2009年3月4日
TDB景気動向調査(特別企画):2009年度の雇用動向に関する企業の意識調査 |
正社員採用、約5割の企業で「予定なし」 〜 ワークシェアリングは約4割の企業が「推進すべき」、課題は「従業員の士気低下」 〜 |
はじめに
世界的な経済危機が深刻化するなか、2009年1月の有効求人倍率は0.67倍と13カ月連続で1倍を下回り、雇用環境が急速に悪化している。しかし、地域別では最高の東京(1.00倍)から青森や秋田(ともに0.35倍)、沖縄(0.32倍)まで雇用状況は大きく異なっているほか、業界間や正社員・非正社員間などでも雇用動向には格差が見られている。
そこで帝国データバンクでは、2009年度の雇用に関する企業の意識について調査を実施した。
調査期間は2009年2月18日〜28日。
調査対象は全国2万451社で、有効回答企業数は1万658社(回答率52.1%)。
なお、雇用動向に関する調査は2005年2月、2006年2月、2007年2月、2008年3月に続き5回目。
調査結果
2009年度の正社員「採用増加」は11.2%へ低下、「採用予定なし」が半数弱
2009年度(2009年4月〜2010年3月入社)の正社員(新卒・中途入社)の採用状況について尋ねたところ、「増加する(見込み含む)」と回答した企業は1万658社中1,191社、構成比11.2%で全体の1割強にとどまった。
業界別では、『サービス』(同15.3%、224社)や『小売』(同15.3%、70社)、『建設』(同13.1%、191社)が全体平均を上回り、内需を中心とする業界で正社員の採用意欲が高い(4ページ参考表@参照)。
また、地域別では『九州』(同13.1%、101社)や『北関東』(同12.2%、79社)で採用増の割合が高かった一方、10地域中で最も低い『東北』でも同8.7%(60社)と地域間格差は4.4ポイントにとどまり、正社員の採用意欲は全国的に抑制傾向が表面化する結果となった。
一方、「採用予定なし」は同45.9%(4,893社)と5割に迫っており、企業の経営環境が急速に悪化するなかで、採用意欲は大幅に低下した。過去4回の調査を通してみると、雇用環境の改善が続いていた2005年度が21.2%、2006年度が25.5%、2007年度が25.2%であった。しかし、サブプライム問題の表面化後、2008年度は30.4%へと増加、2009年度は前年度より15.5ポイント増加する結果となった。
また、業界別では、『不動産』(同59.6%、161社)や『卸売』(同52.7%、1,779社)が高かった。特に、『不動産』は前年度より19.9ポイント増加しており、正社員採用の厳しさが際立っていた。
企業からは、「現在の経済情勢下で、正社員の新規雇用はリスクが大きすぎる」(書籍・映像サービス、北海道)や「業績見通しが立たない段階での新規採用は考えられない」(鉄鋼・同加工品卸、東京都)など、急激な景気悪化で業績の先行きが見えないことにより採用を抑制しているという声が多く挙がった。他方、正社員雇用を増加させる企業からは、「こういう時こそ即戦力の経験者を中途採用するチャンス」(建設、栃木県)や「正社員を募集しても来ない地域でも、現況では補充が可能になった」(食料飲料卸、長崎県)といった意見も多く、地方圏や中小企業などこれまで採用が困難であった企業において、優秀な人材を確保する機会と捉えている。
非正社員雇用、「採用予定なし」が6割に迫る
2009年度の非正社員(派遣社員、パート・アルバイトなど)の採用状況について尋ねたところ、「増加する(見込み含む)」と回答した企業は1万658社中412社、構成比3.9%となり、低下傾向が続いた。一方、「採用予定はない」は同58.6%(6,245社)と6割近くにのぼり、2008年度の39.0%から19.6ポイント増加した。
企業からは、「臨時雇用職員を正社員化する予定」(燃料小売、北海道)といった正社員化の進展を挙げている企業はあったものの、「正社員の雇用を守っていくのが最優先」(繊維製品製造、三重県)や「正社員の生産性を高めることによりマンパワーの活用を図る」(飲食料品小売、群馬県)など、仕事量が減少するなか、従来、非正社員に委託していた業務を正社員へシフトすることで非正社員の雇用を抑制するとの声が多い。
正社員比率、「上昇する」企業は13.7%
2009年度の正社員比率について尋ねたところ、2008年度と比べて「上昇する(見込み含む)」と回答した企業は1万658社中1,465社、構成比13.7%で、「低下する(見込み含む)」(同13.0%、1,383社)とほぼ同水準となった。
「上昇する(見込み含む)」と回答した割合を規模別でみると、『大企業』(同17.3%、472社)が『中小企業』(同12.5%、993社)よりも高く、業界別では『製造』(18.6%、567社)や『農・林・水産』(同18.2%、6社)、『サービス』(同16.1%、235社)が高かった。
正社員比率の上昇要因、「業績低迷による非正社員の削減」が36.5%で最多、 「業容拡大への対応」は31.6%へ減少
