レポート

倒産集計 2025年 9月報

2025/10/08

倒産件数、4カ月連続で前年を上回る
負債「5000万円未満」が過去2番目に多く

概況・主要ポイント

  1. 倒産件数は909件(前年同月741件、22.7%増)と、4カ月連続で前年を上回った。9月としては、2010年(943件)以来15年ぶりに900件を超えた。2025年1-9月の累計は7619件で、前年同期(7294件)を325件・4.5%上回った
  2. 負債総額は986億400万円(前年同月1311億8700万円、24.8%減)となり、2カ月ぶりに前年を下回った。負債額トップは、アミューズメント施設を運営していた「㈱ネクサスエンタープライズ」の約65億円
  3. 業種別にみると、7業種中6業種で前年を上回った。『サービス業』(前年同月209件→225件、7.7%増)が最も多かった。次いで『小売業』(同159件→209件、31.4%増)が続き、『サービス業』とともに9月としては2000年以降で最多となった
  4. 主因別にみると、『不況型倒産』は757件となり、4カ月連続で前年を上回った
  5. 態様別にみると、『清算型』倒産は881件となり、4カ月連続で前年を上回った
  6. 規模別にみると、負債「5000万円未満」が572件と、2024年5月(624件)に次いで過去2番目に多かった
  7. 業歴別にみると、『新興企業』が269件となり、5カ月ぶりに前年を上回った
  8. 地域別にみると、9地域中8地域で前年を上回った。最も件数が多かったのは、『関東』(前年同月271件→294件、8.5%増)で、『近畿』(同180件→247件、37.2%増)が続いた。47都道府県中29都道府県が前年を上回った

業種別

『小売業』『サービス業』が9月としては2000年以降で最多

業種別にみると、7業種中6業種で前年を上回った。『サービス業』(前年同月209件→225件、7.7%増)が最も多かった。次いで『小売業』(同159件→209件、31.4%増)が続き、『サービス業』とともに9月としては2000年以降で最多となった。『製造業』(同74件→114件、54.1%増)は7カ月ぶりに前年を上回り、過去1年で最も高い増加率を示した。
業種を細かくみると、『建設業』では、「職別工事」(前年同月57件→84件)が全体を押し上げ、特にとび工事や土木、コンクリート工事の増加が目立った。『小売業』では、「家具・じゅう器・家庭用機械器具小売」(同4件→14件)が大幅に増加した。『製造業』では、仕入れコスト増加の影響を受けて「食料品・飼料・飲料製造」(同9件→19件)が倍増した。

倒産主因別

「販売不振」が744件、全体の81.8%を占める

主因別にみると、「販売不振」が744件(前年同月622件、19.6%増)で最も多く、全体の81.8%を占めた。「業界不振」(前年同月1件→7件、600.0%増)は2カ月連続で前年を上回った。このほか、「売掛金回収難」(同5件→6件、20.0%増)を含めた『不況型倒産』は757件(同629件、20.3%増)となり、4カ月連続で前年を上回った。
「放漫経営」(前年同月6件→24件、300.0%増)は前年から4倍に増加し、2024年10月(26件)以来約1年ぶりに20件台となった。「経営者の病気、死亡」(同21件→32件、52.4%増)は2カ月ぶりに前年を上回った。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を『不況型倒産』として集計

倒産態様別

「民事再生法」は個人事業主のみの25件、法人は初めて発生せず

倒産態様別にみると、『清算型』倒産は881件(前年同月720件、22.4%増)となり、4カ月連続で前年を上回った。『再生型』倒産は28件(同21件、33.3%増)発生し、2カ月ぶりに前年を上回った。
『清算型』では、「破産」が838件(前年同月698件、20.1%増)と4カ月連続で前年を上回った。「特別清算」は43件(同22件、95.5%増)で、9月としては2000年以降で最多となった。
『再生型』では、「民事再生法」が25件(前年同月20件、25.0%増)だった。ただし、全て個人事業主が対象となり、2000年以降で初めて法人が発生しなかった。

規模別

負債「5000万円未満」は572件、過去2番目の多さ

負債額を規模別にみると、「5000万円未満」が572件(前年同月450件、27.1%増)と、2024年5月(624件)に次いで過去2番目に多かった。「1億円以上5億円未満」が167件(同130件、28.5%増)と2カ月ぶりに前年を上回り、中小零細規模の倒産が目立った。
資本金を規模別にみると、『個人+1000万円未満』の倒産が667件(前年同月531件、25.6%増)となり、9月としては2000年以降で最多となった。

業歴別

『新興企業』が269件、5カ月ぶりに前年を上回る

業歴別にみると、「30年以上」が291件(前年同月245件、18.8%増)で最多となった。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は16件(同11件、45.5%増)発生した。「20年未満」は98件(同69件、42.0%増)と大幅に増加し、2カ月ぶりに前年を上回った。
業歴10年未満の『新興企業』〈「3年未満」(前年同月28件→39件、39.3%増)、「5年未満」(同46件→53件、15.2%増)、「10年未満」(同137件→177件、29.2%増)〉は269件(前年同月211件、27.5%増)となり、5カ月ぶりに前年を上回った。内訳を業種別にみると、「サービス業」(同81件→82件、1.2%増)が最も多く、「小売業」(同51件→63件、23.5%増)、「建設業」(同36件→52件、44.4%増)が続いた。

 

