓が進まない企業が増えたことがある。加えて、原材料価格の高騰や人件費の増加などで収益性が悪化するなかでも価格転嫁が進まず、厳しい資金繰りが続いている状況があり、取引依存度の高い企業の倒産が大打撃となるケースが増えている。
そうしたなか、コンプライアンス問題を機とした(株)テックコーポレーション(広島、3月破産、負債約191億円)の連鎖倒産が続いている。(株)テックコーポレーションは、電解水生成装置などの環境関連製品の製造販売を手がけ、商流は代理店方式で、代理店が病院や食品工場、飲食店などのエンドユーザーに販売していた。しかし、一部の商流において、当社が代理店を介さずにエンドユーザーと直接契約するケースがあり、実態はユーザーのいないキャッチボール取引(循環取引の一種)の可能性が指摘されている。
2024年4月には同社に連鎖して丸信工業(株)や(株)中屋興業が連鎖倒産した。また、同社に連鎖して自己破産申請の準備に入っている企業も複数あるなど、連鎖倒産は10社を超える見通しだ。キャッチボール取引となると、売りと買いの双方の取引がある先が疑わしいが、それに該当する企業は約30社が確認されている。当面は、売り買い双方の取引があり、多額の不良債権が発生した企業の動向が注目される。

■ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産

2024年4月は55件発生 緩やかな増加基調が続く

「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は、2024年4月に55件(前年同月42件、31.0%増)発生した。前年同月の1.3倍を超え、依然として緩やかな増加基調が続いている。「不良債権(焦げ付き)」に相当するゼロゼロ融資喪失総額は推計で約851億5600万円にのぼり、国民一人あたり700円超の負担が発生している計算になる。

■人手不足倒産

2024年4月は23件発生 9カ月ぶりに前年同月を下回る

「人手不足倒産」は、2024年4月に23件(前年同月30件、23.3%減)発生した。23年7月(6.7%減)以来、9カ月ぶりに前年同月を下回ったものの、2023年の平均(22件)を超えており、依然として高水準で推移している。従業員や経営幹部などの退職・離職が直接・間接的に起因した「従業員退職型」の倒産は1件発生し、2カ月ぶりに前年同月を下回った。

注目の倒産動向-2

■「唐揚げ店」の倒産動向

「唐揚げ店」の倒産、過去最多27件
前年比9倍に急増 「ブームの一巡」も影響

2023年は「唐揚げ店」の倒産がかつてないペースで急増した。持ち帰りを中心とした「唐揚げ店」経営業者の倒産は、27件発生した。前年の9倍に達し、これまで最多だった21年(6件)を大幅に上回って過去最多を更新した。倒産した唐揚げ店は、オリジナルブランドの唐揚げ店のほか、大手唐揚げチェーンのFC店、本業以外のサブビジネスとして唐揚げ事業に参入した事業者など様々だった。ただ、倒産した事業者の多くが1~2店舗を展開する小規模な経営業者で、水面下の閉店や廃業などを含めれば、さらに多くの唐揚げ店が市場から退出したとみられる。
2023年は、唐揚げビジネスにとって非常に厳しい1年となった。唐揚げの原材料として使用される輸入鶏肉は、鳥インフルエンザの流行で供給量が減少した。また、飼料価格の高騰で牛肉・豚肉価格が上昇し、割安な鶏肉を求める消費国が増えたことも重なり、国内の鶏もも肉卸売価格は5年間で約2割上昇した。調理に必要な食用油も、キャノーラ油が5年間で約7割値上がりし、価格転嫁が難しい小規模店の経営にとって打撃となった。また、コロナ禍の巣ごもり需要も下火となったほか、物価高で消費者の節約志向が強まり、専門店より3割程度安いコンビニやスーパーなどの総菜品、半額以下の冷凍唐揚げなど、割安な競合製品に顧客が流れたことも響いた。
足元では唐揚げビジネスに代わり、おにぎり店など新たなテイクアウトビジネスも台頭してきた。ブームから2年が経過し、唐揚げブームの一巡もみられるなか、唐揚げで勝負する企業が増えるのか、他ビジネスへチャレンジする企業が増えるのか注目される。

■後継者難倒産

2024年4月は21件発生 16カ月ぶりに30件を下回る

「後継者難倒産」は、2024年4月に21件(前年同月50件、58.0%減)発生した。前年同月から半減以下と、3カ月ぶりに前年同月を下回った。22年12月(27件)以来16カ月ぶりに30件を下回り、これまでの増加基調から減少に転じた。このうち、経営者の病気・死亡が直接の要因となった倒産は10件発生し、4月全体の47.6%を占めた。

