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IFRS実務対応

2012年1月25日

2 ケーススタディ

第23回:IFRSに基づく開示ケーススタディ23 〜「収益認識」(IAS18)〜

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今回と次回の連載では収益認識を取り上げます。
収益認識に関しては、ケーススタディ第2回でも欧州のIFRS適用企業の開示例を取り上げていますが、今回はJ-GAAPにおいて行われてきた出荷基準による収益認識や、IFRSを適用した日本企業の開示例を通じて、改めて収益認識に関する論点を考えてみたいと思います。


今回と次回で取り上げるテーマは次の通りです。


今回
■第23回:IFRSに基づく開示ケーススタディ 〜現行J-GAAPとIAS18を中心に〜

  • 出荷基準再考
  • 収益認識に関する注記開示
  • IFRS適用日本企業の開示例
  • 新しい収益認識モデル

次回
■第17回:IFRS最新情報 〜公開草案「顧客との契約から生じる収益」(2011年11月公表)を中心に〜

  • 新しい収益認識モデルの背景
  • EDの概要
  • 注記開示事項について


なお、IAS18では収益認識に関して、(1)物品の販売(2)役務の提供(3)利息・ロイヤルティ・配当を生じさせるような資産の使用に分けて収益認識基準が規定されていますが、今回はもっとも一般的な物品の販売に限定して考えたいと思います。


出荷基準再考

さて、物品の販売に関しては、「IFRSでは出荷基準による収益認識が認められない(*1)」ということがよく言われていますが、改めて考えてみたいのは「そもそもなぜ、日本基準では出荷基準による収益認識が行われてきたのか(認められてきたのか)?」という点と「IFRSでは出荷基準による収益認識が認められない」と言われる理由です。


まず我が国の実務上、出荷基準による収益認識が多く行われているという点に関して、会計制度委員会研究報告第13号「我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)-IAS第18号「収益」に照らした考察‐」(日本公認会計士協会2009年)では概ね次のような説明がなされています。



つまり、いわゆる実現主義の2要件である「財貨の移転の完了」と「対価の成立」という要件について、出荷時点では(実現主義を厳密に解釈すると)「財貨の移転の完了」という要件を満たさないとも考えられますが、実務上の観点も踏まえて出荷基準による収益認識が行われてきたということができると思います。


(*1)IFRSにおいて一律に出荷基準による収益認識が否定されるわけではないと考えられます。契約条件や営業上の関係・交渉などを総合的に踏まえて判断されるべきものといえます。

では「IFRSでは出荷基準による収益認識が認められない」理由はどこにあるのでしょうか?


IAS18では物品の販売からの収益は次の5つの条件の全てが満たされたときに認識するものと規定されています。



このうち出荷基準による収益認識にあたっては、出荷時点で(A)の要件が満たされない場合が多いと考えられることから「IFRSでは出荷基準による収益認識が認められない」とされ、IFRS導入時には収益認識基準の修正が必要となる可能性があると考えられているのです。


では、多くの企業が出荷基準による収益認識を行っている我が国において、IFRS導入時の実務対応としてはどのような方法が考えられるでしょうか?


確かに、出荷時点(メーカーでいえば工場から出た時点)では「重要なリスクと経済価値の買手への移転」という要件を満たさないケースが多いと考えられ、また、全ての取引について売上確証(検収伝票等)を入手することは難しいといえます(検収伝票を出さない文化の会社も存在することは確かです)。そこで、実務上の対応としては、物品の客先搬入予定日で収益認識を行い、売上確証(検収伝票等)の入手時点で事後的に確認する(この際に補正もあり得る)という対応も行われています。



収益認識に関する注記開示

注記開示に関しても、我が国の実務上は割賦基準や工事進行基準といった特別な収益認識基準を採用しているような場合を除いて、収益認識に関する会計方針が開示されているケースは極めて少ないのが現状です。我が国の実務において、収益認識に関する会計方針の注記が省略されている理由はそもそもどういった理由によるものなのでしょうか?


企業会計原則注解注1-2によると代替的な会計基準が認められていない場合には会計方針の注記を省略できるということが規定されています。ここで、一般の製造業の企業においては実現主義以外に一般に公正妥当と認められる計上基準はないと考えられるため、収益認識にかかる会計方針の注記が省略されてきたという経緯があります。


しかしながら、現在のように経済環境や事業内容が複雑化し、「実現主義による収益認識」というだけで、財務諸表利用者が正しい意思決定を行うに足る十分な情報提供がなされているかという点については疑問が残ります。財務諸表利用者にとっては、企業のビジネスに密接に関連する収益認識(売上計上方法)について企業がどのような方針をとっているかは非常に関心のある点でしょう。



IFRS適用日本企業の開示例

では、IFRSを適用した日本企業が収益認識に関して、どのような会計方針の注記を行っているのでしょうか。実際の開示例をみてみましょう。


まずは日本電波工業の開示例です。



多くの企業の開示例で共通しているのは、ひとまずIAS18の規定に沿って(IAS18.35,14等を参照)収益認識に関する注記開示を行うという点です。


次に住友商事の開示例を見てみましょう。同社の収益認識に関する注記開示は相当なボリュームがありますが、ここで注目したいのは「所有に関する重要なリスク及び便益が買い手に移転する時期」を具体的に明示している点です。



今後日本企業のIFRS適用が増加し、収益認識に関するIFRS対応の実務が蓄積されるにつれて、より具体的で投資判断に資するような会計方針の注記を行う企業が増えてくるものと思われます。なぜならば、収益認識に関する会計処理の改善と、収益認識に関する注記開示の充実は車の両輪に位置づけられるものと考えられるからです。


新しい収益認識モデル

さて、現在のIAS18は基本的に実現・稼得過程アプローチ(収益・費用アプローチ)の考え方をベースにしており、本質的には現行のJ-GAAPに近い考え方をとっています。


これに対して現在IASBが公開している公開草案(ED)「顧客との契約から生じる収益」では、資産及び負債の変動に着目し、顧客との契約から生じる正味のポジションに焦点をあてることを提案しています(資産・負債アプローチ)。


次回は、収益認識に関してこのようなモデルが提案される背景・公開草案で示されている会計処理の概要と共に実務上の視点も含めてご紹介したいと思います。



【参考文献】
  • 日本公認会計士協会編「収益認識」(2009年 税務経理協会)
  • 有限責任監査法人トーマツ編「トーマツ会計セレクション 7 収益認識」(2011年 清文社)
  • 橋本尚 山田善隆著「IFRS会計学基本テキスト第2版」(2010年 中央経済社)
  • 新日本有限責任監査法人編著「完全比較 国際会計基準と日本基準 第2版」(2011年 清文社)

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