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1999年7月19日

第3回:主要建設会社92社完成工事利益率調査

工事利益率8.65% 5年ぶりに好転

〜完成工事高、利益額は大幅な減収減益〜

はじめに

一昨年夏以来、上場ゼネコンの倒産は5社を数え、また昨年末から今年前半にかけて、青木建設、長谷工コーポレーション、フジタ、佐藤工業が金融機関による債権放棄を柱とした再建策を打ち出し、注目を集めたことは記憶に新しい。

その間、これらを含めて多くのゼネコンが、再建策や新経営計画を策定・公表してきたが、個々の再建計画の内容を見ると、本業工事の採算を向上させ、それを原資として段階的に不良債権処理を進めるという骨子のものが目立つ。しかし巨額な有利子負債の問題など大きな課題の残るゼネコンは数多く、将来的にも建設市況の低迷に加えて競合激化などで、建設業を取り巻く環境は厳しいものが予想され、その意味からもこれら再建計画は楽観できるものとは言い難い。

そこで帝国データバンクでは、全国の主要建設会社の98年度(98年4月期〜99年3月期)の損益計算書から、「完成工事高」と「工事総利益」を抽出することにより、バブル崩壊後の建設業の工事採算の実態を調査した。これは多くのゼネコンが、本業の工事のほかに兼業事業(不動産事業、資材販売等)を併営しているため、決算書の年売上高や経常利益だけからは、本業の工事部門の採算性を見ることに困難な面があるためである。なお本調査は一昨年以来3回目となる。

調査対象は主要建設会社のうち、91年度以降連続して有価証券報告書が入手可能な92社(上場81社、店頭登録6社、未上場5社)で、過去8ヵ年の利益率の推移や、低収益,高収益の企業ランキング等を作成した。

調査結果

――完成工事利益率8.65%、前年比0.38ポイントの上昇――

調査結果によると、98年度の92社合計の「完成工事高」は20兆4171億円(前年度比2兆5687億円減、11.2%減)、同年度の「工事総利益」の合計は1兆7652億円(同1351億円減、7.1%減)となり、大幅な減収減益となった。

その結果98年度の「工事利益率」は8.65%で、前年度の工事利益率(97年度=8.27%)に比べ、0.38ポイントの増加となっていることが判明した。多くのゼネコンが減収減益の厳しい決算であったが、完成工事高の減少よりも総利益額の減少が抑えられたことにより、結果的に利益率の向上につながったものとみられる。

過去8ヵ年の推移を見ると、「工事利益率」のピークはバブル崩壊後の93年度で、同年度の利益率は11.45%に達していた。しかし翌94年度から97年度まで4年連続で利益率悪化が続いていたが、98年度は5年ぶりに利益率が好転したことになる。

「工事利益率」は、バブル崩壊後の93年度をピークに97年度まで悪化が続いていたが、98年度は5年ぶりの好転となった。

最大手ゼネコン
――大林組、大成建設、鹿島建設、竹中工務店、清水建設――

最大手のゼネコン5社(大林組、大成建設、鹿島建設、竹中工務店、清水建設)について見ると、5社平均の「工事利益率」8.96%となり、前年度の8.84%に比べて0.12ポイントの利益率向上となった。しかし5社合計の「完成工事高」は6兆1163億円と、前年度に比べて大幅な減収決算となっており、高収益とスケールメリットを併せ持つ最大手ゼネコンの特色は、ここにきて曲がり角を迎えている。

工事利益率上位ランキング
――特化分野に強みもつ企業が上位に――

「工事利益率」上位ランキングでは、大東建託(賃貸建物の企画、建設、管理)、ショーボンド建設(橋梁工事)、ライト工業(表面保護、地盤改良等)、日本基礎技術(ダム漏水工事、地盤改良等)などの特化分野に強みを有する建設会社が上位を占めている。

しかし上位の中にも、前年度に比べると利益率の悪化している会社もあり、工事採算をめぐる状況は各社で大きく異なっている。

工事利益率ワースト20社

「工事利益率」の低いランキングでは、利益率4%台が3社、同5%台が8社となっている。前年度に比べると利益率は向上した企業が多いが、ワースト20社のうち、98年度決算で当期赤字であった企業は11社あるなど、損益面は厳しい企業も多い。

なおこのランキングには道路工事業者が目立つが、これは工事部門以外に舗装資材の販売等、収益の柱となる部門を有していることも大きな要因である。

まとめ

「工事利益率」は5年ぶりに好転したが、これは利益率算出の分母である完成工事高が大幅に減少したことが主要因であり、分子の工事利益額も減少している。したがって、不良債権処理の原資に充てられるべき利幅も減っていることになり、今回の調査で判明した利益率向上はゼネコン問題の解決に直結するものとは言い難い。

最近になって建設省は「建設産業再生プログラム」を策定したが、その中でも民間工事の伸びが見込めないことや公共投資の制約など、将来的な建設市場の限界が示されている。そのような環境下では、今後も各社の完成工事高が伸びることは考えにくく、利益も低い水準が続くものと思われ、不良債権処理などのゼネコンをめぐる問題に関しては今後も幾つかのヤマ場が避けられそうにない。

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