〜 与信とマーケティング 〜
第20回:リスクへのデジタル的対応(応用編2)
リスクへの初歩的デジタル対応の限界
第18回の実践マーケティング講座において、リスクへのデジタル対応の重要性を説きました。その理由は、デジタル対応が信用リスクを網羅的、かつ早期に発見できる手段であるためです。
そうした取り組みを実践することによって、すべての取引先の変化をいち早くキャッチできる体制が整ったとしても、それだけでは十分とはいえません。取引先の健全性に対してどのような取引方針をとるべきなのかについての具体的な方針(経営理念・ポリシー)が欠けているためです。そこで、デジタル対応が整った後の対応方法について考えてみます。
一番わかりやすいのは取引相手の状況(例えば健全性)が一定の水準を割り込むまで取引を続け、その水準を割り込むと同時に取引を停止する方法です(下図参照)。メリットは、取引停止の水準を決めておくだけで運用が開始できるという簡便さにあります。
しかし、現実的には取引先がその水準を割り込んだからといって、取引を急に停止することは困難です。過去からの取引関係や他の取引先への配慮といった理由があるためです。また景気が本格回復にまで達していない昨今のような状況下では、新規の取引先を開拓することが至難の業であるため、取引先を失うことは経営にとって大きなマイナスです。こうした課題を解決するための手段として有効なのが「格付け」という考え方です。
倒産の可能性は普遍的に存在する
「格付け」は"倒産の可能性はすべての企業に普遍的に存在する"という考え方をベースにしています。つまり、企業を「倒産する」「倒産しない」という「○」か「×」で区分するのではなく、倒産する可能性の高低によって区分し、その水準に応じた取引条件を設定して運用していくというものです。
「格付け」というと金融業界だけのものであり、一般事業会社にとっては無縁のように思われるかもしれません。
しかし、かつて倒産とは無縁の業種であった金融・保険業や上場企業であっても倒産が避けられない昨今のような状況下では、きめの細かいリスク対応を実践しないかぎり生き残りは難しいといえます。ちなみに銀行などでは、最大で20通り程度の格付け水準を独自に設定して金利や回収期間を設定して運用しています。
「格付け」を実践するには、水準設定のための基礎データが必要となります。金融機関では貸出先から決算等のデータを入手することが比較的容易ですが、一般的には困難です。弊社ではこれに応えるため、各種データやサービスを用意しています。
定量化された信用リスクへの挑戦
取引先によって異なる信用リスクを理論的に導き出すことができれば、その合計額が定量的に把握された信用リスク量となります。
次に問題となるのは導き出された信用リスクの総合計に対する対応方法です。ここで各社の経営姿勢が色濃く反映されることになります。リスクに対する許容度の決定は、企業を取り巻く外部環境と、その環境に対応する経営ポリシーと密接に関係するためです。
企業を取り巻く環境は常に変化します。これにともなって取引先の信用リスクも変化せざるを得ません。景気上昇局面で業績も好調であればリスク許容量を増やし、下降局面であれば絞り込むといったきめ細かな対応が必要だといえます。
例えば、保守的な経営方針をとるのであれば、税法上認められた引当金の範囲に収まるように信用リスクをコントロールすることになるでしょう。その額を超えたリスクを持たないように、取引条件の変更等によってバランスをとります。逆にアグレッシブな経営方針をとるのであれば、1会計期間中に獲得した"果実" の総額である付加価値額の上限まで信用リスクを許容するということも考えられます。こうして設定されたルールを数期間続けることで、どの程度リスクを許容することが自社にとって最大の利益をもたらすことになるのかを科学的に把握することができるわけです。
企業間取引を取り巻くすべての情報がオープンになっていない状況下では、「知っている者」と「知らない者」との間に公正な競争は存在しません。企業情報を上手に活用し、できる限り信用リスクに対する感応度を高めることが大切だといえます。
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