地域別

9地域中8地域で前年を上回る 『関東』が最多、4カ月連続で前年を上回る

地域別にみると、9地域中8地域で前年を上回った。最も件数が多かったのは、『関東』(前年同月271件→294件、8.5%増)で、4カ月連続で前年を上回った。『近畿』(同180件→247件、37.2%増)が続き、9月としては過去3番目に多かった。
最も増加率が高かったのは、『四国』(前年同月10件→20件、100.0%増)で、4カ月ぶりに前年を上回り、「香川」を除く3県で前年から大幅に増加した。次いで、『北陸』(同25件→41件、64.0%増)が続き、なかでも「富山」(同2件→16件)の急増が目立つ。『中部』(同96件→139件、44.8%増)は2カ月ぶりに増加した。
単月でみると、47都道府県中29都道府県が前年を上回った。

景気DI

2025年9月の景気DIは43.4、改善傾向

2025年9月の景気DIは前月比0.1ポイント増の43.4となり、小幅ながら4カ月連続で改善した。国内景気は、猛暑特需の一巡や企業収益の下押しもあったが、好調な建設需要やデジタル投資の拡大で持ち直し、上向き傾向が続いた。
9月は、公共工事の発注増と各地の再開発が建設関連の景況感を押し上げた。日経平均株価が過去最高値を更新したなか、デジタル関連の設備投資意欲も堅調だった。月後半が好天に恵まれ、個人向けサービスも上向いた。他方、猛暑特需の一巡に加え、原材料・物流コストの高止まりが続いた。仕入単価の上昇の販売単価への転嫁が再び遅れはじめ、企業収益への下押し圧力が増してきた。

今後の見通しは横ばい傾向

今後は、手取り収入の改善など実質購買力の回復を通じた個人消費の底上げが焦点となる。旅行需要の底堅さは宿泊や外食などの関連業種に波及し、裾野の広がりも期待される。AI関連の設備投資も追い風だ。一方で、最低賃金の引き上げに加え、企業収益の下押し圧力や人手不足は重しとなろう。日銀の利上げや米国の利下げ、トランプ関税の影響も注視が必要だ。今後の国内景気は、家計の実質購買力の行方に注目しつつ、当面横ばい傾向での推移が見込まれる。

今後の見通し

オルツが粉飾で倒産、不正を見抜く方法に変化

4月1日に3万5961円(始値)だった日経平均株価は、9月25日には終値で最高値となる4万5754円まで上昇したほか、「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」などの世界規模のイベント開催もあり、2025年4月~8月の訪日外客数は約1784万5000人と前年同期から約15.5%増加した。こうした要素が経済にプラスの相乗効果を生む一方、物価高、人手不足、後継者難などを要因とする中小事業者の倒産が引き続き高水準に推移したことで、2025年度上半期の全国企業倒産は5146件となり、年度上半期として12年ぶりに5000件を超えた。
アフターコロナの局面で倒産企業の負債の小型化が進む一方、粉飾倒産の散発が続いている。2025年度上半期に話題となったのはオルツ(東証グロース)の倒産だ。7月30日に東京地裁へ民事再生法を申請したが、過去4期の売り上げについて、最大9割が循環取引による過大計上だったことが判明。ステークホルダーとの関係性やチェック体制のあり方が問われるきっかけとなった。近年話題となった複数の粉飾倒産事案を事前に見破ったある金融関係者は、そうした企業を見つけるポイントについて「コロナ禍で安定した業績を装っている」と話す。財務諸表だけに目を向けるのではなく、発想をアナログ化して、数字と実態の乖離や違和感に気づけるかが重要だ。

「休廃業・解散」は倒産の6.9倍、年間7万件ペース

2025年の休廃業・解散件数は1-9月で約5万2300件となり、2016年の調査開始以降で最多となっている2024年(通年で6万9019件)の同期を5.4%上回った。これは今年1-9月に発生した全国企業倒産件数(7619件)の6.9倍にあたる。このままのペースで推移すると2025年(通年)の休廃業・解散件数は、初めて7万件を超える可能性がある。
休廃業・解散が増加している要因として、経営者の高齢化や後継者難が挙げられるが、同様の理由で「経営者の病気・死亡」が主因となった倒産も増え続けている。2024年に「経営者の病気・死亡」が主因となった倒産は通年で316件となり、2000年以降で最多を記録。2020年以降の4年間で42.3%増加した。2025年は1-9月で249件発生し、2024年を上回るペースで推移。倒産全体の3.3%を占めている。今後は、さらに深刻化する高齢化問題とともに「景気や業績に関係なく増え続ける倒産」として、これまで以上に動向が注目されることになる。

2025年度下半期も倒産件数は5000件超えが濃厚

9月16日、日本の対アメリカ輸出額全体の約3割を占める自動車への分野別関税が15%に決定したことや、経営再建中の日産自動車の動向などを背景に当面注目が集まる自動車業界。これまで各メーカーは輸出車両価格の引き下げを行うなどして分野別関税に対応してきたが、今後は生産・輸出車種の絞り込みや価格の引き下げ幅の縮小、価格引き下げを中止することなどで、その影響が中小部品メーカーへ受注単価引き下げなどの形で及ぶ可能性も否定できない。
2025年度下半期は、自動車関連業界のほか、2024年度上半期比で倒産増加が目立った建設業界を中心に動向が注目されることになるだろう。コロナ禍をゼロゼロ融資で乗り切ったものの、物価高、価格転嫁、人手不足、賃上げといった対応に限界を感じて事業継続を断念するサービス業、小売業を中心とした中小事業者の「あきらめ型倒産」を中心に、倒産件数は引き続き5000件を超え、年度通期では1万件を超えるとみられる。

次回発表日は11月11日(火)13時30分を予定しております。

詳細はPDFをご確認ください
2025年度上半期報・9月報(倒産動向データ編)