ビジネス講座

「NHKスペシャル」に提供した企業間取引データの可能性とは

取引を活性化させる「コネクターハブ」企業を見つけ出す企業取引ビッグデータ

2013年9月8日に放送されたNHKスペシャル「震災ビッグデータII 復興の壁 未来への鍵」で、帝国データバンク(以下、TDB)の企業取引データ(※1)が活用されました。

このデータをもとに被災地企業の取引先の取引先、さらにその先の取引先といった取引ネットワークを分析したところ、取引のつなぎ目となっている企業=コネクターハブ企業の存在が明らかになりました。こうした「コネクターハブ企業」を復興の担い手として活用するなど、企業取引ネットワークの特性の理解によって緻密な計画立案を実現し、被災地産業の振興を加速させることが可能となります。


復興に向けて取引ネットワークの力に注目

2013年9月8日放送の、NHKスペシャル「震災ビッグデータII 復興の壁 未来への鍵」では、企業間の取引がアクティブにつながっている様子が示された。これはTDBのデータと分析技術を活用した企業取引データをもとにしたものである。企業活動を行う際には、取引先を知ることは非常に重要であるが、「取引先の取引先、さらにその先の取引先」など取引のネットワークを把握することはなかなか難しい。

また、ネットワークが持つ波及効果についても、あまり理解が進んでいない。影響力のある企業が業績を向上させたり、大型投資を行ったりした場合には、当然、取引数、取引量も増加することが容易に想像できる。取引の波及度合いについて分析できるようになれば、復興における投資とリターンの関係を想定することもできる。

番組では、被災地にある2万社の企業が震災前に22万本あった取引数が、約2万本減少した様子が示されていた。被災地の現状は番組でも企業取材で指摘されたが、道半ばである。被災地の産業振興に力を注ぐことは今後の我が国全体の経済を考える中でも重要である。今回番組でも示されたが、被災地と我が国経済はネットワークで一体化している。ネットワーク化されているということは、力の伝わる方向や伝わりやすい力点が存在する可能性がある。復興のスピードを上げていくためにも、取引ネットワークに注目し、その可能性についての考察をしていきたい。

また、ビッグデータそのものの可能性も指摘された。特に強調されたのは、「速報性」である。番組では行政が出すデータとビッグデータから推計したデータの比較を速報性という側面で取り上げていたが、データのアクティブな動きを追うことで、精度の高い推計が出せることが示唆された。

「コネクターハブ」がカギを握る

企業間取引は、主要な取引品目において、比較的長期の関係を結ぶことが多い。安定的な供給を受けるための合理的な決断としての取引関係構築である。他方、新しい製品の開発や、よりコストを下げるための取引変更は頻繁に行われている。 取引関係の構築は、企業間の業種の違い、規模の差、距離の問題などで様々な違いがでるが、膨大な取引データを使うことである程度傾向を知ることができる。

図1は、提供したデータの一部である。企業は経済活動を行う主体であるため、何らかの商取引が行われる拠点に立地する。震災という非常に稀なケースではあるが、被災地企業の販売先数の変化率にも特徴的な動きがみられる。

被災地における販売数の変化率


取引データから経済活動を考える

取引データからまず観察されたのは、取引が集中している企業の存在である。これまでTDBでの先行的な研究(※2)においても、ネットワークの「ハブ」となる企業の存在を指摘しているが、産業や地域、規模によって中心的な役割を果たしている企業が登場している。

番組で取り上げられた「コネクターハブ」はその一例といえる。 取引のハブとなっている企業は、その取引先の様々な機能を代替している。ハブとなる企業は、物理的により遠くへ「運ぶ」機能を持っていたり、バラバラの商材を顧客のために「まとめる」機能をもっていたりする。ハブ企業を通すことで、生産者や販売者はコスト面や、商圏の拡大などのメリットを享受できることになる。

以下の図は、被災地に立地する企業とその取引先との関係を仕入先、販売先ともに2次取引先までつなげたものである。直接的な取引先数は少ないものの、1次取引先に「コネクターハブ」と考えられる企業がいるために、2次取引先数が爆発的に増加している。

2次仕入先から被災地企業へ収れんし2次販売先へ拡大する取引ネットワーク


地域で異なるハブの特徴

単純に取引数を地域別にカウントしてみると、被災地の産業がどういった企業群によって牽引されているのかが垣間見られる。

宮城県が水産物加工の一大産地であることは、震災時に改めて確認されたことだが、水産関連のハブ企業が、取引でみても昨年3社合併で発足したトヨタ自動車東日本やNECの子会社などと同じくらいのネットワークを持っていることが観察できた。取引数が多いということは、それだけ地域内での取引数(仕入)も多く、地域外への販売も多いということを示しており、水産のハブ企業が地域にとって重要な存在であることが示唆されている。

地域の企業は取引でつながっており、取引が集中するハブ企業は、全国とのつながりさらに大きなネットワークを形成している。地域には地域の産業特徴があり、取引というパイプで有機的に連動し、生き物のように活動している。

それが東北の場合は、農林水産や自動車、電機等のネットワークを形成し、全国の企業や市場へとつながっている。


ビッグデータ時代の戦略市場分析に有効な企業間取引データ

こうした企業の動きをネットワークから探ることは、密につながった産業構造の中で何が起きているかを知る手がかりとして有効である。

今回は、被災地における復興の未来地図を描くために、取引によって接続された被災地企業と全国の企業との関係から、未来への示唆を得ることにチャレンジした。ビッグデータ時代に突入した中、取引のネットワークデータは、国や自治体にとっての戦略的産業振興策の立案や、企業にとっての経営戦略の立案と実行に非常に有効なデータであると考えている。

地域の企業は取引でつながっており、取引が集中するハブ企業は、全国とのつながりさらに大きなネットワークを形成している。地域には地域の産業特徴があり、取引というパイプで有機的に連動し、生き物のように活動している。

(※1)今回、番組にはTDBが持つ被災地所在の12万社を含む70万社についての取引ビッグデータを提供し、被災前後の企業の動きや、被災地以外の企業との関係などを分析した。70万社の企業データ、450万にもおよぶ取引データ、そして過去1998年までさかのぼった累計4,300万件以上の取引の時系列データを使って、被災地内、被災地と全国との膨大な分析の組み合わせを試みた。

(※2)TDBと大阪府立大学・大阪市立大学の共同研究で発表された「ダイハツ九州はどの地域から調達しているのか?」においても、ハブ企業の役割について言及しており、同じく取引データを使った産業分析である「医療機器メーカーのビッグデータ分析」においても、同じ医療機器メーカーであっても、購買方針が異なっており、それぞれ特徴があることを指摘している。 取引データは、ネットワークされた企業群(クラスター)ごとの動きを観察することもできる。分析では、全体のネットワークから特徴として取り出された企業(例えばハブ企業)の5年、10年といった業績の動きや取引数の推移などをみることで、ビジネスモデルの変化やクラスターの成長要因を探ることもできる。また、成長したクラスター内で同じような要素を持つ企業同士の相関を見つけることも可能である。
ビッグデータ分析ページへ戻る

お問い合わせ先

株式会社帝国データバンク データソリューション企画部
107-8680 東京都港区南青山2-5-20
TEL:03-5775-1092 FAX:03-5775-3168
E-mail:bigdata@mail.tdb.co.jp

目次

ビッグデータ分析のことなら帝国データバンクにおまかせください

ビジネス講座