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2012年1月11日

TDB景気動向調査(特別企画):金融円滑化法に対する企業の意識調査

リスケを受けた企業の経営改善計画、33.9%が「計画を下回る」

〜 金融機関の返済猶予への姿勢、35.0%が最近「厳しくなってきている」と認識 〜

はじめに

リーマン・ショック後の2009年12月から2年以上にわたり施行され、2012年3月に期限を迎える「中小企業金融円滑化法」(金融円滑化法)は、2012年の通常国会に同法改正案が提出され、再び1年間延長される公算が高くなった。


そこで、金融円滑化法に基づく企業向け融資の条件変更等に対する企業の意識について調査を実施した。


調査期間は2011年12月16日〜2012年1月5日。
調査対象は全国2万3,311社で、有効回答企業数は1万578社(回答率45.4%)。

なお、金融円滑化法に対する調査は2009年10月、12月、2010年2月に続いて4回目。

調査結果

  • 金融円滑化法利用企業のうち、半数超が複数回利用
    金融円滑化法の利用企業のうち、50.7%が2回以上利用している。


  • 条件見直し内容、3社に2社が返済繰り延べを実施、返済額減額も35.0%
    金融円滑化法利用企業の67.2%が6カ月未満から5年以上までの返済繰り延べを実施。毎回の返済額の減額も35.0%に達する。企業の経営環境が大きく変わるなかで、運用面で柔軟に対応している様子がうかがえる。


  • 経営改善計画、リスケを受けた企業の33.9%が「計画を下回る」
    リスケを受けた企業の41.7%が当初の改善計画をほぼ計画どおり進めているものの、計画を下回っている企業も33.9%にのぼる。


  • 金融機関の返済猶予への姿勢、35.0%が最近「厳しくなってきている」
    半数近くが金融機関の姿勢は変わっていないとみている一方で、3社に1社が厳しくなっていると認識。企業と金融機関の双方での認識のずれが生じてくると懸念材料になる可能性がある。


  • 需要の本格回復時期、企業の33.8%が長期的にも本格回復を見込まず
    全社の3社に1社が需要回復を見込まず悲観的に考えている。

金融円滑化法利用企業のうち、半数超が複数回利用

金融円滑化法による借り入れの条件変更などを利用したことがあるか尋ねたところ、1万578社中655社、構成比6.2%の企業が「利用した(現在利用している)」と回答した。
そこで、金融円滑化法の利用企業655社に対して、現在までに利用した回数を尋ねたところ、「1回」が同44.6%(292社)で最多となった。また、「2回」が同30.2%(198社)と続き、2回以上利用した企業は合わせて同50.7%(332社)となり、半数超の企業が複数回の借り入れ条件変更などを行っていた。

条件変更の見直し内容、3社に2社が「返済繰り延べ」を実施、「毎回の返済額の減額」も35.0%

金融円滑化法の利用企業655社に対して、条件変更の見直しの内容について尋ねたところ、「毎回の返済額の減額」が同35.0%(229社)で最も多かった(複数回答、以下同)。他方、「返済繰り延べ(6カ月〜1年未満)」(同24.1%、158社)や「返済繰り延べ(1年〜3年未満)」(同21.5%、141社)が続くなど、6カ月未満から5年以上までいずれかの返済繰り延べを1度でも実施した企業は同67.2%(440社)になり、3社に2社が見直し内容として「返済繰り延べ」を実施していた。
業界別にみると、「毎回の返済額の減額」では『不動産』(同47.1%、8社)や『小売』(同43.2%、16社)、『運輸・倉庫』(同42.9%、9社)などが高かった。「返済繰り延べ」は『建設』(同73.6%、64社)が7割を超えた。
企業からは、「返済の長期リスケの支援を国がして欲しい」(看板・標識機製造、岐阜県)や「需要回復が始まっているので返済条件変更は継続して欲しい」(娯楽用具・玩具製造、東京都)、「借金を抱えたままではやりくりが苦しい」(電気工事、広島県)といった声が挙がった。金融円滑化法を利用している企業では、返済繰り延べを実施する企業が特に多いが、毎回の返済額の減額も3社に1社が実施している。企業の経営環境が大きく変わるなかで、条件変更の内容について運用面で柔軟に対応している様子がうかがえる。

