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2010年2月3日

TDB景気動向調査(特別企画):2010年度の賃金動向に関する企業の意識調査

10年度の賃金改善、企業の約3割が実施見込みも2年連続で低水準

〜 労働条件の方針決定、「賃金」より「雇用」が最大の焦点に 〜

はじめに

リーマン・ショック後の世界同時不況が日本経済において雇用・所得不安をもたらしているなか、雇用確保とともにベースアップや賞与(一時金)の引き上げなど賃金改善の動向が注目されている。さらに、政府による家計への直接支援など個人消費が今後の景気の下支えとなるか否かが重要視されており、その点からも2010年度の賃金動向に関心が集まっている。

そこで帝国データバンクでは、2010年度の賃金動向に関する企業の意識について調査を実施した。

調査期間は2010年1月20日〜31日。

調査対象は全国2万1,781社で、有効回答企業数は1万651社(回答率48.9%)。

なお、賃金に関する調査は2006年1月、2007年1月、2008年1月、2009年1月に続き5回目。

調査結果

2010年度の賃金改善、「ある」と見込む企業は31.8%にとどまる

2010年度の企業の賃金動向について尋ねたところ、正社員の賃金改善(ベースアップや賞与、一時金の引き上げ)が「ある(見込み)」と回答した企業は1万651社中3,388社、構成比31.8%となり、前回調査(2009年1月度)の2009年度見込み(同27.9%)を3.9ポイント上回った。一方、「ない(見込み)」と回答した企業は同40.5%(4,315社)となり、非常に厳しい賃金動向が続くと見込まれている。

「ある(見込み)」を地域別にみると、『東北』(同24.2%、161社)や『北海道』(同29.1%、158社)など10地域中4地域で3割を下回った一方、『近畿』(同35.0%、613社)や『南関東』(同33.2%、1,186社)など6地域で3割を上回った。また、2009年度見込みと比べると全10地域で前回を上回っている。

業界別では、『農・林・水産』(同42.1%、16社)が4割を超えたほか、『サービス』(同34.6%、509社)や『卸売』(同34.2%、1,158社)、『製造』(同33.7%、1,008社)、『小売』(同31.8%、141社)が3割を超えた。一方、「ない(見込み)」では、『建設』(同49.1%、731社)や『不動産』(同43.9%、123社)、『運輸・倉庫』(同43.3%、170社)などが高い。

企業からは、「2010年度は先行きが見えず現状維持が精一杯」(広告関連サービス、大阪府)や「改善するのは初任給と55歳以降の賃金で、その他は資格・能力に応じた評価給での運用に変わりない」(金融、北海道)といった声のほか、「デフレ傾向が強く0%でも実質賃上げと考える人が多い」(輸送用機械・器具製造、東京都)と指摘する意見もみられた。

2009年度実績では、賃金改善が「あった」企業は同39.5%(4,206社)と2008年度実績(同55.1%)から15.6ポイント低下し、2008年度より賃金環境が大幅 に悪化したことを示している。しかし、2010年度に賃金改善を見込む企業(同31.8%)は2009年度実績からさらに低下していることから、世界同時不況による景気後退は依然として2010年度の賃金に悪影響を与えていく可能性がうかがえる。


改善の具体的内容、ベースアップ27.2%、賞与(一時金)16.6%

2010年度の正社員における賃金改善の具体的内容は、「ベースアップ」が1万651社中2,900社、構成比27.2%となり、「賞与(一時金)」は同16.6%(1,772社)となった。また、前回調査(2009年度見込み)と比べると、それぞれ、2.0ポイント、4.0ポイント上昇した。また、2010年度はすでに10.5%の企業で賃金の引き下げを予定しており、定昇の凍結や賞与(一時金)カットなどもやむを得ない状況が続いている。

世界同時不況による景気後退のなかで、2009年度見込みはベア、賞与(一時金)ともに大幅な下落を示した。2010年度は前年度見込みよりもベア、賞与(一時金)ともわずかに増加する見込みであるが、前々回調査(2008年度見込み)と比較すると、依然として大きく下回っている。成果主義の導入などにより賃金は賞与(一時金)が先行して改善する状況にあることがうかがえる。


賃金改善をする理由、「労働力の定着・確保」が5割超で最多、改善しない理由では、「自社の業績低迷」が8割弱

賃金改善が「ある(見込み)」と回答した企業に理由を尋ねたところ、最も多かったのは「労働力の定着・確保」で3,388社中1,785社、構成比52.7%(複数回答、以下同)だったものの、前回調査(同58.5%)からは5.8ポイント低下した。労働市場の需給が大幅に緩和した前年以上に、需給緩和の流れが反映される結果となった。次いで、「自社の業績拡大」(同40.9%、1,385社)が多く、前回調査(同34.5%)から6.4ポイント上昇した。また、「同業他社の賃金動向」(同12.2%、412社)、「物価動向」(同5.3%、179社)、「団塊世代の退職による人件費・労務費の減少」(同5.2%、175社)が続いている。

一方、賃金改善が「ない」理由では、「自社の業績低迷」が4,315社中3,372社、構成比78.1%(複数回答、以下同)と8割近くに達し、前回調査(同76.8%)から1.3ポイント増加した。次いで、「同業他社の賃金動向」が同18.1%(779社)となり、約2割の企業が様子見の状況にある。さらに、「物価動向」(同15.2%、655社)が前回調査(同10.7%)から4.5ポイント増加し、デフレ状況を反映した賃金改善の抑制要因となった。また、「内部留保の増強」(同11.0%、474社)や「人的投資の増強」(同7.0%、304社)など賃金水準を抑制して他の目的に振り分ける姿勢が続いた。

