2010年7月5日
TDB景気動向調査(特別企画):参院選に対する企業の意識調査 |
企業の44.9%がこれまでの政策を「転換」すべき 〜 過半数が企業努力の「限界」にあり、企業支援の拡充を望む 〜 |
はじめに
政権交代後、初めての国政選挙となる参議院議員通常選挙(改選数121)が6月24日に公示、7月11日に投開票されることとなった。今回の参院選では、高い支持率でスタートした連立与党の政権運営について問われている。
そこで帝国データバンクでは、参院選に対する企業の意識について調査を実施した。
調査期間は2010年6月21日〜30日。
調査対象は全国2万1,924社で、有効回答企業数は1万1,257社(回答率51.3%)。
調査結果
参院選後の政権、これまでの政策を「転換」すべきと回答した企業は44.9%
参院選後の政権はこれまでの政策をどのように導いていく必要があるか尋ねたところ、「転換(抜本的な見直しによって政策転換を図る)」すべきと回答した企業は1万1,257社中5,057社、構成比44.9%となり、半数近い企業が政策の抜本的な見直しをするべきだと回答した。また、「推進(修正を加えながらこれまでの政策を推進させていく)」すべきと回答した企業は同35.6%(4,011社)となり、「転換」すべきと考えている企業が「推進」を上回った。
「転換」すべきと回答した企業を規模別にみると、「大企業」同41.9%(1,120社)に対し、「中小企業」45.9%(3,937社)、「小規模企業」47.5%(1,136社)と規模が小さいほど割合が高い傾向にある。
企業からは、「家計から企業への政策に転換してもらいたい。雇用・所得の改善(安心感)なくして消費にはつながらない」(建機リース、埼玉県)、「現状を直視した国内経済重視の政策を」(舗装材製造、島根県)という指摘のほか、「選挙のための施策ではなく、国民や将来の日本のための施策を行って欲しい」(男子服卸売、大阪府)など、将来のビジョンを見据えた施策を求める声が目立った。
「出産・子育て支援」、「教育支援」など家計支援、半数を超える企業が見直しを求める
総選挙後の政権が「転換」すべきと考える政策を尋ねたところ、「高速道路料金の無料化」が1万1,257社中6,423社、構成比57.1%(複数回答、以下同)と約6割の企業が回答し最多となった。次いで「出産・子育て支援」(同46.7%、5,256社)、「教育支援」(同39.7%、4,466社)が続いた。「出産・子育て支援」、「教育支援」のいずれかを回答した企業は6,079社で同54.0%となり、半数を超える企業が家計支援に見直しを求めている。また、第4位には「公共事業費の削減」(同37.8%、4,260社)が挙がった。特に公共工事の減少が企業業績に直結する『建設』では1,568社中1,033社、構成比65.9%が「転換」すべきと回答した。
一方、「推進」すべきと考える政策を尋ねたところ、国内政策では「行政改革による無駄の洗い出し」(同85.0%、9,564社)が全体の8割を超えた。次いで、「法人税率の引き下げ」(同71.2%、8,015社)、「雇用支援」(同64.3%、7,236社)となり、企業負担の軽減に取り組んで欲しいと考えている企業が多い。
企業からは、「単なるバラマキはやめ、効率的な財源投入を期待」(食品製造、福岡県)、「無駄遣いの洗い出しなどを徹底的にして、末端の現場に本当に必要な資金が入るようにしてほしい」(家具製造、北海道)など予算配分の見直しを進めるほか、「報酬や構造が民間とかけ離れている公務員制度の改革が急務」(めん製造、兵庫県)、「衆参両議院の議員定数是正、議員給与・手当ての削減をまず行ってから、消費税増税を掲げるべき」(服飾品小売、京都府)など、消費税の引き上げの大前提として立法府も含めた行政改革を徹底するべきという声が多く挙がった。また、「法人税率を下げ、企業が国際競争に勝てるようにしないと、雇用の場が奪われてしまう」(倉庫、北海道)といった意見もみられた。公共事業の削減に関しては「リニアモーターカー構想、戦略的ハブ港・空港や未来型都市構想、新エネルギーなど長期目標を立て、地道に公共事業として投資していくことが肝心」(建設、神奈川県)など、将来に向けた選択投資は重要とする意見も挙がった。
