ビジネス講座

第12回:ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)とEBM (イベント・ベースド・マーケティング)

前回まで、マーケティングプロセスにおける調査(R)、セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング(STP)の考え方や事例について紹介してきました。今回は、これまで紹介してきたマーケティングプロセスとは視点が異なりますが、昨今マーケターの間で注目を集めているマーケティング手法のABM(アカウント・ベースド・マーケティング)とEBM(イベント・ベースド・マーケティング)についてご紹介します。

ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)

ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)とは、営業部門とマーケティング部門が連携してポテンシャルの高いターゲットアカウント(企業)を選定し、LTVの最大化を目指すマーケティング手法です。
ABM実践のメリットを整理すると3点挙げられます。


1.リソースの適切な傾斜配分

対象企業を絞り込むことで、無駄な施策を減らし、人材やマーケティング予算といったリソースを集中させることができます。


2.営業部門とマーケティング部門の一体化

営業部門とマーケティング部門が連携してターゲットアカウントの設定をするため、両部門が同じ方向を目指したマーケティング施策を実行することができます。


3.企業ごとにパーソナライズ化されたメッセージ発信

幅広い対象にマーケティングを行うことは、多くのリードに対して情報を発信できる一方で、メッセージがぼやけてしまいます。顧客の見込み度合を高めていくためには、ターゲットを絞り込み、パーソナライズ化されたメッセージを発信し、興味をひくことが重要です。マーケティングオートメーションなどテクノロジーの進化により、パーソナライズ化した施策が以前よりも手間をかけずにできるようになっていることもABMが注目を集めている理由の一つとも言えます。


では、ABMを実践するには、どのような準備をすべきなのでしょうか。
ターゲットアカウントを設定し、組織構造やキーマンなどを把握したうえで、アカウントごとの施策を進めていきますが、そもそも、どれだけの数のリードを保有しているかを確認しておく必要があります。その際、マーケティング部門が保有しているリードだけでなく、社内の複数の部門に点在しているリード情報も収集します。アカウントごとのリードを管理して施策を実施していくためにも、リード情報を統合して使える状態にする「データマネジメント」がABM実践のための第1歩です。


ABM実践のための「データマネジメント」を3つのステップに分けて説明します(図1)。


図1:データマネジメントの3ステップ

図1:データマネジメントの3ステップ


〜Step1  統合〜

マーケティング部門では「Webサイトのフォーム入力情報」、営業部門では「営業活動で収集した名刺」「SFA/CRM登録情報」、サポート部門では「お問い合わせ情報」など、それぞれの部門で異なるリードとなりうる情報を保有しています。そのようなリード情報をひとつのフォーマットに統合したデータベースを構築します。


〜Step2  リッチ化〜

アカウント(企業)に対して、ABMに必要な情報を付与して、情報の価値をリッチにします。社内情報は「取引金額」「提供サービス」「競合他社利用状況」「自社格付け」など、外部の企業情報は、「事業内容」「業績」「信用度」「グループ系列」「取引先」「事業所情報」などがあります。この社内情報と外部情報を紐づけることでデータベースがリッチになり、精緻なターゲットアカウントの設定が可能となります。


〜Step3  活用〜

リッチ化したデータベースからターゲットアカウントを設定します。例えば、ポテンシャルが高い(企業情報から従業員数が多い、業績が伸びている、事業所数が多いなど)が、取引は少ない先(社内情報の取引状況)をターゲットアカウントとして設定し、マーケティング部門と営業部門が連携してマーケティング施策や営業フォローを行います。


メリットにも記載していますが、ABMは営業部門と連携してマーケティング施策を行うことで、営業部門の理解も得られ、成果につなげやすいこともありますので、実践を検討してみてはいかがでしょうか。

EBM(イベント・ベースド・マーケティング)

EBM(イベント・ベースド・マーケティング)とは、顧客の属性や行動履歴からイベントを察知して、最適なタイミングで最適なサービスを案内するマーケティング手法です。
消費者のライフイベントを考えるとわかりやすいかもしれません。結婚、出産、住宅購入、退職などのライフイベントは人生で何度も発生するわけではありません。そのようなイベント時には、大きな買い物が発生する可能性がありますので、そのイベントに関連するサービスを提供する企業からすれば、是非とも押さえておきたいポイントです。


「今はタイミングでない」と断られた顧客に対して1年後にフォローしてみると、既に他社から購入していたという経験がある方も多いのではないでしょうか。これは、サービス提案のタイミングと顧客のイベントが一致していなかったことが一つの要因です。もし、イベントを把握してアプローチすることができれば、顧客としては「ちょうど相談がしたいと思っていたんだ」となり、成約の確率も高まることが期待できます。


EBMの取り組みにおいて他の業界よりも進んでいる銀行を例にとってみると、「子どもが進学するタイミングで教育ローンを案内する」、「退職金がはいったことを検知して(もしくは予定の段階から)資産運用の案内をする」などが行われています。


では、法人営業におけるEBMにはどのようなものがあるのでしょうか。
商号の変更があれば、「会社として大きな判断をくだそうとしている」、代表者の変更であれば、「経営方針に変更があり、新しいことに取り組むかもしれない」という仮説をたてることができます。他にもライフステージ(図2)によって様々なイベントが発生しますので、そのイベントという事実を捉えることで、属性情報で抽出するターゲットとは別の視点で顧客アプローチのきっかけを作ることが可能となります。参考までに、帝国データバンクが保有する企業情報をみると、「商号」は1時間に1社、「登記面住所」は10分間に3社、「代表者」は月に4,000社の変更が発生しています。イベントの数だけ、ビジネスチャンスがあるのではないでしょうか。


図2:法人のライフステージ

図2:法人のライフステージ


最近ではテクノロジーの進化により、Web上の行動履歴を把握できるようになっていますので、インターネット広告やメール配信など、より精度の高い情報配信が可能となっています。「勘」「経験」「思い込み」ではなく、客観的な事実としてのイベントを察知して、マーケティング部門からの情報配信や営業部門のフォローにより、顧客が必要とする情報を届けることができます。



次回は、マーケティングミックス(MM)について掲載する予定です。

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