具体的には、「変動費の削減は限界に近づいており、固定費を増やすわけにはいかない状況」(鉄粉製造、東京都)と指摘する意見がみられた一方で、賃金を改善するとした企業からは「2009年度に減少した分を改善」(自動車部品製造、静岡県)、「業績改善が原資になるが、従業員の士気向上が必要な時期にきている」(環境コンサルタント、東京都)といった声も挙がっている。

前回調査(2009年度見込み)と比較して、2010年度見込みの賃金改善は「自社の業績拡大」で実施する企業が増加する一方で、「自社の業績低迷」で実施しない企業も増加している。企業業績を背景として賃金改善の有無が分かれる結果となった。


非正社員、54.3%が「賃金改善の見込みなし」と回答、「ある見込み」は12.8%にとどまり、厳しい賃金状況が続く

非正社員の2010年度の賃金動向については、賃金改善が「ある(見込み)」と回答した企業は非正社員を雇用している企業8,332社中1,065社、構成比12.8%となった。一方、「ない(見込み)」と回答した企業は同54.3%(4,526社)と2年連続で5割超を占めた。今回の景気後退により正社員以上に非正社員の雇用調整が進むなかで、前年と同様に厳しい賃金状況が続いている様子が浮き彫りとなった。

企業からは、正社員と非正社員との賃金格差について、「本来は個々人の業績評価を反映するべきだが、職種・評価の困難や平等公平性など難しさを含むため、べき論と実践論とではギャップが残る」(専門サービス、東京都)など企業経営における困難さを指摘する意見のほか、「格差が問題となれば人員を削減せざるを得ない」(スーパー、秋田県)や「雇用確保のためには格差は必要だが、正社員の法的な過保護が非正社員にしわ寄せされている」(金属製品塗装、滋賀県)といった声が挙がった。

総じて賃金の先行きが萎縮するなかで、正社員と非正社員の格差拡大が一段と進むことが懸念される。


労働条件に関する方針決定、「賃金」より「雇用」が最大の焦点に

2010年度の労働条件に関する方針決定における最大の焦点を尋ねたところ、1万651社中3,984社、構成比37.4%の企業で「雇用」が最も焦点になると回答し、雇用を最優先する企業が最多となった。次いで、「賃金および雇用」が同33.2%(3,533社)となり、賃金と雇用の両方を重視する企業も3社に1社となった。一方、「賃金」と回答した企業は同11.6%(1,239社)と1割程度であった。

地域別にみると、「雇用」は『中国』(同42.6%、278社)が最多となったほか、『北陸』(同40.4%、207社)が高くいずれも4割を超えた(4ページ参考表@参照)。「賃金および雇用」の両方が焦点になるとした企業は『中国』(同28.3%、185社)が2割台だったほかは、『四国』(同35.3%、115社)など10地域中9地域で3割を超えていた。「賃金」と回答した企業では『北海道』(同14.5%、79社)が最も多かった。また、業界別では、「雇用」は『製造』(同43.5%、1,300社)などが高く、「賃金および雇用」は『農・林・水産』(同39.5%、15社)が高かった。

急激な雇用環境の悪化を受けて「賃金より雇用を重視」として労働条件の方針を決める企業が多いなか、「賃金も雇用も」と考える企業も3社に1社に達している。


2010年度の個人消費、「縮小」を懸念する企業が61.4%

賃金動向によっても左右される個人消費について尋ねたところ、2010年度は「拡大が期待される」と回答した企業は1万651社中195社、構成比1.8%であった。一方、「縮小が懸念される」は同61.5%(6,546社)と6割超を占めたが、前回調査(同88.5%)から27.0ポイント減少し、「横ばい」との回答は前回調査(同6.5%)から23.1ポイント増の同29.6%(3,155社)となった。2010年度の個人消費は下ぶれ懸念をもつ企業が6割超と依然として多いものの、前年の9割近くが縮小を懸念していた状況と比較すると、個人消費の見通しは改善した。

具体的には、「当分の間は買い控えの反動による購買意欲と環境対策による買い替えで上昇傾向が続く」(機械・器具卸売、埼玉県)と上向きを期待する声がある一方、「エコ特典の浸透にも限界があり、賃金動向により個人消費はさらに厳しくなる」(産業用電気機器卸売、愛知県)との声が聞かれた。また、「デフレスパイラルが加速する」(電気・ガス・水道・熱供給業、福岡県)など、賃金下落を通じたデフレの進行による消費低迷を懸念する意見は非常に多い。

2009年度第2次補正予算が成立したことに加えて、2010年度予算における子ども手当や公立高校授業料の実質無償化など家計所得への直接投入は消費に対して好材料となるものの、賃金や雇用での将来不安の解消がより重要な景気対策である。


詳細は本文(PDF 403KB)をご覧ください。

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上記の調査レポートはTDBのインターネット調査によるものです

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株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課

TEL:03-5775-3163

e-mail:keiki@mail.tdb.co.jp

景気動向調査:http://www.tdb-di.com/

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