経営改善計画、リスケを受けた企業の33.9%が「計画を下回る」

金融円滑化法の利用企業655社に対して、リスケを受けた当初の改善計画に対する現在の状況について尋ねたところ、「ほぼ計画どおり」が同41.7%(273社)で最多となり、4割超の企業が計画どおりの経営改善が進んでいる様子がうかがえる。一方、「改善計画を下回っている(下回った)」と回答した企業は同33.9%(222社)(「改善計画を下回っている(下回った)」(29.9%、196社)と「改善計画を大幅に下回っている(下回った)」(同4.0%、26社)の合計)となり、3社に1社が経営改善計画を下回る状況となっている。また、改善計画を上回っている企業は同14.4%(94社)(「改善計画を大幅に上回っている(上回った)」(同3.8%、25社)と「改善計画を上回っている(上回った)」(同10.5%、69社)の合計)で、1割台にとどまった。
企業からは「当初の経営改善計画策定後、製造拠点の海外移転や販売単価の大幅下落、販売先の受注減、政治の混迷など外部環境が大きく変化し、改善ペースが遅れている」(精密測定器製造、長野県)や「金融円滑化法が経営改善や事業再生の転機となっておらず、倒産時期の先送り的要素が強く感じられる」(養鶏、徳島県)といったことを指摘する意見があった。

金融機関の返済猶予への姿勢、35.0%が最近「厳しくなってきている」と認識

金融円滑化法の利用企業655社に対して、最近の金融機関の返済猶予に対する姿勢(再リスケおよび現リスケに対するモニタリングの強化)について尋ねたところ、「変わらない」が同45.5%(298社)で最多となった。一方で、厳しくなってきていると回答した企業は同35.0%(229社)(「やや厳しくなってきている」(同24.6%、161社)と「かなり厳しくなってきている」(同10.4%、68社)の合計)に達し、3社に1社は金融機関の返済猶予に対する姿勢が厳しくなっていると認識していることが明らかとなった。
具体的には、「金融機関のモニタリングなど非常に工数をとられて純粋な企業活動に支障がある」(惣菜製造、大阪府)や「円滑化法やリスケの利用は実際には倒産予備群のレッテルを金融機関に貼られてしまう」(建設、三重県)といった声のほか、「金融機関にリスケを要求すると、借り入れが困難になると言われリスケさせてもらえない」(建設、兵庫県)などの意見もみられた。
最近の金融機関の返済猶予に対する姿勢について、半数近くの企業が変わらないと感じているものの、3社に1社が厳しくなっていると認識している。金融円滑化法の再延長が議論されるなか、企業と金融機関の双方における認識のずれが生じてくるとリスケの実施において懸念材料となる可能性がある。

需要の本格回復時期、企業の33.8%が長期的にも本格回復を見込まず

金融円滑化法は2013年3月まで再び延長される予定となっているが、企業が業況を回復させ円滑な取引を進めるためには早期の需要回復が欠かせない。そこで、自社の属する地域や業界の需要が本格回復する時期はいつ頃になるか尋ねたところ、「長期的に本格回復する見込みはない」と回答した企業が1万578社中3,574社、構成比33.8%で最多となり、企業の3社に1社が需要の本格回復という見込みを持たず悲観的に考えている様子がうかがえる。次いで、「2013年」が同18.4%(1,943社)で続いた。また、「2012年」は同9.4%(999社)と1割を下回っており、「すでに本格回復している」(同3.1%、326社)と合わせても、2012年までに需要が本格回復するとみている企業は同12.5%(1,325社)と1割程度にとどまっている。さらに、「分からない」(同28.3%、2,993社)が3割近くに達しており、需要回復についての見通しを持てない状況にある企業も多くなっている様子がうかがえる。
企業の6.2%が金融円滑化法を利用しているなかで、そのうち経営改善は半数超が当初の計画どおりかそれ以上で進んでいる。しかし、計画を下回っている企業も3社に1社に達している。さらに、金融機関の返済猶予に対する姿勢もこれまでより厳格さを求められる場面が増えてくる可能性もある。また、需要が回復する時期を明示することが困難だと感じる企業も多い。企業が直面する危機を単に先送りするだけでなく、日本経済全体の景気を回復させていくことが不可欠といえる。

詳細は本文(PDF 359KB)をご覧ください。

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上記の調査レポートはTDBのインターネット調査によるものです

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景気動向調査:http://www.tdb-di.com/

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