ビジネス講座

第11回:セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング(STP)におけるTDB支援事例

前回、セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング(STP)について説明しました。

この領域においても帝国データバンクでは多くの支援実績がありますので、今回はある企業の事例についてセグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングの順に沿って紹介します。


〜 事例:工作機械商社 〜

<背景>

当社は金属工作機械、NC旋盤、マシニングセンタ、レーザー加工機械などの工作機械を扱う商社です。
当時、工作機械の市場規模は2007年に1兆5,899億円に達しましたが、リーマンショックにより、2009年は4,118億円まで落ち込み、その後は中国やアジア新興国の需要の高まりにより、少しずつ回復している最中でした。(注:1)
当社はこれまでマーケティング戦略と言えるようなものを立案したことがなく、営業現場の「現場力」任せ、K・K・Oと言われるような「勘」と「経験」と「思い込み」に頼った体制になっていました。
「勘」と「経験」と「思い込み」であたりをつけ、ローラー営業する当時のスタイルでは、時間もかかり非効率、また適切なマネジメントもできないという課題感から帝国データバンクに相談をいただいたのがご支援をするきっかけでした。


<S:Segmentation(ゼグメンテーション)>

セグメンテーションについては、まず当時から意識していた「業種」という切り口から検討を始めました。
選択した主な対象業種は、『金属製品製造、一般機械器具製造、電気機械器具製造、輸送用機械器具製造、精密機械・医療機械器具製造』などであり、その「業種」に該当する企業数と自社の取引実績数から暫定的なシェアを確認しました。
ちなみに帝国データバンクの「業種」(産業分類)は、大分類、中分類、小分類および細分類からなる4段階分類で構成され、最も細かい粒度で1,359業種に分類されております。
加えて営業部門にヒアリングすると「ユーザー業界の設備投資動向に需要が左右される」や「海外シフトへの対応が求められる」などの声が集まり、セグメンテーションの切り口として表1のとおり案が挙がりました。


表1:検討セグメンテーション

表1:検討セグメンテーション


これまで培った「勘」と「経験」を検証する意味合いも含めて、これら切り口でセグメンテーションを実施し、既存取引先との取引実績や営業状況などから、同一セグメントが共通のニーズを持っているかを確認しました。
これらの検証結果を踏まえ、マーケティング資源を集中する標的市場特定のために今回は二つの軸を切り口として選択しました。

まず一つ目として、魅力度が測れる指標という点に着目し、ユーザーの「設備投資意欲」を設定しました。
ちなみにセグメンテーションの「企業属性」に関する切り口や、直接/ディーラー経由など商流構造の把握には、帝国データバンクの「ストックデータ活用」が可能となっています。


図1:工作機械市場の商流構造と設備投資意欲

図1:工作機械市場の商流構造と設備投資意欲


「設備投資意欲」については、帝国データバンクが実施している「景気動向調査」のデータを利用しました。
「景気動向調査」とは、全国 2万社超の企業を対象に帝国データバンクが毎月アンケートを実施し、景況感をはじめ、売り上げや在庫、雇用過不足など企業の業況に関する複数のDI(ディフュージョン・インデックス)を算出している調査です。ここで算出される「設備投資意欲DI」を活用しました。


表2:業種別設備投資意欲DI(一部抜粋)

表2:業種別設備投資意欲DI(一部抜粋)


一つ目にマーケットの魅力を測る切り口である「設備投資意欲」を設定したため、二つ目は企業のポテンシャルに着目しました。
これまでの取引実績からも多くの工場を抱えている企業の方が高ポテンシャルだということは明らかだったため「工場数」を切り口とし、帝国データバンクで保有している工場データをもとに基準となるレンジを設定しました。


<T:Targeting(ターゲティング)>

当社は業界トップ企業ではなかったため、ターゲティングのタイプとしては「集中化マーケティングで攻める」を選択し、マーケットの魅力が高く、高ポテンシャルとみられる212社を今回のターゲットすることとなりました。
このようにターゲティングした標的市場に存在する企業数が即座にわかり、営業戦略が立てられることも「ストックデータ活用」のメリットの一つです。


図2:ターゲティングイメージ

図2:ターゲティングイメージ


<P:Positioning(ポジショニング)>

ターゲティングした標的市場は魅力的でしたが、もちろん競争が激しく、要求レベルも高いことは間違いありません。つまり、ターゲットに対して自社の独自化を訴求する必要がありました。
当社の強みは、業界では一定の規模・知名度がありながらも独立系であり、多様なメーカーからの仕入が可能である点などでした。また、ターゲットとなるユーザーはそのさらにユーザー(ユーザーの顧客)からの要求レベルも高いため、複雑なニーズに対応するために複数の工機を同時に必要としており、また、アフターフォローを重視していることも営業部門へのヒアリングでわかりました。
このように自社の強みを整理した結果、差別化が実現できると考え、以下のような営業戦略で標的市場に対して、資源を集中することにしました。


図3:ポジショニングの整理

図3:ポジショニングの整理


今回の事例ではセグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングの順に沿って説明しましたが、実際にこのような手順でスムーズに進むことはまずありません。セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングを行き来しながら試行錯誤しPDCAサイクルを回していくことで、成功パターンを見つけます。


次回は、昨今マーケターの間でキーワードになっているABM(アカウントベースドマーケティング)とEBM(イベントベースドマーケティング)について掲載する予定です。

注1: 一般社団法人日本工作機械工業会 工作機械統計より抜粋

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