■物価高(インフレ)倒産

2024年4月は76件発生、高止まり続く 「値上げ難型」は10件

「物価高(インフレ)倒産」は、2024年4月に76件(前年同月75件、1.3%増)発生した。初めて100件を超えた前月(106件)に比べて大幅に減少した。「物価高」直撃の影響は緩和されつつあるものの、70件を超える高い水準といえる。このうち、十分な価格転嫁ができず経営破綻に至った「値上げ難型」の物価高倒産は24年4月に10件発生した。

今後の見通し

■円安の影響懸念、「物価高倒産」が高水準で推移

「利上げよりもまずは円安対策を」――。企業経営の現場からもこうした声が日増しに高まっていた。日本銀行がマイナス金利政策の解除を決めた3月19日、1ドル=150円台だった円相場は4月中旬から下旬にかけて円安ドル高が進み、4月29日には一時1ドル=160円台を付けた後、154円台まで上昇するなど乱高下した。政府・日銀による大規模な円買いドル売り介入があったとの観測が強まるなか、5月3日には一時1ドル=151円台まで急騰した。
急速な円安進行は輸出企業の利益を押し上げる半面、輸入価格の上昇を通じて家計の負担を増やすとともに、企業には仕入れコストのさらなる増加を招く。すでに賃上げや原材料高の負担が重く、価格転嫁が十分に進まず、事業継続が困難となる瀬戸際まで追い込まれている中小企業もある。2023年度の「物価高倒産」は837件と全倒産の約1割を占め、過去最多を更新。2024年4月の「円安倒産」は5件判明し、23カ月連続の発生となった。日米金利差を背景に円安基調は続くとみられ、今後も関連倒産が高水準で推移する可能性が高い。

■「コンプラ違反倒産」多発、「粉飾倒産」にさらなる警戒を

「コンプライアンス違反倒産」も相次いでいる。2023年度は351件判明し、3年連続で前年度を上回る高水準が続いた。4月の負債額トップとなった三重県の産業廃棄物処理業者、川越建材興業(負債36億円、破産)も過去に産業廃棄物の不法投棄が社会問題となっていた。昨年不正が発覚した中古車販売大手のビッグモーターやダイハツ工業のその後の状況をみても、法令遵守違反に対する社会の目は厳しさを増していることが分かる。些細な違反でも大きな信用失墜につながりかねず、倒産に至る最悪のケースが今後も相次ぎそうだ。アフターコロナで金融機関の現場は「頻繁に発生する粉飾事案の対応に追われている状況」(地銀融資部)にあり、発覚から短期間で破綻に至る「粉飾倒産」にこれまで以上に警戒度を高める必要がある。
取引先との不自然な手形取引の末、3月に破産したテックコーポレーション(広島、負債191億9400万円)の余波が広がっている。その後1カ月で取引先の連鎖倒産がこれだけ発生するのは最近では稀な事例であり、今後の実態解明と残された取引先の動向を注視したい。

■前年比2割増ペース、2024年は1万件突破も

民間ゼロゼロ融資の返済開始は4月、最後のピークを迎えた。5万1423件にのぼる融資が元金据置期間を終え、多くの中小企業が借入金の返済に追われることになる。元金を返済した企業もあれば、借り換えや返済条件を変更した企業もあり、対応は分かれたことだろう。2023年度の「ゼロゼロ融資後倒産」は699件で、前年度の1.5倍と過去最多を更新した。全倒産の8%にとどまるが、あくまで取材時に判明した件数のみカウントしているため、氷山の一角とみられる。民間ゼロゼロ融資約136万件の返済状況(中小企業庁「中小企業政策審議会金融小委員会」資料、1月末時点)をみると、「完済」は全体の14%に過ぎず、5月以降、返済見通しが立たず事業継続をあきらめる企業がさらに増えるおそれもある。
2024年1~4月の倒産件数(全国・全業種)は3064件となり、前年同期(2530件)を21.1%上回っている。円安、物価高、賃上げ、コロナ支援策縮小、伸び悩む個人消費など、中小企業を取り巻く経営環境は依然として厳しい。2024年の企業倒産は単純計算ながら、現状の「2割増」のペースで推移すれば、前年(8497件)を大きく上回る1万件突破も十分視野に入る。

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2024年4月報(倒産動向データ編)