2009年度の正社員比率が「上昇する(見込み含む)」と回答した企業1,465社に対して、その大きな要因を尋ねたところ、「業績低迷による非正社員の削減」が534社、構成比36.5%(複数回答、以下同)で最多となり、2008年度見込み(6.4%)から30.1ポイントの大幅増加となった。一方で、「業容拡大への対応」(同31.6%、463社)は第2位に挙げられているものの、2008年度見込み(55.1%)より23.5ポイントの大幅減少となっている。正社員比率は、実体経済の急速な悪化に伴い“正社員の採用増加”による上昇から“非正社員の削減”による上昇へと大きく様変わりした。
正社員比率が上昇する背景としては、「業績低迷により非正社員からの削減となる」(自動車部品卸、北海道)や「稼働率の低下から非正社員を解雇せざるを得ない」(印刷、東京都)など、業績悪化に伴い非正社員を削減したため、相対的に正社員比率が上昇したという声が聞かれた。他方で、「小規模企業では労使の信頼関係のみが社運を決すると考えられるので、正社員のみ採用したい」(一般貨物自動車運送、大阪府)や「同業他社との競争に勝つためには、この状況下で人材に投資できるかが勝負になる」(配管工事付属品製造、宮城県)といった、現在の経済状況だからこそ将来への布石を打っておくと考える企業も多い。
ワークシェアリング、企業の4割弱が「推進すべき」、導入済み企業は3.3%
日本の雇用環境の改善に対してワークシェアリングを推進すべきかどうか尋ねたところ、「(推進すべきと)思う」と回答した企業は1万658社中4,032社、構成比37.8%となり、「(推進すべきと)思わない」(同26.6%、2,837社)を上回ったものの、ワークシェアリングの推進に対する企業の見方は分かれている。
また、自社におけるワークシェアリングの導入状況については、「すでに導入している」と回答した企業は同3.3%(347社)となり、「導入の予定がある」(同1.3%、134社)と「導入を検討している」(同4.6%、493社)を合わせた「取り組みあり」の企業は、計9.1%(974社)となった。一方、「導入の予定はまったくない」は同51.3%(5,470社)と過半数に達している。今後、「導入を検討していないが関心はある」(同21.7%、2,312社)とする2割超の企業から、どれだけ具体的な行動に進むかが注目される。
「取り組みあり」を業界別でみると、『製造』(同14.8%、452社)や『運輸・倉庫』(同13.8%、53社)が高く、現在の職務設計でワークシェアリングを実施に移しやすい業界で取り組んでいる様子がうかがえる。
ワークシェアリング、メリットは「社会的責任が果たせる」が6割超で最多、 デメリットは「従業員の士気の低下」が43.9%
ワークシェアリングの導入におけるメリットを尋ねたところ、「雇用を確保し企業としての社会的責任が果たせる」が1万658社中6,531社、構成比61.3%(複数回答、以下同)で最も多く、6割超の企業が社会的責任を挙げていた。次いで、「有能な人材の確保や退職・流出の防止につながる」(同27.1%、2,883社)、「人件費が低下する」(同22.2%、2,365社)と実利的な項目が続いた。
一方、デメリットでは「従業員の士気が低下する」(同43.9%、4,680社)が最も多く、「労働時間短縮ほど人件費は低下しない」(同41.9%、4,465社)とともに4割を超えている。次いで、「責任の所在が曖昧になる」(同34.0%、3,619社)、「一律の扱いを行うことに不公平感がある」(同33.9%、3,611社)が続いた。
企業からは、「雇用を守るための社会的責任があるので、あらゆる方法を検討する必要がある」(建設、京都府)や「希望退職を募り優秀な人材を失うよりは良い」(窯業・土石製品製造、広島県)といった、現在の雇用状況を打開する一つの方策として前向きに捉える声は多く挙がっている。しかし、「仕事内容によりワークシェアリングを行える職種は限定される」(化粧品卸、東京都)や「企業にあった形があり、一律の導入は難しい」(広告代理店、広島県)など、導入時に個々に生じる問題を懸念する意見も聞かれた。また、「一時的な雇用の調整弁となるかもしれないが、士気・帰属意識の低下など、将来に禍根を残す可能性が高い」(産業用電気機器卸、東京都)など、長期的視点から批判的に考えている企業も多くみられる。
ワークシェアリングの推進には約4割が賛成しているものの、懸念される問題も多く、導入に向けてのハードルは高い。しかし、「低成長のなかで、いかに個人が充実したライフスタイルを確立するかという視点でワークシェアリング導入の是非を検討していくべき」(不動産、東京都)のように、雇用創出や多様な就業形態への対応のほか、働く意義や社会観も含めた議論を深めていくことが望まれる。
詳細は本文(PDF 142KB)をご覧ください。
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上記の調査レポートはTDBのインターネット調査によるものです
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株式会社帝国データバンク 産業調査部 情報企画課
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景気動向調査:http://www.tdb-di.com/![]()