全体として参院選後はこれまでの政策を抜本的に見直す「転換」としたなかで、個別の政策では「推進」すべきと回答する企業が多いのは、これまでの政権が主な施策としている家計支援などの直接的な支援策に対する見方が厳しいためとみられる。「推進」すべきとする政策では、日本企業の世界での競争力向上や企業負担の軽減を図る法人税率の引き下げや雇用支援、金融対策など企業向けの施策が多く挙がった。
また、外交政策について「転換」すべきとする政策は「日米関係」(同24.4%、2,750社)が最多で、次いで「核問題や拉致問題など対北朝鮮政策」(同20.5%、2,311社)となった。また、「推進」すべきと考える政策は、「中国、韓国などアジア近隣諸国との関係」が同68.9%(7,760社)と約7割にのぼる。次いで、「自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)など貿易政策」(同62.7%、7,059社)となった。外交政策は総じて「推進」を挙げる企業が多く、「転換」で最も多い「日米関係」は2割台にとどまるなど、外交政策に大きな見直しを求める企業は少ない。
企業からは、日本とアジア近隣諸国との重要度が増している様子がうかがえ、対アジアでの自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)の遅れを指摘する声もみられた。また、アジアだけではなく「環太平洋地区との連携も必要」(鉄鋼卸売、愛知県)と、より広い範囲での関係構築を望む意見もある。
収益性の向上などの企業努力、過半数が「限界」
国内では依然として需要不足が続いており、国内景気の自律回復にはほど遠い状況にある。また、一部原材料の上昇からさらなる収益性の低下を余儀なくされる懸念もある。そこで、企業にコスト削減による収益性の向上などの企業努力に取り組める余地があるかどうか尋ねたところ、「限界(余地はない)」(「ほぼ限界」「限界」の合計)と回答した企業は1万1,257社中5,901社、構成比52.4%となり、過半数が企業努力の限界にあるという結果となった。一方、「余地はある」(「余地は大いにある」「余地はややある」の合計)とした企業は同34.1%(3,834社)となった。
「限界」と答えた企業を規模別でみると、「大企業」(46.0%、1,231社)が4割台なのに比べ、「中小企業」(54.4%、4,670社)では過半数となっており、うち「小規模企業」(59.0%、1,412社)では約6割が企業努力の限界を訴えた。
企業からは、厳しい経営環境を訴える声が多くを占め、なかには「人件費を主体とする業種は賃金や賞与をカットする以外に方法はない」(機械サービス、広島県)、「すでに給与の削減を実施しているが、これ以上の削減は生活基盤の変更が必要となるので、現状では無理」(設計、大阪府)など労働者の所得にまで影響が及んでいる様子もうかがえた。「“コンクリートから人へ”という政策を打ち出した結果、不景気がさらに進んだ」(機械製造、愛知県)というように、政府が家計支援に重きを置いたものの、全体の需要不足解消には至らず、すでに過半数が企業努力に限界を感じる状況まで追い込まれている。
企業向けの政策が「推進」すべき政策の上位に挙がったのは、企業努力が限界にあり経営が厳しさを極めるなかで、政策による支援の拡充を期待しているものに他ならない。企業努力の限界は、家計を大きく左右する雇用や所得に影響するだけでなく、日本経済の推進に向けた開発投資の遅れにもつながる。政策は産業から個人向けへと恩恵を受ける対象を移すのではなく、家計と企業の双方に好影響を及ぼすように施行することが景気底上げにつながり、今後の日本経済の発展が望めるのである。参院選後には、遅れている企業支援の拡充という課題の解決を早急に図らなくてはならない。
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上記の調査レポートはTDBのインターネット調査によるものです
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